こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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7話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ⑦
食事を終えた後、フィローメルは部屋へ戻った。
「皇女様!お帰りなさいませ。それで、陛下は何とおっしゃいましたか……?」
フィローメルの姿を見た途端、皇帝との会話を探ろうとする乳母の後ろから、一人の人物が入ってくるのが見えた。
「いや、伯爵。ここには何のご用で?」
プラン伯爵だった。
「陛下があなたの引退を命じられました。今まで皇后陛下に続き、皇女殿下までお世話してくださり、お疲れ様でした。」
「え?それはどういう意味で……?」
乳母はプランの言葉を理解できず、ただ目をぱちくりさせた。
「退職金は十分にお支払いしますので、ご不満はないでしょう。ご希望であれば、首都で過ごすための住居もご用意いたします。」
フィローメルは乳母を見上げ、ほのかに微笑んだ。
「乳母、今までありがとう。もう無理せず、ゆっくり休んでね。」
「退職ですって!一体どういうことですか?私は退職する気はありません!最後まで皇女様のおそばを守ると決めたんです!」
「退職」という言葉に乳母は怯えた。
すでに年老いてはいたが、皇女の保護者としての権力を誰よりも愛していた乳母だ。
「その忠誠心には敬意を表します。しかし、あなたが長年、腰痛に苦しんできたことを皇女様が陛下に直接訴えられたのです。」
それが積み重なり、やがて乳母が倒れてしまうのではないかと心配されたのだった。
フィローメルは伯爵の後ろに隠れて、かすかに微笑んだ。
慎重な乳母は必死に弁明を試みた。
「そ、それはそんなに深刻なことではありません!皇女様が幼い心で大げさに受け取っただけで……。」
「すでに他の侍女たちにも確認しました。もう無理に隠さなくても大丈夫ですよ。」
乳母は「私がこの身をすべて捧げて皇室に忠誠を尽くす」という思いで訴えかけたが、言葉はうまく伝わらなかった。
フィローメルが心から乳母を心配するふりをして懇願すると、ユースティスは迷うことなく乳母の退職を指示した。
彼の立場からすれば、亡き妻のように仕えてきた乳母が倒れてしまったら困るので、早めに決断を下したのだろう。
「だから、今日からは仕事をやめて養生してください。皇女殿下には有能な侍女を慎重に選んでお仕えさせる予定です。」
「私は本当に大丈夫です!どうかもう一度だけお考え直しを……。」
フィローメルはプランにすがる乳母くぉ避けるようにして部屋の中へと入っていった。
ユースティスは一度下した命令を覆すくらいなら、死んで生まれ変わるほうが早いだろう。
隅で囁き合う侍女たちの表情も冴えなかった。
「……乳母様がいなくなったら、私たちはどうすれば?」
「新しく来る侍女と仲良くやるしかないでしょう。」
「乳母様に気に入られるためにどれだけ努力したことか……残念ですね。」
乳母の指示に従っていれば、それ以上深く考えなくてもよかったため、彼女の庇護のもとで安穏と過ごしてきた者たちだ。
フィローメルの脱出計画は、まず彼らをすべて追い出すことから始まる。
自分の精神をすり減らす彼らを、そばに置いておくわけにはいかない。
さあ見ていろ、脱出の準備をするのに邪魔なものは取り除くだけだ。
いいスタートだ。
フィローメルは軽い足取りで、体を洗うために浴室へ向かった。
・
・
・
数日後、フィローメルの初対面の日。
今日はフィローメルがデレス伯爵夫人に初めて会う日だった。
彼女は、退職した乳母の代わりにフィローメルの侍女長になった人物だ。
目の前に立つ灰色の髪の女性を見ながら、フィローメルは思った。
『急いで探したにしては、プラン伯爵がなかなか良い人物を連れてきたわね。』
デレス伯爵夫人は、強い意志を持たないところが欠点だが、寡黙で口数が少なく、侍女の仕事には適任だった。
今日初めて会うフィローメルが、その事実をどうして知っているのかというと……
デレス伯爵夫人は、書物の中でエレンシアに仕える侍女長だったからだ。
本の中では、彼女は品格があり誠実な人物で、エレンシアが大いに信頼を寄せていた。
穏やかな印象のデレス伯爵夫人は、恭しく頭を下げた。
「皇女殿下にお仕えできることは、一族にとって大変な光栄でございます。何かお命じいただけることがあれば、いつでも遠慮なくお申し付けください。」
デレス伯爵夫人は、気難しいと言われる皇女に初対面から気を遣い、緊張していた。
まだ若いため、公の場に出る機会は少なかったが、皇女の性格が簡単ではないということはよく知られている事実だ。
「お会いできて光栄です。これからよろしくお願いいたします。」
しかし、冷淡だという噂とは異なり、皇女は礼儀正しい笑みを浮かべて伯爵夫人を迎えた。
その後の会話の中でも、特に礼儀に外れた言動はなかった。
むしろ、一般的な貴族の子女よりも大人びた印象さえ受けた。
『余計な心配だったわね。』
皇女と会ってから半日ほど過ぎると、伯爵夫人はすっかり安心していた。
皇女の日課を共にしながら観察した結果——皇女は職務に真剣に取り組み、部下たちにも丁寧に接していた。
若いために未熟な部分は目立ったが、少し教育を受ければ、皇族の貴い品格を備えた未来が想像できた。
皇女に関する悪評は、やはり社交界に溢れる多くの噂のうちの一つに過ぎないようだ。
『一体、何の根拠があって皇女を批判するのだろう。』
デレス伯爵夫人は心の中で思った。
その時、皇女がわずかに赤くなった頬を手で覆いながら言った。
「私の衣装部屋をご覧になりますか? 私、とても素敵な服をたくさん持っているんです。」
二人は、ちょうどできた隙間の時間を使って、お互いを知る機会を楽しい時間を過ごしていた。
幼い少女が好きそうな話題を探して、最近流行しているドレスのスタイルについて触れると、皇女は彼女の手を取り、クローゼットの方へ引っ張っていった。
そうでなくても、年齢のわりにあまりに大人びて見られたくなかったようだ。
「子供のような一面もあるのね」と、デレス伯爵夫人は微笑んだ。
しかし、クローゼットの中を見た瞬間、彼女の表情は微かに曇った。
フィローメルはドレスを一着ずつ取り出して、楽しそうに説明を加えた。
「これは私が一番好きなドレスで、あれは去年の春に仕立てたものなんです……。」
「……そうですね。どれも綺麗です。」
ドレス自体には特に問題はなかった。
問題は、クローゼットの中が整理されていない状態だった。
一見、服がきちんとかけられているように見えるが、よく見るとドレスの用途や季節感とは関係なく、適当に混ざっていた。
さらに、一部の服はレースにシワが寄ったまま保管されていた。
このままでは、服がすぐに傷んで長く着ることができない。
おそらく、侍女たちが皇女に新しいドレスを次々と届けるため、衣服が雑に扱われていたのだろう。
まさか、格式ある貴族家の侍女たちが、こんな初歩的なミスをするとは!
デレス伯爵夫人は冷ややかな視線でフィローメルの侍女たちを見渡した。
それもそのはず、皇女が叱責を受けて以来、彼女たちの態度が次第に緩んできていたのだ。
『果たしてこれだけだろうか?』
表に現れたミスが一つあるとき、それは隠された十のミスがあることを意味するものだ。
彼女は、侍女たちが今までしてきた仕事の処理について徹底的に調べる必要があると考えた。
新しい侍女たちを迎える必要があるかもしれない。
しばらくして、皇女付きの侍女たちは一斉に追い出された。
デレス伯爵夫人の要請により、宮廷管理官たちが調査に乗り出したためだ。
彼女たちの職務怠慢だけでなく、皇女に割り当てられた予算を私的に流用していた事実まで明らかになった。
当然の結果だ。
しかし、最も大きく揺れ動いたのは乳母だった。
関係者たちはすべて厳罰に処された。
その中でフフィローメルが耳にしたのは、乳母はそれが大きな間違いだという認識すらなかったということだった。
「この年寄りが、年を取って自分のお金かそうでないか分からなくなったことがそんなに大きな罪なのですか!ああ、悔しい!イサベラ様が生きていらっしゃったら、母親のような私をどれほど気の毒に思われたでしょうか……」
皇宮まで押しかけ、泣きながら抗議する乳母を目撃した侍女が、フィローメルに見たままを詳細に報告した。
わずかな小銭どころか、瞬間的なミスとして片付けられる金額ではなく、横領した回数や金額の規模があまりにも大きかったため、その言い訳は到底通るものではなかった。
乳母が金を浪費しているとは思っていたが……。
フィローメルでさえ、これほどのことになるとは思わなかった。
乳母はその後、鞭打たれ追放されたが、罪人の立場でそのような醜態をさらしても処罰されないことが呆れるほどだった。
牢に入れられた侍女たちとは違い、財産没収で済んだことが皇帝の下す最大限の情けだった。
それにも満足せず、ついには抗議までしたのだ。
「皇女様もご覧になるべきでしたよ。やっと一度鞭打たれただけなのに、痛いと泣き叫んでいた様子を。」
乳母の惨めな最期を再現する侍女の言葉に・・・。
「……皇女様の前では言葉が過ぎますね。」
デレス伯爵夫人が目配せしながら注意する一方で、フィローメルの表情を探った。
長い間養育を担当していた乳母がいなくなり、皇女が傷ついていないか心配している様子だった。
「私は大丈夫です。根っこごと抜いたので、もう済んだことですよ。」
フィローメルは優しい微笑みで夫人を安心させた。
どうせ今となっては自分とは関係のない人だった。
フィローメルは「ふああ」と大きくあくびをしながら肩を軽く叩いた。
それを見て、デレス伯爵夫人が小さく微笑んだ。
「寝床を用意するよう伝えます。」
「ありがとうございます。」
「何を言っているの。これも私の仕事ですから。」
ベッドに横たわると、すぐに眠気が押し寄せてきた。
最近の数日間、乳母と侍女たちをどうやって追い出すかを考えていたせいで、フィローメルは久しぶりに安らかな眠りについた。
勉強をしながらも、頭の片隅はその考えでいっぱいだった。
皇帝に呼ばれて願いを伝えたこと、新しい侍女長に衣装の状態を見せたこと——それらを慎重に考え抜いた末に出した計画だった。
他人から見れば大したことではないかもしれないが、まだ九歳のフィローメルにとっては、それだけでも精一杯だった。
ともかく、自分の考えたとおりに物事が進んで本当によかった。
『これからもずっとこうでありますように。』
そう祈りながら、フィローメルは眠りについた。
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