こんにちは、ピッコです。
「ジャンル、変えさせて頂きます!」を紹介させていただきます。
今回は131話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
131話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- ソフィアの存在②
「・・・ということは、公爵夫人はすべてご存じだったのですか?」
「え?ヨナスが公爵様の子供ではないということ?」
ソフィアが笑った。
いつも真面目で無表情だった彼女からは想像もつかないほど、明るく軽快な笑みだった。
「当然でしょ。バネッサ王妃様と私の間に秘密なんてなかったもの。家族が知らない頭の中の出来事なんて存在しないわ。」
頭が鈍く痛んだ。
「それじゃあ・・・公爵様に一部隠されていたのですか? 公爵様は公爵夫人からヨナスの出生について何も知らないと聞いていますけど。」
「もちろん。それが私のささやかな復讐だから。」
笑みを消したソフィアの顔は、冷たさがそのまま形になったような印象を受けた。
それは絵が人間に変わったとしたらこう見えるだろうと思わせるものだ。
彼女からは乾いた無感情さが漂い、冷酷でとげのある雰囲気が生まれる。
正確無比な彼女の目の前で言葉を失った私がいる間に、彼女は茶碗を手に取り、一口含んだ。
「私もずっと隠し通すつもりはなかったのよ。あの人が私に王妃様とそんな取り引きをしたという事実を告げた時、本当は手放してしまおうかと考えたの。だから、私も手放すつもりだったわ。」
しかし、公爵は自分とバネッサとの間の契約をずっと隠し続けた。
まるでソフィアがそのことを知っているとは思っていないかのように。
「だけど、あの人は、ひそかに気を揉む癖があるのよ。私がその話を聞いて怒り出すかと思ったけど、結局何も言わなかったわ。」
『あの』公爵をこんなふうに評価できるのも珍しい。
みんなが恐れる北部公爵を、一言で小心な性格の持ち主だと評するとは。
「だから私も黙ってたのよ。まあ・・・向こうが先に隠したんだから、私もわざわざ言う必要はないでしょう?」
ソフィアはむしろ当然のことのように振る舞い、私を呆然とさせた。
「そ、そうですね・・・。」
胸の奥で弾けるゴーストップ(信号)みたいな心境だった。
バネッサとソフィア、二人の女性の手のひらの上で、公爵は完全に翻弄されていた。
まるで自業自得というほかない・・・最終的には公爵自身が作り出した状況なのだから。
(リューディガーが賭博に弱い点を誰にでも握られるわけにはいかない理由が、これでよくわかったわね。)
ソフィアは予想以上に多くのことを知っていた。
どういうわけか、リューディガーの言葉通り、ヨナスが自分に対して抱いた軽蔑の気持ちを知っていたのかもしれない。
ただ、バネッサの子供であるヨナスに対して、彼女がそれらすべてを見て見ぬふりをしただけ・・・。
しかし、それは愛情深い母親の態度とは程遠いものだった。
彼女にとってヨナスは、ただの代替品でしかなかったのだろうか?
もしそうなら・・・リューディガーはどうだろう?
リューディガーが亡くなった後、彼女もまたショックを受けて何日も寝込んだと聞いた。
そう考えると、リューディガーに全く感情がなかったわけではなさそうだが・・・大きな疑問が残るだけだ。
(それでもヨナスを殺したのが公爵だという事実は知らないようだね。)
それがせめてもの救いだ。
たとえ彼女がヨナスをバネッサの代用品として扱ったとしても、その中にある感情や関心は全て嘘だとは言えなかった。
そういった点でヨナスが彼女を軽蔑し、それが原因で公爵に殺されたという事実は、ソフィアにとって知るべきものではなかった。
すべての真実が幸福をもたらすわけではないというリューディガーの言葉が、今更ながら脳裏に鮮明によぎる。
公爵との約束もあるので、それについて深く追及する必要はなかった。
そのため私は口を閉ざした。
「とにかく、あの男はそんなに私を気に入っているのか・・・よく分からないわ。」
ソフィアはため息をつきながら言った。
誰が聞いても、夫に愛されていることを自慢しているように思えるかもしれないが、それが本当に純粋な疑問であることを私は理解した。
なぜなら、私も同じことを考えたことがあったからだ。
確かに、ヴィンターバルトの人々の愛は、普通の人々には到底理解できないほど無機質な部分がある。
どれだけ愛していても、そこまでする?というような、納得のいかない部分だ。
「リューディガーは私の父よりはマシだったけれど、それでも耐えられる限界があったわ。持ちこたえるのが難しいものよ。」
そうですね。おっしゃる通りです。」
私はこれまでリューディガーに振り回された日々を思い返しながら、カップをいじっていた。
人は記憶が薄れれば美化するものだが、彼女の言葉は540度ほど捻じ曲げられて受け入れられているように感じた。
それでも他人には全く隙を見せないその顔が、私の前では無力に崩れるのは妙な安堵感を与えるものだ。
あぁ・・・ソフィアもこんな気持ちであの公爵と共に生きてきたのかもしれない。
ソフィアが公爵に真実を隠してはいたが、考えてみると自分を賭けて契約した仕事で公爵を非難するような態度を取ったわけではなかった。
むしろ・・・。
(少しは・・・好きだったのかもしれない?)
しかし、公爵の仕事について話すソフィアの態度には一切の建前がなかった。
彼女が唯一笑顔を見せるのは、バネッサ王女の話題に触れるときだけだった。
しかし、それもバネっサ王女という特別な存在があってこその話だ。
(ただ、最初はリューディガーに対して普通に接していたものの、リューディガーが亡くなった後に心の内が変わったのも確かだ・・・それでもヴィンターバルトを嫌っているわけではないだろうか?)
十年の水の流れを知っても、人の心の奥底までは分からないというが、無表情で傍らに座る彼女の心の内をどうすればすべて察することができるだろうか。
ただ曖昧に推測することしかできなかった。
正確であれば良いのだが、それは願望に近かった。
その時、ソフィアが手を伸ばした。
彼女のしわがれた大きな手が、宝石箱を持っている私の手の甲にそっと触れる。
ゆっくりと私の手を二度叩くその仕草は、平素と変わらない無愛想さと同じく無感情だった。
だが、その後に続く彼女の言葉には、静かな風のような、あるいは祈りにも似た熱意を感じた。
「幸せに生きなさい。あなたのために、そして私の息子のために。」
ソフィアの心からの祝福から、リューディガーへの愛情を感じ、私はようやく一息つくことができた。
リューディガーが親に特別な期待を抱いていなかったように見えても、ソフィアがリューディガーの死後に病んで亡くなったという話を聞いたとき、その目には明らかな混乱が浮かんでいた。
もしかすると、少しずつ・・・変わることもあるのではないか。
今は二人とも自分の感情をしっかり隠しているだけで。
一歩一歩進んでいけば、それで・・・。
ただ、それは未来の話。
今はその可能性を見られただけで満足だ。
私は静かに微笑みながら答える。
「私たちも幸せに暮らしますから、公爵夫人も幸せであればいいなと思います。」
ソフィアは目を細めて微笑んだ。
私が見た彼女の微笑みの中で、最も穏やかなものだった。