こんにちは、ピッコです。
今回は103話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
103話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 二人きり
「すぐに離れろ!」
突然背後から雷のような叫び声が聞こえてきた。
マックはさっと顔を上げる。
しかし、彼の顔を確認する前に、突然体が後ろに倒れた。
彼女はバランスを崩して不細工に両腕をバタバタさせた。
野生馬が彼女のマントのすそをくわえて、荒々しく水中に引き寄せたのだ。
抵抗しようともがいたが、引っ張る力がどれほど強かったのか、マックはそのまま水中にざぶさぶと入って沈んでしまった。
彼女は驚愕し、必死に手足をもがいた。
しかし、いくら足をばたばたさせても、どこにも足が届かない。
こんなに深いところだったなんて。
恐怖に震え頭を激しく振ると、強靭な腕が彼女の体を強く上に引き上げた。
マックはほとんど本能的にその腕にしがみつく。
マントが破れて、自分を引き寄せていた力から逃れることができた。
マックは水面に浮かび上がるやいなや激しく息を切らしながら、自分を助けてくれた人に夢中で寄り添った。
背後に野生馬の怒った鳴き声が響き渡り、すぐ周りがしんと静まり返る。
彼女は当惑した視線を肩越しに向けた。
嘘のように静かな渓谷の風景だけが目に入った。
どこにも野生馬の姿は見えなかった。
状況を把握できず混乱して両目をあちこちに回すと、頭の上から突然激しい悪口が聞こえてきた。
「いったい何を考えているんだ!」
マックは激怒したリプタンの顔を半分ほど魂が抜けたまま見上げる。
彼は彼女を水から引っ張り上げ、両肩を痛め、乱暴に握りしめて振った。
「魔物を触るなんて!正気なのか?あれはケルピーだよ!危うく何が起こるところだったのか知っているのか!?」
「知りませんでした。や、野生馬だと思って・・・」
マックはかろうじて唇を震わせる。
彼は目を凝らして彼女を見下ろし、息をのむように強く抱きしめた。
固い鎧に押されて全身がつぶれるようだったが、激しい安堵感にマックは何の痛みも感じることができなかった。
彼女は彼の名前をつぶやきながら彼の首に腕を絡めて子供のように涙声になる。
リプタンが体をぶるぶる震わせながら確認でもするように彼女の首筋と顔を休む間もなく撫でた。
「大丈夫?どこか怪我はしてない?」
「あ、ありません」
リプタンは頭のてっぺんからつま先までくまなく調べる。
マックは彼が自分の目の前にいるということが信じられず、涙を浮かべながら死ぬように彼の裾を握った。
リプタンはマックを再び打ち砕くように抱き締め、激しく体を震わせた。
「絶対に隊列から離脱してはいけないと言ったじゃないか。何度も注意したじゃないか!私がどれだけ驚いたか知ってる?ガベルが、君が消えたという話をした時、私がどんな気持ちだったか知っているかと!」
「ごめんなさい、レ、レムが興奮してしまって・・・」
彼女は山で道に迷った話をとりとめもなく並べ立てる。
しかし、彼は聞いているようではなかった。
彼女を抱きしめたまましばらくびくともしなかったリプタンは、冷たい雨粒が頭の上にぽろぽろと降り始め、やっと腕を緩めてくれた。
彼は彼女の体をまっすぐにして、声を張り上げて尋ねる。
「歩ける?」
彼女はうなずいた。
すぐにでも気絶しそうに疲れていたが、彼が歩けと言えば一晩中歩けと言われてもそうするだろう。
リプタンが片手にはレムの手綱を、もう一方の手には彼女の手を握ったまま谷を抜け出した。
「き、騎士たちは・・・どこにいますか?」
「先に山を越えさせた」
マックは顔色を暗くした。
「わ、私のせいで・・・騎士団を置いてきたんですか?」
リプタンは木の後ろからタロンを引きずり出して彼女を振り返った。
彼の顔はいつ乱れたかのように無表情にこわばっている。
「ヘバロンが騎士団をうまく率いるだろう。あなたを見つけてすぐ追いかけると言った」
「で、でも・・・どうやって私を見つけたんですか?」
「跡を追ってきた」
彼は簡潔に答え、彼女の足元を見下ろす。
戸惑った顔で地面を見ていたマックは、土の道の上に撮られた自分の足跡を見て目を丸くした。
地形が不規則で、木の根があちこちに突き出ているため、注意深く見ないと分からないほど、かすかな跡が残っでいるだけだ。
こういうのを見て自分を追いかけてきたという言葉に驚愕した表情をすると、リプタンがその横にできた馬のひづめの跡とレムが通り過ぎながらつぶれた茂み、そして折れた枝などを順に指差した。
「実はあいつが一番役に立ったんだ」
「E、魔物が残した痕跡かも知れないという考えは・・・なかったのですか?」
「その程度は区分できる」
彼は生意気に言い返し、硬い顔で彼女をにらみつけた。
「雨が降る前に見つけたものを幸いだと思っている。足跡が洗い流された後だったら、こんなに早く追いかけられなかっただろう」
マックは身震いした。
もしリプタンが遅れていたら,彼女は今頃魚の餌食になっていただろう。
しかし道も塞がっていたのに、どうやってこんなに早く追いかけてこられたのだろうか?
まさか、あの岩の山を越えてきたんじゃないよね?
疑問に満ちた視線を送るが、リプタンが平たい岩の上に飛び上がり、彼女に向かって片手を差し出す。
「雨脚が激しくなる前に隠れ家を探さなければならない。急いで」
彼女は彼の手を握って黙々と山道を歩き始めた。
リプタンは片手で2頭の馬を導き、荒れた坂道を野生動物のように柔軟に登っていく。
どうして重い鎧をまとったまま、そのように静かに動くことができるのか、目で見ても信じられないほどだった。
マックはまぶたに染みるしずくをはたいて雨を降らせながら彼の黒い髪と太い首筋を濡らすのをぼんやりと眺めた。
彼の大きく開いた広い肩の上に雨粒が霧のように白く跳ね上がり、鎧は水に濡れて濃い灰色で光っている。
周囲を警戒する鋭い顔も雨水に濡れて滑らかに輝いていた。
リプタンには少しの疲労感も感じられなかった。.
長くて強靭な両足は少しも疲れた様子もなく、ぬかるんだ道を軽く歩いていき、彼女が少しでもふらつくと機敏につかむ腕からも力があふれた。
マックは畏敬の念まで感じた。
単に体力の差があるレベルを超えて、自分とは違う種族のように感じられた。
「あそこで少し休んでから行こう」
リプタンはマックの垂れ下がった肩を見下ろし、巨大な一抱えの木の下を歩く。
マックはどろどろという音を立て、かろうじて追いかけた。
彼は馬の手綱を葉の茂った枝の下に縛りつけ、よろめく彼女を両腕でさっと持ち上げる。
疲れすぎて「降ろしてほしい」という言葉も出なかった。
彼は大股で木の根元に近づき、腰を下げた。
6人の男が取り囲んでも、包みきれないような雄大な木の幹の間に、洞窟のようにくぼんだ空間が一つあった。
リプタンはその中に彼女を押し込み、すぐそばにびったりと寄り添って座る。
マックは塩漬けしたキャベツのようにぐったりした。
頭が石ころでもなったように、しきりに重く片方に傾き、体は寒いのか暑いのか見当がつかず、汗をだらだら流しながらもぶるぶる震えを繰り返す。
リプタンは胸甲を上手に脱ぎ、彼女を胸に引き寄せた。
マックは濡れた裾の向こうから感じられる熱気に、体の中に残っていた緊張と恐怖が跡形もなく溶け落ちるのを感じた。
野獣のように木の根元にうずくまって座り雨宿りの境遇にもかかわらず、まるで堅固な要塞に入ってきたように安全な気分になる。
彼女はできるだけ彼の脇腹に食い込み、大理石の彫刻のような固い肩に頭をもたげた。
リプタンが腕を包んだバンブレイスとガントレットも脱いで床に置き、熱い手のひらで彼女の肩と背筋をくまなく見回す。
「雨が止んだらまた歩かなければならない。少しでも目を瞑っていて」
「ほ、他の騎士は大丈夫でしょうか?ゴ、ゴブリンに再び襲われることは・・・」
「ゴブリンは水が嫌いだから、雨が降っている間は何事もないだろう。みんな、今頃は山を下っているだろう」
彼は彼女のチュニックの中に手を突っ込み、冷えた素肌を撫でる。
「余計な心配はしないで寝なさい」
骨の髄まで染み込む熱さに、マックは気だるいため息をついた。
リプタンは彼女の体をしっかりと包み込み、静かに山の中を見つめた。
彼の髪から水滴が落ちてくるのをかすかな目で見上げていたマックはすぐ疲労感に耐えられず、するすると目を閉じた。
遠くから風がひゅう、と森を揺るがす音が聞こえてきた。
無事にリフタンと合流できて良かったです!
他の騎士たちも無事なようで安心ですね。
リフタンが一緒にいるだけで、ここからの旅も安心して見ていられます。