こんにちは、ピッコです。
今回は63話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
63話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 家族
マックは部屋に閉じこもって一人で夕食をとり、猫たちのいたずらを見ながら時間を過ごす。
一体何の議論をしているのか、リプタンと騎士たちは四方が真っ暗になるまで会議室から出てこなかった。
使用人たちの話によると、食事も騎士の宿舎に持って来いと言ったようだ。
マックはひどく疲れていたが、今日だけは絶対に先に眠れないという一心で、ろうそくに火をつけ、机の前に座って古代語を読み上げる。
どれほどそうしていたのだろうか、カチャカチャという音が聞こえ、ドアが開き、リプタンが音のない足取りで部屋の中に入ってきた。
「お・・・、お戻りですか?」
暗闇の中で鎧を脱ぎ捨てていたリプタンが、どぎまぎしながら彼女を振り返った。
「寝ていると思った」
彼はローブをどこかに投げつけ、彼女の前に大急ぎでやってくる。
「外出で疲れたはずなのに、どうして起きているの?」
「別に、疲れて・・・、ないですよ」
リプタンは眉間にしわを寄せ、マックの頬を包み込み、たこができたかさかさした親指で彼女の黒っぽい目元を軽く撫でた。
「しばらく庭を作って、お客様を迎える準備をするのに大変だったじゃん。無理する必要はない」
「私は・・・、大丈夫です。私よりはリプタンが・・・、もっと大変じゃないですか」
頬を触る彼の手がとても気持ちよく、マックは無意識のうちに頬を傾けながら彼の手のひらに唇をこする。
リプタンは腕を動かし、うめき声を上げ、自分の唇を彼女の唇にこすりつけた。
彼の唇は少し冷たくて、舌先はかすかにワインの味がする。
「欲求不満で大変ではあったね」
彼は陰鬱な声でつぶやきながら彼女の頬を包み、耳のそばで曲がりくねった髪をなでた。
ろうそくにかすかに光る彼の金色の顔は、どこか悪魔的な感じを与える。
「だけど、あなたを苦労させたくはない。あなたが望まないなら・・・」
「わ、私は・・・、大丈夫ですよ」
マックは注意深く彼の腕をつかんだ。
本当に彼がとても懐かしかった。
リプタンはマックの顔をじっと見つめ、すぐに動物がゴロゴロと嗚いているような音を立てて、彼女の唇を激しく吸い始める。
マックは彼の髪を撫でて応えた。
一気に体が熱く燃え上がる。
リプタンは急いで服を脱ぎ捨て、彼女の胸を撫で、マックも彼のしっかりした胸と首を思いっきり撫でた。
リプタンはまるで首輪を置いた猟犬のようだ。
興奮して走っていくのをこれ以上捕まえることもできず、止めることもできなかった。
彼は彼女の足の間をなでて、飲み込みたいという意地悪なキスを何度も浴びせ続ける。
マックは彼の腕を枕にしてベッドの上の布をかすかな目で見る。
欲望だけでは満たされない部分が自分の中のにあることが信じられなかった。
こんなにも過分なほど大切にされているのに、どうして心の片隅で不安を拭いきれないのだろうか。
孤独が古い垢のように綺麗に剥がれない。
「やっばり大変だった?」
マックを取り巻く緊張感を感じたのか、リプタンが汗でびしよびしょになった肌を手のひらでこすりながら心配そうに尋ねた。
マックは肩に顔をうずめて首を横に振る。
それでも安心できなかったのか、彼がピンク色に膨らんだ胸を片手で包み込み、優しく撫でながら肩の上にしきりに唇を押した。
「もしかして、アグネスが余計なことを言った?」
「余計な・・・、ことって何ですか?」
彼は頭をもたげて少ししかめっ面をする。
「今、私を探っているの?」
「そ、そういうのでは・・・、なくて・・・。本当に分からなくて・・・、聞いてるんです」
「王女は気性が悪い。意味深長なことを言って人の心を探る鬼オだ。余計な言葉で人の心を覆したり、自分の思い通りに操る才能も普通ではない。君にまでそうしたのではないかと心配で聞いているんだ」
実にわけの分からないことだ。
彼が悪口をこぼしているのに、どうして気分が沈むのだろうか。
マックはリフタンの鉄の塊のように固いふくらはぎの上に足を置く。
「仲が・・・、いいみたいですね」
「・・・え?」
リプタンは自分が聞いた言葉を信じられないというように目を大きく開けて、すぐ呆れたように大笑いをした。
「私がアグネスをどう扱っているか見なかった?一体どうしたらそれが仲良さそうに見えるの?」
「リプタンは・・・、他の騎士と・・・、接しているように・・・、仲がいいじゃないですか」
「・・・」
リプタンは頭をもたげて彼女の表情をじっと見つめる。
嫉妬心をむき出しにしてしまった。
それが恥ずかしくて顔が赤くなる。
リプタンは少し意地悪そうな笑みを浮かべた。
「そう言われると仲が悪いとは言えないだろう。イライラするところはあるけど、実力だけはすごい女性だ。他の王族のように傲慢にも振るわないし」
マックはこわばった顔を隠すために彼の肩に額を押した。
リプタンは彼女の頭頂部に唇をこすりつけ,バラ色に膨らんだ頂点を指先でこすりつける。
「しかし、それだけだ。友好的な感情を持っているけど、アグネスとはこんな風に近づきたいと思ったことはない。それは多分王女も同じだろう」
「リプタンが・・・、それを、な、なんで知ってるんですか?」
「ドラゴン討伐の終盤に至った時、ほぼ1年近く一緒に行動したが、一度もそのような接近はしてきたことがないから」
マックは「そのような接近」というのが正確に何を言っているのか問い詰めたいことをぐっと堪える。
自分の気分だけもっと悪くなりそうな予感がしたのだ。
彼らの間に1年という歳月があるのも嫌だった。
リプタンが悪いことではないことをよく知っているにもかかわらず、お腹の中が蠢いてしまう。
マックの気分があまり良くなっていないことを感じたのか、困った表情をしていたリプタンがふとぶっきらぼうに吐き出した。
「そういうあなたも、ルースと仲がいいじゃないか」
突如飛び出したルースの名前に、さっと驚いて顔を上げる。
リプタンは彼女の顔をじっと見下ろして、何かを確かめるように鋭い口調で話した。
「でも、彼と一緒に横になりたいとは思わないだろう?」
「も、もちろんです!」
そのような言葉自体が侮辱的に感じられ、マックは彼を睨みつける。
まさかいまだにルースのことを気にかけていたのだろうか。
マックは熱を上げて言った。
「わ、私は・・・、誓って・・・、情を犯すつもりは・・・、ありません!ルースも・・・・、絶対にリプタンをう、裏切るようなことは・・・」
「分かっている、ただ例を挙げただけだよ。王女が嫌いなのではなくて・・・どちらかと強いて言うと好意に近い感情を持っているが、彼女にキスしたいという考えは一度もしたことがない」
リフタンは低い声でささやきながら彼女の唇を優しく舐める。
少しさらさらしたあごが顔に擦れる感じが気持ちよかった。
「あなたに感じる感情とは違う」
「私に・・・、感じる感情は・・・、何ですか?」
マックは震える目で彼の男らしい顔を見上げる。
彼らが共有するのは結婚だけ。
自分は彼の人生でほんの一握りを占めているだけだ。
リプタンはじっと彼女の顔を見下ろし、彼女の頭を胸に抱きしめた。
彼の声が頭頂部にため息のように溢れる。
「あなたは私のたった一人の家族だ」
予期せぬ言葉に心臓がドーンと下がった。
マックは息を止め、その言葉の意味を再確認する。
家族。
一度も彼のことをそんなふうに考えたことがなかった。
そうだ。
彼らは家族だった。
彼は自分の夫であり、自分は彼の妻だった。
ふと喉がつまってきた。
その妙な沈黙が気まずかったのか、リプタンが手を下ろして彼女の下腹部を撫でて冗談交じりに付け加える。
「あなたがいつか子供を産んだら二人になるけどね」
「・・・こ、子供を・・・、欲しいですか?」
「できればいいね。赤い髪の毛に大きな灰色の瞳をした小さなやつがもぞもぞしながら這い回ったら可愛いと思う」
「わ、私は・・・、黒い髪を・・・、持っている赤ちゃんだったら・・・、う、嬉しいです」
彼に似た美しい子供を想像するだけでも幸せで舞い上がるようだった。
彼と自分の子供。
アナトールに来た後、慌ただしいことが続いたため、子供について深く考える余力がなかった。
でも、そろそろできてもおかしくない時期ではないか?
マックは朦朧と目を輝かせる。
柔らかくて乳臭い赤ん坊を胸に抱いて、濃い黒髪を掃いてみるのはどんな気持ちだろうか。
バラ色のふっくらとした唇に乳を飲ませるのは?
「ママ」と呼んで胸に抱かれてくれば、どんなに嬉しいだろうか。
期待感で胸の中が気持ちよくざわめいた。
だがそんな幸せな空想は、ふと思い立った思いで粉々になってしまう。
アナトールに来てからほぼ半年。
まだ消息がないのが正常だろうか。
乳母の話によると、子供を持つと月経が止まるという。
それなら、今頃月経が消えてこそ正常じゃないか?
彼が何回かお城を空けたけど、それでもこんなに頻繁に寝床を一緒にしたのに・・・。
子供を持つことができず、とても苦労した母親が思い浮かんで、急に不安になった。
「もう寝よう」
リプタンは腕を伸ばしてランプを消し、布団をあごの下まで押し上げた。
マックは彼の暖かい懐に入り込み、ぞっとするような予感を振り払う。
時期がまだ来ていないだけだ。
結婚して3、4年が経ってから子どもができる夫婦もいると言っていたじゃないか。
きっと、もう少し待てば・・・、いい知らせが来るよ。