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オークの木52話




 

こんにちは、ピッコです。

今回は52をまとめました。

 

 

 

 

 

ネタバレありの紹介となっております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

各話リンク こんにちは、ピッコです。 ネタバレありの紹介となっております。 ...

 




 

52話

オークの木51話 こんにちは、ピッコです。 今回は51話をまとめました。 ネタバレ...

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 言葉とは裏腹に③

「リ、リプタン・・・」

しかし、実際に掴んでみると、何を話せばいいのか分からなかった。

マックは注意深くリフタンを見る。

リプタンは彼女が寝ているふりをしていたことに気づいていたのか、驚いた様子もなくじっと見下ろしていた。

乱れた髪の毛の下で、インクのように真っ黒な瞳が静かに揺れている。

その無表情な視線に心臓が縮こまった。

もしかしたら彼は本当に怒って自分のことを嫌いになったのかもしれない。

彼女はびっくり仰天した。

「ご、ごめんなさい・・・。わ、私が悪かったです」

何に対して謝るのかも知らずにむやみにそう吐き出すと、リプタンが短い息を吸い込み、彼女の体をぎゅっと抱きしめる。

「謝らないで。あなたは何も間違っていない。ただ、私が・・・」

冷めたい指が髪の毛の中に入り込み、小さな頭を包み込んだ。

マックは彼の胸に鼻を突っ込んだまま不安定な息を吐く。

肩が震えてきた。

リプタンはいらだたしい手で背中をこすりながらつぶやいた。

「魔法でも何でも習っていいから・・・、そんなに怖がらないで」

「こ、怖がってい、いるのではありません」

「嘘をつかないで。震えているじゃないか。どうか・・・、やっと私に笑ってくれるようになったのに・・・、最初に戻ったようだ」

「ほ、本当です。こ、怖いんじゃなくて・・・」

マックは震える唇をかみしめた。

彼の優しい手に安心すると、押さえておいた悲しみがこみ上げてくる。

彼女は彼の裾を握りしめながら、だだをこねるように額をこすった。

「わ、私が必要な、ないって、そ、それで・・・」

リプタンの腕がぐらぐらするのを感じた。

彼は激しく首を横に振る。

「そういう意味じゃない」

「私がた、助けたいとお、思うのは・・・、め、迷惑ですか?」

「そんなことないって」

「わ、私は・・・、何かをし、したいとお、思って・・・。わ、私にできることがあ、あればいいのにと・・・」

「何もしなくても・・・!」

激しく何かを吐き出そうとしたリプタンはすぐにため息をつき、彼女の唇を急いで飲み込んだ。

マックは自然に彼の顔を包み込んだ。

「わかった。君が望む通りにしてもいいから・・・、お願いだから、そんな顔をしないで」

「リ、リプタンが・・・、きゅ、急にお、怒ったからじゃないですか」

「ごめんね。二度としないから」

まるで怯えて震える小さな動物をなだめるように、彼が大きな手で休む間もなく背筋を撫でた。

薄いシュミーズの上に感じられる大きくてザラザラした手のひらの感触に、どんどん体から緊張が解けていく。

マックは甘える小動物のように彼の首筋に顔をうずめた。

彼女の中には悪魔のような奇妙な満足感が漂う。

彼がやきもきするのが好きだった。

二度といらないなんて言えないように、背を向けて出て行ってしまわないように、このままガチガチと自分の体に縛ってしまいたい。

「マキシ」

マックはその顔に浮かんだ苦悩の跡を理解できなかった。

不安なのは自分なのに、どうしてあなたがそんな顔をするの?

私こそあなたがある日冷たく背を向けてしまうのではないかと時々気が狂いそうなのに、どうしてそんな切ない目をするの?

「俺を・・・、どれだけ狂わせるんだ」

目を覚ましたマックは、暗間の中でも鮮明な輪郭を現すリフタンの男らしい顔を見て、 震えるため息をつく。

「まだ夜明けだよ。起きないでいい」

彼は乾いた布で優しく水気を拭き取った後、背中に布団をかけてあげた。

その時になってようやく彼女は彼が出かける準備をしていることに気づく。

いつの間にか夜が明けたのだろうか。

ぼんやりと目をパチパチさせて、彼は彼女の額から髪を撫でた。

マックは彼を見上げる。

リプタンは何事もなかったかのように、いつものように淡々とした顔をしていた。

その姿が不思議に感じられる。

彼はどうしてあれほど強烈な経験をしても、元気でいられるのだろうか。

訳もなく不安になり、彼女は急いで身を起こした。

「わ、私も起きなきゃ・・・」

「もっと寝ていろって言ってるじゃないか」

やや強引な声に彼女は不安そうな目で彼を見上げる。

まだ気分がほぐれていないのだろうか。

リプタンは彼女の心を読んだかのように口の周りに苦笑いを浮かべた。

「好きなようにしてもいいと言ったじゃないか。そんな表情をしないで」

「はあ、でも・・・」

「あなたがどうして無駄に魔法のようなものを学ぶの?しようとしているのが理解ができないけど・・・」

やや乾いた声にマックは肩をすくめる。

彼は役に立ちたいと言ったことを真剣に受け止めていないようだ。

リプタンはブーツのひもをきつく結び、静かに話し続けた。

「防御魔法を一つぐらい身につけておくのも悪くはないだろう。もちろん、あなたが直接それを使わなければならない状況は絶対に作らないが・・・、万がーというものがあるから」

「わ、私は・・・」

「自らを守ろうとするのではなく、あなたを助けたくて魔法を学ぼうとしている」と言おうとしたマックは、すぐに口をつぐんだ。

自分が思うにもマクシミリアンには役に立たない頼りがいのあるところがなかった。

リプタンが自分が使える魔法使いになって心強い助力者になってくれると期待しないのも、ある意味当然のことだった。

彼に情けなく気絶する姿や怯えて震える姿しか見せたことがないではないか。

むやみに頼ってほしいと言い張っても困るばかりだった。

マックは駄々をこねる子供をなだめるような彼の態度に落胆した様子を隠し、うなずいた。

ひとまず許可が下りただけでも幸いなことだ。

きっと、自分が実力をつけて堂々とした姿を見せれば、リプタンも態度を変えるだろう。

今のところ努力するよりほかはない。

彼女はそのように自分を慰めながら、落ち着いた声で吐き出した。

「ゆ、許してくれて・・・、あ、ありがとうございます」

彼は笑っているわけでもなく、しかめっ面でもなく微妙な表情をして、彼女の額にキスをして席から立ち上がる。

「もしルースが変な実験に引き込もうとしたら、すぐに言って」

「ええ、大丈夫です。あ、ああ見えても・・・、真剣にお、教えてくれますから」

安心させようとした言葉になぜかリプタンは顔を曇らせた。

マックは自分がまた失言をしたのか、と緊張する。

しかし、リプタンは何も言わずにドアを開けて出て行った。

マックはベッドに横になって遠ざかる彼の足音をじっと聞く。

夜明けの青みが、かすかに窓から差し込まれていた。

それをじっと見つめるのを一瞬、彼女はため息をつきながらシートを頭のてっぺんまでかぶった。

「これで・・・、本当にいいんだよね?」

妙な疲労感が押し寄せてきて、彼女は疲れた目を閉じる。

 



 

その日以来、リプタンはマックが魔法を学ぶことについて何も言及していない。

それだけでなく、たまに図書館に突然訪ねてくることもやめた。

しかし、マックは彼のそのような態度の変化にかえって不安を感じている。

リプタンは彼女が魔法を学ぶのを無覗しているように見えた。

どうしてそこまで気に入らないと思うのか理解できなかったが、マックは自分が役に立つ魔法を一つでもできるようになれば、彼の態度も自然に変えることになるだろうと楽観した。

それもそのはず、世の中のどの君主が指揮下に魔法使いが増えることを喜ばないだろうか。

王女でさえ才能を認められ、魔法使いとして活動しているほどだ。

アグネス王女のように優れた魔法使いにはならなくても、治癒魔法だけでもまともにできるようになれば、きっとアナトールに少なからぬ助けになるだろう。

そうなれば、リプタンも自分を認めてくれるはず。

マックはいらいらしてページをめくりながら眉間にしわを寄せた。

一刻も早く魔法を身につけたいのだが、勉強にはなかなか進展がなく、気だけが焦ってしまう。

「そんなに焦らないでください。やっと基礎理論を習得した状況じゃないですか。本来、魔法を学ぶには時間がかかります」

向かい側に座って地図の上に何かを記録していたルースが突然口を開いた。

マックは不審そうな目で彼を見る。

魔法使いは彼女の集中力が少しでも緩んだらすぐに気付き、こんな風に注意を与えた。

彼女は額から垂れた髪を耳の後ろに流して、不満そうにつぶやいた。

「はあ、でも・・・、いまだにでき、できることがな、何も、ないじゃないですか」

「仕方がないじゃないですか。理論を習得したからといって、魔法を使えるわけではないんですよ。十分な量の魔力を集めないと何の役にも立ちません」

痛いところを指摘されたマックは、口をぎゅっと閉じる。

彼が言ったように、彼女はまだ十分な魔力を集めることができなかった。

魔力を集めるどころか、魔力を感知する訓練にも苦労していた。

こうしていて、いつ魔法ができるようになるのだろうか。

マックはだんだん自自信なくなっていくような気分で肩をすくめた。

「ま、毎日ま、魔石を握ってれ、練習しているのに・・・、う、うまくいかなくて・・・」

「火の魔石と相性があまり良くないからかもしれませんね」

ルースは物思いにふけったかのようにペンをいじくりながら目を細める。

マックは彼が何か解決策を見つけてくれるのではないかという期待に満ちた視線を送った。

ルースはようやく口を開く。

「場所を変えてみたらどうですか?マナは場所によって濃度に差があります。他のところで練習するだけでもはるかに良くなるかもしれません」

あまりパッとしない提案のように間こえ、マックは目を細めた。

「ど、どこがいいんですか?」

「どこもそんなに差はないんですが・・・、それでも草木と風、土と水のような自然物が多い場所がマナの濃度が濃いですね」

ルースの言葉にマックは顔をそむけて窓の外を見つめる。

風に細かく揺れるマホガニーの窓枠越しに青白い冬の空が広がっていた。

見るだけでぞっとする冷たい空の色に、マックは気が進まない表情を浮かべる。

「こんなに寒いのに・・・、そ、外に出ろって?」

「ちょっと出かけたからといって凍え死ぬわけではないじゃないですか。後園で散歩でもすると思ってください。実際、最近はあまりにも城の中だけで過ごしてたじゃないですか」

「ル、ルースにだけはそ、そんなことを言われたくな、ないです」

図書館の中に閉じこもって動かないことには、自分よりルースが上だ。

少なくとも自分は使用人たちを監督するために一日一回は城を巡回したのに対し、彼は本当に一日中図書館に留まって身動きもしなかったのだ。

一日に二十歩も歩いているのか分からない。

彼のほっそりした手足を眺めながら目を細めると、ルースが顔をしかめ、防御的に胸に腕を組んだ。

「私は部屋から出たくても出られない状況です。魔物の移住現象を調査するだけでなく、城壁に設置する魔物探知魔導具の魔法式図案を作るために体を二つに分けたい気持ちです!」

「また・・・、魔導具をつ、作ってるんですか?」

「そうですね。この間、霧が立ち込めていた夜明けに、魔物が城壁を伝って這い上がったではないですか。二度とそのようなことが起こらないよう、魔物が頻繁に出没する場所に魔導具を設置しようと思います。まだ構想段階ですが・・・」

彼は首の後ろをもんで口が裂けるほど欠伸をする。

その時になってマックはルースの目の下に黒い影を見つけ、申し訳ない表情をした。

魔法を学びたいという焦りのため、彼の状況を調べることができなかったのだ。

「こ、今度は私が手伝わなくてもい、いいのですか?す、数式をまとめる程度ならわ、私にも・・・」

「心は山々ですが、今回だけはお断りします。ちょうど奥様に勝手に魔法を教えているとカリプス卿に睨まれていますから。そんな中、助手としてこき使うことさえしたら、卿が私を放っておかなかったでしょう」

彼が想像するだけでもゾッとするように身震いした。

その大げさな反応にマックは再び不安を感じた。

やはり、他人の目にも自分が魔法を学ぶことをリプタンが不満に思っているように見えるのか。

わけもなく意気消沈してぎこちなくなると、ルースが一層軽くなった口調で話を続けた。

「とにかく提案はありがとうございます。しかし今は魔法を学ぶことに集中してください。私の仕事を手伝うよりそちらの方がずっと役に立ちますから」

「わ、わかりました」

マックはそれ以上何も言わずに勉強していた魔法の本を取り上げる。

少し離れた席に座って静かに裁縫をしていたルディスが、ついてきて荷物を持ち上げた。

マックはメイドと一緒にドアの方へ歩いて行き、こっそりと彼の方を向く。

「そ、そしたら・・・、お、お疲れ様です」

ルースはうわの空で手を振る。

「ええ、私の分まで爽快な気分を満喫してきてください」

「私はま、魔力をあ、集めに行くんですよ」

彼女は小さくぶつぶつ言いながら図書館の外に.出た。

ルディスが後からついてきて、マントを彼女の肩にさっとかけた。

「ありがとう」

「外に出る前に部屋に寄って、もっと厚い服に着替えますか?」

「いいえ、大丈夫です。こ、これくらいなら十分です。この本だけへ、部屋に持ってきてくれる?」

「私が持っていきます。奥様は修行しないと・・・」

「その必要はありません。た、ただ散歩道に沿ってあ、歩こうとしてるだけですから」

「ですが・・・」

「それに、ひ、一人でいるときの方がしゅ、集中しやすいんですよ」

多少強く言うと、ルディスはどうしようもないかのように本を受け取り、頭を下げた。

マックはすぐに向きを変えて廊下を出る。

久しぶりに雨戸を開けっ放しにしたおかげで、赤いじゅうたんを敷いた広い階段には明るい日差しが降り注いでいた。

マックは白く輝く窓を細目で見上げ、一気に階段を駆け下りた。

換気をさせたのか、城内はいつもより何倍も寒い。

少しだけ暖炉の熱気に当たって出かけようかと思って、マックはキッチンに向きを変えた。

火の前に座って体を温めた後、外に出ると寒くなくなるだろう。

震える体を思いっきりうずくまった後、彼女は早足でホールを通り過ぎた。

だが、いざ熱い熱気が流れる厨房の中に足を踏み入れると、しばらく休んでから行こうという考えは完全に逃げていく。

マックは入り口に中腰になったまま、賑やかなキッチンにざっと目を通した。

使用人たちが食材を手入れし、火を起こし、水がいっぱい入った水筒をあちこちに運びながら夢中で仕事をしている。

「おい!パンを全部炭にしようとしているのか!?早く出さないで何してるの?」

「すみません!」

料理長の力強い怒鳴り声に顔が赤くなった少年2人が大きなフライ返しを持ってカボチャほどの大きさの茶色のパンをかまとの中から取り出す。

彼らがきれいな木版の上に見事に膨らんだパンを山のように積み上げる間、向かいの食卓では8人の下女が囲んで座り、白い生地の中に刻んだタマネギと細かく刻んだソーセージ、そして各種香辛料をぎっしり詰めて半月型の小さなパイを作っていた。

暖炉の中には5つの釜がうようよと沸いており、使用人たちはわいわいと騒ぎながらも、少しも休まずに炭火で肉を焼き、カブをつぶしてサラダを作り、ジャガイモと卵を茄でて大きな木の器にいっぱい盛っていた。

食事の時間が近づくと、厨房はいつも何の理由もなく忙しかったが、今日はいつもより忙しそうだ。

 



 

半分呆然とした顔で使用人たちを眺めていたマックは、こっそりと料理長に近づいて尋ねた。

「も、もしかして、旦那様が別に指示された、何かがありますか?」

「あれ、いらっしゃったのですね?先にご挨拶できず、申し訳ありません」

ようやく彼女の存在に気づいたかのように、料理長が慌てて頭を下げる。

マックは「大丈夫」という意味で否定した。

「いいえ、気にしていません。きょ、今日に限ってもっと忙しそうですね」

「はい、領主様が今日は朝から騎兵訓練をすると言って、食べ物をいつもよりたくさん準備をしておくように指示を出したのです」

「騎兵訓練ですか・・・?」

「すべての騎士の方々が練兵場に集まって馬に乗って模擬戦闘訓練をされるのです。すごく壮観ですよ」

平たい顔に明るい笑みを浮かべていた料理長が、「おっとっと」と大げさな音を立て、油釜からカリッと揚げたパイをすくい上げる。

それからすばやくその上にシナモンパウダーと糖蜜シロップをかけ、申し訳なさそうな目で彼女を振り返った。

「お話中に申し訳ありません。少しでもぐずぐですると、真っ黒に焦げて貴重な食材が使えなくなるので、私は少しもじっとしていられません」

「いいえ、大丈夫です。お忙しいところ、こ、声をかけて、ご、ごめんなさい。わ、私のことは気にせずにこの仕事をするようにしましょう」

「用事があって来たのではないですか?」

「いいえ、ただ・・・、と、通り過ぎるだけでしたから」

ただでさえ忙しい時間に、訳もなく自分のことまで気にさせたくなかったので、マックはすぐ裏口から外に出た。

開けた庭には5、6人の労働者が斧で薪を細かく割って荷車の上に積み重ねていた。

彼らが帽子を脱ぎながら頭を下げると、マックは片手を振って応えた後、すぐ散歩道に沿って歩き始める。

グレートホールから少し離れると、落ち着いた空気が彼女を包んできた。

マックは周囲を見回した後、思いっきり頭を上げて鼻の奥深くに息を吸い込んだ。

黒く焼けた骨のように枯れた木の枝の間から冬の青白い日差しが溢れている。

風は肌がひりひりするほど冷たかったが、日は珍しく晴れていた。

しばらく薄暗い図書館の中で、かび臭い薪の火の匂いだけを嗅いでいたので、冷たい冬の空気を存分に満喫すると、肺腑がすっきりする気分だった。

「あまり気が進まなかったけど・・・、出てきてよかった」

毎日本の中に埋もれていたため、しばらくレムに乗って乗馬の練習をすることもやめたところだった。

ルースの提案に従ってよかったと思い、彼女はゆっくりと後園に向かう。

普通、この時間になれば見習い騎士たちの掛け声が聞こえてくるものだが、静かなのを見ると少年たちも皆騎兵訓練に参加したようだ。

マックは、他の人たちと会う心配もなく練習に臨めるだろうと安心して、日当たりの良いところに席を取る。

「今回は少し違うかな?」

彼女はポケットを探って魔石を取り出した。

明るい日差しの下で照らすと、表面が透明に光っているように見える。

マックは指先で魔石を転がして、手のひらでしっかりと掴んだ。

じっと目を閉じて、魔石の表面に熱気が流れるのを待つ。

しかし何の変化も起きなかった。

マックは何度か繰り返すと、ため息をつきながら空を見上げる。

「才能がないんじゃないかな・・・」

ルースは間違っていたかもしれない。

そもそも自分に魔法使いの資質なんてなかったのかもしれない。

急にむかむかして彼女は激しく地面を蹴飛ばした。

これまで理解しにくい本を粘り強く読みながら勉強したのが惜しかったし、何もできない自分が情けない。

マックは魔石を床に投げ捨てようとしたが、かろうじて自制し、力なくうずくまる。

遠くから「チェンチェン」と鍛冶屋たちが鉄を叩く音が聞こえてきた。

薪を割る音も聞こえた。

ダイナミックに活動する人々の中で一人で停滞しているようでとても憂鬱な気分に。

マックは膝の上に悲しそうに顔をうずめる。

その瞬間、背後から鋭い声が間こえてきた。

「こんなところで何をしているの?」

マックは驚いて振り返る。

3、4歩離れたところにリプタンが訓練を終えたばかりのように鎧を着て堂々と立っていた。

どうしてあんな姿でこんなに近いところまで音もなく近づくことができるのか、驚いて目をパチパチさせると、リプタンが彼女に近づいてくる。

「もしかして体の調子が悪いの?」

「いいえ、違います。た、ただ休憩を・・・」

マックは慌てて席から立ち上がった。

すると、リプタンは顔をしかめる。

「グレートホールに行ってみると、あなたが随行員もなしに外に出たと聞いた。どうしてこんなところに女中も従わずに一人で出ているんだ?」

「ちょ、ちょっとか、風に当たるために・・・」

魔法の訓練をしに出てきたと言えば、さらに怒りそうだったので、マックは適当に言い繕った。

すると、リプタンの顔が硬くなる。

「城といっても絶対的に安全なわけではない。こんな人里離れたところにいて、何か事故でも起こったら・・・!」

マックはますます荒々しくなる声に肩をすくめた。

その姿を見て、リプタンはすぐに口をつぐんだ。

彼の顔にちらりと焦りの色が見られる。

「ここは数百人が泊まる城だ。その中に悪い心を持つやつがいるかも知れない。城主の夫人がこんな人通りの少ないところに一人で出ていてはいけないことも知らないの?」

「ご、ごめんなさい・・・」

もっともな言葉にマックは文句をつけることができず、従順に答えた。

すると、リプタンの硬い口元が少し柔らかくなる。

彼は風で乱れた髪の毛を片手でかき回し、彼女の腕を引っ張った。

「あまり心配させないで」

そして、一歩先に歩き始める。

マックは叱られた子犬のように落ち込みながら、彼の後を追って足を運んだ。

すごく怒ってるのだろうか?

彼はいつもと違って彼女より一歩先を少し速く歩いていた。

その無愛想な横顔をちらりと見ながら顔色をうかがっていたマックは、ふとリプタンがグレートホール入口に行く道の正反対方向に歩いていることに気づいた。

「し、城にも、戻るんじゃないのですか?」

「風に当たるために来たんだろ? 」

彼はぶっきらほうに返事をし、すぐに馬小屋に向かう。

「この前、湖畔に連れて行ってあげると言ったじゃないか。ちょうど晴れているし、久しぶりに外に涼みに出かけよう」

その言葉に嬉しそうな笑みを浮かべたのもつかの間、マックは鎧姿の彼に目を通し、心配そうな表情を浮かべる。

「きょ、今日は、大変な訓練をしたと聞きましたが・・・、きゅ、休憩したほうがいいんじゃないですか?」

「ねえ、いまだに私の体力がどの程度なのか分からないのか?私は3日昼夜を休まず行軍してもびくともしない人だと」

リプタンが呆れるように首を軽く横に振りながら馬小屋の中に入った。

マックは夜明けまで元気いっぱいに情熱を注いでいた彼の姿を思い出し、密かに顔を赤らめる。

リプタンの体力は確かに驚異的だった。

わけもなく顔を扇ぎながら、彼の後をついて暗い馬小屋の中に入ると、床を掃いていた働き手たちが慌てて駆けつけてお辞儀をする。

「領主様、奥様、いらっしゃいましたか」

リプタンは使用人たちに大まかに手振りをして、すぐにタロンのいる場所に歩いて行き、自ら馬の鞍を上げた。

彼女もレムのいる場所へ歩いて行った。

彼女が近づくと、頭を突き出していた雌馬が足を踏み鳴らしながら喜んだ。

マックは申し訳なさそうな表情で馬の首筋を撫でる。

「元気だった?」

レムは青々と鼻筋を彼女の肩にこすった。

彼女はレムの豊かなたてがみをなだめるように笑い飛ばす。

藁束を肩に乗せて馬小屋の中に入っていたクネルじいさんが、その姿を見て素早く走ってきた。

「おはようございます、奥様。お二人で一緒に外に出ようとしているようですね」

「こ、湖に行こうと思います」

「鞍をお持ちしましょうか?」

彼女がうなずくと、馬小屋の番人はレムの背中に素早く鞍を置いた。

マックは手綱を引き取り、レムを伴って馬小屋の外に出る。

先に馬を引いて外に出ていたリプタンが彼女をさっと抱き上げて馬の上に座らせた。

「風が冷たいから、今日はあまりスピードを出さないで」

そして、タロンの上に飛び上がり、後門に向かって前に馬を走らせる。

マックは彼の後を追いながら、精一杯浮かれた表情をした。

この前彼と一緒に丘に馬に乗って出たことを思い出し、心臓が激しく鼓動する。

マックは憂鬱だった気分がスッキリするのを感じながら軽快に馬に乗った。

「こ、湖畔は、ど、どの辺にありますか?」 .

「この道に沿って西に少しだけ行けばいい」

これに先立って、城門の外に出たリプタンが曲がりくねった森の道を指した。

裸の木がびっしりと位置した狭い道は、見た目も馬に乗って通りにくいように見える。

マックは少し躊躇った後、木の根がもつれたでこぼこした道の上に慎重にレムを走らせた。

これまでの乗馬練習が成果があったのか、彼女は安定的に姿勢を取ることができた。

リプタンはその様子を見てかすかな笑みを浮かべる。

「前よりずっと上手になったね?」

「と、時々れ、練習したんですよ」

「えらいね」

ちびっ子への褒め言葉にマックは頬を赤らめた。

リプタンは彼女がよく追いかけてくるのか何度も注意深く観察し、すぐに安心したのか、もう少し速度を上げる。

彼女は彼の馬の尻に寄り添って狭い道を走り去った。

そのようにどれほど行っただろうか、道がますます広くなると、すぐ銀色に輝く巨大な湖が姿を現した。

マックは広々とした丘の下を見下ろして感嘆の声を上げる。

鏡のようだった。

そのような湖の上には、赤褐色の峰と青空が鮮明に映っている。

水辺の周囲には窓のように尖った松の木が垣根のようにびっしりとそびえており、その細かい木の枝には黒く見えるほど濃い青色の松の葉が茂っていた。

久しぶりに見る景観にマックは嬉しい笑みを浮かべる。

木の間に水を飲みに来た冬鳥と野生動物の姿がちらっと見えた。

 



 

残念ながら魔法の進展はありませんでしたが、リフタンと二人きりで乗馬を楽しむことができましたね。

リフタンも怒っているようには見えませんが、内心はどう思っているのでしょうか?

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