こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

115話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 真実の鐘③
フィローメルはふらふらと歩き、商店と現実世界を隔てる境界線の外へ出た。
彼女が商店に入る前にいた場所だ。
「フィローメル様!戻ってこられたんですね。」
ずっとその場に残っていた人々の中で、ナサールが最初にフィローメルを見つけた。
「フィル、怪我はない?」
「見たところ大丈夫そうだけど!」
「彼女はどうなったんだ?」
「さあ、少しずつ話してください。」
その場にはルグィーンと三兄弟も駆けつけ、彼女を囲んでいた。
「……フィローメル。」
そして、いつの間にか皇帝も姿を現していた。
わずかに驚きを浮かべた顔で、ぼんやりと立ってフィローメルを見つめていた。
フィローメルはうつむき、その視線を避けた。
「すみません。エレンシアは魔法のスクロールを使って消えてしまいました。」
周りを見回しても、エレンシアの姿はどこにもなかった。
フィローメルが何度も星明かりに照らされた商店街の周りを見渡したが、そこには誰もいなかった。
「結局、連れてくることはできませんでした。」
罪悪感が襲いかかった。
あのとき、自分が「真実の瞳」を使うのを後回しにせず、最初からエレンシアを拘束していれば、こんなことにはならなかったかもしれない。
しかしフィローメルは、エレンシアの正体を確認することよりも、まず真実を確かめることを優先した。
彼女を牢に閉じ込めたという考えが頭をよぎった瞬間、少しでも早く確かな真実を手に入れたくなった。
それが今までフィローメルが宮殿に残っていた理由。
何よりも重要な目的だった。
皇帝が近づき、フィローメルの肩に手を置いた。
「大丈夫だ。」
彼は毅然と立ち上がった。
「君のせいじゃない。」
エレンシアの失踪に最も動揺していた人物は彼だった。
「人を動員して探せばいい。すぐに見つかるはずだ。」
特に根拠のある言葉ではなかった。
しかし、フィローメルは彼の背中にもたれ、そっと目を閉じた。
少し前に知った真実が彼女を重く圧し潰した。
疲れた。今はただ休みたい。
皇帝の誕生日を祝う宴は、そうして静かに幕を閉じた。
主人公である皇帝が宴会の途中で姿を消し、強い印象を残して登場した魔塔主も娘の後を追って急に退場した。
ただ、舞踏会場に残ったポーラン伯爵が適切に後始末をしたため、特に騒ぎにはならなかった。
少なからぬ人々が宴会の奇妙な終わり方に疑問を抱いたが、それ以上に彼らの関心を引いた話題が別にあった。
突如現れた魔塔主、そしてその娘の正体だった。
『偽の皇女だと思われていたフィローメルが、実は魔塔主の娘だった。』
この衝撃的な真実はものすごい破壊力をもって広まっていった。
ルグィーンが皇宮に「公式に」姿を現してから三日目のことだった。
その日も国賓館には来客があった。
国賓館の応接室に座る老紳士が、髭を撫でながら口を開いた。
「魔塔主よ、我が家門が間もなく始める魔力石事業について、あなたにお尋ねしたいのですが……」
「嫌。」
杖をしっかりと握りしめたグラッドストン公爵の手が小刻みに震えた。
ルグィーンの隣に座っていたフィローメルが口を開いた。
「魔塔主様は他の予定でお忙しく、公爵様のご提案はお断りするとのことです。」
グラッドストン公爵はふんっと鼻を鳴らし、喉を鳴らした。
「そう言わずに一度考えてみてください。事業が成功すればそちらにも決して少なくない報酬を……」
「考えなくても、私お金はたくさんある。それより早く顔を引っ込めてくれたら、うん。」
フィローメルは手で軽率な口をふさぐ代わりにこう言った。
「申し訳ありませんが、魔塔主様がこれでおいとま願いたいとのことです。」
「……仕方ないですね。レディ・フィローメルのご親切に感謝します。」
結局、グラディストン公爵は南宮を去った。
彼は最後まで礼儀を守ったが、不快感を隠さなかった。
グラディストン公爵が去った後、フィローメルはルグィーンに話しかけた。
「公爵が良心を持ったら、どうなるっていうの?」
「知るかよ。あんな年寄りと戦って勝てるわけないだろ。」
「そんな問題じゃなくて……もういい、話すな。」
元老院の重鎮であるグラディストン公爵を打ち負かせる人物が他にいるだろうか。
皇帝さえも公爵に直接退けろとは言えない。
連日、南宮を訪ねる客が列を作った。
どんな待遇も整えてやるという皇帝の提案も断り、娘と共に国賓館に滞在している魔塔主に会うためだった。
魔塔主に顔を見せようと来た者、依頼をしようと来た者、好奇心で来た者。
それぞれ訪問の目的はさまざまだった。
中には彼の魔法を学びたいと訪れた宮廷魔法士もいた。
しかし魔塔主は誰の訪問も公平に門前払いした。
贈り物のようなものを送ってきても受け取るだけで、口は固く閉ざしていた。
『冷たい。冷たすぎる。』
すると人々はフィローメルに嘆願し始めた。
一度だけでも面会を取り計らってほしいと。
フィローメルはルグィーンに「彼らに会ってみたらどうだ?」と軽く提案した。
お金はお金で消え、魔塔主の顔さえ見たことがないのに、なんとなく不安な気持ちになった。
ルグィーンは娘の頼みに客たちに会うことを許したが、ただし会うだけで、それ以上のことはしないようにした。
グラディストン公爵をはじめ、誰一人として本当の目的を明かさずに帰って行った。
フィローメルもそろそろ諦めの境地だった。
「もう分からない。これ以上深入りしないでおこう。」
席を立ったフィローメルを見て、ルグィーンが尋ねた。
「どこへ行く?」
「皇帝陛下に挨拶しに行きます。」
「なんであいつに?」
「挨拶ぐらいはしておくべきでしょう。それより、言葉に気をつけてください。最近、南宮に出入りする人も多いですから。」
「私も行こうかな。」
皇帝を嫌いながらも、ルグィーンはついて行った。
二人が皇帝宮に向かう道には、自然と多くの視線が注がれた。
好奇心、恐れ、憧れが入り混じった興味。
それも当然だ、魔塔主は長らく噂だけが飛び交っていた謎めいた人物だったのだから。
人々は小さくざわめきながらも、何をしようとしているのかだいたい予想できた。
普段耳にする魔塔主の話からすれば。
その噂を考えると、おそらくこんな内容だろう。
「怖い老人だって聞いたけど。」
「思ったよりみすぼらしい顔だな。」
「怖いね。噂では人を捕まえて生贄にするとか?」
「モンスターもすごくたくさん飼ってるらしい!」
フィローメルは、しばらくして自分の予想が外れていなかったことを知った。
彼らの前を通りかかったとき、つまずいて転んだ子供が大声で泣き始めた。
「捕まえないでください!僕、まずいからモンスターも嫌がるよ!」
その子供の母親らしき女性が、急いで子供を抱きしめてあやした。
「申し訳ありません、申し訳ありません!やむを得ない事情があって子どもを連れてきたのですが……うちの子が恐れ多くもお二人の前を塞いでしまいました!」
目の前でつまずいただけでこれほど恐れるとは。
あらためて、平凡な人々にとって魔塔主がどれほど恐ろしい存在なのかを実感した。
「大丈夫ですから謝らないでください。」
フィローメルは子どもと母親を優しく安心させ、送り出した。
そのとき、周りにいた誰かが隣の人にささやいた。
「やっぱり魔塔主にうまく取り入るには、まずレディ・フィローメルに好かれないとって噂は本当だったんだな。」
そんな噂まであったのか。
離れていく帽子の後ろ姿を見ながら、フィローメルは自分の境遇を恨んだ。
「もう穏やかに生きるのは無理ね。」
偽物の皇女だったという事実だけでも十分に衝撃なのに、魔塔主の娘だったなんて。
こんなケースは世界が滅亡するまで二度とないだろう。
みんなフィローメルの話題で持ちきりになるだろう。
彼女のサバイバルストーリー、いや、その後の話も。
「まあ、仕方ないわね。」
四人を引き取ると決めた時から、もう覚悟していた。慣れるしかなかった。
二人は歩みを進め、最終的に皇帝宮殿に到着した。
皇帝の執務室。
「よく来たな、フィローメル。」
皇帝は自然にフィローメルだけに挨拶し、席についた。
彼の顔はやつれ、目の奥も普段よりさらに沈んでいた。
プラン伯爵によれば、エレンシアが失踪して以来、彼は一度も安らかに眠れていないという。
「さあ、座りなさい。」
フィローメルは皇帝の右側に座った。
ルグィーンは当然のようにその隣に座った。
しかし彼らを見つめる皇帝の表情は…。
とても気まずそうに見えた。
フィローメルが横を見ると、ルグィーンがピシッと座っていた。
「ねえ、ルグィーン。」
彼女の手招きにルグィーンが自分の耳を差し出した。
フィローメルは小声でささやいた。
「きちんと座ってください。」
「なんで?」
「なんでって、私たちだけじゃないし、他の人もいらっしゃるでしょう?」
「嫌だ。」
「なんで嫌なんですか?」
「嫌だから嫌なんだ。」
会話が長引くと、彼らを見る視線はますます鋭くなった。
とはいえ、人を目の前にして耳打ちを交わすのは当然のことだった。
フィローメルは仕方なく友人の脇腹をつついた。
「ぎゃっ!」
ルグィーンはフィローメルを恨めしそうに睨んでから、すぐに姿勢を正した。
『やれやれ、優しく言っても聞かないからな。』
どうにか彼がまっすぐ座ったので、皇帝の機嫌も直ったかに見えたが……。
しかしユースティスの表情は依然として険しかった。
最初から皇帝の心に引っかかっていたのは、全く別の点だということを、彼女は気づいていなかった。
結局、平和な雰囲気を作り出すことを諦めたフィローメルは、勇気を出して尋ねた。
「陛下、エレンシアを見つけましたか?」
もちろん、エレンシアの話だった。
皇帝は青い目を伏せた。
「いや。私たちが予想した場所、どこにも見当たらなかった。」
皇帝直属の部隊が密かに動き、エレンシアが行きそうな場所を徹底的に捜索したが、何の手がかりも得られなかった。
ルグィーンの協力を受けた宮廷魔法使いたちも彼女の足取りを追おうとしたが、失敗したのだという。
最初から追跡範囲が広すぎて不可能だったと。
皇帝が言った。
「これからは公開捜索をしなければならないだろう。皇女が消えたという事実をこれ以上隠すのは難しい。」
現在、エレンシアの不在を知る者はごく一部の限られた者だけだった。
他の者たちは、皇女がまだ隠居中だと思っているが、時間が経てば誰でも疑念を抱きかねない。
フィローメルは慎重に尋ねた。
「人々にはどのように告知するのでしょうか?」
「……エレンシアの精神が完全ではないということにするつもりだ。だから、発見され次第、即座に強制的に保護しろと。」
「……やはり、そうするしかないか。」
「その子の未来を考えると、私も見逃せない。だが、悪霊が憑いたというよりは、その方がマシだろう。」
悪霊、それも他の世界の異邦人だとすれば、必然的に神殿の監視が及ぶだろう。
そうなれば、事態はかなり複雑になる。
また、群衆に飲まれたその者が何を言い出すか分からず、先に精神が壊れたと言っておく方がいいかもしれなかった。
『息苦しい……』
フィローメルはエレンシアを探すのに特に役立つ手立てもなく、もどかしさを感じていた。
誰もそれを疑わなかったが、彼女は答えた。
自分だけが唯一それと対等な「プレイヤー」だから。
エレンシアが使った魔法スクロールは、望む場所ならどこへでも移動できる商品だ。
紅炎の指輪のように使用者が以前に行った場所にしか行けないとか、普通の魔法スクロールのように距離制限があるわけではなかった。
少し前、フィローメルは商店の主人である余裕たっぷりの彼にどうにか方法はないかと尋ねていた。
「申し訳ありません、プレイヤー様。魔法スクロールは無効化されました!」
「買うのではなく、それでどこに行ったか分かる方法はありませんか?」
「おまけでゲームプレイ時の小さなヒントをお知らせしましょうか?ドキドキ、さてどんなヒントが出るでしょうか?」
「……そうじゃなくて……」
「36番目のヒント!星光商店で売っている商品の一つ、『ッポンマンチ』には隠された使用法があります。それは何かというと……」
あきれたような空虚な声だけが響いていた。
「まぁ、NPCだから……」
侵入者の記憶から得た知識だった。
その間、漠然と考えたり想像していたゲームの正体もはっきりと理解できた。
だが、その記憶でも肝心の所在は把握できなかった。
彼女がどこへ向かったのか、それは――
『あのときスクロールを引き裂いた正体不明の力は何なのか。』
念のため、商店から持ち出した引き裂かれたスクロールをフィローメルは魔法使いたちに見せた。
しかし、彼らですらスクロールから特別な痕跡を見つけられなかった。
結局、手がかりはゼロだった。
フィローメルは落ち込む皇帝に向かって、明るい声を出した。
「そんなに落ち込まないでください。きっともう少しで見つかりますよ。」
根拠のない慰めだったが、時にはそんなことが心の慰めになるものだった。
皇帝の表情が少し和らいだ。
「……ありがとう。君が言ってくれなかったら、私は今も一片の疑いもなくあの人を敵だと思っていたに違いない。」
エレンシアが消えた直後、フィローメルは皇帝に自分が知っているほぼすべてのことを話した。
『皇女エレンシア』から、この世界がゲームの中の世界であるという事実まで。
その壮大な物語をすべて聞き終えた後、皇帝が言ったのはただ一言だった。
フィローメルがその本の存在を明かしたのは何度もあったが、直接見たいと言ったのは彼が初めてだった。
ルグィーンと兄弟たち、そしてナサールはエレンシアが主人公のその本に大きな関心を寄せなかった。
だが、ユースティスは当然、本物のエレンシアがどんな子なのか知りたくてたまらなかった。
フィローメルは皇帝の執務室に『皇女エレンシア』を持ってきた。
『侵入者が書いた本の中のエレンシアを本物のエレンシアだと言うにはちょっと違うけど……』
侵入者は少なくともエレンシアの性格についてはこれほど歪曲はしなかった。
彼の記憶をかすかに覗けたことでわかった。
フィローメルは皇帝に手渡す前に本を暖炉に投げつけ、以前に破れていたページを修復した。
『皇女エレンシア』は火の中で灰に変わった後、完全な姿に戻ってきた。
その驚くべき光景を目撃した皇帝は「……本物だったのか」とつぶやきながら本を受け取った。
フィローメルは隣で待っていた。
正直、彼の反応が気になりながらも、少し怖かった。
「これ、今になって持ってきたら怒られるかな?」
もし自分が9歳のときに『皇女エレンシア』を皇帝に見せていたら、どうなっていただろう。
皇帝はおそらく、早くに娘を探していただろう。
まだ侵入者に体を奪われる前の、本当のエレンシアを。
「もしかしたら、私ももっと早くルグィーンや兄弟たちに会えていたかもしれない。」
今になって少し後悔していた。
あの頃のフィローメルは、書かれている内容をそのまま信じていた。
今思うと、少し子供じみていたと思う。
疑ったが、当時の未熟な子供としてはその本を疑うのは難しかった。
そのときは、間違いなくフィローメルが自分の娘ではないという事実が明らかになれば、皇帝が自分を殺すだろうと思っていた。
しかしゲームの内容を知った今は考えが少し変わった。
ゲーム内の皇帝は偽の娘を好まなかったが、重んじもしなかった。
結末では引き離されたフィローメルに対し、責任感と憐憫を感じるような描写もあった。
繰り返しこんな疑問が湧いてきた。
『簡単に来られる道をわざわざ遠回りしてきたんじゃないか?』
しかし過去はすでに過ぎ去り、後悔しても取り戻すことはできなかった。
タク。
その時、本を閉じる音が聞こえた。
ユースティスは最後のページまで読み終えると、フィローメルを見つめた。
深く沈んだような目だった。
フィローメルは、当然彼が自分を責めるだろうと予想していた。
だが、実際に出てきた言葉は違った。
「この間ずっと、この本を胸に抱いて生きてきたのか。」
「……え?」
「私が君を殺そうとしたと思って、突然人が変わった。あの時から、私を避けようと思ったんだろう?」
フィローメルは沈黙した。
肯定の意味だ。
ユースティスは低く言った。
「……ごめん。長い間一緒にいたのに、君の本心がそんなだなんて全然知らなかった。」
「……いえ。私もエレンシアのことを前から知っていて、卑怯に隠していたんです。」
「いや、もし私が君を信じていたら、君は正直に打ち明けただろう。全部私のせいだ。」
こんな反応はまったく予想外だったので、フィローメルは当惑した。
だからどう返事をすべきか悩んでいると――今は、エレンシアを探すことが一番急務だという、妙な確信を胸に、その場所を離れた。
彼の謝罪を受け入れ、和解するには何か心に引っかかるものがあった。
もし謝罪を受け入れるなら……
「私たちはどんな関係になるのだろう?また以前のように戻れるのかな?」
今はわかる。
皇帝はフィローメルを惜しんでいた。
明確に表現したわけではないが、フィローメルを手放したくない気持ちは変わっていないようだった。
ルグィーンが現れた今も、そうだ。
「困ったな。本当に困ったな。」
ルグィーンは当然、フィローメルが自分と魔塔主に向かうと思っていたが、皇帝は残ってほしいと願う目で見つめていた。








