こんにちは、ピッコです。
今回は37話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
37話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 自分にできること③
しばらくして、騎士たちと話を交わしていたリプタンがマックに近づく。
「マキシ、あなたは城に帰れ」
「リ、リプタンは?」
「私は侵入者を連れてリバドンの使者に会いに行かなければならない。ルース、ヘバロン、私の妻を城に連れて行ってくれ。討伐の準備も、前もってしておくように」
彼女が何かを言う前に、彼はマントをなびかせて.騎士たちを連れてどこかに向かった。
マックは遠ざかる彼の姿をじっと見つめ、レムの上に座る。
淡い朱色の髪の毛を持った巨体の騎士へバロンとルースも並んで馬の上に乗った。
「しばらくベッドで寝てみようかと思ったら、また山の中に潜り込まなければならないようだね」
ヘバロンが先を行ってぶつぶつ言うと、ルースがにっこりと笑う。
「お城で過ごす時は、退屈だと文句を言ったじゃないですか」
「あなたも霜に当たりながら寝てみればいい」
「お断りします。私のように繊細で弱い魔法使いは、冬の寒波を迎えるだけで死ぬこともあるんですよ」
ルースが堂々と主張すると、ヘバロンは呆れたようにそら笑いをした。
「繊細で軟弱なの?レムドラゴンの騎士団内でも魔法使いほど神経の線が太い人はいない」
「それは卿の考えです」
マックは彼らのもめごとを見て目を丸くする。
仲が良いのか悪いのか分からない対話だった。
「ちょっと待ってください。城に行く前にちょっと市場に寄らなければなりません」
町の広場に着くと、ルースは立ち止まって言った。
すると、ヘバロンは不満そうな顔で彼の方を振り返る。
「おい、個人的な用事は別にしろ。今は・・・」
彼はマックを横目でちらりと見て言葉を濁した。
ルースは小さなため息をつく。
「そんな態度はもうやめてください。カリプス夫人は、触るとおできが悪くなるんじゃないんですよ」
「おい、私がいつ・・・」
「夫人が目の前にいらっしゃるのに、必ずいないもののように行動しているじゃないですか。いい加減にしてください」
ヘバロンの顔に一瞬恥ずかしそうな様子が浮かぶ。
ルースは反論する機会も与えずに馬をマックに向けた。
「今日で最後の日なのです。もうしばらく行商人たちの訪問はないでしょう。その前に必要なものがあれば買っておかなければなりません。夫人もアナトールの市場がどうなのかくらいは見ておかないと」
マックは躊躇いながらヘバロンの顔色をうかがう。
不機嫌そうな顔で固まっていた騎士がため息をつきながら馬の頭を市場の方に向けた。
彼女は素早く彼らの後を追う。
「な、何を買おうとしているんですか?」
「薬草と魔石を買います。持っているものをほとんど全部使ったんです」
市場は寒い天気にもかかわらず盛んだった。
道には臨時テントを張った商人たちが露店の上にあらゆるものを並べて売っている。
獣の皮と骨、粗く見える織物とごつい装身具。
もう一方では肉やパン、ジャガイモを売っていて、穀物やどんぐりを袋に入れて売る商人もいた。
彼らの声に萎縮し、マックはルースの後ろにびったりと寄り添う。
「魔法使い!ゆっくり行って。こんなに人が多いところでは護衛するのが容易ではないんだよ」
後ろでヘバロンが不平を言ったが、それなりの声さえも商人たちの力強い声に埋もれてしまう。
彼女は不安そうにあたりをちらりと見ていた。
「そんなに緊張しなくてもいいです。誰かが突然飛びついてナイフを振り回すことはほとんどありません」
「ぜ、全然安心できません」
「アナトールの治安は良い方です。そのように警戒した方がむしろ質の悪い奴らの注意を引くことがあります」
マックは少しでも落ち着いて見せようとする。
その姿が下手に見えたのか、ルースが首を軽く振りながら、ある露店の前に止まった。
黒い布を敷いた平たい板の上には、どこに使うのか知る術のない植物の根と正体不明の粉が入った瓶、細い木枝が無造作に積もっている。
ルースは馬から飛び降り、それらのものを一つ一つ注意深く見た。
「これが全部薬草なの?」
後ろから追いかけてくる間ずっと文句を言っていたヘバロンも、好奇心に打ち勝つことができなかったように、顔を出す。
ルースは返事をする代わりに、隅で薬草を手入れしていた男を呼び止めた。
「種類別に20本(100g)ずつ買おうと思うのですが、値段はいくらですか?」
「10セガルに1デルハムです」
厚徳な印象を持った商人が顔に笑みを浮かべながら答える。
「良質で貴重な薬草なので、価格が高いのです。種類別に全部買うなら、40デルハムは払わなければなりません」
「リラムで計算しても?」
「もちろんです。秤を持ってきますね」
マックは、商人が秤の上に乾いた葉と根を慎重に置くのを見ていた。
小さなポケットに着々と物を入れたルースが、懐からポケットを取り出し、銀貨4個を差し出す。
すると商人が秤の上に銀貨を乗せて重さを量った。
マックはルースの耳に小さな声で尋ねる。
「なんで・・・、重さを測るんですか?」
「本物の銀貨かどうかを確認するためです。最近偽物のコインを作るやつが増えたうえに・・・、小銭を少しずつ両替して新しいお金を作るやつらまでできたんですよ」
「硬貨を挽くんですか?」
「ざるにお金を入れて振ると金粉が落ちるじゃないですか。それを集めて金貨をもう一つ作るのです。それをずっと繰り返していると、コインがたくさん磨り減って重さでも差が出始めます。でも心配ありません。私の小銭はほとんど新品同様なんですよ」
ルースはポケットから小銭をいくつか取り出して彼女に見せた。
確かに角が尖っている。
商人も満足したのか、小銭をポケットに入れた後、平たいデルハム8個を取り出して重さを確認させた。
ルースも商人たちに劣らず注意深く秤の針を覗き込んだ後、小銭を受け取る。
「魔法使いは相変わらずケチだな」
その姿を見守っていたヘバロンが椰楡したが、ルースは一睡もしなかった。
「私は几帳面なのです」
堂々と答えたルースが今度は向こうの屋台に向かう。
そして、今度は傭兵と見られる男と拳ほどの大きさの石を置いて値段をかけ始めた。
傭兵は自分がその魔石を得るために死ぬところだったとし、少なくとも15リラムは受けると主張し、ルースは鼻で笑いながら10リラムで十分だと言い争った。
結局、しばらく言い争いをしたおかげで、ルースは希望する価格で磨石5個を購入する。
マックは他の屋台で品物を見物した。
色とりどりの玉が散りばめられた手のひらほどの短刀と動物の形をした小さな木片、刺繍の入った腰帯、青銅で作られたブローチと色とりとりの布を絡めて作った縄まで・・・。
「これは何ですか?」
好奇心に満ちた目で色とりどりの縄を見ていたマックは、隣の席に向かって質問を投げかける。
しかし、ルースはいつの間にか遠く離れた場所で、他の商人と口論をしていた。
慌てて席から立ち上がろうとすると、無愛想な声が突然聞こえてくる。
「剣台につける装身具です」
マックは驚いて首をかしげると、ヘバロンが腰を曲げて彼女が見ていた装身具をいじっていた。
「多くの冒険家がこれを持っていて、精霊の加護を受けることができると信じています。ここに結ぶのです」
彼は腰につけた自分の剣を指差す。
丈夫そうな革の剣台に色とりどりの布を絡めて作った装身具が縛られていた。
彼女はヘバロンとアクセサリーをぎこちなく交互に見る。
「は、初めて見ます。リ、リプタンは、こ、こんな飾りをつけていないので・・・」
「団長はこういうのは無駄だと思うんですよ。迷信のようなものにこだわるにはプライドが高すぎる性格です」
騎士の言い方には皮肉と親近感が同時に含まれていた。
マックはリラックスしてかすかな笑みを浮かべる。
「リプタンといえば・・・、そうだと思います」
「それでも夫人が渡せば、つけるかもしれませんね」
へバロンは後頭部をこすりながら淡々とした声で尋ねた。
「一つ選んでみますか?」
マックは瞬きしながら彼を見上げる。
思いがけない好意に、戸惑いと喜びが同時に押し寄せた。
「た、高いんじゃないです?」
「それほどの金額ではありません」
呆れたように吐き出す言葉にマックは頬を赤らめる。
彼女は屋台の上にかかっている装身具の中から、赤、緑、橙色がよく配合された短い縄を選んだ。
ヘバロンは値段も聞かず、商人に小銭を一つ渡す。
「お釣りはいいよ」
商人の目を見ると、本来の価格をはるかに上回る金額を支給したようだった。
「お、お城に帰り次第、お金をお返しします」
「結構です。魔術師のようにコイン一つでけちけちする人ではないので」
騎士は肩をすくめてルースの方を向いた。
マックは装身具を受け取り、慌てて彼を追いかける。
まだ感謝の挨拶もしていないということに気が焦ったが、男はすでに彼女に関心を絶ち、ルースにいつまでぐずぐずしてIいるのかと愚痴をこぼしていた。
ルースが購入した品物を袋に入れ、煩わしいような手振りをする。
「はいはい、分かりました。もう帰りましょう」
ルースは手綱を握りしめ、静かな場所へゆっくりと歩いた。
市場を出るやいなや、彼らはすぐに馬に乗ってカリプス城に向かう。
マックはかなり熟練した技術で曲がりくねった坂道を登ることができた。
「今度の討伐には誰が出ることにしたんですか?」
堀に着いたころ、ルースがヘバロンを振り返りながら尋ねる。
ヘバロンはじっくり考えるかのように手であごをなでた。
「私とガベルが行くことになりそう。そして見習い騎士も何人か連れて行くつもりだよ。そろそろ実戦経験を積ませる時期になったからね」
「しばらくは静かに過ごせそうですね」
満足感のこもったルースの言葉にヘバロンが笑う。
「団長に魔法使いも連れて行こうと言ってみなければならない」
「カリプス卿は私を連れて行こうとしないでしょう。何かあったとき、私がお城にいたほうが安心ですからね」
「確かにそうだね」
ヘバロンはしぶしぶ認めてため息をつき、休んだ。
「まあいいよ。私たちがいない間、平和を思う存分享受すればいい。あっという間に山をきれいに掃除して帰ってきて、君の塔の近くでうるさくしてあげるから」
ヘバロンは馬に拍車をかけ、彼らを一気に追い抜いて城門を通過していった。
ルースは気楽に肩をすくめる。
マックは彼らの口論を少し羨ましく感じていた。
ヘバロンとルースの間には深い理解と絆が存在していた。
彼らだけではなかった。
リプタンも騎士たちと一緒にいた時、いつにも増して自然に見える。
彼らは論争をしたり口論したりする瞬間でさえ楽しそうだった。
いつも一人だったマキシミリオンの目には、彼らの間に存在する固い結束力がこの上なく魅惑的に見えた。
「さて、私はもう帰って一眠りします。あの魔導具のために、ここ数日コウモリのように生きてきたんですよ」
ルースは突然門をくぐって彼女を振り返った。
「奥様もこれまでお疲れ様でした。奥様が手伝ってくださらなかったら多分3、4日はもっとかかったでしょう」
「や、役に立ったなんて・・・、う、嬉しいですね」
「近いうちにその喜びをもう一度お届けします」
そう言って、ルースは笑う。
マックもつられて微笑んだ。
このように少しずつ彼らの一員として受け入れられることができたらとんなに良いだろうか。
所属感。
それはどんな感じなのか気になった。