こんにちは、ピッコです。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

162話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- ルカ・マイバウム②
その時ルカは、自分の決断を心から後悔することになるとは、夢にも思わなかった。
『その時は、まさかこんなことになるとは思わなかった!』
ルカはそう思った。
リューディガーがユディットの周りをうろうろしている様子が目に入り、奇妙に感じた。
それはただユディットだけの問題ではなかった。
リューディガーもまた、ユディットに気に入られようと必死になっているように見えたのだ!
最初は自分の見間違いかと思い、何度も目をこすった。
しかし、それが紛れもなくリューディガーであることに気付いた。
あの男がそんなに気を使ったり、誰かに良い印象を与えようとするタイプではなかったはずだ!
もちろん、ルカもかつてリューディガーを「普通ではない大人」だと思ったことがある。
ずっと昔、ルカが初めて引き取られた頃、ユディットに対して責任感のない態度を取るリューディガーを見て「保護者としての資格がない」と感じていた。
それでもリューディガーは、ルカにとって頼れる存在であることには変わりなかった。
しかし、時間が経つにつれて分かったのは、リューディガーはただ単に自身がヴィンターバルトの後継者であるという肩書きを誇示したいだけだった、ということだ。
彼が自分に優しくしたのは、単なる見せかけであり、実際には無関心で愛情も知らない人間だった。
リューディガーの本質を理解するほど、ルカは彼に対して嫌悪感を抱かざるを得なかった。
リューディガーがユディットに気に入られようとすることにどんな目的があるのか、ルカは考えた。
『でも……叔母さんを手に入れたところで何の得があるっていうんだろう。それともまさか、叔母さんを利用して僕を引きずり下ろすつもりなのか?』
その可能性も少しはあった。
次期ヴィンターバルトの後継者にとって、平民のような叔母がそばにいることは肯定的な状況ではなかったからだ。
ルカをヴィンターバルトの後継者に据えようとするリューディガーの立場では、ユディットは目障りだったに違いない。
『だけど、だからといって叔母さんを利用する?そんな回りくどい方法を取る人間じゃないはずなのに……』
むしろ金で解決した方が簡単だし、法律で親権を主張する方が現実的だった。
しかし、今のルカはユディットに懐いているように見えるため、法的手段は容易ではない。
ルカの頭は混乱してきた。
確かなのは、リューディガーの不可解な行動がユディットを傷つける可能性があることだった。
過去にも同じような経験があったように。
リューディガーに傷つけられる前に、むしろユディットを独立させる方が良い選択肢なのかもしれないとルカは思った。
フランツが接近してくるのが気になるものの……まさかの事態が起こった。
馬車に乗り込んできた暗殺者と対峙する間に、ユディットがルカを守ろうとして傷を負ってしまったのだ。
ルカは自分が10歳に戻っても、暗殺者くらいは対処できると思っていた。
しかし現実は違った。
自分の身体が思った以上に未熟で痩せ細っていた。
暗殺者の刃をまともに受け止めることすらできず、怯えるばかりだった。
息が詰まり、震える頭上に暗殺者が刃を振り下ろそうとしていた。
ルカは必死に力を振り絞り、なんとか抗おうとしたが、それ以上はどうすることもできなかった。
その時、誰かがルカを抱き寄せた。
ユディットだった。
驚くルカが反応する間もなく、ユディットは暗殺者からルカを守るようにしっかりと抱きしめた。
その瞬間、ルカの頭が真っ白になった。
いったい、なぜ?
叔母が変わったことは分かっている。
以前の叔母とは全く別人のようになったということも。
しかし……。
それでも命を捨てる理由なんてないじゃないか。
僕たちはただ……。
多くの言葉がルカの口元で留まり、こぼれることはなかった。
揺れるルカの瞳には涙が浮かんでいた。
その時、リューディガーが放った銃弾が暗殺者を阻み、突き出された刃の方向を逸らすように撃ち抜いた。
暗殺者はすぐに逃げ去った。
ユディットとリューディガーはその後を追いかけて行った。
本来であれば、ルカもその背中を追いかけるべきだった。
しかし、彼の足は動くどころかその場に固まったまま、ただ立ち尽くしていた。
暗殺者の問題が解決され、遅れて戻ってきたユディットの腕には深い傷跡が残っていた。
その傷を見るなり、ルカの胸に冷たい石が落ちるような衝撃が走った。
息が詰まり、胸の奥で何かが突き刺さるような感覚に襲われた。
ユディットは自分が傷ついたことを全く意に介していないようで、その後の危険な状況に巻き込まれないようにするための注意を並べていた。
「分かった?ルカ?あんな状況では軽率に飛び込むものじゃないんだよ。もしあいつが刃じゃなく銃を持っていたらどうなってた?また同じことをするつもり?ねえ?」
ルカは静かに小言を聞いていたが、ユディットはさらに怒りを募らせたように声を荒げた。
彼女の話を聞けば聞くほど、ルカの指先から全身にかけて得体の知れない熱が伝わり、体が熱くなっていくのを感じた。
そしてついにルカは口を開き、ユディットを説得しようとした。
「……やっぱり戻るのがいい、叔母さん。」
それが最も良い方法だった。
ルカは自分自身のそばにいればいいことがないと考えていた。
貧しさを抱えていたとしても、ヴィンテーバルトを通じてある程度の支援が可能だから……。
叔母のことを考えれば、彼女を解放するべきだった。
『プランツが近づくかもしれないけど……それはプランツに目を光らせておけばいいだけだ。それに、叔母さんに後見人を付ければ済むことだ。』
しかし、ユディットは断固とした態度でスプーンを置いた。
そしてさらに、むしろ自分から母親の元へ行く方が良いのではないかと主張し始めた。
到底理解できない意見だった。
ルカはユディットを引き止めようとしたが、ユディットもまた今回ばかりは決意を固めており、一歩も引かなかった。
説得に失敗したルカは、視線をリューディガーに向けた。
リューディガーはユディットに気に入られたい気持ちを抱いているが、その本心はユディットをヴィンテーバルトから引き離そうとしているのだ。
ルカはリューディガーが自分の味方だとは到底信じられず、不信感を拭えなかった。
しかし、リューディガーに期待してしまった自分を責めた。
リューディガーはむしろ、無邪気な笑みを浮かべた。
「……悪くない考えかもしれないな。」
当惑するルカは、リューディガーの本心を探ろうと彼の表情を注意深く観察した。
しかし、リューディガーの顔から何を考えているのかを読み取ることはできなかった。
ルカが見たのは、ただ飄々とした平然とした表情だけだった。
「……そうなると、叔母さんが本当に私の母になるってことですか?おじさん、兄さんと親密になってもいいってことですか?それで本当に構わないんですか?」
ルカは攻撃的な口調で言い放った。
リューディガーがユディットに気に入られようとする姿勢が、ルカの目には気に食わなかったからだ。
しかし、リューディガーはそんなルカの態度にも動じることなく、逆に挑発的な態度で問いかけた。
「兄さんの女が君と何の関係があるっていうんだ?」
リューディガーの態度に対するルカの困惑はさらに深まった。
ならば、今まで叔母に対して執着してきた理由は何だったのか?
叔母を奪おうとしたのではなかったのか?
ユディットの前でこれほど堂々と「関係ない」と言い放つとは…。
やはり、彼の本心を理解するのは永遠に不可能なのかもしれない。
ルカは苦々しく唇を噛みしめた。
さらに、自分のせいでユディットが危険にさらされたのではないかと考えると、言葉が出なくなった。
リューディガーの発言は、冷たくもあったが、的を射ており反論の余地がなかった。
誰も味方がいない列車の客室内で、ルカはこれからどうすべきか一人悩んでいた。
当初はユディットが妄想に取りつかれているだけだと思っていた。
しかし、今のユディットは…。
もし放っておけば、彼女は自分を犠牲にして危険な状況に身を投じるだろう。
それで命を失うことさえありえる。
過去にルカは、ユディットの死について詳しく知らなかった。
フランツを通して断片的に聞いた内容はあったものの、叔母の性格が未熟であったことから、彼女が主導した行動とは思えなかった。
無知な女性。
ビンターバルトを本気で支配できると信じているとは。
フランツの嘲笑がルカの耳に響き渡った。
その音に、ルカの歯が強く噛み締められる。
このようなことが二度と起こらないようにしなければならない。
それは決意というより、ほとんど執念に近い感覚だった。
「今回も叔母さんが死ぬことになったら、私は一生幸せになれないだろう。私が幸せになるためには、叔母さんがどうしても生きていなければならない。」
叔母を守るためには、むしろ自分がビンターバルトの犠牲となること、そして自身の出自の秘密を明かし、ビンターバルトと距離を取ることが合理的な選択肢であるかもしれない。
しかし、最初からビンターバルトがそのような考えを許すとは思えなかった。
だが、そうするわけにはいかなかった。
ルカにはビンターバルトに対して負い目があった。
過去に自分のためにビンターバルト内の多くの人々が犠牲になったことに対する償いの念。
それに応じる形で、ルカは独占的なビンターバルトに絡みついた蜘蛛の糸を断ち切ることで、その負債を返済しようと決めた。
フランツを排除するには、ヴィンターバルトの位置が必要だった。
そのため、当面の間、自分の出生を明かすことはできない……。
ルカは苛立つように頭を掻いた。
どうすればユディットを完全に守ることができるのか。
以前はユディット監視するために視野に置いておこうと考えたが、今では彼女が視野にいなければまた何をしでかすかと心配になっていた。
自分でも矛盾していると感じていた。
彼女を守りたいという願いが大きくなるにつれ、明らかになってきたことがある。
このユディット・マイバウムという女性が決して軽々しい人間ではないということだ。
「妙に頑固で、人の話なんて全然聞かない。それでいて、自分の仕事には無駄に熱心で、トラブルも多いし、事故もたくさん起こす……。」
ルカは溜息をついた。
自分がどこかも分からず、薄汚れたTシャツをぽつぽつと濡らす汗にまみれた10歳の少年の姿がふと脳裏に浮かんだ。
それが彼女の頑固さの象徴であることを彼は知っていた。
「最大限の注意を払うのが得策だ……。」
ルカの目が光った。
一度乗り越えたことだから十分にやれるはずだ。
過去と現在が同じ流れである必要はないし、過去の経験も無駄ではない。
全てを解決した後で、最終的にはビンターバルトのくびきを振りほどかなければならない。
今回の人生では、ルカはビンターバルトではなくルカ・マイバウムとして生きるのだ。
結婚を嫌がる独身主義者のリューディガーは、ルカがビンターバルトを継ぐことを切実に願っているだろうが……。
「独身主義者だとか、俺の知ったことじゃない。」
ルカはため息をついた。
自分の幸せのために毅然とした態度を取る必要があった。
「とりあえず、あのフランツってやつを片付けなきゃな。混乱を収めるのはそこからだ。」
ルカの青い目は、冬の湖のように冷たく輝いていた。
今は凍りついたような表情だが、春になればその瞬間のきらめきとともに空をそのまま映すように柔らかくなるだろう。
幸福。
ルカが願いの杯に注いだ願いは、確かに幸福だった。







