未分類

オークの木50話




 

こんにちは、ピッコです。

今回は50をまとめました。

 

 

 

 

 

ネタバレありの紹介となっております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

各話リンク こんにちは、ピッコです。 ネタバレありの紹介となっております。 ...

 




 

50話

 

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 言葉とは裏腹に

マックは猫たちの切ない泣き声にかろうじて目を開ける。

窓から入ってきた明るい光に頭蓋骨が割れるような頭痛が襲ってきた。

彼女はうめき声を上げ、くらくらした頭をつかんだ。

胃が紙やすりをしたようにひりひりし、頭はハンマーで殴られたようにずきずきした。

見慣れない不快感に気が付かず精一杯顔をしかめると、目の前に水がいっぱい入ったコップが突然突き出た。

マックはゆっくりと頭をもたげる。

リプタンは完全に元気を取り戻した子猫3匹を足にぶら下げ、陰鬱な顔で彼女を見下ろしていた。

「お目覚めになったか、酔っばらいのお嬢さん」

マックは押し寄せる昨夜の記憶にこわばり肩を固める。

リプタンは彼女の手にコップを持たせ,不安になるほど優しい声で話した。

「昨日はとても見ごたえがあったよ。私の妻が、あんな酒飲みだとは知らなかった」

「そんなことないですよ!き、昨日みたいにお酒を飲むのは・・・、は、初めてです」

マックは忍び寄る声で答えた。

懐疑に満ちた視線で見下ろしていたリプタンがベッドに腰をかけ、性質を殺そうとするように深く息を吸い込んだ。

そんな行動にマックはさらに気を失った。

彼女は冷たいコップを両手で握りしめ、鏡を通して自分の姿を見る。

昨日ルディスが着飾ってくれた髪は乱れていて、あの素敵なドレスはどこへ行ったのか、薄いシュミーズ一枚を羽織って、浮浪者のような格好をして座っていた。

マックはむくんだ顔をそっとシーツで覆う。

リプタンの優しい声は叫び声よりもはっきりと耳元に響いた。

「はっきり言っておくが、マキシ。もう一度だけ、気の散る男たちの間で酔っている姿が私の目に付いたら、しばらく歩けなくしてくれるだろう」

マックは驚いてはっと顔を上げる。

彼女は彼が自分を脅したというよりも、その言葉がそれほど恐ろしくないことにもっと驚いた。

マックは彼が自分を傷つけないと固く信じているのだ。

「私が何をどうしようとしているのか分かる?」

彼は怖がっている様子を見せなかったので、鳥肌が立つほど優しくうなり声を上げた。

マックはとても怒っているようだったので、すぐにうなずいた。

「に、二度と、あ、あんなことしません」

「考えとしては今すぐ・・・」

彼は不満に満ちた目で彼女の悲惨な姿をじっと見下ろして、すぐにがっかりしたため息をついた。

「下女に二日酔いの解消にいいハーブティーを出してくるように言うから、休むようにして。小言は夕方に続けるよ」

「リ、リプタンは・・・」

「私は練兵場で優先的に処理しなければならないことが少しある」

リプタンはぞっとするほとゆっくりと話し、席から飛び起きた。

それから、ブーツにくっついている猫たちを取り外して、ベッドの上に乗せて、
大股で外に出てしまった。

マックは不満そうに泣いている猫たちを急いで抱き上げた。

高音の泣き声が脳を突く針のように感じられたのだ。

彼女が怒った猫たちをなだめている間、ルディスがティーポットの入った盆を持って部屋の中に入ってきた。

「お体はいかがですか、奥様?」

「ええ、大丈夫です。た、大したことないです」

本当は酷い気分だったが、昨日の醜態を見せただけでは足りず、二日酔いを患う情けない姿まで見せることはできない。

マックは上品さを保とうと、ほかほかのお茶で痛みを和らげた。

「お風呂を用意してきます。熱いお湯で体を洗って、シェフの特製卵粥でお腹を落ち着かせれば一層良くなるでしょう」

ルディスは彼女の状態に気づき、優しく勧める。

マックはメイドの思慮深い言葉に安堵し、すぐにうなずいた。

「そ、そうします」

しばらくすると、お湯がいっぱい入った浴槽が部屋の中に入ってきた。

マックはさっさと服を脱いで浴槽の中に入る。

湯気が上がってくるお湯ですっきりと体を洗い、ハーブが入った美容水で、茂みのように膨らんだ髪を綺麗にして、一層気分が爽快になった。

彼女はお湯がぬるくなるまでお風呂に入り、サラサラの新しい服に着替える。

ルディスは身支度を終える時間にちょうど間に合うように大麦、ジャガイモ、タマネギ、卵を入れてとろとろと煮たお粥を持ってきた。

彼女は香ばしいおかゆで朝食を食べた後、火の前に座って本を開く。

ハーブティーの効果があったのか、頭痛がきれいに消えて無理なくページをめくることができた。

「邪魔にならないように猫を連れ出しましょうか?」

一枚一枚集中してページをめくる彼女の様子を見てルディスが注意深く聞いてきた。

マックは暖かい部屋から小動物を追い出すのが嫌で首を横に振る。

「いいえ、大丈夫です。お、おとなしく、しているので、構わないよ」

すると、ルディスは安心したように微笑んだ。

「毛の黒い猫はとてもおとなしいです。一方、白い猫と縞模様のあるやつは茶目っ気が酷いようです。気力を取り戻すや否やあちこちをうろつき始めました。体が大きくなれば、きっと立派なネズミ狩人になるでしょう」

彼女の優しい表情にマックはひそかに安堵のため息をついた。

もしルディスの仕事を増やして迷惑をかけたのではないかと心配したのだ。

しかし、ルディスはすでに猫3兄弟に夢中になっている様子だった。

「あ、昨日名前をつけ、つけてました。く、黒い猫はロイ・・・、し、白い猫はローラ、灰色の縞横拶の猫はロ、ロンです」

彼女が覚えようとするように目を細めて猫たちの名前をつぶやいて、楽しい表情で話した。

「みんなに教えてあげなければなりませんね。みんな新しい家族が気に入った様子です。特にシェフの期待がとても大きいです。一刻も早く育ってネズミ捕りで活躍してほしいと、このように別食まで用意してくれました」

ルディスは床に置かれた平らな器を指差して言った。

あごの低い丸い木の器の中には、細かく刻んだ白い魚の身と牛乳がお粥のように混ざっている。

マックは猫たちが皿に鼻を打ちながらたくましく食事をする姿を微笑ましく見守ってから、再び本を読むことに集中する。

もうこの一冊だけやっつければ、ルースが渡した.本はすべて読破したことになる。

マナ親和力を向上させる訓練はあまり進展がなかったが、着実に勉強したおかげで、魔法の概念や原理については少しだけ理解することができた。

彼女は革のポケットから新しい羊皮紙を取り出し、本の最後の章を開く。

ところが、お腹をいっぱいにしてかごの中で静かに昼寝をしていた白い猫ローラがこっそりと外に出ると、彼女のスカートをひっかきながらいたずらをし始めた。

その姿を可愛く眺めながら背中を掻いてくれたのもつかの間、猫が夢中になり始めると、そうでなくてもびっしりとしてよく入ってこない文字が頭の中でバラバラになってしまう。

マックは困った顔で猫をちらりと見た。

気が利くルディスが素早く猫を受け入れてかごの中に入れたが、心痛が走った猫は泣き声を止めなかった。

「やっばり猫を外に出しますね」

「いいえ、違います。あ、そうじゃなくても、ちょうど図書館に行こうとしたところでした。わ、悪いけどちょ、ちょっとだけ彼らの面倒を見てくれる?」

「心配しないでください。牛乳をちょっと飲ませたらすぐに大人しくなるでしょう」

ルディスは猫に優しく触れ、鍋を取り出し暖炉で牛乳を温めた。

マックはローブを羽織った後,本を持って出ていく。

 



 

冷たい寒気が流れる廊下を通って図書館の中に入ると、いつものようにルースがマックを迎えてくれた。

「こんにちは、奥様。一晩で背は伸びましたか?」

彼は指定席でぼそほそと頭を上げ、ニヤリと笑う。

戸惑った表情をしていたマックは、昨夜の酔っばらいを思い出して顔を赤らめる。

「しゅ、淑女のま、間違いをあえて言及して恥じらいにす、するのは・・・、れ、礼儀に反するこ、行為です」

「世の中のどの婦人が一人で一升のお酒を飲無のですか」

マックは不信に満ちた表情で彼をにらみつけた。

「嘘をつ、つかないでください。私がそんなた、たくさん飲んだはずがないじゃないですか」

「エールだけで半升召し上がりました。ワインまで合わせるともっと多いと思います。そのようにお酒を飲んでも元気なので、生まれつきの酒飲みのようです。ニルタ卿がとても口が渇くほど褒め称えていましたよ」

「いいえ、違います。そ、そんなはずが、な、ないですよ。け、今朝だけでもあ、頭がどれだけ痛かったことか・・・」

「でも、お元気そうですよ?」

「ハ、ハーブティーを飲んだからですよ!あの、あの・・・、さ、酒飲みでは、ち、違います!」

マックは声を荒げながらきっばりと否定した。

貴婦人に酒飲みとは、それ以上に恥ずかしい呼び方はない。

幸いなことに、ルースはこれ以上しつこくからかうつもりはないように肩をすくめて机の前に座った。

「まあ、奥様の酒量は後でまた調べる機会があるでしょう」

「し、調べる機会なんてありません!もうそんなにの、飲みません!」

「はい、はい、分かりました。勉強しに来られたんですよね?お座りください。見てあげます。本はどこまで読まれましたか?」

マックはしばらく不満そうな目で彼をにらみつけ、力なく机の前に座る。

「こ、これ1冊だけ読めば終わりです。ぜ、全部理解できるのはち、違うけど・・・」

「かなりたくさん読まれたんですね。どの部分が理解できないのかおっしゃっていただければ、できるだけ簡単に説明させていただきます」

マックはポケットから羊皮紙の束を取り出した。

ルースはそれを手に取って目を通し、嬉しそうな顔をする。

「何日間も一生懸命勉強されたんですね。意欲が溢れているようでとても素晴らしいです」

「よ、読みながら、し、知らない部分をか、書いておいただけです」

珍しい彼の賞賛に照れくさそうな顔でつぶやくと、ルースが咳払いを一度して、再び厳しい顔に戻った。

「いいですよ。それでは説明します。しっかり集中して聞いてください」

マックは羊皮紙、ペン、インクの瓶を素早く取り出した。

準備をしっかりする彼女の姿を眺めながら微笑んでいたルースが、やがて説明を始めた。

マックは彼の言葉を漏れなく書き留めていく。

図書館の中にはしばらく、ルースの単調な声とペンの音が響き渡った。

勉強が長くなると、マックは下女に図書館で簡単な食事をするように頼んだ。

彼らは火鉢のそばに机を置き、パンとスープを食べながら質問と回答を交わした。

マックは、片手にはパンを握ってゆっくりと噛みながら、もう一方の手では忙しく彼の説明を受けて書き続ける。

ルースは時々興奮して難しい言葉を吐き出し、彼女が繰り返し質問すると、一つ一つ説明してくれた。

意外にも彼は忍耐強く、彼女が一気に理解できなくても焦ったり責めたりしない。

そのような寛大な態度に、マックも緊張を緩め、自由に質問を投げかけた。

「世界の塔にいた時を思い出します」

ふと、ルースが思い出に浸ったような顔でつぶやいた。

ページをめくるとき、マックは不思議そうな目で彼を見た。

「せ、世界の塔が嫌で、で・・・、出てきたんじゃないですか?」

「世界の塔の規律が嫌だったのであって、それ自体が嫌だったわけではありません。学究熱にあふれる魔法使い数百人が一ヵ所に集まって技術を磨くことができる場所は世の中にまたとありませんから」

彼の声に込められたかすかな懐かしさに、マックは好奇心を感じた。

ノルヌイは部外者の出入りが極めて制限された未知の島だ。

港には南大陸の商人たちと西大陸の商人たちが慌ただしく行き来していたが、世界の塔に出入りできる人はひたすら塔で許された魔法使いだけ。

その秘密に魅了された無数の吟遊詩人たちがノルヌイに関する歌を大陸全域のあちこちに広めた。

マックもやはり吟遊詩人たちの歌を聞いて世界の塔に関するあれこれと神秘的な夢想に浸った経験があるので、ルースの話に少なからず興味がそそられた。

「ま、魔法使いたちは皆、世界の塔で・・・、べ、勉強するのですか?」

「ご本人がアナトールで魔法を勉強されているのに?」

ルースは馬鹿げた質問をするなと言わんばかりに首を横に振る。

「属性魔法を身につけるためには必ず世界の塔に入って修練しなけれはなりませんが、奥様が学ぼうとする普遍魔法は、あえて世界の塔まで行って学ばなくてもいいです。傭兵団で活動する多くの放浪魔法使いのほとんどが、そのような非所属魔法使いです」

「ぞ、属性魔法?」

不慣れな用語に首をかしげると、ルースがまだ説明していないのではないか、と後頭部を掻いた。

「魔法学概論にもあるように、マナは風と水、大地、火と光、そして闇・・・。このように計6つの属性で構成されています。この6種類の気運が完全なバランスを保っているのがマナなら・・・、ここで一つの属性だけを抽出して体内に蓄積した、とても純度の高い魔力を属性魔力といいます。そしてこの純粋な魔力を利用した魔法が「属性魔法」です。反面、今奥様が学ほうとする「普遍魔法」は一つの属性の魔力ではなく多様な属性が入り混じっている魔力を利用します」

「た、多様なものがもっといいんじゃないですか?いろいろなぞ、属性がまんべんなく混ざった魔力を利用すればもっと、い、いいと思うんだけど・・・」

「そうではありません。魔力は不安定なほど強力な力を発揮します。ある一つの属性に重点を置いた魔力は、一般的な魔力の10倍に逹する威力を出します。たとえば、ここに6つのレンガがあるとします。このレンガ6つを床に均ーに並べておくと、散らかしにくくないですか?これは非常に安定した状態なんです。しかし、このレンガを片方に重ねて積み上げると簡単に倒すことができます。この前にも申し上げたように、魔法とは自然界にこのような不協和音を作り出すことです。バランス状態を崩し、よく計算された混乱を作り出すのがまさに魔法です」

マックはこの前聞いた魔力とマナの違いについての説明を思い出し、うなずいた。

『「魔力」は自然の法則に逆らおうとし、「マナ」は自然界の法則に従おうとする』と言ったよね。

体の中に蓄積した魔力がある一つの属性に傾いていれば、魔法の威力もさらに大きくなるという言葉がぼんやりと理解できた。

ルースはローブの袖をまくり上げて手首の内側を見せる。

血筋の通った白い肌の上には、赤いインクで描いたような小さな魔法式が刻まれていた。

 



 

「属性魔法を身につけるためには、世界の塔でこのような魔法式を体に授けられなければなりません。私はこの魔法式を通じて純度の高い風属性のマナを体内に蓄積しています」

マックは彼の手首を見下ろしながら、密かに期待を込めて尋ねた。

「わ、私もこういうのを・・・、か、体に刻むと、魔法をま、学びやすくなるのではないでしょうか?」

「この魔法式を刻むことができるのは、世界の塔の頂上に住む高位の魔法使いたちだけです。そして、彼らに速成魔法式を授与されるためには、少なくとも4年間は世界の塔の中に居住して教育を受けなければなりません。その間はノルヌイから出ることができません」

マックはがっかりした顔で肩をすくめた。

その姿を見下ろしながら、ルースが舌打ちをする。

「最初から理論の勉強を始めたばかりのひよこが属性魔法とは何を言っているのですか。基本的な魔法式から身につける心配でもしてください」

「た、ただ・・・、き、聞いてみただけじゃないですか」

マックは恥ずかしそうな顔でブツブツ言いながら本に鼻を突っ込んだ。

ルースはニャリと笑いながら、そのそばで本を何冊かめくって、明かりを灯すために立ち上がった。

まだ早い時間なのに空に白く雲がかかって図書館の中に薄暗い薄暗い影がさしていた。

彼はトングで火鉢から小さな火種を取り出し、燭台とランプに火をつける。

マックは目をこすってしばらく本を読み、夕方に間に合うように席を立つ。

「夕食は食堂で取るつもりですか」

ルースは彼女が本や羊皮紙の世話をしているのを、見て意地悪そうに尋ねた。

マックは首を横に振る。

昨日、酔っばらったのが恥ずかしくて、騎士たちと顔を合わせる気にならなかった。

「へ、部屋でた、食べるつもりです。ほ、本ももっと読んでみたいし・・・」

「大きな間違いもないじゃないですか。本当の酔っばらいをご覧になっていないようですが、ちょっと突拍子もないお喋りをしたことぐらいは酔っぱらいにもなりません」

すぐに彼女の言い訳を見抜いたルースはぶっきらぼうに言った。

「この機会に騎士たちとの壁を壊してみてはどうですか?みんな結構面白いと思ってるみたいだけど・・・」

「わ、私は・・・、お、おもしろくうけて、し、したくないです・・・」

口ではそう言ったが内心興味深かった。

本当に自分のこと悪く思わないのかな。

心の中で葛藤していると、ドアが開く音が間こえてきた。

マックは驚いてドアの方を向く。

リプタンが武装も解除しない姿で大またに図書館の中に入ってきた。

「こんな時間まで何してるの?」

マックは彼のぶっきらほうな質問にびくっとした。

まだ怒りが収まっていないのか、顔色を窺っていると、ルースがぶっきらぼうに答えた。

「図書館で何をしていたのかも分からないのですか?」

リプタンはしかめ面をして机に目を通す。

散らかっている本の横には、お昼に空けたお皿とお盆がそのまま残っていた。

彼は眉間にしわを寄せ、呆れたように首を横に振る。

「下女たちが言うには昼からここに閉じこもっていたというが・・・、まさか一日中本を読んでいたのか?」

「カリプス卿が一日中剣を振り回すように、一日中本を読む人もいるのです」

彼の生意気な口調にリプタンの顔にかすかな不快感が浮かぶ。

マックは尋常でない雰囲気の中、慌てて本を手にした。

「た、たった今、起きようとしていたところでした・・・」

リプタンは素早く本を彼女の腕から受け取った。

「行こう。部屋に食事を用意するように言ってある」

「食堂で召し上がらずにですか?」

ルースの質問にリプタンは肩越しに斜めに視線を向けた。

「みんな騎士団の宿舎に散らばっている。身動きもできないと大げさに言って、使用人たちに食べ物を持ってくるように伝えておいた」

「何をすれば残っているのが体力しかない人間たちが食堂にも来られないということですか?」

ルースは身震いしながら尋ねる。

「奥様にお酒を飲ませたことで、あまりにもけちけちしているんじゃないですか?」

マックは驚いた顔でリプタンを見上げた。

まさか自分が酒に酔ったことのために、騎士たちを厳しく叱ったのだろうか。

マックは自分のせいで酷い目にあった騎士たちに申し訴なくうなだれた。

しかし、リプタンは鼻で笑う。

「酒に酔ってへろへろするのを見ると、気が抜けてもしっかり抜けたようで、厳しい訓練をさせただけだよ。」

「さようですか」

ルースは皮肉たっぷりに話し、ため息をついた。

リプタンは彼女の手を取って図書館を出る。

マックはルースに挨拶をして。涼しい廊下を彼について歩いた。

「あ、まだ・・・」

彼女は大股で歩く彼を追いかけるためにほとんど飛び跳ねるようにしてどもった。

彼が立ち止まり、彼女の方を振り返る。

マックは注意深く話し続けた。

「ま、まだ怒ってるんですか?」

「・・・」

「もうお、お酒をあんなに・・・、た、たくさん飲みません。あ、あんなに酔っばらうとは私もし、知りませんでした」

「もう怒ってないよ」

リプタンはぶっきらぼうに話し、再び足を運んだ。

彼女は静かにリフタンに沿って歩き続け、彼の顔をちらりと見る。

言葉とは裏腹に、彼の唇は不快感をこらえるように固く結ばれていた。

何も言わずに廊下を歩いていたリプタンが階段に至ってから突然吐き出した。

「図書館にいるたびにあいつと一緒にいるの?」

「え?」

突然の質問にマックは怪訝な目で彼を見上げ、すぐにゆっくりとうなずいた。

「ル、ルースは・・・、ほとんどの時間を図書館で過ごすようです。ほぼいつも顔を合わせるんですよ」

マックは、彼が塔を置いて図書館を住居に使っているという事実は口を閉ざしてあげることにした。

その程度の義理は守ってくれなければならないようだった。

リプタンはかすかにしかめっ面をして、ポンと吐き出すように尋ねる。

「気を悪くしたりはしないの?大蛇のようなやつだから、面倒なことに人を引き込もうとする。変な実験に使ったりもするし・・・」

「わ、煩わしくする、というのはわ、私の方ですから。ちょっとだけ、意地悪なところがある人だけど・・・、わ、私がよく分からないことを・・・、あ、あれこれお、教えてくれました。し、城に来て、間もない時も・・・、い、いろいろと、たくさん手伝ってくれたし」

「・・・」

マックは彼を取り巻く奇妙な緊張感に当惑する。

リプタンはルースを嫌うのだろうか。

お互いに向かって何かと鋭い言葉を浴びせあっても、彼らの間には基本的にしっかりとした信頼が流れていると思っていたのに・・・。

 



 

オークの木51話 こんにちは、ピッコです。 今回は51話をまとめました。 ネタバレ...
各話リンク こんにちは、ピッコです。 ネタバレありの紹介となっております。 ...
【影の皇妃】まとめ こんにちは、ピッコです。 「影の皇妃」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となっております。 ...
【ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜】まとめ こんにちは、ピッコです。 「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。 ネタバ...
【夫を味方にする方法】まとめ こんにちは、ピッコです。 「夫を味方にする方法」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となってお...