こんにちは、ピッコです。
今回は51話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
51話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 言葉とは裏腹に②
不快感のあるリフタンの表情に、マックはどうしていいか分からず、あちこち目を丸くする。
ほとんどの部屋のドアに着くとリプタンが突然噴き出した。
「・・・あなたは頭のいい男が好きなのか?」
その質問を聞いて初めて、彼女はリプタンが自分の妻が浮気をした男と一緒にいることを快く思っていないことに気づき、身震いする。
ルースをそのような方向に、それほど意識したことがなかったので、夫の立場では楡快でない気分になるという考えさえできなかったのだ。
マックはもしかしたら貞節が疑われているのかという心配で真っ青になって飛び上がった。
「す、す、好き、好きじゃないです!も、もちろん、そ、尊敬していますけど・・・!そ、そういうのと、ち、違います!ル、ルースはふざけて、い、いつも私をい、虐めて・・・!も、もちろんた、助けてくれるのはありがたいし・・・、し、知らないことがなくて・・・こ、困ったことがで、できたときの、頼りになりますけど・・・。な・・・、何と言うか・・・、ほら、小言が多いから・・・、う、乳母みたいなか、感じっていうか・・・、えっと、冷たい、おせっかいなんです・・・!だから・・・、その・・・、そういうほうでは私は、全然・・・、私はリ、リプタン、あ、あなたのほうが・・・!」
潔白を主張しようと必死に騒いでいたマックは、はっと口をつぐんだ。
リプタンがぼんやりと彼女を見下ろしていた。
マックはフナのように口をパクパクさせて頭を下げる。
鏡を見なくても顔が真っ赤になったという事実が分かった。
耳まで火照っている。
長引く沈黙に耐え切れず、マックはしどろもどろに話を続けた。
「だ、だから・・・、あ、あ、あなたの方が・・・、た・・・、た、頼もしいし・・・、う、馬に乗るす、姿は・・・、か、カッコよくて・・・、や・・・優しいあ、あ・・・、あなたの方が・・・」
「あなたは本当に・・・」
ドンという音に驚いてマックは頭をもたげる。
リプタンがドアに頭をぶつけていた。
彼は額にもたれかかり、深いため息をつく。
「ここでどれだけ私をおかしくすれば気が済むのか」
「は、はい?」
リプタンは細目で彼女をにらみつけ、彼女の手をつかんでさっとドアを開けた。
マックは彼の腕に引かれて部屋に入る。
彼はドアを後ろに閉め、彼女をさっと持ち上げて壁に押し付けた。
マックは驚いて口を開いた。
その瞬間を逃さず、リプタンが唇を重ねて舌を中に押し込む。
彼女は息をすることも忘れて彼の体にしがみつく。
「はあ・・・」
熱病を患うような呻き声に、全身に鳥肌が立つようだった。
その瞬間、リフタンの肩越しに下女たちの顔が目に入る。
マックは心臓が止まったような気持ちで彼らをぼんやりと見つめた。
食卓の上に夕食を用意している途中だったのか、皿を食卓に載せ、燭台に火をつけた姿勢のまま、3人の下女が石のように固まっていた。
彼女は悲嗚を飲み込みながら、首に顔をこすりつけているリプタンの背中を激しくパンパン、と叩いた。
「リ、リ、リプタン・・・!」
彼はちらっと後ろを振り向くと、彼女を抱きしめたままドアから身を引いた。
それから顔色一つ変えずに平気で言った。
「やるべきことが終わったら出て行け」
マックはその場で羞恥心で死ななかったのが不思議なほど真っ赤になる。
文字通り、熟したスモモのように大きくなった女主人の顔と無表情な領主の顔を交互に眺めていた女中たちが、ようやく目を覚ましたように、どっとドアを開けて外に出た。
礼儀正しくも彼らは丁重にあいさつまで残して。
「それでは、よ、よい時間をお過ごしください」
彼らは邪魔になるかもしれないと、猫が眠っているかごを持っていくことも忘れなかった。
リプタンはマックに劣らず顔が赤くなった下女たちにうわの空で返事をしてドアを閉める。
そして、再びキスを浴びせ始めた。
信じられなかった。
マックは泣きながら彼の顔を押し出した。
「も、もう・・・!げ、下女たちのか、顔をどうやって見ればいいのですか!?」
「いいじゃないか、下女たちなんだから。気にするな」
リプタンは自分を押しのける彼女の腕をいらだたせるかのように片づけ、襟元に小さなキスを浴びせ続ける。
このように当惑した瞬間にも、そのような気がするというのが呆れるほどだった。
マックは夫の唇を手のひらで塞ぎ、頭を後ろに引く。
「リ、リプタンはし、城に、た、滞在するじ、時間は短いですが・・・、わ、私は彼らとい、一日中、い、一緒にいるんです・・・!」
「どうせルースといる時間が一番長いじゃないか」
沈んだ声にマックはギョッとした。
リプタンが彼女の目の前に顔を突きつけ、恐ろしいほどの優しい笑みを浮かべていたから。
獣のような真っ黒な瞳が光っているのを見て背筋がゾッとする。
マックは乾いた唾を飲み込んだ。
「そ、それは・・・、ち、違います。下女たちと一緒にいる時が一番長いです」
「そうなの?」
「そ、そうです」
「とにかく、夫の私があなたと過ごす時間が一番少ないということ、不当だと思わない?」
「そ、それは・・・、わ、私のせいじゃ、な、ないじゃないですか」
リプタンが城を去ることが頻繁なためだ。
もちろん領主として、騎士として、彼が引き受けた責務が多いということはよく知っている。
それでも自分でも知らないうちに彼を責めるような口調で吐き出してしまった。
気分を害したのではないかと顔色をうかがっていると、リプタンがため息をついて大股で歩いて彼女を食卓の前に降ろしてくれた。
「私も分かっている。私の話は、一緒に過ごす時間が少ない分、私がそばにいる時は他の人のことは気にしないでほしいという意味だ」
リプタンは彼女の両手を握りしめ、唇に近づける。
彼がこのように強烈に凝視してきた時には、まったく考えということができなかった。
マックは顔をピンク色に染め、バカのようにうなずいた。
彼の唇が薄い笑顔で細長くなる。
彼が笑ってくれたら、恥ずかしいことは何だと思ってしまった。
仕方なく、彼女はついて笑ってしまう。
冬が深まるにつれ、リプタンが城に留まる時間が長くなる。
彼は早朝になると練兵場に出て衛兵たちを訓練させたり、周期的に騎士たちを率いて城壁周辺の魔物を討伐したりするなど忙しい時間を過ごしても、夕闇が消え始めれは城に戻り彼女と一緒に夕食を食べた。
顔も見にくかった秋に比べるとゆったりとした時間。
マックは昼にはルースが渡した本を読んだり魔石を握ってマナを感じる訓練をし、夕方には下女たちの助けを受けて綺麗に着飾って食卓の前に座ってリフタンと共に甘くて余裕のある時間を過ごした。
そのように共にする時間が長くなったため、自然に夫について知っていく機会が多くなっていく。
まず、リプタンは素朴な好みを持っていた。
彼は.武装をしない時は柄のない単色の服を好んで着ており、ありふれたブローチや宝石で飾った腰帯一つ体に当てることがない。
単に贅沢に慣れていないからそうではなかったようだ。
マックは貴族の男性が着ている体にフィットする絹のズボンや床に引きずり込まれる華麗なチュニック、腰を膨らませた服や鼻が長くて尖った靴、羽毛で飾った帽子のようなものを非常に滑稽に思っていることに気づいた。
ある日、彼女が裁縫師夫婦が作ってくれた羽毛のついた帽子を渡したところ、固い顔で「あなたが望むならかぶって歩く」と悲壮に答えたことも。
マックは本当にぞっとするような表情で帽子をこっそり隠してしまった。
リプタンは極端なほど実用性を重視する人なので、意味なくお洒落をすることを嫌っているようだった。
彼は丈夫で活動的な服装を好み、面倒なことを嫌がり、召使いたちにも必ず必要な要求以外にはしなかった。
酒と油っこい食べ物を楽しんだが、普通の貴族のように手に入らない特別食を要求したり、不平をこぼすこともない。
長い間、騎士として活動してきて、効率を追求する性格が根強く定着したようだった。
しかし、リプタンのそのような質素な趣向は、自分に限っては適用されなかった。
彼は彼女が派手で美しい服でおしゃれをするのが好きで、自分が買ってくれた宝石で飾ることを望み、下女たちの手厚い市中で豪華に過ごすことを願っている。
マックは、彼が公爵の娘を養っているという事実からある満足感のようなものを得ているのではないかと推測した。
リプタンは貴族たちの虚栄と虚礼虚飾を軽蔑するような態度を取りながらも、自分には徹底的に貴族的な生活を保障したいと思い、マックは彼の気代を満たすためにも貴族的な姿を見せようと努めた。
そうして妹のツンとして優雅な態度を中途半端に真似するのが全てだったが、幸いにもリプタンは不思議な点に気づいていない。
しかし、それも時間が経てばどうなるか分からない。
机の前に座って幾何学の基礎理論について勉強していたマックは、ふと目を細めた。
春が来れば貴族たちがアナトールを訪問してくるだろうし、彼らを接待しながらリプタンは気品溢れる貴婦人たちと自分の妻の間で違いを発見することになるかもしれない。
マックはいらだたしく机を指先で叩いて、淑女の徳目や素養についても勉強しておいた方がいいのではないかと悩んだ
彼女は大きな宴会に出席した経験がない。
今すぐ舞踏会でも主催することになれば、恥を避けることはできないだろう。
「集中しましょう」
反対側に座っていたルースは、爪のカチカチという音が気になるのか、眉をひそめて厳しく言った。
ルディスは火鉢の上に真鍮製のやかんを置き、お茶を沸かしていたが、彼の無礼な口調に目を伏せる。
しかし、ルースは気にもしなかった。
「この本さえ読めば基礎理論の勉強は終わりです。もう少し頑張ってください。魔法式を一つでも身につけるには、基礎理論の勉強がしっかりしていなければなりません」
「が、頑張ってます。ただ・・・、ちょ、ちょっと・・・」
もぞもぞという言葉にルディスがすぐショウガとハーブ、蜂蜜を入れて沸かした甘いお茶を机の上に置いてくれた。
「奥様、お茶でもとうぞ」
「あ、ありがとう」
ルディスはマックに向かって優しい笑みを浮かべ、今度はルースの前に無愛想な顔でグラスを置く。
マックは女中の冷たい態度に目を転がした。
リプタンがルースと二人きりでいることを気にしているという事実に気づいてから、マックは図書館に来る時は必ずルディスを連れてきている。
ところが、下女は魔法使いがあまり気に入らない様子だった。
ルディスはしばしばこのようなやり方でルースの礼儀のない態度に対して、よく気を這ったりした。
もちろん、その都度ルースはあっさりと無視しているけど。
「マナを感知する訓練はうまくいっていますか?」
「あ、まだ・・・、あ、あまり進展はありません」
マックは両手でコップを持ったまま首を横に振る。
湯気が立ち上る熱いお茶をふうふう吹いて一口飲んだルースが、何かをじっくり考えるように目を細めた。
「先天的にマナの吸収率が高いようなので、すぐ逹成できると思ったのに・・・、意外と時間がかかりますね」
「わ、私の吸収率はた、高い方なのですか?」
「この前、奥様の手の平の中に私の魔力が吸い込まれるのを見たじゃないですか。親和力はもちろん、吸収力まで高いという意味です。普通はその程度まで魔力管を発逹させるには、とても幼い頃から念を入れなければなりません」
魔力菅とは、マナを受け入れるために体の中に存在する細い通路を意味している。
マックは目を細め、本で読んだ内容を反剪した。
「普通は・・・、ど、どんな風に魔力管をは、発逹させるのですか?」
「上級魔法使いが弟子の体に周期的に魔力を注入してくれます。子ともの頃から魔法に繰り返し浴びせると、自然に魔力菅が広がり、マナを吸収しやすい体質に変わります」
じっとうなずいていたマックは、ふと思い浮かんだ思いで顔色を固めた。
まさか自分のマナ親和力は幼い時から繰り返し治癒魔法を受けてきたために生じたのだろうか。
マックは自分の手のひらを真剣に見下ろした。
父親の残酷な訓育を通じて得た才能かも知れないと思うと、非常に忌まわしい気持ちになってしまう。
「そんなに焦る必要はありません。ずっと練習すれば、少しずつ良くなるでしょう」
彼女の暗くなった顔色を見て、ルースは慰めるように言った。
マックはわざと笑みを浮かべて見せる。
どんな顔をしていても何の関係があるのか。
結局は使い方次第だ。
彼女は気を引き締めて再び理論書を勉強し始める。
どれだけ本のページをめくったのだろうか、がたがだと、ドアが開く音にマックは首をかしげる。
リプタンの姿が見えた。
彼がこんなに突然図書館に来て彼女を訪ねたのは一度や二度ではないので、ルースはうんざりするため息ばかりついた。
「もう訓練を終えたんですか?」
「気温が下がったせいで長時間訓練をすると、むしろ衛兵の体調が悪くなる。こんな日くらいは息をつく暇を与えないと」
リプタンは彼の質問に生返事をしながら彼女の後ろに近づき、頭を下げる。
マックは額に触れる冷たい唇の感触に頬を赤く染めた。
彼は優しく彼女の髪を撫でながら囁く。
「今日も朝からここにこもっていたのかな?」
「朝、ちょ、ちょっと、馬小屋に寄って・・・」
もぞもぞという言葉に、彼の顔に不満の色が浮かんだ。
リプタンは眉間にしわを寄せながら呟く。
「寝室にいる時よりここで過ごす時間の方が長いんじゃない?」
「そ、そんな、そんなことないですよ・・・。じゅ、十分に・・・」
少なくとも彼が城に戻ってからは寝室で過ごす時間がはるかに長かった。
ほぼ毎晩、彼の胸に抱かれて過ごす時間を思い浮かべながら顔を赤く染めると、リプタンが低いうめき声をあげて彼女の肩を両腕でしっかりと抱きしめる。
「私は十分ではないのだけど?」
「どうか、愛情行為は二人きりの時にしていただけませんか?」
その姿を見てルースがうんざりした。
「到底見てられないですよ」
「お前が目を向けたらどうだ?」
「ご主人様がお部屋に戻ったらどうですか?場所をわきまえるくらいの分別は発揮してほしいですね」
もっともな指摘にマックは頭を上げることができなかった。
燃えるように火照る顔を包み込みながら首をすくめると、リプタンが軽く舌打ちをして彼女の腕を引っ張る。
「部屋に戻る。起きて、マキシ」
「リ、リプタン・・・」
マックは机をぎゅっと握りしめて持ち堪えた。.
このまま彼について行き、寝室に向かうほど厚かましくはない。
「きょ、今日すべきことはも、もう終わったんですか?」
「領内の巡察は他の騎士に任せた。早く起きないで何してるの?」
リフタンが彼女の腕を早めて引っ張ると、マックは机をもっと強くつかんだ。
彼と一緒に過ごす時間は楽しくて幸せだったが、白昼からベッドに閉じこもっているにはあまりにも恥ずかしかった。
下男たちが何を悪く言うだろうか。
彼女は当惑してあちこち目を丸くして本を言い訳にする。
「あ、まだ・・・、よ、読んでないのに・・・」
「後で読んで」
「きょ、今日で・・・、ぜ、全部読もうとしたんですよ」
リプタンは不満そうに眉をひそめた。
「何をそんなに夢中に読んでいるんだ?」
彼は彼女の目の前にある本に目を通す。
リプタンが開いた本棚には、あらゆる複雑な図形と古代語がぎっしりと詰まっていた。
彼はそれに目を通し、眉間にしわを寄せる。
「これは・・・、まさか魔法でも学ぼうとしているの?」
「知りませんでしたか?数週間前から私に魔法を習っていらっしゃるじゃないですか」
ページをめくっていたリプタンがさっと頭をもたげた。
「え?」
彼の反応にルースは不思議そうな顔でマックをちらりと見る。
「まだ申し上げていなかったのですか?奥様に魔法の才能があるようで、少しずつ教えているのですが・・・」
「誰が勝手に?」
リプタンは突然本を乱暴に置いて激しく叫んだ。
彼の突然の急変にマックは肩をすくめた。
本当に魔法を学べるかどうかあまり自信がなくてまだ言わなかったが、当然喜んでくれると思ったのだ。
魔法使いは非常に有用な財源ではないか。
それに最近は魔法使いの数が急激に足りず、下級魔法使いでも大変な待遇を受けていると聞いた。
しかし、リプタンは少しも喜んでいる様子ではない。
彼が追及でもするかのように険悪に吐き出した。
「どうして私に前もって言わなかったの?」
「それは・・・、卿がゴブリン討伐に行っていた時のことなので・・・」
ルースも彼の反応に当惑したのか、珍しく言葉を濁す。
「そんなに大変な魔法を教えようとしているわけではありません。奥様が簡単な防御魔法や治癒魔法だけでもできるようになれば、アナトールに大いに役立つのではないでしょうか」
「助けなんていらない!」
マックは裾をしっかりと掴んだ。
ルースを恐ろしく睨んでいたリプタンが彼女の顔が白くなったのを見て、小さく悪態をつく。
彼は彼女の肩に抱きついて、穏やかな声でなだめるように言った。
「私はあなたに何かの助けを受けたくて連れてきたのではない。私は・・・、ただあなたが安らかに過ごしてほしくて。魔法は大変なことだよ。体力もかなり消耗するし・・・」
「き、危険なことをす、するわけではありません・・・。あの・・・、私はただや、役に立ちたいから・・・」
「必要ないって言ってるじゃない」
マックはショックを受けた目で彼を見上げた。
リプタンはいらいらした手で彼女の顔を撫でた。
「そんな顔しないで。あなたを拒んでいるのではない、私はただあなたが・・・」
彼は何も言わずに唇をかんだ。
図書館に妙な沈黙が舞い降りる。
マックの落胆で曇った顔と、ルースのしかめっ面を交互に見ていたリプタンがすぐに荒々しく頭を掃いた。
「勝手にしろ」
それからさっと身を乗り出して図書館の外に出てしまった。
マックは茫然とした顔で後ろ姿を眺める。
リプタンは真っ暗になるまで帰ってこなかった。
マックはいらいらして部屋の中をうろつきながら窓の外をじっと見つめる。
ロドリゴの話によると、彼は武装もまともにせず、馬を率いて城の外に出たという。
マックは血が乾くというのがどんな気持ちなのか体験した。
暖炉の近くで体を止めて気持ちよく寝ていた猫3兄弟が、彼女の気持ちを感じたりしたようにベッドの下に集まってきて悲しげに鳴く。
彼女は猫を膝の上に乗せて撫で、ベッドの上に横になってそっと目を閉じた。
一体何のために彼がそんなに怒ったのか全く理解できなかった。
自分が出しゃばると思っていたのか、あらかじめ言ってくれなくて腹が立ったのか。
魔法を習うと決める前に彼に相談すべきだったのかもしれない。
焦って爪を噛みながらあれこれ考え込んでいると、ガタガタという音が聞こえてきた。
マックは急いで目を閉じた。
足音だけ聞いても誰だか分かる。
マックはどうしてもリプタンにまともに向き合う勇気が出ず、背を向けて横になって寝るふりをした。
リプタンは静かに近くに立って彼女をじっと見て、ベッドの上に横たわっている猫たちを用心深い手で一匹、一匹、かごの中に押し込んだ。
マックは彼の気配に神経を尖らせる。
かごを暖炉の明かりがつく場所に置いておいたリプタンがマントを脱いで片方にかけておき、ベッドの上に腰かけてブーツを脱いだ。
マックは彼が横になるのを待つ。
しかし、彼はしばらくじっと座っていた。
もう自分のそばに横になるのも嫌なのだろうか。
彼女は胸がドキドキする気持ちで枕の中に顔を深く埋めた。
(私は役に立ちたかっただけなのに)
無能力者が嫌だと言ったのはリプタンではなかったか。
マックは唇をかんだ。
彼は自分を必要としていると固く信じていたので、必要ないという言葉がさらに痛くなった。
マックは傷ついた表情を隠すために背中を思いっきり丸める。
その瞬間、顔の上に荒い指が注意深く響いた。
マックは息を殺した。
リプタンは躊躇いがちに彼女の頬のあたりを撫で、顔をくすぐる髪を何本か取り除く。
目を開けなくても暖炉から噴き出す熱気と同じくらい、彼の視線を鮮明に感じることができた。
彼は手の甲で顔の産毛を払い落とし、唇の上に指先を当てる。
マックは無意識に首をすくめた。
避けているように感じられたのだろうか。
彼がゆっくりと手を引くと、彼女は離れようとする手を急いで掴んだ。
やっぱりリフタンは怒っちゃいましたね・・・。
二人は仲直りできるのでしょうか?