こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

96話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 世界樹③
そのとき、彼らの横から黄緑色のウサギがピョンピョンと跳ねてやってきた。
そのウサギを見た族長が叫んだ。
「世界樹様!」
神秘的な光を放つウサギは、族長のもとへ駆け寄った。
「族長! 私を隠して! またあのイカれた人間が来て、私の体を全部むしろうとしてるんだよ!」
族長はフィローメルの顔色をうかがった。
「え、あの、それは……私もちょっと困ってまして……」
「……」
フィルローメルはすばやくウサギの体を両手でつかんだ。
「捕まえた、世界樹。」
ウサギは彼女の手の中から逃れようとバタバタともがいた。
「お前は誰だ!」
逃げられないように両腕でしっかり押さえながら、フィルローメルが言った。
「世界樹様に聞きたいことがあって来ました。ルグィーンは私の仲間です。害を加えるつもりはないので、逃げないでください!」
しかし、「ルグィーンと仲間」という言葉を聞いてパニックに陥った世界樹は、さらに激しく暴れ始めた。
「なに? あのイカれた人間と一緒にいるって? ふざけるな! 今すぐ行ってやる!」
慌てたルグィーンは、世界樹を捕まえたという報せを受けた。
しかし——
『手が足りない!』
ルグィーンがフィロメルに渡した、魔力がなくても通信できる通信石はポーチの中にあった。
その瞬間、思いがけない存在が彼らの前に現れた。
「おや、行方不明の族長を探しに来たら、世界樹様までいらっしゃるとは。」
若いドワーフが花畑に現れた。
そして彼の顔は、フィローメルも知っている顔だった。
「オルラカンさん!」
以前にドワーフ族の代表として帝国を訪れたことのある難民だった。
オルラカンはフィルローメルを見るなり目を丸くした。
「えっ、ヴェレロフの皇女様ではありませんか!」
そう言ったのは族長だった。
「何を言ってるんだ? フィルローメル嬢は魔塔主の娘だろう。」
「はい? いいえ、族長様。この方は間違いなく皇女様であるフィルローメル殿下に間違いありません。」
この地域では、彼女が偽の皇女であるという事実はまだ広まっていないようだ。
『なるほど、ドワーフ族は外部との交流がほとんどない人たちだったのね。』
彼らに自分の正体を明かすべきか悩んでいたフィルローメの視線の先で、身動きせず固まったウサギが飛び込んできた。
世界樹は好奇心を感じたのか、ドワーフたちの話に集中していた。
『今のうちにルグィーンに連絡すればいい!』
フィローメルは片手で世界樹をしっかり抱えたまま、ポーチに手を入れて通信石を取り出した。
二人のドワーフは会話を続けていた。
「魔塔主の娘だって!?」
「皇女様なんだから、皇帝の娘でしょ!」
「確かに魔塔主が私を見て、自分の娘だって言ってた!」
「以前にお会いしたあの皇女様じゃなければ、あの方が私の名前を知ってるはずがありません!」
「ま、まさか……。いくらなんでも、魔塔主の娘でありながら皇帝の娘だなんて! 両方とも男だぞ……はっ!」
族長の目は飛び出しそうなほど見開かれ、口はあんぐりと開いたまま固まった。
まるで世界の隠された真実に初めて触れたかのような表情だった。
「え、どういうことだ……」
「族長様、どうなさったんですか?」
「魔塔主というやつは、結婚もしないし女性にも興味がないって言ってたのに。」
「それは一体どういう意味でしょうか?」
「こらっ! 君は少しは空気を読みなさい!こっちへ来い。」
オルラカンを近くに引き寄せられた族長は、ひそひそ話をした。
「なになに?私にも教えてよ!」
好奇心からフィロ-
メルの腕の中から抜け出した世界樹もまた、ぴょんぴょん跳ねながら彼らのもとへ駆け寄った。
彼らは一箇所に集まり、こそこそ話し始めた。
「それがどういうことかというと……」
族長ドワーフの説明を聞いた残りの二人の反応は、衝撃的だった。
「なんてこった!なんてこった!なんてこった!」
「そんなのあり得ません!じゃああの子はどうやって生まれたんですか?」
「どうせあのガキが勝手に魔塔主を名乗ったんだよ。魔法でどうにかしたんだろうさ。」
「お母さま!お母さま!お母さま!」
「……世界樹さま、さっきから声が大きすぎます。」
世界樹を睨みつけていたフィローメルは、ようやくその会話に耳を傾けることができた。
『あの連中、いま何を言ってるの……?』
嫌な予感がして、冷や汗が背中をつたう。
彼女は、彼らのとんでもない誤解を止めようと立ち上がった。
「この忌々しい木、ここにあったのか。」
ルグィーンが到着した。
そして逃げられないように、ウサギの耳をつかんだ。
「なんでみんなそんな目で俺を見るのさ?」
「いや、その……ちょっとした誤解が……」
フィローメルが弁明するより先に、族長ドワーフがルグィーン元へさっと駆け寄った。
「おお、魔塔主!あんたにそんな事情があるとは知らなかったよ。」
「急に馴れ馴れしいな?」
「大丈夫。我々は人間とは違って、そういうのに偏見はないから。」
「偏見って何さ?」
「まあ、本人が言いたくないなら仕方ないけどさ……それでも、これだけは言わせてくれ。」
「なんだよ。」
フィローメルは彼に「世界樹だけ連れて出ましょう」と静かに言ったが、ルグィーンは族長が何を話すのか耳を澄ませながら待っていた。
周囲を見渡した酋長ドワーフは声を潜めて静かに尋ねた。
「それで、帝国の皇帝とはどうやって子どもを作ったんだ?」
「……」
「我々の一族にも子どもを欲しがっているが、授からない夫婦が何組かいる。もしよければ助けてくれないか……」
突如として感じられる尋常ではない気配に、酋長は言葉を止めた。
野外に不穏な風が吹いた。
ルグィーンの周囲からものすごい量の魔力が漏れ出していた。
ルグィーンは怒りを押し殺していた。
フィローメルは父の腕をそっと掴んだ。
「……すごく怒ってますか?」
「ん? いや、別に。」
彼の口元は笑っていたが、目はまったく笑っていなかった。
黄金色の瞳が冷たく光っていた。
『めちゃくちゃ怒ってるじゃん……!』
ルグィーンは彼女がこれまで見た中で一番怒っていた。
その怒りは、ついに実体を伴って現れた。
クウウウウウウ!
天を裂くような音に思わず上を見上げると、オラカンが叫んでいた。
「隕石だ!」
雲を割って現れた巨大な隕石が、彼らの頭上に広がる影を作り出した。
大魔法使いを除くすべての人々の顔色が真っ青になった。
「メテオ(隕石魔法)じゃないか!」
「狂った人間がメテオを使った!」
隕石は世界樹の半分にも満たない大きさだったが、もしあれが地上に落ちたらこの一帯はすべて灰になるだろう。
フィローメルは震える足で立っていたが、ルグィーンの胸元にしがみついた。
「ルグィーン、やめてください! 私たちまで巻き込まれてしまいます!」
「大丈夫。あれが落ちる前に、遠くの場所へ瞬間移動すればいい。」
「…あ、そうなんですか?」
いや、まだ安心するには早かった。
自分の命の危機は過ぎたものの、今度は他の者たちが心配になった。
二人のドワーフと一匹のウサギは、互いにしがみついたまま震えていた。
「お気持ちは十分にわかります! でも話し合いで解決しましょう!」
「……それを望むのか?」
「はい! 世界樹様には耳があるって言ってたじゃないですか!」
「わかった。君がそう言うなら。」
カチッ!
ルグィーンが指を鳴らした。
すると、すぐ近くまで迫っていた隕石がまるで煙のように消え去った。
風は静まり、空は晴れわたった。
まるでさっきの騒ぎがすべて嘘だったかのように。









