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外伝20話




 

こんにちは、ピッコです。

今回は20をまとめました。

 

 

 

 

 

ネタバレありの紹介となっております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

各話リンク こんにちは、ピッコです。 ネタバレありの紹介となっております。 ...

 




 

20話

外伝19話 こんにちは、ピッコです。 今回は19話をまとめました。 ネタバレ...

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 災厄の予兆②

白く霧がかかった鬱屈とした森の向こうに黒い山々が城塔のように尖っていた。

リプタンは神経質に足を転がすようなタロンを撫でてあたりを見回す。

寒気を含み始めた風が四方から激しく吹きつけ、裸の木の枝の上には餌を狙うカラスたちが乗っている。

まるで侵入者を監覗するかのように頭上をぐるぐる回る鳥たちを不快な目で見上げると、しばらく周囲を見回していた神官が仏頂面をして言った。

「これで帰らなければならないようです。結界がとても強力で、これ以上は進むことができません」

「このまま帰るわけにはいかない。この道が行けないなら他の道を探してみよう」

「無理です。もう4日間同じ席ばかり回っているじゃないですか。強力な魔力が介入していて、自力では到底山の中に入る道が見つかりません」

悔しいが、神官の言葉が正しかった。

彼らはずっと同じ場所を彷徨いている。

太陽の方向を見ながら注意深く移動しても、いつのまにか正反対の方向に馬を走らせていたのだ。

リプタンは顔をそむけてエリオット・カロンとロンバルドの顔を見た。

みんな顔には出してはいなかったが、半月以上続いたキャンプと魔物との頻繁な戦闘で、少なからず疲れたようだった。

結局、彼は諦めのため息をつきながら口を開く。

「いいよ。とりあえず、村に帰ろう」

ここから抜け出すことができるという言葉に、神官が空に向かって両腕を伸ばし、感謝の祈りをつぶやいた。

リプタンはその姿を見て見ぬふりをして馬に拍車をかける。

幸いにも帰り道には魔力が介入しなかったようで、彼らは半日で無理なく森の中を抜け出すことができた。

「これからはどうするつもりですか?」

丘の下に小さな村が姿を現すと、エリオットが固く閉じていた口を開いた。

リプタンは城門の前に馬を走らせながら淡々と答える。

「とりあえず、他の調査員が到着するまで待つつもりだ。何か新しいニュースを持ってくるかもしれない」

南東部地域に派遣されてからすでに3週間が経ったが、これまで分かったことは、レクソス山脈を囲む霧の森に強力な魔法がかかっているということだけ。

少なくとも森を越える方法だけでも見つけなければならなかった。

リプタンは門番に身分牌を見せた後、村に入って「旅人の家」という宿に部屋を取る。

汚くて騒々しいところだったが、約30人に近い傭兵たちが泊まっているため、情報を得るには十分だった。

彼は食堂の隅に座って、豚たちにあげるような粗末な食べ物でお腹を満たしながらテーブルの上を行き来する話に耳を傾ける。

大部分が悪口とほら、下ネタだったが、たまにある地域である魔物がよく出没する、という使えそうな情報が間こえてくることもあった。

そのように盛んに傭兵たちを観察しながら味気ないビールで口を濶していると、丈夫な体格を持った4人の男たちが宿の中に入る光景が目に入った。

リプタンは目を細める。

首をきょろきょろしていた男たちがまっすぐ自分が座ったテーブルに向かって歩いてきたのだ。

 



 

「レムドラゴン騎士団のリプタン・カリプス卿ですか?」

男たちの中で一番年上に見える人が質問を投げかけた。

リプタンは警戒心のこもった目で彼の姿を頭のてっぺんからつま先まで見下ろす。

綺麗な服に良い鎧をまとったことから、貴族のようだった。

「何の用件だ?」

「騎士とみられる人たちが南部の国境近くをぶらぶらしているという噂を聞いて訪ねてみました。まさかレムドラゴン騎士団長様だとは思いませんでしたが・・・」

男が許可も得ずにテーブルの横に椅子を引いて座る。

「王の奉神騎士がこんな所で何をしているのですか?ここは公爵閣下の土地です。許可も受けずに勝手にかき回しても良いところではないということです」

「あなたはまだ自己紹介もしていない」

静かに酒を飲んでいたロンバルドが不快感をそのまま表わし叫んだ。

男は肩を動かして、いらいらした表情で自分の身元を明かした。

「私はクロイソ公爵閣下の奉神、ジャレッド・バイエルンと申します。この城郭は私の管轄下にあります」

「前もって了解を求めなかったことは謝罪する。しかし、ここに問題を起こそうとしてきたわけではない」

リプタンは無愛想に返事をし、好意のしるしとしてグラスを彼の前に置いた。

男は濁った色のエールをちらりと見て、疑問に満ちた目でリプタンを見る。

「ここ数週間、霧の森の近くをぶらぶらされていたという話を間きました。一体何を企んでいるんですか?」

「言い過ぎだね。私はただ小遣い稼ぎに来ただけだ」

リプタンは軽く話し、通りかかった店員に食べ物をもう少し注文した。

ジャレッドは当惑した表情で聞き返す。

「小遣い稼ぎ・・・?」

「魔物狩りだ。この辺にお金が出そうな魔物がよく出没するという噂が聞こえるので、すぐに部下たちを率いて走ってきた。しかし、デマだったよ。ここ数週間、アンデッドとゴブリンだけを思う存分相手にした。損害がとても甚大だね」

男の顔にかすかな軽蔑の念がよぎった。

「西部地域を歩き回りながら魔物狩りをされているという話は聞いたのですが・・・。東部までいらっしゃってそうするとは思いませんでした」

「私は非常に困窮しているので、前後をわきまえている場合ではない」

リプタンは恥ずかしがる気配もなく淡々と吐き出し、残ったビールをすべて口に打ち明けた。

その姿をじっと眺めていたところに、ルインは気の抜けた顔で首を横に振った。

「少しは自重してください。カリプス卿は王の奉神です。いつまでも傭兵のような振る舞いをし、国王陛下の名に泥を塗るつもりですか」

エリオットは口を尖らせ、剣の取っ手を握りしめる。

リプタンは警告の意味で、彼のブーツを軽く蹴り、生意気な口調で答えた。

「耳をすまして聞くよ」

鋭い空気を感じたのか、騎士が軽く咳払いをした。

「とにかく席を立ってください。私の城にお連れします」

「好意はありがたいが、遠慮しなければならない。まだ帰ってこない一行がいるからね」

「残りの一行が帰ってきたら、私の城に来るように言っておきます。さあ、だから早く起きてください。国王陛下が寵愛される騎士をこのようなむさ苦しい場所に泊まらせることはできません」

リプタンはあからさまに迷惑そうな顔をして、一字一字力を入れて言った。

「もう一度言うが、遠慮する。ここには個人的な仕事で来たんだ。公爵家にお世話になるつもりはない」

頑固な拒絶に彼の顔に困った様子があった。

リプタンは自分を招待する他の理由があることを察して小さなため息をつく。

「私にお願いしたいことがあるなら、この場で言ってくれ。君の区域を勝手にかき回していたことを謝る意味で、そんなに難しくないお願いなら快く聞いてあげるよ」

「・・・そんなに無理なお願いではありません」

バイエルンがぎくしゃくした表情でエール杯を手に取り、唇を潤し、「こんなにひどい酒の味は初めてだ」というように、傲慢な表情を浮かべた。

彼はハンカチを素早く取り出し、口の端をこすりながらぶつぶつ言った。

「ご迷惑でなければ、帰りにクロイソ城に立ち寄り、私の婚約祝いを届けていただきたいのですが」

リプタンは杯を手に持ったまま石のように体を引き締める。

一瞬、心臓が足元まで墜落したようだった。

彼は空のコップをぼんやりと見下ろし、ゆっくりと問い返す。

「・・・婚約プレゼント?」

「噂によると、公爵家と王室の間で縁談が交わされているそうです。主君にお祝いの意味で小さな贈り物を一つお渡ししたいのです」

「どっちだ?」

「え?」

リプタンはゆっくりと息を吐いた。

「婚約したのはどちらなんだ」

軽い好奇心で聞いていると思ったのか、バイエルンが肩を軽くすくめて無邪気に答える。

「どちらにしても何の関係があるんですか。重要なのは家門と家門の間の結合ではないですか?」

リプタンは彼の胸ぐらをつかんで婚約したのがどちらなのかはっきりと思い出せと怒鳴りたい衝動を抑えた。

マクシミリアン・クロイソは、体が弱くて王室に嫁ぐのは難しいと言っていた。

きっと彼女の妹の話だろう。

でも万がー、彼女なら・・・。

「私の頼みを聞いてくれますか?」

リプタンは悪口を飲み込んだ。

火の穴に落ちたような気分なのに、驚くほど淡々とした声が出てくる。

「帰りに城に寄ろう」

「ありがとうございます。できれば私が直接伺いたいのですが、急に魔物の襲撃が頻繁になってしまって、どうしても警備隊を空けることができなくてですね」

騎士が目的したことを成し遂げたことに満足しているようで、ゆったりとした笑みを浮かべながら席から立ち上がった。

「それでは、ここを出る時、私の城に立ち寄ってください」

バイエルンが部下たちを率いて外に出ると、リプタンは傭兵たちの好奇心に満ちた視線を避けて2階に上がる。

エリオット・カロンは、すばやくその後を追って来て尋ねた。

「何のためにあんな無礼な奴の頼みを聞くのですか?」

「ちょうどよかったじゃないか。公爵が何かの気配に気づいていないか、動向を探る良い機会だ」

「でも・・・。余計な追及を受けることになるかもしれません」

「それくらいは甘受できる」

リプタンは心配そうな目で見ている部下にぶっきらぼうに返事をし、部屋の中に入ってしまった。

 



 

捜索隊が戻ってくると、リプタンは約束通りバイエルン城に立ち寄り、21枚のキツネの皮と7匹の絹を受け取り、クロイソ城に向かう。

馬車を引いて行くために2日も時間を消耗しなければならなかったが、おかげで特別な疑いを買うことなく公爵の荘園に足を踏み入れることができた。

リプタンは突然の訪問に疑問を示す衛兵たちに、バイエルン家の紋章が刻まれた馬車を指しながら話した。

「東南部地域を訪問し、公爵令嬢の婚約プレゼントを渡してほしいと頼まれた」

兵士たちが馬車を確認した後、門を大きく開けてくれた。

リプタンは騎士たちを率いて立派な城門を通り過ぎ、クロイソ城の中に毅然と入っていく。

青白い冬の日差しが、白い城を銀色にきらびやかに照らしていた。

「こちらへどうぞ」

長い槍を持った兵士たちが彼らを左右から囲んで本城に導く。

しばらくして、城の中から執事長が歩いてきて、馬車の中に載せられたプレゼントを確認した。

「貴重な品ですね。公爵閣下は喜ぶでしょう」

「その贈り物は閣下の奉神騎士が送ったものだ。私は私てほしいと頼まれただけだよ」

リプタンは無愛想に言い返し、馬の上のからひらりと飛び降りた。

執事は彼の言うことを聞かなかったふりをして、落ち着いて話を続ける。

「遠いところまで来るのに疲れていると思いますが、お休みできるようにお部屋にご案内いたします」

執事が指示を出すと、使用人たちがどっと押し寄せてきた。

リプタンは彼らの後を追って歩き、無意識のうちにあたりを見回す。

そうするうちに自分が誰を探しているのかを悟り、苦笑いを浮かべた。

こんな時局に一体どこに気を取られているのか。

しかし、そのように自らを叱責しながらも、彼女を探し回ることをどうしても止めることができなかった。

「必要なものがありましたら、おっしゃってください」

リプタンは暖炉が燃え上がる広い部屋に入るやいなや重い鎧を一つ一つ脱ぎ捨てていく。

すぐ下女たちがお湯がいっぱい入った浴槽を持ってきてくれた。

彼はお風呂の世話をすると言い張る女中たちを部屋から追い出した後、石鹸で髪を洗って汗と埃をきれいに洗い流した。

そして、持っている服の中で一番きれいなチュニックを取り出して体の上に羽織ると、ドアを叩く音が間こえてきた。

「失礼します、カリプス卿。クロイソ公爵閣下がお呼びです。お時間をいただけますか?」

「着替え中だ。少し待つように」

リプタンはズボンをはいて、腰に剣帯を巻きドアを開ける。

執事は彼の身なりが公爵を接見するのに不足がないか審査するような厳しい目つきで見て、先頭に立って歩き始めた。

「こちらへどうぞ」

リプタンは彼について接見室に入る。

すると、魚と穂が剌さった華麗なタペストリーの前にそびえ立った公爵の姿が見えた。

執事が静かにドアを閉めて出ていくと、窓の外を眺めていたクロイソがゆっくりと体を回す。

「久しぶりだね、カリプス。君が私の封神の贈り物を持ってきたと聞いたよ」

柔らかな言い方に反して、彼の目は冷ややかだ。

「お世話になった仕事を全部引き受けてくれたね」

「家の中におめでたいことがあると聞きました。ジャレッド・バイエルンが直接伺ってお祝いできなかったことを残念に思っていました」

リプタンは彼の追及するような視線を無視し、無味乾燥な口調で答える。

「ちょうど南東部を通りかかった私に、その仕事を代わりにしてくれと頼みました」

「ちょうど南東部地域を通りかかった・・・、ね」

公爵は薄い唇をひねりながら彼の言葉を皮肉るように繰り返した。

「私としては君が何の理由でそこを延々と通り過ぎるようになったのか、とても気になるね。君の領地は南西部の端に位置していると知っているが・・・」

「閣下もご存知のように、私は騎士です。一ヶ所におとなしく留まっているのは私の性分に合わないことです」

リプタンは事前に準備しておいた言い訳を吐く。

「魔物を追って移動していたら、東の端まで来るようになったのです」

公爵の目が疑いで細くなった。

リプタンはその反応を見て、クロイソ公爵がまだレクソス山脈で起きていることに気づいていないことに気づく。

ドラゴンが冬眠から目覚めたという事実を知っているなら、あえて自分を呼んでこのように探る理由はないだろう。

リプタンは公然と彼の疑念を煽るのではないかと思い、話題を変えた。.

「魔物狩りのためにさまよっていなければ、私が婚約祝いのプレゼントを用意してきたはずです。手ぶらで来たことをどうぞお許しください」

「まだ正式に婚約式を行っていないのだがね」

公爵はあごを撫でて言った。

「王室と縁談が交わされたのは事実だが、君もご存知のように王子殿下はまだ十歳になっていない。殿下の留学生活が終わった後に正式に式を執り行うのではないかという話が交わされたのが間違って伝わったのか、あちこちから婚約祝いが殺到したよ。私も困っていたところだ」

リプタンはこの男が故意に噂を広めたということに全財産を賭けることもできた。

そうでなければ、王宮から行き交った話が国境まで広がったはずがない。

リプタンは冷笑をこらえながら、できるだけ丁寧な口調で話した。

「とにかくいい知らせがあったのは事実ではありませんか。長女の御令嬢にいい縁談が入ってきたので・・・」

「次女だね」

公爵は直ちに訂正した。

「王室と縁談が交わされたのは、私の次女、ロゼッタ・クロイソだよ」

「・・・」

公爵の返事を聞くまで、リプタンは自分がどれほと緊張した状態だったのかも自覚していなかった。

彼は努めて平然を装う。

「どちらにしても、家の中にいい縁談が入ってきたのは、おめでたいことですね」

「そう言ってもらえるとありがたいね」

公爵がだらりと吐き出し、椅子の上に優雅に腰を下ろした。

自分が東南部地域をうろついたことに対する疑問が解けたのか、彼の顔から探索するような気配が消えた。

「もう退いてもいい。私はあなたが何のために私の領土の近くをうろついていたのか知りたかっただけだ」

リプタンは黙々と振り返った。

しかし、いざドアの前に立つと、足が床についたようにびくともしなかった。

彼はドアノブを握りしめて、乾いた唾を飲み込んだ。

今度の縁談の主人公は彼女の妹だったが、これからはどうなるか分からない。

彼女は婚期いっぱいの名門家の娘であり、彼女を花嫁候補として望む人はこの地に満ちて溢れるだろう。

いつかは彼女も立派な家柄の長男と結婚するはず。

その前に、一度だけでもいいから彼女に触れてみたかった。

リプタンはその強烈な衝動に打ち勝つことができず、再び振り向いた。

すると公爵は高圧的な目つきで彼を見る。

「何か?」

「公爵閣下に個人的にお願いしたいことがあります」

公爵の額にミミズのような太いしわができた。

意中を暴こうとするかのように鋭い目つきでしばらく彼を睨んでいたクロイソが、すぐに気前よく吐き出した。

「一度言ってみなさい」

「・・・」

許可が下りたにもかかわらず、リプタンは簡単に口を開くことができなかった。

王の前でもこんなに萎縮した気分を感じたことがなかった。

彼は乾いた唇を湿らせながらやっと口を開く。

「『お嬢様』に・・・、ゲッシュを捧げたいです」

全く予想できなかった言葉だったのか、公爵の目が大きく開く。

リプタンは息を殺して彼の返事を待った。

ずっと頭の中をぐるぐる回った言葉だったが、口にするつもりはなかった。

通常、ゲッシュは主君の妻や子供に捧げる誓い。

現在、クロイソ公爵は王室と微妙な神経戦を繰り広げており、公爵令嬢にゲッシュを捧げることは、ややもすると王室に背を向ける行為と解釈される余地があった。

しかし、そのような危険を甘受してでも彼女に近付きたかった。

一度だけでも良かった。

彼女の服の裾にキスをして、彼女の名前を呼んでみたい。

リプタンは、長引く沈黙に耐え切れず、繰り返し語った。

「私が公爵令嬢に騎士の誓いを捧げることを許していただけますか?」

「・・・何の意図でそんな要請をするんだ?」

公爵は疑い深く目を細めて追及する。

リプタンは顔を歪めた。

「ゲッシュは一生に一度の誓いです。どの騎士も他の目的を逹成するためにゲッシュを利用しません」

「ただ純粋に、私の娘に敬愛の印をしたいというのか?」

クロイソ公爵は呆れたように大笑いする。

「到底信じられないね」

「私はただ・・・」

「まず第一に、君に名誉があるなんて信じられない」

突然の侮辱にリプタンは全身をこわばらせた。

公爵が杯を手に取り、唇を潤し、生意気な口調で付け加える。

「名誉とは数世代にわたって伝わるものだ。剣を少し振り回すことができるからといって、一夜にして得られるものではないということだ」

「私は・・・、ウェデンの統治者に爵位を受け、教団の前で叙任をした騎士です。こんな侮辱を受ける理由がありません」

「君を侮辱しようとしているのではない。ただ事実を言っているだけだよ。陛下のご厚意を得たからといって、君に本当の貴族と同等の名誉ができたと勘違いしては困るね」

公爵が心から気の毒そうに舌打ちをした。

「私を利用して立場を固めるという考えのようだが、無駄な期待はやめておいた方がいいだろう。私は私や娘の近くに君を置くつもりはない」

リプタンは酷い侮辱感で顔を赤らめた。

公爵が自分を蔑視していることはとっくに知っていたが、まさかこんなにあからさまに嘲弄を浴びせるとは思わなかったのだ。

言葉を失って固まった彼に公爵が傲慢に首を横に振る。

「話が終わったなら、もう出て行ってくれ。疲れたのでな」

リプタンは爪が皮膚に食い込むほどしっかりと拳を握りしめ、さっと体を回して接見室を抜け出した。

怒りと侮蔑感で全身が震えてきた。

彼は歯を食いしばって大股で階段を下りていく。

その時、下から階段を歩いて上がってくるマクシミリアン・クロイソの姿が目に入った。

リプタンは立ち止まる。

彼女も彼を見つけたかのように立ち止まり、肩をすくめた。

彼女の目に浮かんだ恐怖の色が、これまで以上に激しく彼の心臓を引っ掻いた。

リプタンは胸の中で旋風を巻き起こしていた怒りが挫折感に変わるのを感じながら彼女を睨む。

マクシミリアンは怯えた顔で壁にぴったりと寄り添った。

そのような顔をじっと見つめていたリプタンは、そのまま彼女をかすめて階段を降りてしまう。

物乞いをして追い出された頃の惨めな気持ちを抱いて。

 



 

公爵は、リフタンがゲッシュを捧げる相手をロゼッタと勘違いしているのでは?

マックに捧げたいと伝えていたら、どうなっていたのでしょうか?

どちらにせよ公爵の方から断ってきましたが、この後どういった流れでマックと結婚することになったのでしょうか?

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