こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
147話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 側室?
移動した先はグリフィスの部屋だった。
レリアの部屋から遠く離れていて声が聞こえることはなかった。
(グリフィスの部屋をレリアの部屋から最も遠い場所に配置してほしいとロミオが強く主張したのだ。)
小さな明かりだけが灯る応接室のソファには4人が座っていた。
グリフィスは向かいに座るオスカーをじっと見つめていた。
2人の間にある1人用ソファに座ったロミオが何か言おうとしたが、オスカーの顔を見てふと思い出したように言った。
「…ああ、そういえば脱走兵だったな、お前?」
「……」
オスカーは口をしっかりと閉じ、何も言わなかった。
ロミオはオスカーがまたレリアにちょっかいを出すのではと心配したが、そうはならなそうだ。
今のレリアの精神状態は、フェルセウス皇帝と母親の一件で非常に不安定だった。
オスカーがどれほどイカれていても、この状況でレリアに手を出すことはないだろう。
それに、オスカーが本国の状況を整理してきたということは、ここに留まるつもりだという意思表示でもあった。
ロミオはため息をついて尋ねた。
「それより、お前の代わりに皇位を継いだってやつは誰だ?」
「……人形。」
その言葉に、ロミオは奥歯が痛むように額をかいた。
やっぱりそうだった。
オスカーは魔力で作った偽物の人形を皇帝として立てて戻ってきたのだ。
何かもっと問い詰めたいのに、簡単には口が開かなかった。
オスカーを見るたびに、レリアが言っていた言葉が思い出された。
オスカーを愛しているというあの言葉。
「……」
ロミオはなぜか胸の内がかき乱されるような気分だった。
これまでずっと我慢できると思っていたが、オスカーの顔を見た途端、どうしても我慢することができなかった。
それはグリピスも同じように思っていたようだった。
いつも余裕のある表情をしていたグリピスの顔が、少しばかり険しく見えた。
しかしロミオの考えとは異なり、グリピスはまったく険しくはなかった。
むしろ、気分を害していなかった。
グリピスは熟考の末、余裕のある様子で口を開いた。
「レリアを独占しようとする考えは捨てたほうがいい。」
「……」
挑発的なその言葉に、オスカーの視線が鋭く光った。
赤い目がグリピスを射抜いた。
「アイツは俺たちの誰一人も捨てられないし、俺たちの関係が壊れることも望んでない。」
「……」
「だから、レリアも、私たちも。互いに一つずつ譲歩し合うべきじゃない?」
オスカーは返事をしなかった。
しかしグリピスは、固く結んだオスカーの顎に力が入るのを見た。
堪えているのだ。
火も灯っていない部屋には沈黙が満ちていた。
ロミオは妙な緊張感にいら立ち、隅に座っているカリクスは何も考えていないような表情だった。
この中で唯一、穏やかに見えた。
しばらくして、オスカーの口が開いた。
「……レリアがそれを望むなら。」
「……」
意外な答えだ。
ロミオは驚いた目でオスカーを見つめた。
グリピスの狂気じみた提案にオスカーが同意するとは思わなかった。
他でもない、あのオスカーが。
『レリアを独占しようとして誘拐までしたやつが、一体なぜ?』
しかもレリアの心まで手に入れたというのに。
理解できなかった。
本当にグリピスの言う通り、互いに刃を向け合えばレリアが苦しむかもしれないと、それを思ってのことなのか?
しかもそんな答えをしながらも、オスカーの表情には怒りが滲んでいた。
ロミオの目には、オスカーがどれだけ怒りを堪えているかが、痛いほど見て取れた。
「……」
視線を移してグリピスを見つめた。
その姿を見た瞬間、ロミオは不快な気分になった。
グリピスは本当に爽やかに笑っていた。
とても気分が良さそうな顔で。
その瞬間、ロミオもまた何かに気づいた。
『ああ、何かあるな。』
オスカーがああまでしているのには理由がある。
グリピスもそれを知っていて、あえてこうしているのだろう。
――くそっ、騒がしくうるさい奴め……。
「会わないうちにずいぶん苦労したようだな。」
グリピスは皮肉っぽく言った。
彼はこの状況が面白くて我慢できなかった。
下手をすれば大きな声で笑い出していたかもしれない。
今のオスカーは、レリアが望むなら何でもする覚悟のようだった。
だからといって、レリアに対する独占欲が消えたわけではなかった。
どうにかして怒りを抑え込もうとしているのが、目に見えて明らかだった。
そこまでしてでも抑えなければならない理由とは一体何なのか。
グリピスはさまざまな推測を始めた。
その時だった。
「おい、チッ。」
うたた寝していたカーリクスが口を開いた。
オスカーに向けた一言だったが、ロミオはもちろん、グリピスまで何のことかというようにカーリクスを見つめた。
実はカーリクスも、この状況が気まずくて落ち着かなかったのだ。
オスカーと殴り合いをして以来、初めてのことだった。
譲るのは当然だった。
だが、友人同士はもともとケンカもするものだし……カーリクスはあまり深く考えず、彼を呼んだ。
「側室」という単語で。
「おい、お前今なんて言った?側室ってどういう意味だよ?」
ロミオが尋ねた。
カーリクスの口元が上がった。
いつも知ったかぶりばかりしていたロミオが知らない単語を知っていることが嬉しかったのだ。
「お前ら、“チョプ”って知らないのか、“側室”?」
カーリクスはゆっくりと説明を始めた。
この単語を教えてくれたのは、レリアの叔父であるカリウスだった。
彼は数日前のことを思い出した。
「叔父さん、一人の女性と二人の男性が結婚するのは、大陸では不可能なんですか?」
カーリクスが突然尋ねた。
彼はカリウスのことを気軽に「叔父さん」と呼んでおり、カリウスはその呼び方をとても心地よく感じているようだった。
「ん?」
突拍子もない質問に、カリウスは思わず笑みをこぼした。
だがカーリクスは、いつも突飛で唐突な発言をするタイプだったので、カリウスはあまり気に留めなかった。
「普通はしない。財産相続が複雑になるから。貴族たちはむしろ側室を置くんだ。」
「側室って……正妻じゃないんですよね?」
「そう、まあ……正妻ではないさ。正式に結婚しているわけじゃないなら……うん、“側室”じゃないか?」
「それって何ですか?」
「ああ、貿易船に乗ってる友達から聞いたんだけど、西の大陸のどこかではそういう関係を“側室”って言うんだってさ。」
「側室……」
「そう、チョプ。側室とは違って正式な夫婦になるってこと。女1人に男が何人もいたり、男1人に女性が何人もってことか。」
「なるほど……じゃあ、二番目の夫を“側室”って呼ぶんですか?」
「そういうことだろうな。」
オスカーを「側室」と呼ぶようになったのは、その話がきっかけだった。
カーリクスが小声で付け加えた。
「なあ、側室。聞いた話なんだけど、側室って本妻にはちゃんと頭を下げなきゃいけないらしいよ。『兄貴』って呼んでさ、な?」
「……」
オスカーは、グリピスやロミオに接する時とは違い、カーリクスのことを完全に無視して立ち上がった。
「言いたいことが終わったなら、レリアに会いに行くよ。俺を待ってるだろうから。」
「……」
その言葉を最後に、オスカーは出て行った。
グリピスは心の中でオスカーを嘲った。
あんなに自信満々に話すくせに、内心はガタガタ震えてるのが全部見えていた。
どうにかして暴いてやりたくなる気分だった。
「……クソ。何もしてないのに変に悪者にされた気分でムカつくな。」
ロミオはふてくされていた。
レリアがオスカーを待っていたというのは事実だったため、内心傷ついていた。
ロミオは黙って突っ立っていたが、ふと黙りこくって座っているカーリクスを見つけた。
「おい、おまえ。お前は側室だろ、くだらないこと言わないでさっさと寝ろ。」
その言葉にカーリクスはすっと立ち上がった。
そして残る二人に向かって捨て台詞を吐いた。
「……ちなみに、お前らが望んでも側室なんかにしてやらないからな。後で“兄貴”って呼んでも、認めねぇぞ。」
「そうか、好きにしろよ。側室ごっこでもしてろ。」
ロミオの返答に、カーリクスは明らかに気分を害したようにプンプン怒って出て行ってしまった。
(トントン)
レリアは突然聞こえたノックの音に、ベッドから身を起こした。
眠れずにベッドのそばに掛けられた絵を眺めているところだった。
レリアはベッドから降りて応接室へ向かった。
この夜中に訪ねてくる人などいないはずだった。
ノックの音を聞いてみると、カーリクスでもなかった。(カーリクスならもっと大きな音を立てていただろう。)
ロミオかグリピス?もしかすると母かもしれない。
レリアは少し緊張しながら、肩にショールをかけた。
そしてドアの方へ向かった。
そっとドアノブを回して開けると、夜明けのように涼しい香りがふわりと漂った。
オスカーから漂ってきた香りだった。
「……オスカー?」
ドアの前に立っていた大きな人物を見た瞬間、思わず口をついた。
夢だろうか?明らかに窓から来ると思っていたのに、ドアから来たということは夢ではない。
鼻の奥がツンとした。
あまりに恋しかったから、こんな夢まで見てしまう自分が嫌だった。
しかし何度瞬きをしても、目の前の人物ははっきりとしていた。
「オスカー、本当に君なの?」
そっと手を伸ばして、透き通るような頬に触れた。
手のひら越しに冷たい体温が伝わってきた。
「……」
オスカーは自分の腕に寄り添っていたレリアの手の上に手を重ねたまま、部屋の中へ一歩踏み入れた。
そして彼の背後でドアがカチャリと閉まる音がした。
レリアはドアが閉まったことにも気づかなかった。
オスカーが自分を腕で引き寄せて抱きしめたからだ。
オスカーは大きな手でレリアの背をぐっと引き寄せながら彼女を抱きしめた。
ほんの一瞬、目が合った。
だが、それはほんの一瞬だった。
「んっ……!」
ぴたりと唇が重なった。
まるで食いつくかのように。
彼はもう片方の手でレリアの後頭部を支えながら、顔を傾けた。
そしてより深く、さらに深く入り込んだ。
突然のキスに、レリアは何も考えられなかった。
ずっと恋しかった香りとぬくもりに酔いしれた。
ただ、唇を貪る彼の動きはあまりにも激しすぎた。
あまりに圧倒されて呼吸が苦しくなった。
彼が口の中を勝手にかき回し、噛んできたため、レリアはついに息ができず、拳で彼の肩を叩いた。
「…はぁ….」
唇が離れると、レリアはようやく息をついた。
もうこれは夢ではないと、ようやくはっきりと理解した。
乱暴なキスによりぼんやりしていた意識も、ようやく戻ってきた。
すべてが元に戻るような気分だった。
「レリア。」
「……」
「会いたかった。」
優しい声が耳元で囁かれた。心臓がドキドキと高鳴った。
唇は離れたが、身体はさらに近づいた。
彼はその腕でレリアの細い首を抱き寄せて顔を埋めた。冷たい頬が首筋に触れた。
レリアは慌てて彼の肩を押し返そうとしたが、途中で止めてそのまま抱き返した。
突き放したくなかった。
「レリア。」
「…うん。」
「すごく会いたかった。」
「…私も、私もそうだった。」
オスカーはレリアの耳と首筋にそっと鼻を近づけ、香りを吸い込むと、ゆっくりと顔を離した。
その瞬間、ふたりの視線が宙で交わった。
レリアの心臓がドクンと大きく鳴った。
『なんでこんな目を……』
レリアはオスカーの目を見て不思議に思った。
オスカーの目は無表情でもあり、苦しそうでもあった。
赤く濡れたその瞳には、はっきりと「苦痛」という感情が込められていた。
一体なぜ?
「なにか…何かあったの?オスカー?」
「…何でもない。」
オスカーはそう答えたが、今にも涙がこぼれそうだった。
やはり隠せないのだな。
子どものころもそうだった。
オスカーに感情の変化があると、レリアはあまりにも簡単にそれに気づいてしまった。
だから苦しかった。
オスカーは自分の表情を見せたくなかったのか、再びレリアの首筋に鼻をうずめた。
息を吸い込むと、甘い香りが肺いっぱいに広がった。
このまま死ねるならそれでもいいと思うほど、甘かった。
一瞬たりともレリアと過ごした夜を忘れたことはなかった。
早く戻ってきたいと思いながらも、再び顔を合わせるのが怖くて戸惑っていた。
レリアにあんなことをしておきながら、果たして彼女の愛を受ける資格があるのだろうか。
もっと重い罰を受けるのではないかと怖くなった。
しかし悩んだのは束の間だった。
どうせ重い罪を背負った身だ。
できることなら、その罪を隠してでもレリアのそばにいたかった。
何も知らないふりをして、ただひたすらに優しく。
「…恋しい。」
オスカーがレリアの首に顔を寄せ、鼻先でその香りをなぞると、レリアは体を動かした。
彼は一瞬身を引いた。
レリアは一歩、後ろへ下がった。
レリアはオスカーの肩をつかんで、ぐるりと一回転させた。
上から下までじろじろと見て、どこか怪我をしていないかを念入りに確認した。
「怪我したり、痛いところはない?」
「…ないよ。」
オスカーの返事にも、レリアはどうにも納得がいかなかった。
以前見た、痛がっていた様子が脳裏に焼きついて離れないようだ。
そんなレリアの様子を見て、オスカーが聞いた。
「疑わしいなら、服脱ごうか?反対側も確認してみる?」
「え、えっ?」
オスカーの唐突な言葉に、レリアは固まってしまった。
「代わりに、私も確かめさせて。」
「な、何を……」
「僕も、君がどこも怪我なく無事か確認したいんだ。」
レリアの顔がぱっと赤くなった。
部屋が暗かったのが幸いだ。
そうでなければ、耳まで真っ赤になった顔が全部見えていただろう。
そのとき、オスカーの表情がふとこわばった。
そして同時に、トントンとドアをノックする音が響いた。
「お嬢様。」
レリアの目が見開かれた。
外から聞こえてきた声は、ベッキーのものだった。
「は、早く隠れて!いや、窓から出て!」
驚いたレリアが慌ててオスカーの背中を押しのけた。
オスカーは小さくため息をついた。
レリアに夢中になるあまり、近づいてくる気配に気づくのが遅れてしまったのだ。
彼は名残惜しそうにレリアの頬に短くキスをして、窓の外へと姿を消した。
誰かが彼女を呼んだのかも分からなかった。
オスカーが出て行ったのを確認すると、レリアは窓を閉めてドアの方へと歩いていった。
そして深呼吸をしてからドアを開けた。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「うん…でもこんな時間にどうしたの?」
「いえ…グリフィスの境界を散歩していたところ、お嬢様のお部屋から変な音が聞こえたと…」
「…変な音がした?」
「ええ。悪夢を見ているかもしれないので、確認するようにと仰いました。大丈夫ですか?」
「…うん、大丈夫。」
「顔色があまり良くありませんね。あら!熱があるんじゃないですか?」
ランプの灯りのおかげで、レリアの赤くなった頬が見えたようだった。
レリアは慌ててそれを隠した。
「あ、違うの!」
目を見開いて慌てながら後ずさると、ベッキーは疑わしげな目つきをした。
「ただ…悪夢を見たの。だからそう。もう大丈夫。もう一度寝るわ。」
「分かりました。それじゃあ、また後で来ますね、お嬢様。」
「うん…ありがとう。」
ベッキーが去った後、レリアはドアを閉めて背を預け、ため息をついた。
『驚いたな…。』
それにしてもグリフィスが何か気づいたのだろうか?
オスカーが来たことを察知していたのかもしれない。
レリアは窓の方へ歩いていった。
いつの間にか夜明けが近づき、暗闇が少しずつ薄れていた。
彼女は窓を開けて、下を確認した。
下を見ていたところ、視線を上げた先にいたオスカーと目が合った。
オスカーは手を振りながら小さく笑った。
その様子を見ると、なぜか心が温かくなった。
オスカーの微笑みがあまりに綺麗で、頭の中がぼんやりしてしまった。