こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

83話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 帰郷
首都を離れてから一週間。
レリアは国境近くの広い草原を駆け抜けてまた走った。
あと大きな領地を一つ、小さな領地を一つ越えれば、シュペリオン領地に到着するところだ。
孤独な旅ではあったけれど、自分なりに悪くない経験だった。
馬に乗り、野営し、食べ物を手に入れて食べる。
今でなければできないことばかりだ。
友達が恋しいという気持ちさえなければ、とても良い時間だった。
それでも、領地に着けば家族に会えるという思いが心の支えとなった。
特に叔父に会うのは、戦場に向かった後初めてとなるので、恋しさが募った。
広い草原を越え、トリック伯爵家の領地に入った時だった。
ここはクロイツ教の聖地として知られる場所だった。
巡礼のために訪れる人も多く、観光都市でもあった。
聖地なだけあって、非常に大規模な神殿があり、神聖な中心区域では神官たちが直接管理していると聞いていた。
そのせいか、領地に入るやいなや神官の服を着た人々がたくさん見えた。
レリアはなんとなく後ろめたい気持ちになり、ローブを深くかぶって馬を進めた。
今夜はこの辺りの伯爵領の宿屋で夜を過ごすつもりだった。
宿屋を見つけて馬を預け、中に入ろうとした時、隣の食堂から大きな騒ぎが聞こえた。
客の様子を見ようとした従業員が、隅の方で捕まえられている男性を人々が引っ張って行くのを見た。
「違う!僕は錬金術師じゃないって!助けてくれ!」
その男は大声で叫び、もがいていた。
ちょうど食事をしていたところだったのか、手にはスプーンを握っていた。
レリアは目を細めて、社の中から出てくる者たちをじっと見つめた。
神官ではなかった。
まるで傭兵のように荒々しい風貌の者たちだった。
彼が近づくと、人々が群がって会話を交わしていた。
レリアは耳を澄ませて聞き取った。
「ちっ、錬金薬に似たものを使っただけでとりあえず連れて行って……何もできないってことじゃないか。」
「そうなんだよ。神殿が直接発表したものだって、傭兵だの猟師だのがもう大騒ぎさ。大混乱。」
「本物の錬金術師を捕まえるならともかく!あの人は普通の商人なのに、なぜ連れて行かれるんだよ!しかも飯を食ってただけの人を!」
「特に気をつけなきゃ……下手に動けば大変なことになるかもな。」
レリアはその話を聞きながら宿屋へ入った。
部屋に入ったレリアは、そっと息を吐いた。
階段で会った女将さんに尋ねてみると、最近神殿では錬金術師を探し出すため、大々的な捜索を行っているという話だった。
巡礼地がある伯爵領のように、神殿に好意的な都市からその捜索が始まっており、神殿が大きな影響力を持つ地域では…
レリアは無事に持ち物検査を通過して検問を越えることができたが、その直後に自分の後ろに追ってくる者たちがいることに気づいた。
振り返ると、馬に乗った十数名の兵士が彼女を追っていた。
昨日宿屋の前で見た傭兵たちだ。
レリアは唇を噛みしめて馬を走らせたが、乗馬においては相手の方が上手で、森の入り口で捕まってしまった。
「くそ…たしか睡眠薬を飲んだはずじゃなかったか?」
「知らん。あの女が金だけ受け取って薬を飲ませなかったのかもな。」
「戻ったら死ぬんじゃないか?」
「目の前にもっと大金があるのに、何しに行くんだよ?」
彼らは欲深い視線を送りながら笑った。
レリアはその視線に嫌悪感を抱いた。
「一体どうして私についてくるの?」
レリアが尋ねると、彼らは肩をすくめた。
「今のような物騒な世の中で、一人旅なんて無謀だろ。俺たちみたいなやつがいないとさ。」
「心配するな。おとなしくしていれば怪我することはないから。俺たちは賞金さえもらえればいいんだ。」
「賞金って何のこと?」
まさか……
「うん、君は今日から“錬金術師”になるんだよ」
「なあ、トリック領より隣のテレス領の方が賞金をもっと出すってさ?だからそこまでこっそり行こうぜ?」
汗だくの男がくすくす笑いながらそう言った後、背後から弓を取り出した。
彼が狙ったのは、レリアが乗っている馬だった。
一度馬から振り落として、手足を縛るつもりのようだ。
レリアは慌ててアイテムウィンドウを開き、馬の尻を叩いて逃がした。
そんなレリアを嘲笑いながら、男は素早く弓を放った。
しかし男はその場でも、また遠くからでも、レリアの乗った馬を追うことはできなかった。
男が放った矢は空中でふわりと止まり、まるで時間が止まったかのようにそのまま浮かんでいた。
「何だ?」
奇妙な場面に、見物人たちがざわめき出した。
「ぎゃああっ!」
突然、ひとりの男が馬から転げ落ちて悲鳴を上げた。
その後に続いたのは戦慄すべき光景だった。
地面に倒れた男が恐怖に満ちた声をあげていた。
彼の体から流れ出た血は、どこかへと吸い取られていた。
男は一瞬で全身の血を抜かれ、恐ろしい姿となって転がった。
見物人たちは悪魔を目にしたかのように驚愕し、次々と逃げ出した。
しかし、レリアはその場に立ち尽くしたまま、何もできなかった。
血を吸い取った剣が赤い光を放ち、振動していた。
その剣を握っていたのは――オスカーだった。
「レオ、俺が言わなかったか?」
「………」
「学習能力がないな。」
彼は手綱を引きながら笑った。
冷たい笑みだった。
「あれほど警告したのに……また俺を捨てるか?」
レリアはあまりに驚いて何も言えなかった。
(どうしてあなたがここに……)
心の中でそうつぶやいていると、後ろからざわめきが聞こえてきた。
まさか、あの逃亡者たちをオスカーがこっそり追ってきていたとは思いもしなかったのだ。
レリアは背後で起こったおぞましい光景を見たくなくて、ぎゅっと目を閉じた。
「目を閉じるな。」
目の前で低い声が聞こえた。
その声に、レリアは再び目を開いた。
理由はわからないが、オスカーが怒りのこもったまなざしで彼女を見つめていた。
彼の剣は先ほどよりもさらに赤く光を放っていた。
なぜか息が詰まるような気がした。
オスカーは軽く手首を回して剣を鞘に収めながら言った。
「逃げても、目を閉じても無駄だよ。レオ。」
レオだって……。
レリアは自分をそう呼ぶオスカーに彼女は戸惑い、恐怖に包まれていた。
彼女にかけられた禁言魔法は、基準が正確でありながらも曖昧だった。
レリアが「レオ皇太子」として中立地域に行ったという事実を口にすれば死ぬ。
彼女が話していなくても誰かが自然に気づくのは構わないが、それをレリア自身が認めるとなると別の問題だ。
すぐに確信が持てない以上、禁言魔法が解けるまでは身体を守るほかない。
「………」
レリアは誰かに聞かれていないかと思い、辺りを見渡した。
しかし周囲には、血まみれで倒れている傭兵たちの死体があるだけだった。
彼らが乗っていた馬が逃げていく姿以外に、見えるものは何もなかった。
「その名前で呼ばれるのが嫌なのか?」
オスカーはとても穏やかな声で尋ねた。
しかしその顔は冷たく、目つきは鋭かった。
緊張感が漂っていた。
レリアは彼を刺激しないように、ゆっくり馬から降りた。
「え、どうしてここに……」
レリアが聞くと、彼は表情を一つも変えずに平然と答えた。
「この期に及んで、それが気になるのか?お前が王都を出た瞬間から、ずっと後をつけていた。俺の警告を無視したのはお前だ。」
オスカーは平然と言った。
レリアはぎゅっと目を閉じた後、再び目を開けた。
『一週間もこっそり私の後をつけてたって?』
どうしてそれに気づかなかったの?
錬金も知らなかったの?
ʘʘ…ʘ_ʘ…
「………」
..(。。)…ご主人についてくるのは当然のことで…..( 。_。)… ご主人についてくるのは当然のことで…
だから、知っていたってわけだな。
レリアは頭がズキズキして額を押さえた。
オスカーは目を細めたまま彼女を見下ろしていた。
自分について来たのがそんなに嫌だったのか?
本当にまた自分を捨てようとしていたのか?
彼の胸はナイフで突き刺されたような感覚だった。
裏切られた思いに歯が震えた。
その時、レリアが何かを言おうと口を開いた。
オスカーはわずかな希望を抱いて切実に彼女の唇を見つめた。
「私は……オスカー様が何をおっしゃろうとしているのか分かりません。」
しかし、レリアの口ぶりは再び彼を裏切った。
彼の目に冷たい光が宿った。
レリアは慎重に顎を上げて彼を見上げようとしたが、すぐに視線をそらした。
オスカーの目をまともに見ることができなかった。
彼はまるで崖っぷちに追い詰められた獣のようだった。
赤い瞳には、自分を窮地に追い込んだ狩人に対する敵意、そして死を恐れるか弱く切ない姿――その両方が共存していた。
レリアは知らないふりをするしかなかった。
「レオ」であるという事実をすぐに認めるわけにはいかない。
一瞬のミスで禁言の魔法が発動すれば、すべてが終わってしまう。
今、オスカーの目の前で血を吐いて死んでしまうかもしれないのだ。
オスカーにこれ以上深い傷を与えたくなかった。
「…最後まで知らないふりをするつもりなら、仕方ないな。」
「………」
「そうか、レリア。なぜお前を追ってきたのか気になるんだな。簡単なことさ。俺は、レオを殺した犯人としてお前を疑っていた。」
「そんな…!レオ様を殺した人はもう処刑されたって……」
「いや、お前だ。お前が殺したんだ。」
動揺して否定しようとしたレリアは、口を開きかけたが、そのまま止まった。
オスカーもまた、レリアが真犯人でないことはわかっていた。
『私がレオであることを否定するというのは、つまり、レオを殺したのも同然だという話になってしまうじゃない。』
そういう意味なら、言い返す言葉もなかった。
言い逃れのしようがない。
「だからお前をレオの代わりだと思おうとしている。レオに言えなかったことを、お前に全部話そうと思って。」
「それって一体……」
「レオの代わりにお前を手に入れる。」
レリアの眉間がピクッと動いた。
今、オスカーは一体何を言ってるの?
「俺は……レオが生きていたなら、もう一度──俺はそう考えてたんだ。でもレオが死んでしまったから、お前も連れていくしかないんじゃないか?」
「な……何を……。」
「レオは俺に約束したんだ。ずっと俺のそばにいるって。」
そう言ってオスカーは、まるでそれが何の問題もないかのように笑った。
レリアは言葉を失った。
レオにそのような約束をしたのは、事実だったからだ。
けれども、それは――
レリアは昔のことを思い出した。
神殿で過ごしていたある日。
オスカーにまた発作が起きた、そんな日のことだった。
「オスカー、大丈夫。何も聞こえないから。」
「うぅ… レオ… レオ……」
「僕がそばにいるじゃないか、心配するなよ。オスカー。ね?」
ようやく落ち着いてきたオスカーが彼女の服をつかんで尋ねた。
「ぼ、僕は一生こんなふうに生きていかなきゃいけないのか… こわい… あ、雷の音が僕を……」
「ううん、そんなこと考えないで、オスカー。私があなたを守ってあげるから。ね?」
「…一生?」
「…そう、一生。だから怖がらないで」
「……。」
「私が守ってあげる。」
レリアは自分より小さなオスカーを抱きしめ、そうして彼を安心させた。
その瞬間、オスカーを落ち着かせるにはそれしかなかった。
だが、時間を巻き戻して過去に戻ったとしても、レリアは同じ言葉を繰り返しただろう。
こんな日が来ると分かっていたとしても。
「だから、もう君は僕のものだ。」
「……。」
「僕が手に入れる。」
そう言う声は低く、そして危険だった。
オスカーはレリアの片方の肩をつかんで近づいてきた。
脅かすように距離を詰めてくる様子に、レリアは無意識に後ずさってしまった。
レリアは心の中で三つ数えて目を閉じた。
こういう時ほど、しっかりと気を持たなければならなかった。
オスカーは幼い頃に受けた傷に、レオの死による衝撃が加わり、大きなトラウマを抱えていた。
一言でいえば、精神的に完全に健康ではないということだった。
レリアはそのことに責任を感じていた。
だからオスカーを癒すことも、彼女の務めだった。
「オスカー様、とにかく落ち着いてください。」
「………」
まるで患者に接するような口調に、オスカーの唇が震えた。
「とりあえず…深呼吸をしてみてください。」
「何をしようって?」
「ひ、人は物じゃありません… 持ち物として扱うなんて…できません。」
「…はあ。」
「それに私は奴隷でもありませんし… だからまず落ち着いてください…。」
オスカーは制御が難しかった。
こういう相手には、より慎重に接近しなければならなかった。
幼い頃のオスカーよりも、さらに慎重に。
まるで子猫をそっとなでるように。
「まずは助けてくださってありがとうございます。」
「……」
レリアが冷静にお礼を述べると、オスカーの表情はさらに曇った。
彼女が引き続き拒絶し、自分を突き放すのだろうと予想していたのに、意外だった。
もしレリアがそうしていたら、また感情を抑えきれずに傷つけていたかもしれない。
オスカーは、レリアがこれから何を言うのかを見守るつもりで彼女をじっと見つめた。
さっきよりも穏やかになった瞳を見て、レリアは静かに息を吐いた。
「私は故郷の領地に戻らなければなりません。そこで片付けなければならないことが山ほどあるんです。」
「……そこって、どこ?」
「…シュペリオン領地です。」
レリアは彼が気づけるように、ぎこちなく話を続けた。
「実は私、幼い頃に皇城を抜け出して逃げたことがあるんです。その時に助けてくださった方々がいて、その恩返しをしなければならないんです。当時の私は本当に幼くて… 怖くて、何もできない子どもだったんです。」
「………」
(=「悪意を持って騙したのではなく、私もどうしようもなかった」)という意味が込められていた。
幸いにも、オスカーはある程度その意図を読み取ることができたようだ。
彼の瞳が揺れていた。
相手がオスカーで本当に良かった。
もしカーリクスだったら、絶対に気づかれなかっただろう。
「とにかくその場所へ行かなければなりませんが……」
「……」
「一緒に行きませんか?」
レリアは慎重に提案した。
ここまできた以上、オスカーを置いていくことは不可能だ。
あの目つきを見れば分かる。
絶対に彼女から離れまいという、意志のこもった鋼のような視線だった。
レリアが先に素直に提案すると、オスカーはゆっくりと彼女の首元をつかんだ。
瞳は冷たく、表情も冷ややかだったが、反応そのものはまるで子猫のように従順だった。
「でも、そこへ行くなら必ず守ってくれなきゃ、もう二度と私を… レオ様と呼ばないでください。あの方たちには何も言ってはいけません。」
「わかった。」
こうして、予想もしなかった同行者ができてしまった。
突然の提案に、レリアは気が重くなったが、オスカーの表情はむしろ安心したように見えた。
『そうか、オスカー。君がそれで安心できるなら、それでいい……』
レリアは内心でため息をつきながら再び馬に乗った。
しかし、何かがおかしかった。
レリアは馬の上からオスカーを見下ろした。
「…乗ってきた馬は?」
「馬に乗ってきたことはない。」
「……」
レリアは目をぱちぱちと瞬いた。
じゃあ、歩いてきたってこと?
「じゃ、じゃあどうやって私について来られたのか……」
「均衡を作ったから。」
オスカーは平然と答えた。
レリアは一瞬呆然とした。
『均衡?均衡って……空間の均衡を言ってるわけじゃないよね?』
幼い頃、祖父が神典の聖書を見せてくれたことがあった。
祖父は特定の宗教を信じる必要はないが、聖書は歴史書でもあるから読んでおくべきだと言っていた。
ただし、内容が難しすぎて直接読むのは困難だった。
その書物には、古代魔族たちが持っていた力についての説明もあったが……その中のひとつが「空間の均衡」だった。
つまり、魔族たちは指先で虚空に均衡を作り、空間を移動させることができた。
とてつもない魔力を持った上位魔族だけが可能な能力であり、彼らはその力を使って数千万の魔族軍を率いて人間たちを襲おうとした。
『でも、それをあなたが使えるって?』
レリアの視線は、彼の腰にかかっている魔剣に向かった。
あの魔剣を最初に持っていた者でさえ、あれほどの力は使えなかったはずだ。
レリアはオスカーに対する恐れが湧いてきた。
同時に、あの魔剣の力がオスカーを飲み込んでしまわないかという不安もあった。
しかし、レリアが同行を許したからだろうか、
オスカーの表情は子猫のように穏やかになっていた。
こうして見ると、幼い頃の顔がまだ少し残っているようにも見えた。
最初に再会したときは別人だと思ったのに。
ともかく――
『ここまで来たけど、オスカーに均衡を作ってもらって領地まで移動するってことなのかな?』
そう思ったが、魔族たちが持っていた力だと聞いて、どうにも後ろめたく感じた。
『もちろん私は他人から見ればもっと後ろめたい力を使ってるけど……』
【[…] (⊙△⊙;) …】
錬金が「ゾワッとする力」という言葉に反応してメッセージを表示したが、レリアは無視した。
「そうだ、とにかく行こう。どうせ残された道は安全な草原道だけで、もう少し進めばいい。」
レリアはそう考えをまとめて、オスカーに言った。
「では、一緒に馬に乗りましょう。私の後ろに乗ってください。」
オスカーはその言葉が終わるや否や、素早くレリアの背中に乗った。
背後から感じられる鈍い気配に、レリアは肩を震わせた。
(私が後ろに乗るって言ったっけ?)
その時だった。
背後から、たくましく太い腕が前に伸びてレリアの腰をしっかりと抱きしめた。
まるで罪人や奴隷に付ける鉄鎖のように力強く拘束する腕だった。
「そ、それは……」
レリアは「これは違う」と拒もうと、体を少し持ち上げた。
しかし首を振り返ると、オスカーの顔がすぐ目の前にあり、もう一度しっかりと彼の顔を見つめるしかなかった。
「オスカー様……それならせめて、しっかりと手綱を持ってください」
レリアの言葉が終わるや否や、オスカーが手綱を握った彼女の手の上に自分の手を重ねた。
大きな手に包まれて、彼女の手は隠れてしまった。
レリアはそれを見て眉をひそめた。
『私が隊長だったのに……。』
いつの間に手がこんなに大きくなったの?
明らかに小さかったはずなのに。
この状況に、なぜか自尊心が傷つき、背中越しにオスカーをとんとんと押しやった。
一緒に馬に乗っているとはいえ、ここまでくっつく必要はないのでは?
オスカーはまるで体に執着する人のように、身体をぴったり寄せていた。
レリアは少しでも快適な姿勢を見つけようと身じろぎした。
だが何かが腰の下に当たっているようで、ひどく不快だった。
ポケットから何かが落ちたのかと思って手を後ろに伸ばしたところ、その瞬間、オスカーが彼女の手首をつかんだ。
「こんな状況で触るとちょっと困る。言っただろ、俺はお前が男でもこうするって。」
「……?」
レリアはオスカーが手首を放したとたん、すぐに手綱を握った。
しばらく呆然としていたレリアは、ようやくオスカーの言葉の意味に気づいた。
自分が触れていたのが何だったのかも。
『……!!!』
衝撃で目の前がぼやけた。
頭の中で非常ベルのような鐘の音が鳴っているようだった。
ぼんやりとした中で、オスカーの姿が頭の中をかすめていった。
『あの可愛くて優しかった子が……』
以前にも感じたが、レリアは幼い頃に仲良くしていた友人たちが「大人の男性」になったことにあらためて気づかされるたびに、妙な気持ちに包まれた。
レリアが何も言わないでいると、オスカーがやや戸惑ったような声で尋ねた。
「どうして、同じ男なのにこんなふうにされるのが嫌なの?」
なぜか少し怒ったような声でもあった。
レリアは混乱していた。
オスカーはレリアが「レオ」であるという事実には気づいていたが、女性だという事実は知らなかったようだ。
これはカーリクスのおかげだった。
幸運だったと言うべきか……あとでまた騙されたと知ったとき、オスカーがどんな表情をするか怖かった。
「え、いや…それじゃなくて…すごく……」
レリアが返答をためらうと、オスカーは別の意味に解釈した。
「え、驚いたのか?そんなに驚くなよ。お前もこのくらいの大きさにはなるって、カーリクスが言ってたぞ。」
「……」
「処理してこようか?一、二度じゃ済まなさそうだし。」
「いえ。」
レリアは素早く返事をしながら、近くに置いてあった包みを一つ取って背に担いだ。
いくつかの服が入っているだけらしく、それほど重くはなさそうだった。
もちろん、適当に背負ってみたが特に効果はなかった。
オスカーはその行動に呆れながらも、特に指摘はしなかった。
レリアは唇をぎゅっと結び、馬を引き始めた。
こうして二人を乗せた馬は草原を抜け、森の中へと駆けていった。









