こんにちは、ピッコです。
「ジャンル、変えさせて頂きます!」を紹介させていただきます。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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148話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 記憶喪失②
私は布団をかぶるようにして、眠りの中にストレスを投げ捨てた。
良い方法ではないことは分かっていたが、その時の私にとっては最善の選択だった。
それでも、眠って目覚めると、少し気分が楽になっていた。
気持ちが前向きになり、新たに意志を奮い立たせる気力も湧いてきた。
環境を変えたことも少しは影響があったのだろう。
私が目を覚ました場所は客室だった。
倒れたリューディガーをすぐに夫婦の寝室に移動したため、仕方なく客室に寝ることになったのだが、それがかえってよかったのかもしれない。
いつも彼のことを気にかけながら過ごす夫婦の寝室よりも、一人で静かに目を覚ますことができるこの部屋の方が、精神的に落ち着きを取り戻すのに役立った。
気を取り直した私はローラを呼んだ。
ローラは私が呼ぶや否や、急いで洗面用具を手に持って駆け込んできた。
まるで、すでにドアの前でスタンバイしていたかのような迅速な対応だった。
ローラは事情を伺いながら、終始私の表情を観察していた。
どうやって慰めればいいのか分からない様子だった。
私は無理に平静を装って声をかけた。
「リューディガーさん、起きられましたか?」
「はい……。起き上がって奥様を探していらっしゃいました。一度お会いした方がいいと思います。」
「私を?」
思わず驚きの声を上げてしまった。
気づかぬうちに手に持っていた書類が床に落ちた。
「記憶が戻ったんですか?」
「いいえ……それはないようです。」
一瞬、期待の火が灯ったものの、すぐにその灯は消えてしまった。
そんな私の表情を見ていたローラが、落ちた書類を拾いながら言った。
「とにかく……ルカ様に先に相談してみるのはいかがでしょう? ルカ様も何かお話があるかもしれません。」
「そう……?」
ローラの提案を受け、まずはルカと会うことにした。
リューディガーの現在の状態について、事前に情報を集める必要があると感じたからだ。
私がぼんやりしている間に、ローラがテキパキと準備を進めてくれていた。
ローラもルカも、そして他の誰もが私が声をかけるのを待っているようだ。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
ルカは少し疑わしげな目で私を見た。
たとえ私が豆でビールを作れると言ったとしても信じないだろうと思えるような目だ。
私は状況について長々と話す気にはなれず、話題を変えた。
「リューディガーさんはどう?どこまで覚えている?」
「私たちに会った後の記憶は全くない。でも幸いなことに、ヨナスが亡くなった後、私を探してきた時の記憶までは残っている。それだけでも説明するには十分だから。」
ルカは肩をすくめた。
その答えに私は予想していたものの、深いため息をついて手のひらで顔を覆った。
「それで……今の状況をどこまで理解していると思う?」
「うーん……気になることはたくさんあるだろうけど、特に質問もしてこないんだよね。もともとあまり喋らない人だけど……。少なくとも結婚はしていて、叔母さんが自分の妻であるということは認識しているみたいだね。」
「気分が悪いとか……そんな感じはしない?」
「気分が悪いって?」
ルカの表情が歪んだ。
ルカの唇が何度か動いたが、言いたいことがあるものの、それがどんな言葉か自分でも確信が持てないようだった。
しばらく考え込んでいたルカが、ふと尋ねた。
「とりあえず叔父さんに一度会ってみない?」
「会ってみる?」
「そんなに驚かないでよ。別に他の人じゃないし、叔母さんがそうすると思わなかっただけ。叔母さんと叔父さんの関係が良いとは言えないのは分かっているけど、だからってこの機会に離婚しろなんて言うわけないじゃないか。」
もちろん最後の言葉は冗談混じりだった。
お互いの弱点をさらけ出す前に軽く話題に触れるための、ある種の緩衝材のような冗談だ。
そんな私の意図を理解したルカは、くすりと笑いながら同じく冗談で返してくれた。
「私が先王だって?そりゃあ二人を都合よく扱って、面倒だからってこんなふうに急かされてるだけだろうね。僕が二人の調停役だからって、二人が不幸になることを願ってるわけじゃないよ。でも……そうだな、もし先王がこの事実を知ったら、きっと困惑するだろうね。先王だったら、この機会に離婚させようとして大騒ぎになるだろうよ。」
その通りだ。
先王なら間違いなくそうするだろう。
それについてだけは確信できた。
「絶対にそんなこと言わせないけどね。」
「叔父さんが離婚しろって言ったら?」
言葉が硬直する。
ルカは冗談だった。
はぐらかすように離婚の話を軽く流すつもりだったが、リューディガーが私に離婚しろと言うなんて想像もつかない。
ただ考えただけで背筋に冷たいものが走った。
体が震え、真実を直視する勇気を奮い立たせるために、無理やり笑顔を作って、平静を装ってみせた。
「そのときは愚痴でも言うさ、何だってね。」
「そう簡単には言えないけどね。」
ルカの目元が険しくなる。
子どもじみた発言だったが、ルカにしてみれば、それはある種の慰めであり、皮肉でもあった。
私が精神的に行き詰まった末に、結局ルカに頼ることになった。
私がぎこちなく笑うと、ルカは深くため息をついた。
「はぁ……まぁ、そんなことにはならないだろうけど、とりあえず一応支えるよ。」
「そうだね。お願いするよ。今は本当に頼れる人が君しかいないから。」
「だから普段からちゃんとしろって。」
「ちゃんとしてるって?これ以上どうしろって言うのさ?」
「本当に自己中心的だよね。そんな君が、精神年齢が二十歳近くも違う子どもたちの面倒を見るなんて、よくそんなことができたね。」
「いや、ちょっと待って。その話が今ここで出るのはなんで?」
「見るんじゃなくて頼まれたんだよ!それに、代わりに私はお皿いっぱいのトルテを食べさせてあげたじゃないか!君だってちゃんと食べて、文句言わずに口を閉じてたじゃない。分かった?」
「一言も負けない姿を見ると、意外と気力は十分みたいだね。」
私が足を止めると、ルカがくすっと笑った。
まるで私が落ち着くのを待っていたかのようだった。
そして、彼と少し言い合いをしている間に、幼い子供のような落ち着かなさが少し和らいでいるのがわかった。
私は少し余裕のある笑顔を浮かべながら、ルカの頭に手を伸ばした。
「最初からそんなことしてたの?」
「何のこと?」
「冗談を言うのがさ。」
私はルカの頭をそっと撫でた。
丁寧に整えられていた彼の髪はふわりと乱れた。
私はその手を引き、ルカをぎゅっと抱きしめた。
しっかりとした少年の腕は、まるで丈夫な木の枝のように私を支えてくれた。
普段なら冗談を言いながら離れそうな彼が、今日は静かに受け入れてくれている。
私は彼の肩に顔を埋めながら、小さく言葉を漏らした。
「いつもありがとうね。」
「……ありがとうなら早く元通りに戻ってよ。普段より大したこともない冗談で楽しむわけにはいかないから。」
「私をおもちゃにして楽しんでるの?」
「だったら、楽しくないのにどうしておもちゃにするの?」
「ルカ!」
私がもう一度言葉をかけようとしたとき、ルカは急に私の腕からすり抜けていった。
そしてそのまま扉を開け、部屋の外へ出ていった。
彼は扉を閉める際に、最後に私に向かってこう言った。
「とにかく、叔父さんのところへ行っておいで!一人で離婚だとか、自分を責めるような馬鹿なことを考えないで!」
そう言い残して彼は姿を消した。
一人残された私は、自分でも気づかないうちに苦笑いを浮かべていた。
しかし、ルカの言葉には正直言って納得できる部分もあった。
一人でいると、どうしてもネガティブな思考にとらわれてしまうものだ。
それでも、リューディガーが私を探してくれた。その事実だけでも私にとって大きな支えだ。
覚悟を決めた私は、立ち上がった。
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