こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
140話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 平和的な方法
レリアは、以前訪れた白い部屋の中にぽつんと座っていた。
部屋はそのときと変わらず広く、きれいで静かだった。
見渡しても白一色で、妙に不思議な気分にはなったが…悪くはなかった。
「………」
しばらく静かに座っていると、だんだん息苦しさを感じ始めた。
むしろ出て行こうかと思ったそのとき、先ほどグリピスが言った言葉が思い出された。
「すぐ戻るから、少しの間だけ部屋の中にいて。万が一のことがあるかもしれないから、出てこないで。いいね?」
「わかった。」
神官たちに会ってしまうかもしれない事態だ。
レリアは自分の手首に巻かれた金色のブレスレットを見つめる。
公爵領で過ごしている間は外していたが、また着けるようになったのだ。
久しぶりだからだろうか、なんだか不思議と重く感じられた。
このブレスレットは、彼女にとってまるで足かせのようだった。
レリアの頭の中はまだ混乱していた。
本当にあの方法しかないのだろうか?
明らかに他のいい方法があるはずなのに…。
「ちょっと、もしかして…。」
レリアは立ち止まった。
戸を見回しながら閉じた扉を見つめた。
なぜかわからないが、そのドアノブを回せば、外で待っているような気がした。
グリピスが自分を閉じ込めたのではないかという、根拠のない予感。
そんなはずはないと思いつつも… ずっと不安だった。
レリアは慎重にドアのほうへ歩いて行った。
しばらく迷ったあと、思い切ってドアノブに手をかけた。
カチャッ。
力を入れて回すと、ドアはあっさり開いた。
レリアは全身の力が抜けるような気がして、再びドアを閉めた。
「そうよ、そんなはずない。」
そう思って再び部屋の中で立っていたそのとき──ノックの音が聞こえた。
びっくりして身構えると、「入ってもいい?」と言う声が聞こえた。
ドアを開けて入ってきたのは、グリピスだ。
「グリピス… 一体どういうことなの?私は、私は何をすればいいの?」
「………」
グリピスは黙って近づいてきてソファに座った。
そしてレリアにも座るようにと手で促した。
しばらく無言のまま時間が過ぎた後、間もなく一人の使用人が茶を運んできた。
レリアは温かい茶碗にそっと触れながら、慎重にもう一度問いかけた。
「グリピス、急ぎのことだって言ってたじゃない。」
「…うん、そうだよ。とりあえず大体は解決した。」
そう答えるグリピスの表情は冷静だった。
まるで何事もなかったかのように淡々としていた。
その様子に、レリアの眉がひそめられた。
「私は…?じゃあ、なんで私はここに…。」
「レリア。」
グリピスが冷静な声で彼女の名前を呼んだ。
その瞬間、なぜか胸がずんと沈むような気がした。
普段とは違って、グリピスの声が冷たく感じられたせいかもしれない。
レリアは目をぱちぱちとさせながら、グリピスを見つめた。
何かを言おうとしているようだが、まさか突然処刑されるとか、そんな話じゃないよね?
不安に駆られ、あれこれ推測を巡らせていると──しばらくしてグリピスが再び口を開いた。
そしてその口から出た言葉は、彼女の予想とはまったく異なる内容だった。
「君、昨夜──」
「………」
「オスカーを抱きしめたの?」
質問は、少し前と同じようにあまりにも淡々としていた。
まるで天気を尋ねるように、何の感情もなく、落ち着いた声だった。
「それは… それは一体……」
レリアは驚き、言葉を失う。
何を聞かれているのか、すぐには理解できなかった。
(昨夜のことを、グリピスが知っている?どうして?)
グリピスはレリアの反応を見ても、相変わらず冷静だった。
「あのガキを抱いたかって聞いたんだ。」
「グリピス、私は……」
レリアは唾をぐっと飲み込んだ。
どうしてそんなことを知ったのかは分からなかったが、動揺が込み上げてきた。
そんな話を淡々と口にするグリピスが、妙に不気味に感じられた。
しかし、嘘だとは言いたくなかった。
だから答えあぐねていると、グリピスが言った。
「子どもの頃からお前はそうだった。」
「え?」
「あのガキを見る目がどれだけ切なくて愛おしいか。雨が降るたびに…その背中みたいなのが好きだってさ。」
「グリピス。」
怒った声に、グリピスは静かにため息をつき、ひと呼吸おいて、少しおどおどした口調で言った。
「大丈夫、責めるつもりじゃないんだ。」
「………」
「どうせ君は、私たち全員を抱きしめなきゃいけないんだから、順番がちょっと後ろにずれただけだと思えばいいさ。」
「な、なに… それってどういう意味?」
「簡単に言おうか?オスカーを抱きしめたように、私たち全員を抱きしめなくていいってことだよ。」
グリピスの表情も話し方も、まるで冗談を言っているかのように平然としていた。
──内容は冗談じゃなかったけれど。
「………」
非常識な言葉に、レリアの眉間が歪んだ。今グリピスは何て言ったの?
「誰か一人だけを愛しちゃダメだろ、レリア。」
「………」
グリピスは当然のことのように言っていた。
レリアは一瞬、自分が疑っていることがおかしいのではと錯覚しそうになった。
それとも、グリピスの言葉を聞き間違えたのか。
「まったく理解できてないんだな?」
「グリピス、私はあなたが一体……」
「簡単に説明してあげよう。」
グリピスは毅然とした顔で、やわらかい口調で説明した。
白い神官服を着た彼は、今日に限って一層厳かな様子だった。
けれど、その口から出る言葉は正反対だった。
「お前がヒナを4羽育ててるとして、1羽だけ特別扱いしたらどうなると思う?残りのヒナたちは、それを見て引き裂いて殺したくならない?」
「………」
グリピスは、彼女が考える隙を与えずに続けた。
「仮にお前が皇帝だとしてみろよ。お前の臣下のうち、たった1人だけを可愛がったら……
そのヒナは果たして生き延びられると思う?」
「………」
「何度説明しても全然理解できないんだな。」
グリピスはうんざりしたようにぶつぶつ言った。
「レリア、僕たちが互いに刺し合って死ぬことを望んでるの?僕たち、永遠に幸せに生きたいって言ったよね?」
レリアは次第に体が震え始めた。
怒りのせいか、それとも恐怖のせいか?
常識では考えられないことを口にするグリピスに、彼女は言葉を失った。
「グリピス、あなた正気なの?」
かろうじて絞り出した言葉だった。
だがグリピスはにっこりと笑った。
「今までで一番理性的だよ。受け入れられるだろ?譲れないよ。僕だって君だけを独り占めしたい気持ちでいっぱいだ、でも……」
グリピスは少し気の抜けたように、口元に笑みを浮かべた。
悲しげな表情だった。
「仕方ない。これは全部、君のための犠牲なんだ。君を独り占めするには、他の者を殺さなきゃいけないじゃないか」
「………」
「だから、君を幸せにしてあげられないんだ。君が泣くのを見るのは本当に嫌なんだよ……」
「…いったい何を……」
「他の奴らも同じだよ。だからこそ、僕が平和的な方法を提示してるんだ」
グリピスはむしろこの方法を受け入れられないレリアに対して、残念そうな視線を向けていた。
彼の目には、欲深い子どもを誘惑するような光が宿っていた。
そんなグリピスを見つめるレリアの瞳には、裏切りと怒りに似た感情が湧いていた。
だが、グリピスはその感情を読み取っても、特に気にする様子はなかった。
どうせレリアは自分を憎むことなどできない。
他のやつらと同じように。
レリアは四人の仲間に対しては弱かった。
グリピスは、彼女にとって仲間たちがどれほど大切か、どれほどの存在なのかをよく理解していた。
何をしようと、レリアは彼らを許すしかない。
たとえ四人が群れとなって彼女を追い詰めたとしても、彼女は最後まで彼らを許し、受け入れるだろう。
それだけ大切な存在なのだから当然だ。
「………」
言い終えたグリピスは笑みを浮かべたまま彼女を見つめた。
レリアは石像のように固まっていた。
グリピスはようやく胸のつかえが下りたかのように、ひと息ついた。ソファの背もたれに体を深く預け、脚を組んで座った。
そろそろ選ばせる時だ。
「レリア、君が直接選ぶんだ。」
「…何を?」
「次の相手さ。どうせだったら僕を選んでくれたらいいのに。」
グリピスは何かを含んだ視線で彼女を見つめた。
レリアは一瞬、嫌悪感とともに全身を駆け巡る感覚に眉をひそめた。
「…グリピス、あなたの言っていることが理解できない…」
「私を選ぶ前に、あなたはここから出られないよ。」
「…え?」
もう何を聞いても驚かないと思っていたレリアだったが、またしても言葉を詰まらせた。
彼女は、裏切られたという怒りに満ちた瞳でグリピスを見つめることしかできなかった。
かつて同じような裏切りをしたグリピスを、再び信じるわけにはいかなかった。
だが……
「もちろん、無理やり鍵をかけて閉じ込めようなんて思ってない。あなたを縛るなんて、そんな馬鹿なことはしない。」
「………」
「でも、君が選ぶ前に僕が捨てられるなら、僕は真っ先にロミオとカーリクスを探しに行くよ。」
「グリピス。」
「殺してしまうよ。僕たちが互いに剣を交えることになれば、どちらか一人だけが傷つくなんてことはない。ソロには致命傷が残るはずだ。」
あまりにも自然に狂気じみたことを口にするグリピスによって、レリアは精神が崩壊するような感覚に陥った。
常識が崩れ、むしろ自分が異常になった気がした。
「気楽に考えて。」
グリピスは顔をこわばらせた彼女を見ながら、静かにそう言った。
本当に切ないような、その瞳には哀しみが滲んでいた。
レリアはそんなグリピスを哀れに感じた。
その言葉と瞳が本心なのだろうと思うと、ますます胸が痛んだ。
「…それでも、どうしようもないじゃないか。」
「………」
「穏やかでいたいなら、あなたが選ぶしかない。私たちが互いの心臓に刃を突き立てたいと思うなら……仕方ないけど。」
「………」
グリピスはなおも穏やかな表情で言った。
「あなたさえ受け入れてくれれば、それでいい。」
「………」
「いつだってそうだった。君は僕たちのそばで笑ってくれればいいんだ。」
最後の言葉を口にした彼の表情は冷たかった。
今まで見せていた優しさがすべて嘘だったかのように。
それは重たい警告のようでもあった。
そして言いたいことは終わったというように、グリピスは立ち上がった。
そして最後にこう伝えた。
「心の準備をする時間が必要なようだね。」
「………」
「じゃあ、夜に会いに来るよ、レリア。」
グリピスは、まるで何かを期待しているような淡い笑みを浮かべた。
まるでハエが体を這っていくような不快な感覚が走った。
ドンッ。
ドアが閉まる音を聞いた瞬間、ようやく押し殺していた息が漏れた。
目に溜まっていた涙が一筋こぼれ落ちた。
とたんに、理由もわからない吐き気がこみ上げた。
胸がむかついて気が狂いそうだった。
レリアはすぐさま浴室へ駆け込んで嘔吐した。
しばらく震えながら、全身に冷水を浴びた。
そうしなければ正気を保てない気がした。
体がガタガタ震えるほどしばらく立ち尽くしていた。
乾いた服に着替えても寒気は消えなかった。
レリアは震えながらソファの上に体をうずくまって座った。
背を向けるとベッドが見えた。
グリピスが「夜に会いに行く」と言っていた言葉が思い浮かび、額にしわが寄った。
グリピスはいったい……。
「いつだってそうだった。君は僕たちのそばで笑ってくれればいいんだ。」
彼が言った言葉が呪文のように頭にこびりついて離れなかった。
頭がおかしくなったとしか思えなかった。
それ以外にどうして……どうしてあんなことを……。
すると、カーリクスと交わした会話も思い出された。
「行ってあいつを連れてきて。」
「私と結婚して、あの犬とも結婚すればいいじゃない?」
「変かな?お前が男だと勘違いしてたときも結婚しようと思ってたんだから、もうどうでもいいよ。」
「くそ、何がどうだっての。男同士で結婚しようが、女一人に男二人が結婚しようが、生殖だけが目的なら同じだろ?」
「私は構わないから、そうしよう、私たち。」
頭がおかしくなっていく感じだった。
彼らは正常じゃなかった。
だが、もう今となっては混乱した光景だった。
あまりにも当然のように要求してくる彼らの態度のせいで……。
どうして友だちにだけ犠牲を強いるのか、と言いたげな、絶望を含んだまなざしでこちらを見つめていたグリピスの目が思い出された。
その瞬間、頭の中が真っ白になっていった。
ぼんやりした中で、「ぴぃっ」という妙な音が聞こえた。
レリアはまばたきをした。
おかしいのは彼らではなく、自分のほうなのか?
彼女は、自分がまるで空っぽになってしまったかのように、まばたきを繰り返した。