こんにちは、ピッコです。
今回は2話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
2話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ②
触れ合った体が熱く、マックはようやく彼の体はもちろん、自分の体まで汗で濡れていることに気づいた。
微かな光で男の背中が黄赤に光っている。
ふと、鍛冶屋に忍び込んだ時に見た黄金像の鍛造シーンが思い浮かんだ。
溶鉱炉で沸騰していたあの濃い液体を体の上にかけると、こんな感じだろうか。
全身が沸き立つ黄金の中に浸かったように溶け出した。
何が起こったのかを悟る前に鈍い痛みが襲ってくる。
どのくらいの時間が経ったのだろうか、リフタンは首を絞めそうな呻き声を上げ、ぐったりした。
湯気がそよそよと上がるほど熱い体の下に敷かれたまま、マックは苦しそうに息を吐く。
奇妙な喪失感が襲ってきて、彼女は瞼を震わせ、ぼんやりと天井を見上げる。
一体何が起こったの?
「どうして・・・、泣いている?」
男の話を聞いて、初めてマックは自分が泣いていることに気づいた。
リフタンの真っ黒な瞳の上には、彼女には理解できない強烈な感情が漂っていた。
「もうあなたは私の妻だ。好きでも嫌いでも取り返しはつかない」
それから髪の毛を引き寄せて無理やり口づけをする。
マックは無力に受け止めなければならなかった。
何度も、何度も・・・。
その夜、ぼんやりと気を失って目を覚ましてみると正午があっという間に過ぎていた。
リフタンはすでに遠征隊と一緒に去った後で、乳母は神官が寝床についた血を確認して結婚が無事に成立したことを公表する。
それが一般的な結婚の通過儀礼だった。
それが彼らの間で起こった全てのこと。
一体何を言えばいいのだろうか。
彼は夫という名の見知らぬ人に過ぎないのに。
「その嫌悪感を見るような目をやめろ!私が何か気持ち悪い怪物にでも見えるのか?」
「わ、私は・・・」
離婚について考え直してと彼を説得しなければならないのに、再会して5分も経たないうちに彼を不快にさせてしまったのだ。
「わ、私は・・・、た、ただ・・・、あなたが、あまりにも・・・、緊張して・・・、な、何て言えばいいのか分からなくて・・・」
子供のように泣き出して彼を困らせることはできない。
「か、怪物だとお、思っているのではなくて・・・。き、緊張して・・・、ふ、ふ、震えが・・・」
いつもより舌が言うことを聞かなかった。
そもそも、まともに話せない自分が彼を説得できるはずがなかった。
いっそ黙っていた方がいいかもしれない。
成熟した女性なら、こんな馬鹿のように吃りながら震えることはないだろう。
父親の言う通りだ。
自分を妻として望む男は世の中のどこにもいないだろう。
そんな自分がどうして敢えてこの人に王女との結婚を断ってほしいと要請することができるだろうか。
「口を開けて」
マックはどんな状況なのか理解できず、目の前に置かれた黒い瞳をぼんやりと眺めていた。
するとリフタンが忍耐心を試されるようなため息をつき、彼女のあごをそっと下げて強制的に口を開かせる。
「くそ・・・、鎧から脱ぐべきだったのに・・・」
突然起こったことに気が付かなかった。
彼は腰を下ろしてソファの上に座り、太ももに腰を下ろし、横に片膝を当てて、素早い腕前でガントレットを脱ぎ捨てる。
熱い手が髪の毛の中に入り込み、後頭部を荒々しく包み込んだ。
「もう少し・・・」
当惑して寝返りを打つと、彼は腰を引っ張ってソファに横になった。
それから迷わずスカートの裾を引き上げてくる。
「リ、リフタン・・・!」
既に一度経験したことなので、マックはその行動の意味をすぐに悟ることができた。
もう白昼で、それも誰もが自由に行き来できる応接間の真ん中で、これは一体どういうことか。
マックはもう戸惑いに耐えられなくなり、じっと目を閉じた。
その瞬間、彼が飛び起きて慌ててマントで彼女の体を覆う。
その時になってようやく、彼女は誰かが自分たちを見守っていることに気づいた。
リフタンのような身なりをした男性が慌てた顔でドアのそばに固まって立っている。
「何をねずみ小僧のように盗み見ているんだ!」
「応接室でそうしていたとは誰も知りませんでした。いつもなら、自分の気配などすぐに気づく団長なのでノックする必要性を感じなかっただけです」
「今すぐ消えろ!」
夫の後ろ姿を見ていたマックは、すぐ金髪の男性に哀願の目を向ける。
「外に馬車を待機させておきました。クロイソ城でグズグズしたくないとおっしゃったじゃないですか!」
「待てと伝えろ」
状況がどうなっているのか混乱ばかりしていた。
「あ、あ、あなたのりょ、領地ですか・・・?」
「どうした?貧乏人の下級騎士なんかに領地があるのかおかしいのか?私は騎士爵位を受けながらルーベン王に領地を貰った。結婚後に当然あなたが住んでいたはずの苗字も一緒にね」
私が住んでいたはずの家?
しかし、彼はこれ以上説明するつもりはないように、大急ぎで階段を降りて広い庭に出た。
騎士の何人かは、リフタンの後ろに立っている自分の方をチラリと見る。
「何をぼんやりしているの?早く馬車に乗って」
「はあ、でも・・・、お、お父様がま、待っています。さ、さ、先に許可を・・・」
ふとリフタンの顔が冷たくなり、彼はマックの腕を掴んで馬車の前に引きずり込んだ。
「あなたは私の妻だ。自分の妻を私が連れて行くというのに誰の許可が必要だと?あなたの父親でも口出しする資格はない」マックは呆気に取られた顔で彼を見る。
(私の妻・・・。私と離婚しようとしたのではないだろうか?)
なかなか頭の中が片付かない。
「出発しろ!」
しばらくすると馬車が音を立てて動き出した。
マックは、ますます遠くなるクロイソ城をぼんやりと見つめる。
夫との再会場面を数十回想像したが、このような展開は全く予想できなかった。
(どうして・・・、私を連れて行くの?)
彼女は呆然とした目で夫を見つめる。
『ルーベン王はあいつに王女との婚約を勧めてきた。あいつがこの機会を逃すはずがない!』
クロイソ公爵は、その言葉を耳にタコができるくらいに繰り返した。
そう思っているのは公爵だけではない。
彼と縁談が交わされたアグネス王女は名望のある魔法使いで、レッドドラゴン討伐戦で活躍した英雄の一人。
戦場で一緒に戦った2人が恋人同士になったというロマンチックな話が吟遊詩人たちを通じて都市城郭全体に広く響き渡っている。
彼らの期間の知らせを聞いた人たちは皆、間もなく勇者リフタンとアグネス王女の盛大な結婚式が行われることを期待していた。
(それなのにどうして・・・?)
マックはリフタンの彫刻のような顔をこっそり覗き込んだ。
整えられていない髪は、きちんとした額の上で乱れて退廃的な雰囲気を漂わせており、艶やかな黄金色の肌は彼のハンサムな外見をさらに異国的に引き立たせていた。
アグネス王女を直接見たことはないが、煌びやかな金髪に濃い青色の瞳を持つ絶世の美女だという噂はよく耳にした。
この人と並ぶと絵のようにに会うことだろう。
マックは、今度は馬車の窓の上に映った自分の姿を注意深く見つめる。
丸くて広い顔と小さくて低い鼻筋、目だけが丸く大きくて、なんとなく不自然に感じられる顔がそこにあった。
リフタンが本当に自分を妻として欲しがるはずがない。
別に好きな人がいるに違いない。
一体私をどうしようとしているのか。
疑いがこもった視線を感じたのか、彼がサッと彼女の方を見る。
突き刺さるような強烈な目つきに萎縮し、マックは素早く目を伏せた。
その行動が気に入らなかったのか、リフタンが小さく悪態をつく。
「私といることが耐えられなくても、隠そうとする努力くらいはしてみろ。臆病者の妻のために馬車から飛び降りるつもりは全くないのだから」
「い、い、いやいや、ないですよ。私、私はその、そんなこと言ったこと・・・」
「それなら、我慢できないという表情をどうにかしてみろ」
マックは慌てて手を上げて顔を隠す。