もう一度、光の中へ

もう一度、光の中へ【143話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【もう一度、光の中へ】まとめ こんにちは、ピッコです。 「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となってお...

 




 

143話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • もう一度、光の中へ

祈祷室の壁の上方には、古くから掛けられている大きな肖像画があった。

少女はこの神殿を訪れるたびに、必ずこの祈祷室に足を運び、その肖像画を見上げた。

肖像画の下には、その人物についての説明が記されていた。

『神聖大帝国エルミティの初代皇帝の妹であり、かつてエルミールの皇女。光の神に仕える聖女であり、精霊王の契約者。』

肖像画の女性は、柔らかな表情で微笑んでいた。

これ以上ないほど幸せそうな顔で。

その絵を見上げる少女の髪は――

リカラックは埃のような灰色だったが、日差しを浴びるとごくたまに銀色の輝きを放った。

『かなり違うけれど、それでも少しは似ているかもしれない。』

少女は自分の髪を撫でながら心の中でそう思った。

アイシャ皇女といえば、このエルミティ帝国で知らぬ者はいなかった。

エルミティ帝国が世界最強国となれた背景には、初代皇帝ビダン・イシスだけでなく、アイシャ皇女の存在もあった。

彼女は常に弱者を庇い、貧しい人々を救い、信念を失わなかったという。

この神殿も、アイシャ皇女の頃から救貧院を兼ねていた。

幼くして孤児となった少女は、この神殿から多くの助けを受けており、だからこそアイシャ皇女を強く慕い、さらには憧れ、彼女のようになりたいとまで思うのは、不思議なことではなかった。

アィシャ皇女は、この上なく高貴な皇族であった。

それに対し、少女はレースを編みながら、日々なんとか食いつなぐ暮らしをしていた。

それでも、夢を見ることは許されていた。

『心が落ち着く気がする』

少女は飽くことなく、その絵を見上げた。

皇女の微笑みを見つめていると、不思議と胸の奥が温かくなる。

生活費を稼ぐためには、ひとときも休まずレースを編まなければならないのに、この絵の前に立つと、どうしても足を止めてしまうのだった。

『皇女様は、本当に素敵な人だったんだろうな』

そう思いながら、少女は想像を膨らませた。

きっと彼女は華やかな皇宮で、美しく微笑み、そのそばにはいつも精霊たちが寄り添っていたのだろう。

一度も見たことのない光景なのに、この肖像画を見ていると、なぜかその景色が鮮やかに心に浮かんでくるのだった。

しばらく想像に浸っていた少女の背後から、誰かの声が聞こえてきた。

「またそれを見ていたのか?」

「あ、騎士さま……」

振り返ると、一人の騎士が立っていた。

突然で驚いた少女は、はにかんで笑みを浮かべた。

「こいつめ。」

すると、その騎士は翠色の瞳を細めて笑った。

騎士といっても少女と大きく年が離れているわけではない。

今は二十歳前後だろうか。

彼はこの神殿に所属する聖騎士の一人だった。

彼は幼い頃に両親を亡くし、神殿に身を寄せていた少女を、まるで年の離れた兄のように面倒を見てきた。

それほど心優しい人物だった。

「立派な絵だな。私もつい見惚れてしまうよ。」

騎士は少女のそばに近づき、彼女の肩を軽く叩いた。

少女は自然に身を向けたが、そのとき何かを見つけた。

「ここ、汚れてますよ」

少女は指先で彼の上着の裾をそっと押さえて見せた。

騎士は慌ててマントを持ち上げ、その下を覗き込む。

そこには、パンくずが落ちていた。

「ほんとに、服がきれいな日なんてないですね」

少女の言葉に、騎士は自分の茶色い髪をかきながら答えた。

「まあ、たまにポロポロこぼすことはあるけど……」

「たまに?」

少女はくすくすと笑い、騎士は少し居心地悪そうに目をそらした。

「ほら、主よ。今日は新しい司祭様も来られたんだ」

「新しい司祭様が来たんですか?」

少女は微笑んだ。

「そういえば、今回教団から新しく任命された方ですよね。」

「ああ……」

そういえば、今回新たに司祭様が赴任されたという話も聞いていた。

しかし、それは少女にとってあまり関係のないことだ。

少女が神殿で会う相手といえば、この騎士と、レースを取引するための数人の司祭ぐらいのものだったからだ。

(そういえば、早くこのレースを売りに行かないと。)

少女はかなり時間が経っていたことに気づき、はっとした。

手に持っていたレースをもう一度しっかりと握りしめ、確認する。

騎士が横から尋ねた。

「それ、今回新しく編んだものか?」

「はい。」

「変わった模様だな。ちょっと見せてもらってもいいか?」

少女は素直に肩紐を外し、レースを差し出した。

騎士はそれを広げ、透き通るような白いレースに目を落とす。

そこには繊細な模様が編み込まれていた。

「鳥か?」

「はい」

少女は少し恥ずかしそうに説明を付け加える。

「小さい頃のことなんです。両親がまだ元気だった頃……私、お腹に白い痣があったらしいんです。だから名前もそれにちなんでつけられました」

「そうか」

「昨日はなぜか白い鳥が出てくる夢を見たので、試しに作ってみたんです」

「とてもきれいだ」

騎士はそのレースをじっと眺め、そっと少女に返した。

少女はにっこりと笑った。

レースをそっと丁寧に撫でるのは、とても心地よかった。

無邪気に震える指先で行うには、かなりの根気を要する作業だ。

彼は本当に思いやりにあふれた人物だった。

「私はもう行かなければなりません。レースを売って、また新しいものを作らないといけないんです。」

騎士は少し気の毒そうな表情をした。

おそらく、苦労が多いと感じているのだろう。

しかし少女は、ぎゅっと手を握りしめた。何しろ、両親がいない以上、自分の力で生きていくしかないのだから。

そのとき、外からざわめきが聞こえてきた。

司祭たちの声だ。

不思議に思った少女は外を見やった。

「……というわけで、こちらが祈祷室です。」

その声を一緒に聞いた騎士が、隣で独り言のように呟いた。

「新しくいらした司祭様のようだな。」

続いて聞こえてきたのは、聞き覚えのない声だった。

「そうですか。」

その声は、力強くも響きが美しい。

少女は胸の奥に大きな波が立つのを感じた。

――これは、いったい何の感情なのだろう?

どこか切なく、それでいて幸福で、甘やかな感覚。

抗えぬ運命の流れに飲み込まれるように、少女は自分でも説明できない思いに包まれ、その場から動けずにいた。

足音が近づくたび、心臓の鼓動も高鳴っていく。

やがて、扉を開けて入ってきた修道士たちは少女と騎士の姿を見つけた。

その中の一人が少女に気づき、笑みを浮かべて声をかける。

「おや、君じゃないか。今日もレースを売りに来たのかい?」

少女はそっとこま結びをいじりながら、新しい司祭をちらりと盗み見た。

新しい司祭は本当に若く見えた。

ほとんど隣にいる騎士と同じくらいの年齢に思える。

そのとき、初めて少女と司祭の視線が交わった。

「……あ。」

少女は短く感嘆の息を漏らした。

彼の瞳は美しい金色だった。

生まれてから、これほど美しい色を見たことはなかった。

なのに、なぜだろう。

その瞳を見つめた瞬間、涙が込み上げそうになったのは。

少女と司祭が見つめ合った時間は、ほんの一瞬のようでいて、永遠のようにも感じられた。

『彼も私と同じ気持ちを感じたのだろうか?』

そうであればいい、と少女は心から願った。

少女を見つめていた司祭は、こま結びを解き、他の人々に向かって話し始めた。

「……素敵な祈祷室ですね。」

「そう思われますか?特に、この皇女殿下の肖像画は本当に美しいでしょう。他の神殿からも、これを見にわざわざ訪れる方がいらっしゃるのです。」

神殿の自慢に対する褒め言葉に、周りの修道士たちは満足げに微笑んだ。

修道士は頷きながら答える。

「そこでお願いなのですが、この場所をもう少しゆっくり見学させていただいてもよろしいでしょうか。」

「もちろんです。その間、私たちは本堂で祈りを捧げていますので、ご自由にどうぞ。」

「ありがとうございます。」

修道士たちが新しい修道士を案内してその場を離れると、祈祷室には彼と少女、そして騎士だけが残った。

修道士はゆっくりと二人の方へ歩み寄る。

少女は緊張で体が固くなっていった。

少女は、言葉を発することができなかった。

騎士が先に口を開いた。

「新しくいらした司祭様ですか?」

「ええ。」

司祭は静かにこま結びをいじっていた。

少女は瞬きもせず、その司祭を見つめ続けた。

やがて司祭が自分の名を告げ、少女の名前を尋ねた。

ためらいがちに、少女は小さな声で答えた。

「……はい。」

「そうですか。」

彼はこま結びをいじりながら言った。

「いい名前ですね。」

騎士は二人を交互に見やって言った。

「では、私はもうすぐ警備の交代時間なので……」

二人に挨拶を済ませた騎士は、祈祷室の外へと出て行った。

二人きりになった少女と修道士は、しばらく無言で絵を見つめていた。

先に口を開いたのは修道士だった。

「美しい絵ですね。」

少女は少し戸惑いながらも答えた。

「私もこの絵がとても好きなんです。神殿が誇る宝物の一つなんですよ。」

「他にも宝物はあるのですか?」

「はい、その……神殿の前にある聖なる木をご覧になったことはありますか?何百年もの間、あの場所に立ち続けているそうです。それから、まだ他にも……」

話すうちに、少女の緊張は少しずつ解けていった。

目の前の修道士が、彼女の言葉を深く、丁寧に聞いてくれているからかもしれない。

少女は少し勇気を出して尋ねた。

「修道士様、もしよろしければ、私が神殿をご案内してもいいですか?ここにはよく来ていますので、内部の構造もよく知っているんです。」

万一断られたらどうしよう。

だが少女の不安とは違い、司祭は笑みを浮かべながらこま結びをいじった。

「そうしていただけるなら、とてもありがたいです。何しろ私はここに来るのは初めてですから。」

少女は胸の奥に喜びが広がるのを感じた。

すぐに彼女は言葉を続けた。

「では、まずは神聖木をご案内します。天気もずいぶん和らいで、外にいても寒くないと思います。」

二人は祈祷室を出て外へ向かった。

薄暗かった建物から外に出ると、目が開けるような明るさが広がった。

少女は空を見上げた。

季節はちょうど初春だった。

冬の間どんよりしていた空は澄み渡り、新たな生命が少しずつ芽吹き始めていた。

雪が解け、反射する光が山道をほのかに輝かせている。

実に美しい景色だった。

少女の心の奥から、不意に強い勇気が湧き上がった。

自分でも驚くほどの衝動だった。

少女は修道士に声をかけた。

「変ですよね?」

「……」

「私、この出会いをずっと待っていた気がします。」

修道士と出会ってから、少女の胸は高鳴り続けていた。

まるで再び巡り会えた魂の片割れを感じているかのように。

その言葉に、修道士は驚くこともなく、むしろ温かく微笑んだ。

「私も同じ気持ちです。」

少女はぱっと笑顔になった。

二人は並んで歩き出す。

まるで二人を包み込むように、午後の陽射しは限りなく暖かかった。

 

<完結>

 



 

 

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