こんにちは、ピッコです。
「幼い旦那様の黒幕妻です」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
42話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 悪役一族の愛
すると、スカーレットは気まずそうに視線を伏せた。
「申し訳ありません……。私が公女様にお教えするような立場ではございませんでした。……てっきり、公女様はすでに事情をご存じの上で、私たちの知識を試していらっしゃるのだとばかり思っておりましたので」
「…………」
(いや、本当に知らなかったんだけど……)
心の中で呟く私を余所に、スカーレットは言葉を続ける。
「そのくらいのお話は、公爵様や奥様が当然お教えになっているものと思っておりました。……本当に公子様を大切に思っていらっしゃるのでしたら、ですが」
遠回しに嫌みを言うつもりなど毛頭ないと言わんばかりの、あまりにも率直で刺々しい物言いだった。その場にいたマリンとソフィアは、私以上に驚いて言葉を失っている。
「ちょっとスカーレット! それじゃあ、公爵様ご夫妻が公子様を大切にしていないって言いたいの!? たかがお祭りが何だっていうのよ!」
「そ、そうですわ! しかも、公子様が自由になれたのも全部お嬢様のおかげじゃないですか。最近は城の雰囲気だって、どれだけ明るくなったことか……!」
二人が色をなして反論するが、スカーレットは「私は知りませんけど?」とでも言いたげに、無関心を装って肩をすくめた。
その態度に、マリンはもどかしそうに自分の胸を叩いた。
「スカーレット、あなた今朝、公爵夫人がお送りになったお手紙をまだ読んでいないの? お嬢様はこれまで――」
「お嬢様はずっとお体の具合が優れなかったのです。私たちにも『どうか良い話し相手になって差し上げてほしい』と、奥様が直々にお願いされていたのに……いったいどうしてそんな態度が取れるのですか!?」
「私が公爵夫人の言うことに、必ず従わなければならない理由でもあるの?」
スカーレットが冷ややかに言い放った瞬間、私は眉をぴくりと跳ね上げた。
ウィンターを誰よりも大切に思っている私だからこそ、彼女の発言がこれ以上見過ごせない危険な域に達していることに気づいたのだ。
「――ちょっと待ってください」
私は冷徹な声でスカーレットの言葉を制した。
「ほかのことならともかく、お義母様について少しでも悪く言うのなら、私は絶対に見過ごしません。これからは、しっかりと言葉を選んでお話しなさい」
義父様(メネリク)は過去にいろいろと問題を起こした人だし、大人だから多少の失言には目を瞑ってきた。けれど、このスカーレットは前科があるわけでもなく、まだ大人ですらない子供なのだ。
「……失礼いたしました」
私の威圧感に気圧されたのか、スカーレットは不本意そうに頭を下げた。
その様子を見たマリンは、「私は今、猛烈に腹が立っています」と言わんばかりのドヤ顔で、一気に攻勢に出た。
「謝ればそれで済むと思っているのですか? この子がどうしてこんな態度なのか、私には全部分かっていますわ。リンデン子爵夫人が公子様をいじめて追い出されたから、その腹いせをしているのでしょう? でも、そんなことをしたところで『あの母親にしてこの娘あり』と言われるだけですわよ!」
勝機を確信したマリンの言葉は容赦がなかった。ソフィアはこういう泥仕合のやり取りに慣れているのか、ただ怯えたように首を横に振るばかりだった。
スカーレットはきつく拳を握りしめ、マリンをキッと睨みつける。
「……何か誤解があります! 私の母を侮辱しないでください!」
だが、マリンはスカーレットが最後まで言い終えるのを待たなかった。
「何が誤解ですって? もうすぐリンデン家はイングラム家から――」
「もうすぐリンデン家は、公爵家からゴミのように追い出されるのでしょう? 魔物に襲われても公爵家の庇護は受けられず、公爵家が支援していた山間部の薬剤師育成事業も打ち切られるはず。――私もそう思いますわ」
(……よし、マリンとはこれから仲良くしておこう)
スカーレットが悔しさに唇を強く噛みしめるのを見ながら、私はかつて傷跡だらけだった花畑での授業を思い出していた。
あの日、ウィンターは包帯を巻いた私の手を見るなり、激怒してその日の授業を即座に中止させたのだ。それ以来、リンデン子爵の姿をぱったりと見かけなくなったことを思えば、ウィンターが裏で何らかの処置を取ったのだと察するしかなかった。
(まさか、本当に一族もろとも追放に動いていたなんて……)
小説の中でも、現実となった今でも、ネクタリアン家は紛れもない「悪役の一族」だった。それでも私にとっては、世界で唯一、安心して身を寄せられる温かい居場所なのだ。
私の実の叔母であるメイール伯爵夫人は、表向きは孤児たちや捨てられた動物たちを哀れみ、慈善活動に熱心な「聖女」として有名だった。その一方で、自分の次女(私)のことは真冬でも冷たい屋根裏部屋に閉じ込めていたのだから。
偽善の聖女よりも、身内を徹底的に守る悪役。やっぱり、私がウィンターをここまで大好きになる理由は十分すぎるほどあった。
「まったく、情けなくて見ていられませんね。お二人とも、自分のしたことを恥じて反省してくださいな」
マリンは勝利の余韻に浸りながら、ふんぞり返って言い放った。
言われたソフィアは、驚いて目を丸くする。
「えっ、わ、私もですか!?」
「もちろんですわ。公子様に気に入られようとして、『祭りはつまらない』だなんて嘘までついたじゃないですか。そんなくだらない嘘を思いつく暇があるなら、普段からきちんとした行いを心がけるべきですわね」
マリンはさらに誇らしげに胸を張ると、私の方を振り返った。
「公子様、私たち伯爵家は彼女たちとは違います。嘘もつきませんし、悪いことも一切していない、本当に誠実な家柄なんです!」
和やかなお茶会とは程遠い、まるで必死な「お見合い」のような空気が流れていた。
私は呆れを通り越し、への字になりかけた口元をなんとか引き締めて答える。
「……覚えておきます」
マリンは満足そうににっこりと笑った。
「では、お祭りの話の続きをしましょうか? 気になることがあれば何でも聞いてくださいね! 私たちの領地は、洋品店より図書館のほうが多いお堅い土地柄ですから、私も勉強はとても頑張っているんです!」
すでにマリンの目には、「この幼い公使に取り入って出世してやろう」という野心が満ちあふれていた。このまま彼女のペースに付き合っていたら、夕方まで解放されそうにない。
私は慌てて話題を切り替えた。
「お祭りの話はもう十分です。それより、今朝お義母様がお送りになったお手紙について詳しく教えてもらえますか? ……お手紙から、チューリップの香りはしましたか? 花言葉が『思いやり』なので、お義母様がお好きなのです。優しくて温かい、まさにお義母様らしいお花で――」
「本当に上品で素敵ですよね! 公子様もお義母様に似て、もう気品があふれていらっしゃいますし……!」
ウィンターへの愛が深すぎてうっかり本音が漏れてしまった私に、マリンは一瞬表情を固めたものの、すぐに調子を合わせてきた。
「公子様、こちらへ来られてから初めて笑顔を見せてくださいましたね」
私は少し恥ずかしくなって軽く咳払いをしながらも、質問を引っ込めなかった。
マリンの話によると、ウィンターはお茶会の参加者全員に直筆の手紙と贈り物を送ってくれたのだという。贈り物はどれも精巧に作られた一級品の装飾品で、マリンはブローチを、ソフィアは美しい髪飾りを受け取ったそうだ。二人ともさっそく身につけて来ていたので、私にも実物が見えた。
「こんなに素晴らしい贈り物、生まれて初めていただきましたわ」
マリンは目を輝かせ、隣でソフィアも何度も何度も深くうなずいて同意していた。
そして、まだ隅で意地を張っているスカーレットは、「私は贈り物を開けてもいませんわ」とあえて聞こえるように口にした。
私は「それなら今すぐ返して」と言いそうになったが、公爵家の品位を考えてぐっと堪える。
それでも、ウィンターがスカーレットの分までわざわざ用意していたということは、リンデン家を完全に抹殺するつもりはないのだろう。「大人の犯した罪を、子供にまで負わせるつもりはない」という、彼女なりの慈悲のサインなのかもしれない。少なくとも、今のところは。
今回のお茶会で、私は家臣たちが公爵家をどう見ているのかを少しだけ知ることができた。
ウィンターが言っていたとおり、確かに公爵家は誰もが恐れる絶対的な存在だった。けれど一方で、領地を脅かす魔物を何の見返りも求めずに討伐し、山間地域の開発にも惜しみなく投資する頼れる主君としても知られていた。さらにウィンターは人を見る目があり、適材適所に人材を配置する経営能力にも優れている。
マリンは、成人したらウィンターの側近として働きたいという夢を熱っぽく語っていた。
問題は、やはりメネリクだった。
「狂犬」という恐ろしい噂が一人歩きしているせいか、令嬢たちは誰もがその名を口にするのを極端に避けている。ウィンターさえ怒らせなければ、メネリクは拍子抜けするほど大人しいというのは、ごく一部の人間しか知らない事実だった。
……逆に言えば、彼女を刺激したときに彼がどう豹変するかも、周知の事実ということだが。
「実は去年までは、うちの両親も城へ行くたびに必ず強い精神安定剤を持参していたんですの……。閣下と目が合っただけで気絶してしまわないようにって」
ソフィアの告白に、マリンも深く大きくうなずいた。
「うちの母もそうですわ。でも、公子様が一緒に城へ戻ってこられてからは、閣下がすっかり丸くなられましたの。むやみに恐ろしい殺気を放つこともなくなりましたし、うっかり公爵夫人の影を踏んでしまっても、一度だけなら見逃してくださるようになったんです!」
「だから、公子様にはぜひ直接感謝をお伝えしたかったのです! 私たちの両親の命を救ってくださって、本当にありがとうございます!」
「公子様、これからもどうぞよろしくお願いいたします!」
「……」
(ごめんなさい、お義父様……。私にどんな“聖女バフ”があったとしても、お義父様の根本的な評判を回復させるのは、ちょっと無理そうです……)
その後はスカーレットがすっかり大人しくなったおかげで、お茶会は穏やかに進んだ。
お茶会が閉会すると、私はすぐにでも逃げ出そうと思ったのだが、マリンにしっかりと行く手を阻まれてしまった。
「公子様、実は私、よく城へ御用聞きに行く侍女から、とっても妙な噂を聞いたのですけれど」
マリンは周囲を警戒するように、一段と声を潜めた。
「公子様が閣下のことを『ゴミ』ってお呼びになって、それを聞いた閣下がショックで泣いてしまわれたって……本当ですか? さすがにそんなの、信じられませんよね?」
「……さあ、どうでしょうね」
(うわ、絶対に目が泳いでる、私……!)
私はマリンと視線を合わせないようにそっぽを向き、そのまま一目散にその場から逃げ出した。
屋敷の外で待機していたローズが、私の姿を見るなりすぐに駆け寄ってきて、心配そうに顔を覗き込んできた。
「大丈夫? 怒ってない?」
「うん? 私がどうして怒るのよ」
そんなに顔に出ていただろうか。ローズは細い眉をひそめ、私の瞳をじっと見つめる。
「ちょっとだけ怒ってたよ……ほんの少しだけ! 奥様の悪口を言われそうだったから。あなた、奥様が悪く言われるの、大嫌いだもんね」
「公子様(私)だけじゃなくて、ローズ、あなたが悪く言われるのだって嫌だよ?」
当たり前のことを口にしたつもりだった。なのに、それを聞いたローズの瞳がみるみるうちに潤み、赤くなっていく。
ローズは感動したのを必死に隠すように、わざとぶっきらぼうな口調で言った。
「あ、いや、その……! 本当に、もう怒ってない?」
私は小さくうなずいた。
「うん。マリンが私の代わりに怒ってくれたから、私が怒る暇もなかったくらいだよ」
「それならよかったけど……」
ちょうど私も、ローズに聞きたいことが山ほどあった。
キブリンが前世を思い出したという話はちゃんと彼女に伝わっているのか、そして今、彼女自身がどんな気持ちなのかを知りたかったのだ。けれど、ここはそんな大層な秘密を話すような場所ではない。
せっかく外に出て自由な時間なのだからと、私はローズに提案してみた。
「せっかくだし、このまま二人だけでどこか遊びに行かない? ローズ、行ってみたい場所とかある?」
しかし、ローズはきっぱりと首を横に振った。
「わ、私は護衛だからね。私に気を遣わなくていいよ。あなたが行きたいところに行こう」
(……どうしたんだろう、この子? 話し方までなんだかぎこちない)
いつもなら仕事を放り出してサボりたがる子が、急に仕事熱心になったわけでもないだろう。
そこで、私はハッと一つの可能性に思い至った。
「もしかして……早くキブリンのところへ戻りたいの? 封印はしたけれど、前世の記憶は少し残っているって聞いたよ。あなただって嬉しいんでしょう? あれほど会いたがっていたデルに、ようやくまた会えたんだから」
「うん……いや……うん」
ローズは歯切れ悪く、濁すように答えた。
(え、これも違うの?)
私は不思議に思って首をかしげる。
「……嬉しくないってこと?」
「その話は後にしよう。今は、あなたのほうが大事だから」
「そんなわけないでしょ!?」
あからさまに疑いの目を向ける私に、ローズは困ったように眉を上げた。
「本当だってば。それより、こんな寒いところにずっといないで、早く馬車に――」
「……分かったわ、馬車に乗ろう」
私はローズの勢いに押し切られる形で、ひとまず迎えの馬車へと乗り込んだ。
対面に座ったローズは、私の表情をじっと観察しながら尋ねてくる。
「お茶会はどうだった?」
(……やっぱり、デルのことは今は話したくないのかな)
なぜだか、胸の奥が少しだけチクリと寂しくなった。ローズが、ほかの誰でもないこの私にまで、目に見えない一線を引いているように思えてしまったのだ。
私はその気まずさを悟られないよう、いつも通り明るい声を作って見せた。
「悪くなかったよ」
「そ、そう?」
ローズはぎこちなく笑い、それからまた私の様子を窺うように視線を泳がせる。
……仕方がない。中身の年齢は私のほうが少しだけ大人なのだから、チェリア様である私が広い心で理解してあげなくては。
私は早々に話題を変えることにした。
「令嬢たちとお祭りの話をしていたんだけどね、春にはもう何も開催しないんだって。ってことは、昔は春祭りがあったってことでしょ? ローズは何か知ってる?」
ところがローズは、何か別の考え事に夢中になっていたらしく、一拍遅れてとんちんかんな聞き返し方をしてきた。
「え? 今、何て言ったの?」
「お祭りのことだよ、お・ま・つ・り」
「……狩り?」
(この子、本当に頭は大丈夫かしら……)
私がじとーっとした生温かい目を向けると、ローズは気まずそうに肩をすくめた。
「ほら、やっぱり怒ってるじゃない! 気分転換しようよ! あなたのやりたいことでも、買いたいものでも、行きたい場所でも、私は何にでも付き合うから!」
私は呆れて、思わずはぁとため息をもらした。
「別に、私が少し怒ったくらいで世界が終わるわけじゃないのに、さっきからどうしたのよ」
「ふう……」
ローズは小さく息を吐き、困ったように私を見つめる。私も引かずに彼女をじっと見つめ返した。
「ローズ、今日のあなたなんだか変よ。ずっと私の様子ばかり気にしてるし……それに、あれだけ楽しみにしていた私の誕生日プレゼントだって、まだくれていないじゃない」
「そ、それが……! 誕生日プレゼント、よく考えたらあなたにはあまり似合わない気がしてきて!」
「どんな物だったの?」
「えっ、な、何でもないよ! デルとは全然、まったく、これっぽっちも関係ない物だったから!」
ローズは慌てて両手をぶんぶんと横に振った。
(なるほど。思いっきりデルに関係する品物を渡そうとしていたのね)
キブリンが「封印術」の話をしたとき、ローズが頑なに反対していたのはそのせいだったのだろうか。……だとしたら、それはきっとただの普通の品物ではないはずだ。キブリンは、私のことを本当に大切に思ってくれているから。
自分の中でそれなりに納得がいき、私の表情が和らぐと、ローズは目に見えてホッとしたように胸をなでおろした。そして、安心したように私を急かす。
「さあ、どこへ行く? 行きたい場所を言って」
「お城に帰るわ」
その言葉が、彼女には「あなたとはもう遊ばない」という拒絶に聞こえたのだろうか。
ローズの琥珀色の瞳が、悲しげに小さく揺れた。
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1. スカーレットとの対立と、リンデン家の追放劇
お茶会でスカーレットがウィンター(義母)を侮辱する発言をしたため、主人公は毅然とした態度で警告する。さらにマリンの口から、かつて主人公を虐げたリンデン家が、公爵家によって事実上破滅・追放に追い込まれていたことが明かされる。
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2. 暴かれる公爵家の実態と、メネリクの“ゴミ”の噂
家臣たちの視点から、公爵家が「恐怖の対象」でありながらも領民のために投資する有能な領主であること、そして主人公が来てからメネリク(義父)の狂犬ぶりが劇的に改善したことが語られる。同時に、主人公がメネリクを「ゴミ」と呼んで泣かせたという噂が広まっていることも発覚する。
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3. ローズの奇妙な動揺と、誕生日プレゼントの謎
お茶会後、ローズは主人公の顔色を過剰に伺い、上の空でどこか不自然な態度を続ける。主人公への誕生日プレゼントを「似合わないから」と拒むローズだったが、それが前世のデル(キブリン)に深く関係する物であること、そしてローズが主人公に対してどこか一線を引いているような寂しさを抱かせる。