こんにちは、ピッコです。
今回は5話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
5話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- ワイバーン討伐②
どれくらい移動したのだろうか、ついに頂上に到逹する。
リプタンは岩の上に飛び上がり、下を見下ろした。
兵士たちの勢いはなかなかもっともらしい。
子爵の指揮の下、7台の投石機が休まず砲弾を放ち、巨大な石弓で丸太の太さの槍を飛ばしたりもした。
ワイバーンは彼らの絶え間ない攻撃に無策でやられ、谷の内側にこっそりと身を隠す。
良い兆候ではなかった。
彼は渓谷の暗い奥をのぞき込んだ。
身をすくめて攻撃が少なくなるのを待っていたワイバーンが矢のように谷の外に飛び出した。
残っていた鎖がばたばたと切れてしまい、奴は翼を広げて高く飛び上がった。
そのまま遠くへ飛んでしまったなら、かえって幸いだっただろう。
雲まで噴き上がったワイバーンが兵士たちに向かって恐ろしい速度で滑降する。
あっという間に四方が廃墟と化した。
兵士たちが矢を浴びせたが、ワイバーンの厚い革を破るにはカ不足であり、ワイバーンの羽ばたき一度で投石機2台が粉々になった。
兵士たちはどこから飛んでくるか分からない巨大な魔物を避けて、びっくり仰天しながらばらばらに散らばる。
リプタンは満面の笑みを浮かべた。
あんな烏合の衆で何ができると言うのだろうか。
魔法使いという奴らはでたらめだったし、正規軍というのは.情けないほど役に立たなかった。
それに自分はすでに受け取った金額以上の仕事をしていたのではないか。
「収支があまりにも合わないね」
リプタンは革製の手袋をはめた手であごを整えた。
どうしようかと悩んでいる間に、渓谷からもう一匹のワイバーンがうろうろしながら歩いてきた。
弱り目にたたり目だな。
ため息をつくと、いきなり下からものすごい炎が上がる。
リプタンは目を細めた。
「あの魔法使いという奴、まだこの下にいたのか」
彼は下を注意深く見た。
身を隠したまま魔法を使っているのか、その魔法使いの姿はどこにも見当たらない。
頭が少しは回るようだね。
リプタンは彼の腕前を推し量るように、巨大な黄金色の炎が怪物の体を飲み込むのを見守った。
花火はワイバーンの体を灰にしてしまう勢いで激しく燃え上がり、白い竜巻がその周辺を取り囲んだ。
しかし、ワイバーンの革は抗魔力が非常に優れている。
やつが大声で泣き叫び、翼を大きく広げると、炎は簡単に散ってしまった。
リプタンはすぐに決定を下す。
若い魔法使いも経験が足りないようだったが、少なくともいくつかの魔法はまともに使えるようだった。
それならやってみる価値がある。
彼はあたりを見回して、大きな岩を一つ拾い上げ、下に向かって投げ捨てた。
すると、首をきょろきょろさせながら、自分に火をつけた魔法使いを探していた魔物が上を見上げる。
リプタンはその時を狙って岩をもう一つ投げつけた。
どっしりとした石ころが魔物の目玉にまともに直撃する。
やつが怒りに満ちた怪声をあげて彼に向かって飛び込んだ。
リプタンはワイバーンが目の前に来るのを待ってフックを投げた。
鋼鉄を圧縮して作った重い鉤が、やつの片方の目玉を突き刺した。
魔物が高音の泣き声を吐き出しながら、ドスンと岩壁に身を打ち込んだ。
リプタンはその時を狙って魔物の体の上に飛び上がり、鉤と鎖に身を寄せて機敏に動いた。
彼がワイバーンの翼と翼の間に正確に安着すると、危機感を感じたように奴の動きがさらに激しくなる。
リプタンはすぐに短剣を抜いて、厚い革の内側に打ち込んだ。
血と肉を持った生物を刺すというよりは、きつい丸太に刃を突っ込むことに近い感覚だった。
革製のブーツで取っ手を容赦なく踏みつけ、ナイフをさらに深く突き剌す。
やっと痛みを感じる部位まで刃が食い込んだのか、ワイバーンが悲鳴を上げて空高く舞い上がった。
リプタンはやつの体にしっかりとしがみつき、また袋の短剣を抜いた。
それを、やつの羽先にものすごい腕力で突き刺すと、鎧のように固い皮が貫通する。
彼は刃を押しのけて羽ばたきに使う筋肉を容赦なく切った。
すると、やつがバランスを取れず、対角線に傾き、片方の翼をむやみにはためかせた。.
リプタンは反対側の羽にも刃を突き剌した。
骨を切断する必要もない。
重要な筋肉の束だけ切っておけば、ものすごい体重に耐えられずに墜落してしまうだろう。
彼は恐ろしい速度で落下するワイバーンの体に鉤をしっかりと打ち込んで衝撃に備えた。
落ちる速度は彼が予想していたよりも速かった。
「翼の筋肉を、早く止めたのかな?」
体に加えられる衝撃を最大限緩和させるために肉付きが厚くついたところに這って体を平たく下げるが、地面に着く直前にギリギリでワイバーンの体が空中に浮び上がる。
リプタンは頭をもたげて下を見回した。
遠くないところに魔法使いが半分暁が抜けた顔をして何かつぶやいていた。
千ラントも飛ばしてみせるというが、まったくのほら吹きではなかったんだな。
リプタンはすぐに起き上がる。
彼は黒い突起がでこほこに突き出た体の上を素早く駆け上がり、バスタードを抜いた。
白い刃が太陽の光に照らされる。
ワイバーンの固い頭蓋骨の中に長剣を深く差し込むと、魔物が頭を持ち上げながら体を大きくくねらせた。
彼はそのまま腕を伸ばして、やつの脊椎まで切った。
ワイバーンが口を大きく開けて断末魔を吐き出して力なく地面に垂れる。
リプタンはやつが完全に身動きが取れなくなったことを確認した後、剣を回収した。
血が噴水のように噴き出し、せっかく買った服をすっかり汚してしまう。
「この値段はちゃんと貰わないとね」
残りの武器をすべて回収した後、ワイバーンの上からひらりと飛び降りる。
すると、魔法使いがびくびくしながら肩をすくめた。
リプタンは怪物でも眺めるような目つきを無視し、肩越しに首を横に振る。
「しっかりしろ。谷の中にまだいっぱい残ってる」
やっと魔法使いがばっと気がついたように渓谷に向かって首をかしげた。
目が覚めたワイバーンたちがうろうろしながら谷間から歩いて出てきた。
それだけではない。
空で大暴れするワイバーンもまだ処理できていない状態だ。
リプタンは手に鎖をしっかりと握りしめながら素早く頭を転がした。
渓谷の入口は狭かい。
一匹ずつ列をなして出てくるしかない構造だ。
それなら、入口を守って立っていて出てくるたびにやっつけるのが最善だろう。
ワイバーンがみんな外に出て空から大手を振り出すと、討伐除には勝算がなかった。
リプタンは、まだ右往左往しているネブロンの兵士たちと比較的老練に対処している傭兵たちを見て、魔法使いに向かって首をかしげる。
「あいつらは後に任せて、あなたは私を援護してくれ」
魔法使いがぽかんと口を開いた。
「え、援護とは・・・、まさか一人でワイバーンを捕まえるつもりですか?とんでもないことを言わないで、早く避難しないと・・・!」
「黙ってついて来い。奴らは一度怒ると驚くほど執拗になる。このまま逃げたら人家に飛んで行って腹いせをするよ」
リプタンは彼が反論する前にヤギでも連れて行くようにずるずる引きずっていった。
そして、岩壁の片隅に彼を投げ捨て、すぐに岩を登る。
ちょうどワイバーンの一匹が谷の外に頭を突き出していた。
リフタンはすぐに身を投げる。
長い刃が厚い革を突き破って入り、怪物の首筋の奥深くに突き刺さった。
正確に急所を突かれたワイバーンが頭を高く持ち上げて鋭い怪声を吐き出す。
彼は素早く刃をひねって怪物の背骨を切り、岩の後ろに身を隠し、頭をひょいと突き出している魔法使いに向かって叫んだ。
「早く防御壁を張らずに何をしているんだ!」
青くなった顔でぶるぶる震えていた魔法使いが、直ちに谷の内側にシールドを広げる。
すると、ちょうど谷の外に飛び出そうとしたワイバーン一匹が障壁にぶつかってはじき出された。
リプタンはその瞬間を逃さず、すぐに魔物の足に鉤を投げ、鎖を絡める。
そして、魔物がふらつ<間に閃光のように駆けつけ、一気に動脈を切った。
怪物はこれといった反撃もできずに地面の上に垂れ下がる。
彼はすぐにワイバーンの体から剣を抜き取り、その後を継いで走り抜けて魔物に向かって身を躍らせた。
そうして、どれだけ剣を振り回したのか分からなかった。
魔法使いが防御壁を広げて怪物たちが谷の外に抜け出せないように時間を稼ぐ間、彼は地形の利点を最大限活用してワイバーンを一匹一匹処理していった。
ついに、合計8頭のワイバーンが血を流して倒れる。
彼はどこかに隠れている奴がいるのではないか、間の中を機敏な目で観察した。
これといった気配は感じられなかった。
「運がいい方だね」
最悪の場合、20匹まで集まっている可能性も覚悟していた。
8匹というと、ごくわずかな数字だ。
どうやら、こいつらは繁殖をするために、本来の群れから切り離されたようだった。
リプタンはもしかしたら卵があるかもしれないと思って周囲を見ていたが、すぐに振り向いた。
自分が事後処理までする義務はない。
魔物の血で濡れた剣をぼろぼろの服で拭き取り、鞘に押し込んだ。
とぼとぼと外に出てくると、谷間の中に頭だけ押し込んで目玉をあちこち転がしていた魔法使いが、「ひいつ、」という変な音を立てながら、ささっと遠ざかった。
リプタンは彼をすっかり無視して、状況の成り行きを見守る。
幸いにもワイバーンは処理したようだったが、被害が甚大だ。
討伐隊の半数近くが地面に横たわって負けていたし、そのうち相当数が死亡したようだった。
リプタンは魔法使いに向かって頭をもたげる。
「早く行って治療の魔法をかけないで何してるの?」
魔法使い何かを呟いて、すぐに討伐隊が陣取ったところに駆けつけた。
リプタンは岩の上に座り、疲れたため息をつく。
悲しいことに、依頼人は生きていた。
その豚のような貴族が最初に約束通り、今回1匹当たり12デルハムの値段だけを払うと言って、リプタンはきちんとヘタが回った。
本当にそんなに簡単に食べられるとは予想していなかったのだ。
リプタンは剣の柄をいじりながら猛烈にうなり声を上げた。
「それなら契約は解除することにしよう。1デナールに違約金まで7デナールを加えて返す。今回の8匹は私一人で捕まえたの、私の分だよ。あなたの投石機も魔導具も何の役にも立たなかったじゃないか」
彼の威嚇に貴族のふっくらとした顔が紫色に燃え上がる。
「勝手に契約を解約するなんて!」
「勘違いするな。私はあなたの手下ではない。あなたは私の臨時雇いにすぎない。あなたの命令が不当だと判断されればいくらでも契約を解除できる」
彼の不遜な態度に耐えられなかった騎士たちが一斉に剣を抜く。
リプタンは冷ややかな目で彼らをちらっと見た。
中年の魔法使いは魔力が尽きたのか、青くなった顔で馬車に寄りかかって立っており、生き残ったネブロンの兵士はわずか20人余りに過ぎない。
騎士も11人しか残っていなかった。
リプタンはこの状況を観察している傭兵たちをちらりと見る。
子爵がお金をもっと払わない以上に、あいつらが加担するはずはなかった。
お金をあげると言ったら、自分に付く可能性もあるだろう。
リプタンは唇を歪める。
その必要もない。
中途半端な35人くらいなら、なんとか一人でも十分に対処できる。
彼が鋭利な目つきで地形と隊列を見ながら一番効率的な動線を組んでいると、子爵が突然片手を上げた。
「いいよ。君の条件を受け入れるよ。私はすでに多くの戦力を失った。ワイバーン8匹をやっつけた怪物を相手にした肝臓の残った戦力さえ大きな損失を被ることになるだろう」
貴族が気前よく言った。
「1匹当たり5デナール、合計40デナールをあげる」
「1匹当たり8デナールだ」
「欲張るな。どうせお前一人ではあの魔物を全部解体して運ぶこともできないじゃないか」
リプタンは満面の笑みを浮かべる。
誰が誰に欲張らないでと言うのか。
「全部持っていく必要もない。磨石を回収して売っても、60デナール以上もらえるはずだ。皮を裂いて一緒に売れば、もっと稼げるかもしれない。私がとても気前がいいということを分かってほしい。契約を解約した方が私にはいろいろな面で得だ。喧嘩が面倒なので協議しているだけだよ」
貴族が顔を赤らめ、最後の交渉案を出した。
「いいよ。じゃあ、全部で60デナルだ。それ以上はあげられない」
リプタンは冷たい目で彼をにらみつけ、これ以上交渉しても無駄だということを
気がついてため息をつく。
「分かった。60デナールにしよう。ただ、この場ですぐに代金を払ってくれ」
不信を隠すつもりもない彼の態度にふさわしくない表情をしていた貴族が、後ろで待機して騎士に目配せをした。
騎士がすぐに金貨が入った重い革の袋を持ってくる。
リプタンはそれを受け取り、金貨を素早く数えた。
ちょうど60個だった。
彼は硬貨を一枚取り出して偽造ではないか確認した後、兵士たちに頭を振る。
「よし。あれはもうあなたのものだ」
リプタンはもう用事がないかのようにさっと振り向いた。
彼を助けた魔法使いは少し離れた場所で無惨な顔をして座っている。
話を間く限り、睡眠魔法をかけることに失敗し、魔導具を設置することにも失敗したため、労賃を一銭も受け取れなかったようだった。
リプタンはチッと軽く舌打ちをし、ポケットから金貨十五枚を取り出す。
「さあ、お前の分だ」
ぼうっとした顔でぼんやりと金貨を見下ろして.いた男がゆっくりと頭を上げた。
リプタンは淡々とした口調で付け加える。
「補助魔法使いは通常、依頼費の四分の一の仕事を受けるのが原則だ。受けろ」
彼はぼんやりと口を開いた。
こいつ、ひょっとして頭が足りないんじゃないかな。
リプタンは不機嫌そうな目つきで見下ろし、彼のローブの上に金貨をぶちまけるように投げ出して振り向いた。
すると、ぼんやりしたやつが頭頂部に冷水を浴びたように素早く金貨を持ってきて、慌てて彼を呼び止める。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
リプタンは用件が何かというように無味乾燥な視線を送った。
魔法使いは目をあちこち転がして、慌てて付け加えたる。
「あ、あなたはまだ治療を受けていないでしょう。ちょっとここに座ってみてください。癒しの魔法をかけてあげます」
この頼りないやつに身を委ねる気は少しもなかった。
要らないときっばりと断ろうとしたリプタンは、ふと周りを見回す。
傭兵たちがあちこちにうろうろしていた。
彼はちょうどかなりの金貨を受け取ったところだった。
その光景に目がくらんだやつらが、党を組んで襲撃してくることもありうる。
リプタンは傭兵たちの様子を見て、反対側に視線を向けた。
子爵はワイバーンの遺体に全霊が売られたようだった。
しかし、後にでも心を変えてお金を回収しようとするかも知れない。
軽い打撲傷を負ったのがすべてだったが、綺麗に回復しておいたほうがいいだろう。
リプタンは素直にうなずいた。
「よし、頼むよ」
「ここにお座りください」
魔法使いは安堵のため息をつきながら平たい岩を指差した。
リプタンは金貨の入った袋を荷物の中に突っ込み、岩の上に座り込んだ。
すると、魔法使いがすぐに治癒魔法と回復魔法をかけてくれた。
生ぬるい熱気が体の中に流れてくるのを感じながら、リプタンは首の付近を掻く。
以前にも治癒魔法を受けたことがあったが、異質な気運が骨の中まで染み込む感覚はいつも不快だった。
彼はいっそう軽くなった体をあちこち動かしてみて、ゆっくりと席から立ち上がる。
「ありがとう」
儀礼的な挨拶を残してはふらりと席を離れようとしたが、男にしては細い手が彼のズボンの裾をぎゅっと握った。
リプタンはいらいらして片方の眉をつり上げた。
「まだ何か?」
「ど、どちらへ行かれるのですか?」
「それを私がどうして君に言わなければならない・・・」
冷ややかに撃ち込もうとしたリプタンは、口論をするのも面倒でため息をつく。
「何だと思う?魔物を解体しようとしてるんだよ。残った作業をしなけれはならないんじゃないのか」
装備を組み立てている傭兵たちをあごで指さすと、ようやくまだ依頼が完全に終わったわけではないことに気づいたのか、魔法使いが目をばちばちさせながら手を放した。
やっばり、どこか足りないやつみたい。
リプタンは軽く舌打ちをし、ワイバーンの解体作業を手伝うために足を運んだ。
ところが、その間抜けな奴が自分の後ろをちょろちょろ追いかけてくるのではないか。
そろそろ忍耐心が底をつきそうだ。
リプタンは威嚇的に彼をにらみつける。
「なんでついてくる?」
「そ、そ、それは・・・」
ぐずぐずしていた男があごを上げて図々しく言った。
「私は補助魔法使いじゃないですか!お金をもらったから最後まで手伝わないと」
「もう必要ないから帰っていい」
リプタンは何のためらいもなく言い切り、荷車を止めたところに大股で足を踏み入れた。
すると、魔法使いが急いで彼をつかんだ。
「今、一行に戻ったら金貨を全部奪われるんですって!」
リプタンは渋い顔をした。
頭が足りないやつだと思ったが、意外と状況を正確に把握しているようだ。
魔法使いは、まるで親鶏を追いかけるひよこのように、彼のそばに寄り添って、四方に向かって不信の目を向けていた。
その姿が傭兵隊に入ってきたばかりの自分の姿と少し重なって見えたりもする。
こいつもやはりこっびどくやられたらしいね。
しかし、だからといって自分が見ず知らずの人間を保護する義務はなかった。
リプタンは鼻をかんだ。
「それが私と何の関係がある。君の魔法でやっつけてしまえばいいじゃないか」
「私は人が相手では攻撃魔法が使えないんです!そもそも皆が見ている前で金貨みたいなものを投げてくれた剣士さんが間違ったんじゃないですか!私が貪欲に目がくらんだ人間たちの標的になって、森の中で変死体として発見されたりしたら、どのように責任を負いますか?」
よほどのことには目もくれないリプタンも、その厚かましい態度には瞬間的に言葉が詰まった。
せっかく世話をしたのにこんな話を間いていなければならないのか。
リプタンは険しい顔をする。
「気に入らなかったら、捨てればいい!」
カッとなると、あんなにびったりくつついていた魔法使いがさっさと遠ざかった。
しかし、男は飽きることもなく後を追ってきてぐだぐだと言った。
「少なくとも剣士さんのそばにいれば安全だということです。他の人たちもむやみにやり遂げることができないでしょう」
「・・・」
「剣士さんも損することはないじゃないですか。魔法使いは色々と役に立つんですよ。さっきのように戦闘時に後ろから補助してくれることもできるし、重い物を簡単に運ぶこともできるし、疲れたら回復魔法もかけてくれるし、傷がついてもすぐに直せるので助け合いではないですか」
リプタンは聞くふりもせず馬車の中で装備をチェックする。
ワイバーンの乱暴にもかかわらず、よく破損した物はなかった。
他の傭兵たちはすでに牽引機の組み立てを終え、ワイバーンの体から血を引いている。
彼らの中でサモンの姿を見つけたリプタンは殺伐と見上げた。
サモンは急いで体を回して忙しいふりをして遠ざかっていく。
リプタンはその姿を眺めながら歯ぎしりをし、自分の背丈ほどのトップを引きずってきて、ワイバーンの前に歩いていった。
サモンをどうやって手を出すか悩んでいると、魔法使いが後ろをちょろちょろと追いかけてきて、果てしなくおしゃべりをし続ける。
「そういえば、まだ私の名前も言っていませんね。私はルース・セルベルと申します。気楽にルースと呼んでください。皆さんは剣士さんをカリプスと言っていますが・・・、私も気楽にカリプスと呼べばいいですか?」
リプタンが歯ぎしりをすると、ルースがびくびくして、ぎこちない笑みを浮かべた。
「もちろん、それはできないでしょう!私がやりすぎです。丁寧にカリプスさんと呼びます」
あんなに震えていた人間なのかと思うほど太い.神経線を持ったやつだった。
リプタンは厄介なこぶがくつついたようだと思って身震いする。
これがルースとの出会いだったのですね。
図々しいのは昔から変わっていないようです。