こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
今回は283話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
283話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 不本意な別れ
日の光一つ入らない深くてひっそりとした安家。
そこに鉄格子を挟んで男女が座りあった。
ボロボロになった姿の女性は、清潔さとは見当たらないほど汚く、頭が散発としている。
それに対して、鉄格子の向こう側の男は、上品で綺麗な格好をしていた。
おかしいのは、このような状況で鉄格子の中に閉じ込められている女性が気が狂った人のように笑っているということだ。
「大丈夫ですか?」
鉄格子越しのリアブリックに対するアルディールの態度は、依然として丁寧だった。
「Lがあの女だった。どうして気づかなかったのだろう?」
リアブリックはまだ笑顔で独り言を呟いている。
長い時間を地下牢に一人で閉じ込められてできた癖だった。
「スペンサー子爵を送り返したって?」
「はい、大公殿下の判断です。洗脳もさせてレンも死んだのが既定事実化されたので、これ以上連れている必要がないと判断されたようです」
アルディールはこれまで外であったことを一つも欠かさずリアブリックに報告する。
自らまだリアブリックに及ばないと思うだけに、助言を求めようとしているのだ。
「じゃあ、終わりね」
「え?終わりとは?」
「あなたがやることがないってことよ」
アルディールは瞬きをする。
何事にも二つの手、三つの手を見て備えなければならないと教えたのがリアブリックだった。
ところが、今の言葉は彼女の信念に反するほど無責任だ。
「大公が動いた以上、あなたに出来ることはないわ」
「それはどういうことですか?」
全く理解できないアルディールを見て、リアブリックが意味深長に笑った。
「残り僅かだということよ。帝国の太陽が変わる日が」
バスタージュ邸。
覆面姿のレンとメルが夜陰に乗じて野良猫のように塀を越える。
「うっ・・・」
着地と同時にレンの足が緩んでふらつく。
地面に落ちる衝撃に耐えられないほど筋肉が弱くなっていた。
幸い、座り込む直前、メルが支えてくれたが。
「大丈夫ですか?」
「うん」
レンは気にするなと言わんばかりにうなずく。
「しばらく待機しましょう」
4日間、偽装して邸宅に潜入していたメルは、騎士たちの交代時間と巡察経路を大まかに把握しておいた。
庭の横、ケヤキの後ろにメルとレンが気配を殺しながら身を隠していると、遠くから見回りをする騎士たちが見えた。
家門を裏切り、副騎士団長に従って大公家に取り込まれた者たちだ。
「今、何か音が聞こえなかった?」
「私は聞いてないんだけど?」
「そうなの?私が敏感なのか・・・」
「余計なこと言わないで行くぞ。もうすぐ交代の時間だ。遅れると先輩がまた小言を言う」
騎士たちがケヤキの前を通り過ぎると、メルが信号をくれた。
視線を交わしたレンとメルが、誰が先と言わずに身を投げる。
静寂が重く敷かれた深夜には、木の葉を踏むだけでも大きな騒音のように聞こえる。
二人は気をつけ、また気をつけながら迅速に動いた。
緊張が続く中、邸宅へのアクセスに成功する。
死角地帯に身を隠していると、交代を終えた騎士団員たちの足音が聞こえた。
騎士ラビンとゲル。
騎士団内でもかなり優れた剣術の実力を持ち、スペンサー子爵が大事にしていた人物だ。
その2人も大公家の犬になった状況。
大公家の庇護を受けながら家門の実権を掌握した副騎士団長が、自分の人を植え付けていたことが分かる。
「めちゃくちゃだね」
スペンサー子爵が健在で,レンが後継者として確固たる地位を維持していたときは忠誠を誓っていた騎士たちが、いつそうしたのかというように、大公家にくっついている姿が哀れに見えた。
「お前らみんな首だよ。はあ・・・」
話し続けていたレンが、息を切らす。
以前ならこの程度の動きでは息さえつかなかったはずだが、後遺症で全身の筋肉が萎縮し痙攣してしまう。
「大丈夫ですか?」
「ちょっと息をすればいい」
レンは深呼吸を何度かし、鋭い眼光を放った。
「動くよ」
メルがうなずき、月の光が届かないところに沿って、邸宅の裏側に戻る。
邸宅内の使用人に偽装しているマジェスティ隊員に、最後尾の部屋の窓を開けておくように指示しておいたのだ。
「もうすぐパトロールが来ます。私が先に進入したらすぐ潜入しなければなりません」
死角とはいえ、手遅れになる余裕はかった。
メルは1階の窓を開けて身を投げる。
レンも負けまいと後を追う。
体が重かったが、遅滞する暇はなかった。
無事に邸宅内に入ることに成功したメルが窓を閉める。
次は簡単だ。
火鉢を通じて上の階に上がれば、少数の人だけが知っている秘密会議室が存在する。
そこはスペンサー子爵の寝室に面していた。
秘密会議室を通じて寝室の中の本棚を押して入ったレンが、スペンサー子爵と向き合う。
スペンサー子爵は、人形のように焦点のない目で椅子に座っていた。
「お父さん」
「・・・」
呼ばれたにもかかわらず、スペンサー子爵は魂が抜けた人のように無口だ。
死んだと知られた息子をぼんやりと眺めているだけ。
「レンは死んだ。レンは死んだ」
「・・・」
「バスタージュ家をフランチェ大公に任せる。バスタージュ家を・・・」
生きているが、死んだ人と変わらないスペンサー子爵を見るレンの目頭が赤くなった。
「これは何?一滴の血も流されそうにないあなたが・・・、どうしてこんなことになったの?私の頬でも叩いて。それが私が知っているあなたじゃないか」
レンにとってスペンサー子爵は愛憎の存在だった。
大公家の陰から抜け出すことを強要し、レンを強圧的に逼迫し、極限に追い込んだ。
また、体調の悪い子爵夫人まで、家門のためだという言い訳で酷使し、死に追いやった張本人。
「これは何だよ」
レンは唇をかみしめた。
巨人のように見えた父親が、このように弱い存在に転落したという事実に耐えられなかった。
「レン・・・、レン・・・」
レンはスペンサー子爵のざわめきに近づく。
レンという名前を繰り返す彼の声から、形容できない温もりが感じられた。
「お、お父さん?」
スペンサー子爵が泣いていたのだ。
依然として焦点がなかったが、彼の目元に熱い涙が流れていた。
「レン、レン・・・、レン・・・」
「はい、私です。私はここにいます」
レンは怒りをこらえながら彼の手を握る。
「レン・・・、家門を・・・、大公家を・・・、うぅ」
話し続けていたスペンサー子爵が突然、痙攣を起こした。
解けていた瞳孔が揺れ、体がサシの木のようにぶるぶる震える。
「私が分かりますか?」
レンが大声で呼ぶほど症状は酷くなった。
メルもこのような状況は予想できなかったかのように、ぼんやりと眺めるしかない。
「レン・・・、家門を・・・」
「分かりましたよ。このうんざりする家門を、私が守ります。だから・・・」
レンの言葉は最後まで続かなかった。
スペンサー子爵が息が切れるようにあえぎ、頭を落とす。
それが何を意味するのか推測しながらも、レンはそのような現実を否定する。
「しっかりしろ。気を引き締めて私を見ろよ」
メルはスペンサー子爵の首筋を調べ、首を横に振った。
「お亡くなりになりました」
「こんなのはあり得ない。あなたにやられたことをちゃんと返すこともできなかったのに。これは反則じゃないか。目を開けろ・・・、目を開けろって」
死人は口なしだと言っていたのか。
レンの切実さが込められた哀願にもかかわらず、スペンサー子爵は微動だにしなかった。
大公家から独立して新興貴族の首長として歩んできた過去の歩みに比べて、あまりにも寂しい退場。
「公子様、僭越ながら、もう行かれなければなりません」
しばらくスペンサー子爵の冥福を祈ったメルが現実に戻り、レンを促した。
気持ちとしては、もう少しレンが子爵のそばを守れるようにしたかったが、それができなかった。
夜が明けると、屋敷を出る方法が遠のいてしまう。
「お葬式に行けそうにありません」
苦々しい挨拶をするのもつかの間、レンの目つきに殺気が宿る。
「墓地に持っていきます。父があれほど望んだフランチェ大公の首を」
レンは一瞬の感情に酔って取り返しのつかない事をやらかすほど性急ではなかった。
憎悪心を冷たく冷やし、エレナの計画通りに大公家を破滅させることこそ、死んだスペンサー子爵の魂を癒す唯一の道だと信じているのだ。
「帰ろう」
最後になる父親の顔を胸に込めたレンが冷たく振り向いた。
彼は最後まで振り向かなかった。
ずっと憎んでいた父親の呆気ない最後。
リアブリックの言葉も気になります。
フランチェ大公とは、それほどの人物なのでしょうか?