こんにちは、ピッコです。
今回は43話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
43話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 自分だけの可能性
城に着くとすぐに、マックは血と埃で汚れたローブを脱ぎ捨て、体を洗った。
それから気絶するかのように眠ってしまう。
翌朝目を覚ました時は、誰かがバットで殴ったかのように全身がずきずきした。
マックはベッドにうつ伏せになって弱音を立てる。
薪を抱えて部屋に入ってくるルディスは、その様子を見て心配そうに尋ねた。
「奥様、大丈夫ですか?」
マックは努めて笑顔を見せて起きる。
ルディスはすぐにメイドたちを呼び、お湯がいっぱい入った浴槽を用意してくれた。
彼女は硬くなった筋肉がほぐれるまで、湯気がゆらゆら上がってくる水の中に体を浸し、浴槽の外に出て柔らかい布で作ったペチスカートと厚手のウールドレスを着る。
ルディスはタオルで髪を丁寧に乾かし、丁寧にブラッシングした。
「今日一日は寝室でゆっくり休んだらどうですか?外はかなり寒いですので」
「と、図書館にちょっと行って、行ってみるつもりです。よ、読みたい本があって・・・」
「それでは、すぐに図書館の火鉢に火を点けておくように伝えます。昨日一日、魔法使い様がお城を空けたので、とても寒いでしょうから」
ルディスはすぐに部屋を出た。
マックは他の下女が持ってきてくれた柔らかい麦粥でお腹を満たした後、厚いローブをかけて着て図書館に向かう。
使用人たちがあらかじめ火鉢に火をつけてくれたおかげで、図書館の中の空気は暖かかった。
彼女は窓のカーテンを外し、図書館の中を明るく照らし、本棚を一つ一つ調べ始める。
しかし、思ったほど簡単に望む書籍を見つけることができなかった。
彼女は本を休まず本棚から取り出したり入れることを繰り返し、一つ一つ内容を確認していく。
「やっぱり、ルースが帰ってきたら聞いてみないと・・・」
本を読むのをしばらくの間、マックは落胆した顔で肩をすくめた。
これといった成果を得るものができずに力なく本棚を回って出てくると、ふと隅っこの席に斜めに置かれた本の題名が目に入る。
マックは嬉しそうな顔で本を取り出した。
薬草図鑑と古い治療法が書かれた本だ。
アナトールの近くにはたくさんの魔物が生息している。
昨日のようなことはいつでも起こりうる。
その時、もっとうまく対処するためにも治療術に対する知識を身につけておいた方が良いという気がしたのだ。
マックは青白い冬の日差しが差し込む窓際に座って、多少難しく書かれた本を几帳面に読み上げていく。
しかし薬草図鑑は絵がかすかに汚れていて分かりにくく、治療術の本には痣ができたところに灰粉を撒いたり、熱が出た時には髪の毛を煎じたり、卵で濡らすとかいう不審な内容ばかり書かれていた。
しばらく読み上げていたマックは、すぐにため息をつきながら本を閉じる。
苦労して探し出した本なのに、まったく内容がないので力が抜けた。
「最小限の治癒魔法を使える人が一人でもいれば安心できると思うんだけど・・・」
魔法使いをさらに雇用したり中央神殿に高位神官を派遣してくれと要請する方法があったが、両方ともそれほど簡単ではなさそうだ。
領主ごとに自分の領地に優れた魔法使いを引き入れるために熾烈に競争している上に、オシリアの中央神殿でこのような地の果てに高位神官を送るはずがないのではないかとルースが言ったではないか。
マックは目を細めて悩み、他の本をもっと探す見上げることにして席を立つ。
しかし、半日近くこれといった成果を得ることができないまま、マックは重い足取りで図書館を出なければならなかった。
部屋に戻ると、ルディスが皮をカリカリに焼いたガチョウ料理とリンゴの漬物を乗せたクレープ、そしてヤギの乳を入れて煮込んだ濃厚なカボチャスープをたっぷり盛って夕食に持ってきてくれた。
しかし、あまり食欲がわかず、彼女は暖炉の前に座って夕食を食べるかどうかしながら、図書館から持ってきた本を読んでみた。
心の片隅では自分がこんなことをしても何の役に立つのかという気がしたが、それでも何かをせずには耐えられなかった。
マックは不安な目つきで燃え上がる炎を眺める。
リプタンが今は自分を好きになってくれるとしても、いつまでもそんな状態が続くという保障はない。
自分は彼が思っていたような高貴で愛らしい淑女ではなかったから。
彼がその事実を知る瞬間、彼の愛情も蜃気楼のように消えるかもしれない。
マックは全くそのような不安を振り払うことができなかった。
どんな場合でも動揺しない自分だけの席を持つためには、何をすればいいだろうか。
焦って本棚をめくったマックは、自らの卑屈さに呆れてため息をつく。
自分に何か小さな部分でも役に立つなら、もし飽きてもそばにいさせてくれるかも
しれない。
何かをしようとする彼女の行動にはそんな陰湿な計算が敷かれていた。
ぼんやりと本棚を見下ろしていたマックは、力なく膝の上に顔を埋める。
自分の中の歪んだ部分を自覚する度に危険な気分になった。
彼がすぐに両腕でぎゅっと抱きしめてこのような不安感を吹き飛ばしてくれれば良いのだけど・・・。
そんな思いで無性に寂しくなった。
翌日、マックは図書館の隅で古代の治療法をまとめた本を見つける。
彼女は一日中図書館に閉じこもって本を読むのに時間を費やした。
黄色く色あせた本には、古代語が小さな字でぎっしりと書かれていたが、幼い頃から図書館に隠れていたおかげで、難なく読むことができた。
ただ、後ろに行くほど初めて接する単語が増え始め、文脈を把握するのがますます難しくなってしまう。
マックはゆっくりと本のページをめくりながら羊皮紙の上に知らない単語を几帳面に書き写した。
古代に使われた治療道具や身体の特定部位を指す用語のようなので、関連する本を探してみると、いつの間にか机の上には本がたくさん積まれていた。
マックはペンをぎゅっと握りしめて鼻の甲の上にしわを寄せる。
役に立つかと思って手当たり次第に読んではいるが、実は探し当てた本の半分も理解できずにいた。
彼女は大きなため息をつく。
こうしていてまともに何かを学ぶことができるだろうか。
焦って頭をかきあげると、ガタガタという音が間こえ、図書館のドアが開いた。
ルースが中に入ってくるのを見て、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「ル、ルース!い、いつ帰ってくき、来たんですか?ふ、負傷者たちはもう大丈夫なのですか?」
「昨日の夕方に帰ってきました。負傷者も皆治療を受けましたよ」
ルースは無愛想に返事をし、指定席に向かってのろのろと歩いた。
そうするうちにふと机の上に広げられた本のタイトルが目に入ったのか、戸惑いながら訝しげな表情をする。
「治療術を習うつもりですか?」
彼は一番上の本を手に取り、片方の眉をつり上げた。
マックは自信のない顔でもぐもぐしながら答えた。
「また、あ、あんなことが起こるかもしれないから・・・、す、少しでも・・・、じゅ、熟知しておくといいと思って・・・」
鼻で笑うのではないかとハラハラする気持ちで彼の顔色をうかがっていたが、ルースが意外にも明るい笑みを浮かべる。
「とても感心な考えですね」
彼は子供を褒めたたえるように横柄に話し、反対側に椅子を引き抜いた。
「昨日から勉強を始めたんですか?見せてください」
彼女が許可を出す前に、ルースが羊皮紙の山を取り上げる。
マックは目を細めて彼を睨みつけた。
いつかあの魔法使いに、絶対に女性の物に許可なく手を出してはいけないという事実をはっきりと伝えておくべきだろう。
そのように心の中で誓っているが、ルースが意外なように尋ねた。
「古代語が書けるのですか?」
「お、幼い時に・・・、な、習いました」
彼女はぎこちなく吐き出した。
ロゼッタが完璧な淑女に育つまで、彼女は非常に厳しい教育を受けていた。
娘の愚かさを矯正しようとするクロイソ公爵のもがきだった。
しかし、厳しい教育にもかかわらず、彼女の症状は少しも良くならず、やがてロゼッタの明敏さが明らかになった。
その時になってようやく彼女は威圧的な家庭教師と父親の前で月に一度ずつ詩を朗唱する恐ろしいことから解放されることができた。
もちろん、彼女は一度も徹夜で覚えた詩を最後まで詠んだことがない。
最初の小節が終わる前に、父親にぐちゃぐちゃになるように鞭打ちされたからだ。
マックは、酷い記憶で青ざめた顔を隠すために急いで目を伏せる。
「じょ、上手ではないのですが・・・」
「筆跡を見ると、とてもお上手ですね?」
「ほ、本を読むのが好きだから・・・、よ、読み書きに問題がない程度です。難しい、単語は・・・、よ、よく分かりません」