こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
今回は67話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
67話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 不愉快な記憶
ナディアは馬車に向かって足早に歩きながら、考えを整理していた。
(父が私を疑っている・・・)
当然のことながら、父との関係に未練を感じることはなかった。
今さら家族としての情が残っているはずがない。
ナディアはただひたすら道を進むだけだから。
頭の中では、今後の計画の一部を修正しつつあった。
しばらくして、やがて侯爵家の馬車が見えてきた。
その近くで待っている人の姿が視界に入る。
待機していた召使いたちが立ち上がり、彼女を迎えた。
「すぐにお帰りになりますか?」
「ええ。」
これからは都の中で身を隠す必要はない。
だが、いざ馬車に乗り込もうとした瞬間だった。
足を踏み出した彼女を、ファビアンの声が呼び止める。
「マダム、少しだけお待ちください。」
「ファビアン卿?どうしました?」
「その、王宮の使者たちが通りがかるところを目撃し、内容を偶然耳にしましたが、どうしてもお帰りになる前に知っておくべきことがあるようです。」
ただの些細なことであれば、彼が自ら呼び止めることもなかったはずだ。
ナディアの表情が少し曇る。
「一体、何のことでしょう・・・?。」
「プレイ殿下に関することです。」
それはナディアが王妃と会話を交わしていた時に起きた出来事だった。
「うぅぅ・・・」
王宮から何とも弱々しい声が聞こえてきた。
一年ぶりに再び集められた侍従たちが聞いたのは、第1王子フレイのうめき声だ。
手にしている本のタイトルは『帝王の統治学』。
最初の章をめくって、ようやく10ページ目にたどり着いたところだった。
同じ文章を何度も何度も繰り返し読んでいる王子の瞳が、まるで小鹿のように震えていた。
(いや、どうしてこんなに説明が難解に書いてあるんだよ!)
その場で本を投げ捨てたくなる衝動を抑えつつも、ナディアが彼に向けた信頼感あふれる一言が、王子の動きを止める。
「それなら勉強してください。それで大丈夫です。」
「絶対にこの千載一遇の機会を逃してはいけませんよ。私の言っている意味がわかりますか?」
ウィンターフェル公爵夫人は、自分の可能性を初めて認めてくれた人だった。
公爵夫人が自分に語った言葉を思い返すたびに、自分を見つめるその視線にはいつも深いため息が隠されていたことを思い出さずにはいられなかった。
「王子殿下は本当に・・・はあ、何もかも・・・」
淡々とした表情に、半分は諦め、半分は失望が交じっている。
かつては後援者を表立って批判したこともあったが、いくつかの試行錯誤の末、彼は最終的に領地へ戻る道を選んだ。
その後、外界との接触はほとんどなく、首都の社交界にも一切関わらなくなった。
(自分を害しようとする噂に対しても、全く反応を示さなかったし・・・)
嘆願の年が終わった後も領地に戻ったという知らせ以外、何の情報も届いてこなかったため、一時的に期待を抱いてしまったのは事実だ。
しかし、期待していたことが無意味であったかのように、外界は一切接触を持とうとしなかった。
まるで彼女自身の存在を忘れたかのように。
「・・・」
フレイは思わず唇をかみしめる。
(あのときは未熟な子供だった。でも今は違う。)
自分に期待を寄せる誰かをまた失望させるようなことはしたくなかった。
プライドを抑え、自分を教え導いてくれた王師を探すことも、彼女が課せられた使命を成し遂げるためではなかったか?
ただ問題は・・・。
「ゴホン、ゴホン。」
連れてこられた僧が口を開こうとしない。
髪が真っ白になった老人が横に座り、目だけを開け閉めしている。
ここに来るまでの過程がどれほど困難であったかに関わらず、数時間が過ぎてもまともな教えを聞くことはできなかった。
(一体どういうつもりなのか・・・)
フレイが目線を動かしているのをどうやって察したのか、彼が冷ややかな声で言った。
「他のことを考えているところを見ると、読書は終わったようですね。」
「それは・・・。」
「序文の内容を私に要約して説明していただけますか?それができないのなら、それはその本の内容をきちんと理解したとは言えません。」
「だから、それは・・・。」
フレイは背中に冷や汗が流れるのを感じた。
理解できない内容をどうやって要約せよというのだ?
(難しい内容だから助けを求めたんだ!一目で理解できるなら、独学で済ませたさ!)
しかし、初日から僧と争うわけにはいかない。
我慢だ。我慢しなくては。
深呼吸をしたフレイが再び口を開こうとするその瞬間だった。
「いや、もう序文すら読み終えていないのですか。十分な時間を差し上げたのに、なぜそこまで進まないのです?もしかして授業中に他の考え事をしていたのではないでしょうか?」
「何だと?」
短時間で序文を完璧に理解することが当然だという態度だった。
それがいかにも簡単なことだと言わんばかりの態度で。
頭の中が混乱に陥った。
(・・・普通の人はこんなこと簡単に理解できるのか?)
普通の人にとっては不可能なことも、王位に就く者にとっては当然要求される能力なのかもしれない。
彼は自分の弟リアムがこの場にいたらどんな行動を取っただろうかと想像してみた。
(きっと落ち着いて優雅に応答していただろう。)
弟は自分よりずっと賢かった。
幼い頃から学者たちに称賛されていたのだから。
ふと、疑念が湧くような気分になった。
フレイは自分の言葉を理解できないだろうから、説明してくれと頼むこともできなかった。
「久しぶりに読む本だから集中できなかっただけだ。もう少し時間をくれ。」
「・・・いえ、その必要はありません。」
「え?」
いよいよ本格的な授業が始まるのだろうか?
フレイの表情が少し明るくなる。
しかし、王子の口から出た次の言葉はまったく予想外のものだった。
「私が今日宮殿に入ったのは、前下の行いが少し変わったという話を聞いたからです。でも、どうやらそれは誤報だったようですね。」
「それはどういう意味ですか?」
「学ぶ意思が芽生えたというお話を聞いて、再び前下に期待を寄せてみたのですが・・・今思えば、私の考えが間違っていたようです。」
「いや、今一体・・・。」
言葉を失い、口ごもるしかなかった。
どう考えても態度が乱暴だと言われるような振る舞いは一度も見せたことがなかったからだ。
「何が不満なの?私の態度に問題があるなら言ってみて。」
「学ぶ意欲がまったく感じられないんですが?私の前でも集中できないのであれば、他の場面ではどうなるんですか?考えてみてください。自分の意志がないのであれば、教えられることが何の意味があるのでしょうか?」
「集中しなかったわけではなくて・・・。」
本の内容を理解できなかっただけだ、という意味だった。
言葉が出てこなかった、出せるわけがなかった。
(リアムならこんなことはなかっただろう。)
学者たちの質問にも的確に答え、ひょっとしたらこの本も独力で読破していたかもしれない。
そんな考えが浮かび、ついに「無理だ」という言葉が口から出なかった。
沈黙が続く中、老人は腰を掛けていた椅子から立ち上がり、上着を着始めた。
「今、何をしているの?」
「私はこれで帰らせていただきます。王子のご命令もすぐに撤回させるようにいたします。」
「何?帰るって?今すぐに?」
自尊心が粉々にされて飛び散るような気分だ。
フレイの口がぽかんと開いた。
自尊心を振り絞ってここまで来たというのに、なんだって?
集中できないからといって叩きつけて捨て去ろうというのか?
あまりに軽率で横柄な態度に、プレイは怒りを抑えきれなかった。
まるで最初から自分を利用しようとしていたかのように思えた。
彼は机を叩き立ち上がると問いかける。
「最後に聞く。本当にこのまま王宮を出て行くつもりか?」
「私は学ぶ意思のない弟子は受け入れません。」
自分を見つめる老人の表情が微妙に変わったのはまさにその時だった。
彼の顔に広がる失望と無視を、フレイは見逃さなかった。
それは、これまでに何度も目にしてきた表情だったからだ。
招かれた学者たち、父、弟、神官たち、そして後見人まで・・・。
自分に失望し、見限るときのあの表情。
不愉快な記憶が胸を締め付ける。
「それなら、もう時間を無駄にする必要もない。」
プレイは眉をしかめ、言葉を遮るように続けた。
「戻るなり、授業を続けるなり、自分の好きなようにしなさい。」