幼馴染が私を殺そうとしてきます

幼馴染が私を殺そうとしてきます【162話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【幼馴染が私を殺そうとしてきます】まとめ こんにちは、ピッコです。 「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

162話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 未来の父親たち

夜も更けた頃。レリアは真剣な面持ちで、ベッドの傍らに佇むオスカーの顔を見つめていた。

オスカーはまるで月の妖精のように神秘的な美しさを漂わせる青年だったが、最近は少し顔の肉が落ちて、以前よりもいっそう儚く清楚な印象が加わっていた。

乾いて間もない銀髪は夜の闇の中で艶やかに光を放ち、見た目にも柔らかそうだ。彼はまだ若く、そして本当に美しかった。ゆっくりとまばたきをする深い赤色の瞳には、不思議なほど静かで、人を惹きつける雰囲気が漂っている。

(いや、ただ見惚れている場合じゃないわ)

レリアは我に返ると、気の毒そうに彼の少しやつれた頬へそっと手を伸ばした。

オスカーがこれほど痩せてしまった理由は、他でもない「偏食」のせいだった。食べられる食品の種類が極端に一握りに限られている上に、せっかく口にできたものでさえ、時には酷く吐き出してしまうことが多かった。

レリアは彼が食事をするたびに、胸を痛めてため息をつき、どうにかしたくて足をじたばたさせていた。「錬金」の機能で作った金貨製の総合栄養剤を何とか食べさせてはいるものの、それだけでは根本的な解決にはならない。

(全然食べてくれない……。やっぱり、何か私が作ってあげなきゃダメね)

レリアはしばらく考え込んだ後、目の前の夫に尋ねた。

「オスカー、ただ私が調合したお薬を飲むのはどうかしら?」

「……」

オスカーはあからさまに嫌そうな顔をして、静かに首を横に振った。

(本当にこういうところは意志が強いんだから)

レリアは心の中でぶつぶつと文句を言いながらも、愛おしさが勝り、両手で彼の頬を優しく撫でた。

その手の温もりが心地よかったのか、オスカーはレリアの手首を細い指先でそっと掴み、もっと触れてほしいとでも言いたげな、熱を帯びた瞳を向けてきた。

「はぁ、口内炎だって全然治らないのに、これからどうするつもり? 顔色もどんどん悪くなっているわ」

「大丈夫だよ。父親になるための、大切な過程なんだから」

「……それでも心配なの」

レリアの妊娠はまだ初期だったが、オスカーは妻の代わりに「つわり」の症状をそっくり引き受けて苦しんでいた。人によっては出産間近までつわりが続くこともあるというが、もし出産までこのままだったら、彼の身体がもつはずがない。

ともかく、少しでも気を紛らわせるために、彼が好む料理へこっそり薬を混ぜて食べさせるのが一番良い方法だと思われた。レリアはため息をつきながら、彼のお腹に視線を落とした。

「はあ……お腹の中の赤ちゃんたちは、お父さんがこんなに大変な思いをしているって、ちゃんと分かっているのかしらね」

「こんなの、大変なうちに入らないよ。笑っちゃうくらいだ」

「強がらないで」

「つわりがどれほど辛いものかは、以前お母様から聞いて僕も知っていた。だから、そんなに慌てるほどのことじゃない。それに……君が身籠もって苦労していることに比べれば、僕の痛みなんて何でもないよ」

オスカーの真っ直ぐな言葉に、レリアの胸の奥がじんわりと温かくなり、そっと微笑みを返した。

二人はお互いの体温を確かめ合うように強く抱きしめ合い、横になって穏やかな会話を交わした。毎晩、こうして一日の終わりに静かに語り合う時間は、二人にとって何にも代えがたいささやかな幸せのひとときだった。

「そういえば、オスカー。そろそろ赤ちゃんの名前を決めないとね」

その言葉に、レリアの指先に一枚一枚丁寧にキスを落としていたオスカーが顔を上げた。

「もう、考えている名前はある?」

「ううん、まだ……。でも双子だから、それぞれにひとつずつ名前を考えるのはどうかしら?」

「いいよ、そうしよう」

「じゃあ、オスカー。あなたが女の子の名前を考えて。私は男の子の名前を考えるから」

「うん、一生懸命考えてみるよ」

二人は明日の一日をかけてじっくりと考え、翌日の同じ時間にまたお互いの案を持ち寄って話し合うことを約束した。

翌朝。レリアはいつものように物音を立てないようそっと起き上がり、注意深くベッドを抜け出した。そして、未だぐっすりと眠っているオスカーの顔をじっと見つめる。

(まだ起きていないわよね?)

レリアはオスカーの顔の上にそっと手をかざし、完全に意識が眠りの中にあることを確かめると、音を立てずにドレッシングルームに入って服を着替えた。動きやすい楽な仕立てのドレスに着替えて戻ってきた後も、再び眠る夫の顔を覗き込む。本当に眠っているかを数回確認し、よし、と足音を忍ばせて部屋の扉へ向かおうとした――その時だった。

パチン、と小気味良い音がして、レリアの動きが止まった。

「どこに行くの?」

気がつけば、彼女の手首はオスカーの白い手にしっかりと捕まえられていた。

てっきり眠っているものと思い込んでいたが、彼はいつの間にか目を覚ましていたようだ。すぐさましなやかな動作で体を起こしたオスカーは、慎重にレリアを引き寄せ、自分のベッドの端に座らせた。

「何度も何度も寝ているのを確認して……一体どこへ行こうとしていたんだ?」

オスカーがまだ眠気の残る掠れた声でぼそりと尋ねた。寝起きだからか、いつもの完璧な拒絶の壁が薄れ、少し無防備な色気が漂っている。

(うーん……今日のオスカーは、やけにかっこいいわね……?)

まるで月の妖精に魅せられたかのように、早朝の澄んだ空気に少し酔ったような気分になりながら、レリアは思わずはぐらかすように口を開いた。

「秘密よ。ただ、何も聞かずにちょっとだけここで待っていてくれない?」

「どこに行くんだ? 身体が心配だ」

「城の外には出ないわ。あなたのために用意したいものがあるから、少しだけ待っていて。ね?」

「だけど……」

「すぐ戻るから。ねえ、いいでしょう?」

レリアが茶目っ気たっぷりに上目遣いで頼むと、オスカーはしぶしぶ了承するように、小さく首を縦に振った。レリアが嬉しくなって彼の頬にそっと口づけを落とすと、オスカーの張り詰めていた表情が途端に甘く和らいだ。

「待っていてね、約束よ?」

「うん、わかった」

可愛い返事をもらったものの、レリアは彼が心配のあまり後をつけてこないかが気になり、部屋の重いドアを開けて外に出るまで細心の注意を払っていた。

ドアを開けて廊下に出ると、そこにはすでにベキーが控えており、彼女を案内するために一歩前に出た。レリアが向かったのは、城の一階にある広大な厨房の方だった。

「いらっしゃいましたか、レリア様!」

厨房に入ると、ちょうど手ぐすね引いて待っていた料理長が、満面の笑顔で最敬礼の挨拶をした。事前にベキーを通じて「誰にも邪魔されない調理スペースを確保してほしい」と伝えておいたため、一般の調理場とは別に、レリア専用の特設テーブルが用意されていた。

「こちらへどうぞ、レリア様」

ベキーが手際よく、背もたれにふかふかのクッションが敷かれた椅子を引き出し、座るように促した。

(座ったままでお菓子作りなんてできるかしら?)

レリアは内心でそう首を傾げたが、ベキーの鋭い目配せに気づいて素直に椅子に腰を下ろした。ベキーの目には「もし今すぐ座らなければ、城中の騎士を集めてでもあなたをこの椅子に縛り付けます」と言わんばかりの、恐ろしく強い意志がみなぎっていたからだ。

「ところでレリア様、今日は一体どんな素晴らしいお料理をなさるおつもりですか?」

料理長が興味津々といった様子で目を輝かせながら尋ねた。

レリアは小さく笑いながら答えた。

「ええ、ちょっと作ってあげたいお菓子を思い浮かべて。ねえ、料理長。レモンは置いてあるかしら?」

「はい、もちろんございますとも! 本日届いたばかりの、非常に新鮮で瑞々しい最高級のレモンが山ほどございます!」

レリアは、ひどい口内炎とつわりに苦しんでいるオスカーのために、どうしても自分の手で作った特別な料理を捧げたかった。そこで脳裏に浮かんだのが、酸味の効いた「レモンタルト」だった。

最近のオスカーは、酸味のある食材なら辛うじて吐き出さずに口にできていたし……何より、そのメニューには二人だけの幼い頃の大切な思い出が詰まっていたからだ。

レリアは懐かしい幼少期の記憶を愛おしく思い浮かべながら、笑顔で料理長の手を借りつつ作業を始めた。

「気をつけて、もっと慎重に道具をお持ちください!」

レリアが泡立て器やボウルをひとつ持ち上げるたびに、横からベキーが目を皿のように丸くしてハラハラと警告を飛ばしてきた。そのためレリアは必要以上に慎重にならざるを得ず、予定よりも少し時間がかかってしまった。

しかし、焼き上がって完成したレモンタルトを目の当たりにした時、その苦労は完全に報われたと感じた。サクサクの生地の上には、果汁をふんだんに使ったとろりと甘酸っぱい特製のレモンクリームが、美しくこんもりと盛り付けられている。

「オスカー、これならちゃんと食べてくれるかしら?」

「間違いございません。オスカー様なら、お皿まで舐めるように喜ばれるはずです!」

ベキーの太鼓判を聞きながら、レリアは最後に、懐から取り出した小さな薬瓶から、無色透明の液体をひとしずく、タルトの中心へと垂らした。それを見ていた料理長とベキーが「それは何ですか?」と不思議そうに尋ねたが、レリアは人差し指を唇に当てて「秘密よ」とだけ答え、それ以上は語らなかった。それは、彼女が「錬金」で調合した、口内炎を即座に癒す特効薬だった。

完成したタルトを美味しそうに頬張る夫の姿を思い浮かべながら、レリアは満面の笑みを浮かべて、愛の詰まった皿を手に自身の部屋へと戻っていった。

「……キッチンに行っていたの?」

レリアが部屋のドアを開けるなり、ソファから勢いよく目を見開いたオスカーが尋ねてきた。どうやら彼は、レリアの言いつけを健気に守り、一歩も部屋から出ずに静かに彼女の帰りを待っていたようだった。

彼の銀髪がしっとりと濡れているところを見ると、待っている間にシャワーを浴びてきたばかりなのだろう。美しい毛先から、水滴が床へとぽたぽたと言い訳のように落ちていた。

レリアは知らず知らずのうちに、そのあまりに絵になるオスカーの姿に見とれて立ち尽くしていた。そんな彼女の様子に、オスカーが少し首を傾げて、もう一度尋ねた。

「どうして僕がキッチンに行っていたって分かったの?」

「君の体から、すごく甘くて良い匂いがするから」

「う、うん……そうね。実はね……」

レリアはとっさに頭を回転させ、あらかじめ用意していた言い訳を口にした。

「お腹が空いちゃったの。でも、あなたを置いて一人で美味しいものを食べるのは悪いなと思って、こっそり厨房に忍び込んで、私たちの分を運んでもらうように頼んできたのよ」

「僕は気にしなくてもよかったのに」

「それでも、やっぱりあなたと一緒に食べたかったから」

レリアは平然と可愛らしい嘘をつき、ソファに腰掛けているオスカーのもとへ近づいた。オスカーは愛おしそうに腕を伸ばし、自然な動作でレリアを自分の膝の上に乗せた。レリアは近くにあった乾いたタオルを手に取ると、彼の濡れた銀髪を優しく包み込み、丁寧に拭いてあげた。

「お腹は痛くないかい? 無理をしていない?」

「大丈夫よ。あなたこそ、気分は悪くない?」

「実は、私だけ食べるのが申し訳なくて、すぐにこちらへ料理を運ばせるように手配しておいたの」

レリアがそう言ったちょうどその時、タイミングを測ったかのように外からコンコン、と丁寧なノックの音が響いた。

レリアはオスカーの膝から立ち上がりながら「どうぞ」と声をかけた。

「お食事をお持ちいたしました、失礼いたします」

ベキーが、何事もなかったかのようにさらっと澄ました顔で嘘をつきながら、銀のカートを押して入ってきた。使用人たちが手際よくテーブルの上に料理を並べていくのを、レリアはオスカーの手を引いて見守り、そちらの席へと向かった。

椅子に腰を下ろすと、本日のメインディッシュとして、先ほどレリアが作ったばかりのレモンタルトが綺麗に盛り付けられて鎮座していた。

「レモンタルトか。とても美味しそうだね。ねえ、レリア?」

「ええ、本当に美味しそう。オスカー、先に食べてもいいかしら?」

レリアは極めて自然な動作を装って、まずは自分のフォークでタルトを一口食べてみせ、彼を安心させるように促した。オスカーは嬉しそうに少し笑みを浮かべてレリアを見つめ、それから自身のフォークを手にした。

タルトを一口サイズにすくい、ゆっくりと端正な唇へと運ぶ。その一連の動作すらも恐ろしいほど優雅で美しく、レリアはまるで世界的な天才画家が遺した最高傑作を特等席で鑑賞しているかのような心地になり、完全に目を奪われていた。

「……美味しい」

オスカーは、口の中に広がった甘酸っぱいクリームを、引っかかることなく丁寧に飲み込んだ。レリアはその様子を息を詰めてぼんやりと眺めていたが、彼が咀嚼を終えたのを見て、思わず自分の喉をごくりと鳴らしてしまった。これは普段の彼女の癖ではない。

(きっと、妊娠中はホルモンの影響で、他人の食事の様子に過敏になるって本に書いてあった気がするわ……)

いや、ホルモンのせいだけではない。もともとオスカーという存在には、周囲の空気を一瞬で支配し、魅了してしまう独特の雰囲気が備わっているのだ。ただ静かに目を閉じているだけで、世界から切り取られた一枚の絵画のようだった。

その時、オスカーがタルトを小さくすくったフォークを、レリアの口元へと差し出してきた。

「レリア、君ももっと食べてみて」

レリアは素直に小さく口を開け、彼の手からタルトを受け取った。

自分で作ったとはいえ、新鮮なレモンの酸味とクリームの甘さが絶妙に調和しており、本当に柔らかくて美味しかった。

「本当に美味しいわ」

レリアは心底嬉しそうに笑った。

(よかった……ちゃんと食べてくれた。吐き気も催していないみたい)

オスカーはその爽やかな味が本当に気に入ったのか、いつになく夢中になってタルトを食べ進め始めた。そして最後には、皿に残った僅かなクリームを少し名残惜しそうに見つめるほどだった。

さきほどレリアが忍ばせた口内炎の特効薬が劇的に効いたのか、あるいは純粋にレモンタルトの味わいが彼の酷い偏食の好みに完璧に合致したのかは分からなかったが、いずれにせよ彼が食事を楽しいと感じてくれている事実に、レリアは胸が熱くなった。

レリアも自分のフォークを手に取り、彼と歩幅を合わせるように少しずつタルトを口に運んだ。こみ上げる愛おしさと安堵の感情がなぜか表情に出てしまいそうになるのを必死に抑えながら、努めて普段通りの軽い調子で話しかけた。

「ねえ、オスカー。私たち、まだほんの子供の頃に、神殿の厳しい監視を潜り抜けて、こっそり街へタルトを食べに行ったのを覚えている?」

「うん。覚えているよ。あの日、君は僕の裏庭にやってきて、二人だけで遠出したんだよね」

「そうそう。他のみんなは派手な人形劇を見に街へ行ってしまって、あなたを一人だけ取り残しちゃったのがどうしても可哀想で……悪いなと思ったから、私から誘ったのよね」

当時の懐かしい冒険の記憶が鮮明に蘇ってきたのか、オスカーは目を細めて懐かしそうに微笑んだ。

「本当に楽しかった。あの日のことは、今でも昨日のことのように鮮明に覚えているよ」

「でも、あとで怖い神父様や他の子供たちに目撃されて、神殿に戻った後は信じられないくらい大激怒されたわよね」

「うん、ひどく叱られた」

「ふふ、そうだったわね……。でもね、オスカー。あの時、二人で分け合って食べたレモンタルトの味、覚えている?」

オスカーはすぐには言葉を返さなかった。代わりにフォークをそっと皿の上に置き、レリアの顔へと静かに手を伸ばした。

そして、レリアの口元に白く小さく付着していたタルトのクリームを、綺麗な指先でそっと優しく拭い取った。そのまま、その指を自分の唇へと運び、愛おしそうに舐めとった。

「……今のほうが、ずっと美味しいよ。君が、僕のために作ってくれたから」

レリアはまるで強力な魅了の魔法をかけられたかのように、しばらくの間、彼の端正な顔を見つめて硬直していたが、次の瞬間、心臓が爆発したかのように顔面が真っ赤に染まり始めた。

「な、な、なんで私が作ったって分かったのよ……!?」

オスカーは、悪戯が成功した少年のように「秘密だよ」とでも言うように、それ以上は何も答えなかった。

(いつも君に、言葉にできないほど感謝していると伝えたら、君は一体どんなに可愛い表情をするんだろうな……)

心の中ではそんな独占欲に満ちた愛を渦巻かせながらも、オスカーはあくまでも無邪気な被害者のふりをして、美しく微笑み続けるのだった。

その日の午後。レリアは自身の書斎の机に座り、高級な羽ペンを握りしめたまま、深刻な表情で考え込んでいた。

(子どもの名前、どうしましょう……)

昨夜、オスカーと「男の子と女の子の名前をそれぞれ一つずつ考えて、今夜の同じ時間に持ち寄ろう」と約束したのだった。

いろいろと頭をひねってはみたものの、自分の我が子となる存在だ。どれだけ悩んでみても、これだという完璧な響きの名前がどうしても浮かばなかった。

(オスカーは一体、どんなに素敵な名前を考えてくるのかしら)

レリアは机の上に置いていた人名録の本を無意味にぱらぱらとめくっていたが、やがて諦めて、脳内に「錬金」ゲームのシステム画面を開いた。

(そうだわ、ゲームに出てくるNPCたちの名前をちょっと参考にしてみようかしら?)

ゲーム内でプレイヤーが好感度を上げなければならない、様々な村の住民たちの名前を一通りリストアップして眺めてみた。

「……うーん、どれもしっくりこないわね」

ちなみに、いつもお世話になっている工房を経営しているクマのおじさんの名前は『テディ』。

果物屋を営んでいる威厳あるライオンの名前は『ベリー』。

洋服屋の気まぐれなネコの名前は『ティティ』。

それから、怪しいお化けの『ルーピング』に、自称名探偵の『チクチク』……。

当然ながら、NPCたちの名前はすべてこのようなファンタジーでデフォルメされた愛称ばかりで、由緒正しき人間の、しかも我が子の本名として参考になるようなものは一つとしてなかった。

「ねえ、ヨングム。男の子の名前で、何か高貴で響きが良いものって知らないかしら?」

レリアは藁にもすがる思いで、システムの案内役である「錬金」のヨングムへ直接メッセージを送ってみた。すると、しばらくして妙にハイテンションな返信が脳内に届いた。

【2世の名前でお悩みですか!? ✨٩( ᐛ )و✨ お任せください! 今年、帝国貴族たちの間で最も選ばれている『大人気・赤ちゃんの名前ランキング』の最新データを特別にお知らせいたします!】

「おお……素晴らしいわ。そんな便利な機能まで網羅しているの?」

レリアは期待に目を輝かせた。

「良いわね、ヨングム。すぐに見せてちょうだい」

【情報閲覧料として、100クリスタルが消費されます。(。•̀‿-)✧°】

(……本当に、この世の中にタダのものなんて存在しないのね……)

レリアはシステムのあまりの守銭奴ぶりに少し呆れつつも、現在の莫大な資産からすれば100クリスタル程度など痛くも痒くもないと思い直し、素直にチャージを承認して画面が更新されるのを待った。

やがて、光り輝くメッセージウィンドウに、人気の名前がひとつずつ上から順に現れ始めた。

【カビル】

【リシャト】

【ベントゥ】

「へえ……なるほど、こういう異国情緒のある響きの名前も、確かに悪くはないわね」

「うーん……でも、我が子に合うかしら……?」

レリアは表示された名前を一つ一つ声に出して吟味しながら、ふっと可笑しそうに口元を緩めた。しかし、さらに下位のランキングをスクロールしていったその時、信じられない文字が目に飛び込んできた。

【カリクス】

(……あれ?)

レリアは思わず目を疑った。続いて表示された名前は――【オスカー】、【ロミオ】、【グリフィス】。

なんと、自分の幼馴染であり親友である男たちの名前が、上位にずらりと並び始めていたのだ。

困惑していたレリアだったが、少し冷静になってその理由に思い至った。先の一大決戦である「光竜討伐」ののち、帝国首都において彼ら4人がどれほど熱狂的な英雄として祭り上げられ、絶大な人気を誇っていたかを考えれば、別に不思議なことではなかった。

きっと、当時彼らに憧れを抱いていた首都の貴族の少女たちが、その後結婚して子供が生まれた際、「あの偉大な英雄のように育ってほしい」という願いを込めて、こぞってその名前を我が子につけたのだろう。

しかし、あまりにも身近で有名な名前ばかりを突きつけられたせいで、レリアの脳内はますますゲシュタルト崩壊を起こし、いい名前のアイデアが完全に枯渇してしまった。

レリアはついにゲーム画面を閉じると、立ち上がって本棚から歴史書や古い神話の本を何冊か取り出し、本格的にページをめくり始めた。

(我が子たちのために、親として最高の名前を見つけてあげるんだから)

そうして書斎に閉じこもり、頭を抱えて悩み抜いた末、レリアはようやく納得のいく名前を「2つ」にまで絞り込むことに成功した。

1つ目は、どこか涼やかで芯のある響きの【リアン】。

2つ目は、気高く幻想的な響きを持つ【フィエル】。

どちらも耳心地がよく、古い言葉における意味合いも決して悪くなかったので、レリアとしてはそれなりに満足のいく候補だった。

ただ、その2つのうち、どちらを男の子の最終決定案としてオスカーに提示すべきか、自分一人ではどうしても決めかねてしまうのが問題だった。

「よし、誰か他の人の客観的な意見を聞いてみましょう」

そう決心したレリアは、本を片付けて部屋を出た。廊下を進んでいくと、ちょうど向こうから優雅に通りかかったロミオと鉢合わせした。

「ロミオ! ちょうどよかったわ」

「……レリア? おいおい、妊婦の身でありながら、そんなふうに一人でふらふらと歩き回って大丈夫なのか?」

ロミオはまるで、絶対安静の重病人でも目撃したかのように驚愕の目で彼女を見つめた。そして、何事も形から入る彼らしく、瞬時に魔法を発動させてその場に極上のふかふかのソファを出現させた。

「いいから、まずはそこに座って話しなさい」

「……ええ」

突然、北棟の中央廊下に突如として現れた豪華なソファに座らされることになり、レリアは少し気恥ずかしさで緊張したが、すぐに本題を切り出した。

「実はね、子どもの名前について悩んでいるの。今夜オスカーと話し合う予定なんだけれど、どうしても決められない候補が2つあって。ロミオ、あなたならどちらが良いと思うか、意見を聞かせてくれない?」

ロミオは呆れたように短くため息をつき、肩をすくめて言った。

「やれやれ……。新婚の君たちの部屋の壁紙から調度品まで、僕が全部選んであげたというのに……。今度は生まれてくる子どもの名前まで、この僕に決めさせる気かい?」

口ではそんなふうにぶつぶつと文句を言いながらも、ロミオは手慣れた魔法で自分用のテーブルと対面用のソファをもう一つ作り出し、当然のような顔をしてレリアの向かい側に腰を下ろした。

レリアは彼の相変わらずの過保護ぶりに心の中で苦笑しながら、魔法で用意された冷たい果実水を口にした。

「それで、その僕を悩ませる2つの名前っていうのは何なんだ?」

ロミオの言葉に、レリアはずっと握りしめていた紙片を見せた。

「『リアン』と『フィエル』よ。どうかしら?」

ロミオはしばし顎に手を当てて文字を眺めていたが、やがて視線を上げた。

「うーん……僕の個人的な好みで言わせてもらえば、『リアン』という名前の方が洗練されていて気に入るな」

「そう? やっぱりリアンの方が響きが良いかしら」

「ああ、間違いない。……ところでレリア、君はさっきから、なんで男の子の名前ばかりを必死に考えているんだ?」

「ああ、それはね。女の子の名前は、オスカーが責任を持って決めることになっているからよ」

その言葉を聞いた瞬間、ロミオはあからさまに、納得がいかないといった風に眉間を深く寄せ、露骨に嫌そうな顔をした。

「……アイツに、そんな高度なネーミングセンスがあると思うかい? どうせ、どこかの古い文献から引っ張ってきたような、古臭くてダサい名前をつけてくるに決まっているさ」

「ふふ、そんなことないわよ……」

ロミオは手厳しい評価を下したが、それでもレリアは、オスカーが我が子への深い愛情を込めて、きっと最高に素敵な名前を選んでくれると信じて疑わなかった。その後、レリアはロミオが魔法で淹れてくれたお茶を飲みながら、他愛のないおしゃべりに花を咲かせ、穏やかな午後の時間を過ごした。

その日の夜。レリアとオスカーは、静まり返った寝室のベッドの上で向かい合って座り、一日中お互いが温めてきた名前を一つずつ発表し合う時間を迎えていた。

「リアンとフィエルのうち、あなたはどちらが気に入ると思う?」

まずはレリアの番だった。昼間にロミオから太鼓判を押された2つの候補を提示し、夫の反応を伺う。

オスカーはレリアの問いかけに対し、少しの間、目を閉じてそれぞれの響きを確かめるように吟味した。やがて、その美しい唇が開く。

「……僕は、“リアン”という名前のほうが好きだな。とても綺麗で、君らしい優しい響きがする」

「本当? よかった! じゃあ、男の子の名前は『リアン』で決定ね」

レリアが嬉しそうに微笑むと、今度はオスカーが少し耳の裏を赤くして照れくさそうにしながら、自分が一日中悩み抜いて決めた女の子の名前を伝えてくれた。

「女の子の名前はね……『ヘルナ』というのはどうだろうか?」

「……ヘルナ」

レリアはその高貴な響きを、何度も愛おしそうに口の中で転がしてみた。

「本当に、とっても綺麗な名前ね、オスカー」

「気に入ってくれたかい? この国の古い言葉ではね、『幸福』を意味する伝統的な言葉なんだ」

レリアが選んだ『リアン』の意味が「幸運」であるように、彼の選んだ『ヘルナ』は「幸福」。

まさに、これから生まれてくる双子の名前として、これ以上ないほどに美しく完璧に調和した組み合わせだった。

レリアがその運命的な意味の重なりに気づき、満面の明るい笑みを浮かべると、オスカーもまた愛おしさに耐えかねたように、つられて優しく微笑んだ。

「そういえばね、昼間にロミオと会った時、彼は『オスカーにはセンスがないから、どうせ変に古臭い名前をつけてくるに決まっている』なんて意地悪を言っていたのよ」

「……そうか。あの男の口は、今度麻糸で硬く縫い付けてやらなければいけないな」

不穏なセリフを極上の美貌でさらりと言い放ちながら、オスカーはレリアの華奢な体を愛おしそうにぎゅっと腕の中に抱きしめた。

昼間に彼女がロミオと二人きりで楽しそうに過ごしていたことは、影の報告で当然知ってはいたが、いざレリアの口から直接その名前を聞かされると、どうしようもないほどの嫉妬心が胸の奥底からこみ上げてきたのだ。

このような醜い独占欲は、彼女の前で絶対に表に出したくはなかったのだが、皮肉にも感情を抑え込もうとすればするほど、心の深淵から湧き上がるような、暗く不快な焦燥感が彼を支配しようとする。

オスカーは嫉妬を言葉で表現する代わりに、腕の中のレリアの唇へと、吸い付くようにそっと自分の唇を重ねた。そして、あてつけるようにその柔らかい肉を軽く甘噛みした。

「ん……っ、オスカー?」

レリアは突然の刺激に驚いて目を見開いたが、今度は自分も負けじと、悪戯を返すようにオスカーの唇を軽く噛み返した。

我が妻のそんな愛らしい反撃に、オスカーは心底嬉しそうに声を立てて笑い、それを見たレリアもまた、つられるように幸せな微笑みを浮かべた。

「……まだ、君の体から微かに甘いレモンの香りが残っている気がする」

オスカーはそう囁きながら、レリアの白く細い首元に鼻先を寄せ、静かに深呼吸をした。

「もう、まだそんなことを言っているの? また今度、いくらでも作ってあげるから……あはは、くすぐったいわ、オスカー!」

レリアが身をよじって逃げようとすると、オスカーは逃がさないように優しく、しかし確実な力で彼女を自分の方へと引き寄せ、愛おしそうに何度も鼻先をすり寄せた。

オスカーは昔から、特にレリアの放つ独特の甘い香りに執着する傾向があったが、こうして二人の身体が密着しているうちに、寝室の空気はなんとなく、熱を帯びた甘く濃密なものへと流れていくのだった。

レリアは自分の首筋に完全に顔を埋めて大人しくなっている夫を見下ろし、ふと気になって、自分の腕を持ち上げてクンクンと匂いを嗅いでみた。

(私の体から、一体どんな匂いがしているのかしら。毎回彼がこんなに夢中になるのが、気になって仕方がないわ)

でも、レリアにとっては、むしろオスカーの体から常に漂っている、あの冷涼で爽やかな、どこか神秘的な香りの方が何倍も好きだった。

オスカーは深い満足感に包まれた様子で、しばらくの間、レリアの体に心地よさそうに鼻を埋め、慈しむようにあちこちに指先で触れていた。それはまるで、彼女が確かに自分の腕の中に存在しているという、至上の愛情を何度も確かめるかのような仕草だった。

レリアはそんな彼の様子が、たまらなく愛らしく、また愛おしく感じられて、そのまま彼の柔らかな銀髪を優しく撫でながら、夜が更けるまで甘く穏やかな時間を二人で分かち合うのだった。

翌日。昼食を終えた後の、穏やかなお茶の時間。

広々としたサロンに集まった家族や友人たちを前に、レリアはオスカーの隣に座り、昨夜二人で決めた子供たちの名前を皆に誇らしげに発表した。

「『リアン』と『ヘルナ』か。とても響きの良い、素晴らしい名前だな。じいさんは心から気に入ったよ」

祖父であるシュペリオン公爵は、穏やかな顔で満足げに微笑んだ。

「実はな、このじいさんも、お前たちが生まれるずっと前に、いくつかの素晴らしい名前を完璧に考えて用意しておいたのさ」

公爵はそう言って、近くに座っていた息子のカリウスと、娘であるユリアナの二人を指差しながら、どこか誇らしげに話を続けた。

「えっ……? 私の名前って、お父様が直々に付けてくださったのですか?」

カリウスが心底意外だというように、不満げな顔のままむっつりと尋ねた。

「そうだ。何か不満でもあるのか?」

「……いえ、別に不満というわけでは。ですが、てっきり優しい母上が付けてくれたものとばかり思い込んでいたので……ちょっと驚いただけです」

カリウスが未だに納得のいかない様子でぶつぶつと文句を言っているのを見て、祖父の厳格な表情が少しずつ可笑しそうにほころび始めた。

レリアは、相変わらず気まずそうなやり取りを繰り広げている叔父と祖父の微笑ましい様子に笑いながら、今度は隣の席に座る友人たちへと視線を向けた。

「どうかしら、みんな? とっても可愛い名前でしょう?」

「うん。本当にすごく可愛い名前だと思うよ。僕も大賛成だ」

最近、城の図書室に引きこもって分厚い育児書を狂ったように読み漁っているカーリクスが、我がことのようにとても嬉しそうに身を乗り出した。

「そうだ、レリア」

その時、それまで静かに紅茶を飲んでいたロミオがレリアの動きを止め、何か重大な提案をしようとするかのように、少しだけ戸惑いながらも真剣な口調で口を開いた。

「その子どもたちが無事に生まれたらさ……僕たち4人が、その双子の『名付け親(ゴッドファーザー)』になりたいんだけれど、構わないかい?」

「え……?」

レリアが予想外の提案に驚いて戸惑うと、ロミオはいつになく優しい微笑みを浮かべながら「その通りだよ」と頷いた。

レリアは友人たちがそれほどまでに我が子を愛そうとしてくれている事実が、嬉しくもあり、同時に恐れ多くて、何と答えればいいか分からず言葉に詰まってしまった。彼女が助けを求めるように隣のオスカーをそっと見つめると、オスカーは静かに微笑みながら、優しく顎を引いて肯定の意を示した。

「……本当に、みんなが名付け親になってくれるの? それで、いいの?」

レリアが少し緊張しながら尋ねると、友人たちはそれぞれ、驚いたように、あるいは決意を秘めたように静かに頷いた。

「……フン。名付け親(ゴッドファーザー)か。それなら、ただの『代理』ではなく、法的一歩手前の、本当の父親のような権利を得られるかもしれないな」

レリアをじっと見つめていたグリフィスが、妖しく紫色の瞳を輝かせながら、牽制を込めて視線をオスカーへと移して言った。しかし、本物の父親であるオスカーは――。

今では彼らとのそんな日常茶飯事の小競り合いや挑発にもすっかり慣れてしまったのか、大人の余裕を見せるように、完全に鼻で笑って無視を決め込んでいた。

その時、横からカーリクスが突然、何か重大なことに気づいたように声を上げた。

「待ってよ、ということは、名付け親の中で一番強い僕が、実質的に『長男(一番上の父親)』ってことになるの?」

「一体誰の許可を得てそんな勝手な序列を決めているんだ、この筋肉バカが」

ロミオがすぐさまその言葉に噛み付き、案の定、二人はどちらが子供たちにとっての「一番の父親(名付け親)」に相応しいかで激しい言い争いを始めてしまった。

レリアはそんな男たちのいつも通りの騒がしい様子を余計な口出しをせずに横目に眺めながら、窓から差し込む暖かい光に照らされた、目の前の美しい風景を静かに見つめていた。

祖父は相変わらず叔父のカリウスとくだらないことで口論をしており、

母のユリアナは、そんな男たちを呆れつつも困ったように笑いながら温かく見守っている。

オスカーとグリフィスは、まるで見えない火花を散らすにらみ合いでもするかのように、静かに目を見開いて互いの視線をぶつけ合っており……。

ロミオとカーリクスは、冗談の範疇とはいえ、お互いに一歩も引かない鋭い視線を交わして子供たちの序列について言い争っている。

レリアが微笑みを浮かべながらその愛おしい光景を眺めていると、ふと、向かい側にいた母のユリアナと視線がぶつかった。

どちらからともなく、クスッと幸せそうな笑みがこぼれ落ちる。

これほど多くの風変わりな大人たちに、これでもかと過保護に愛される我が子たちの未来は、一体どれほど賑やかで幸福なものになるのだろう。

ほんの少し照れくさく、けれど、これ以上ないほどに満ち足りた、シュペリオン城の美しい幸福な午後だった。

 



 

  • オスカーの「つわり」と、思い出のレモンタルトによる深い愛

    妊娠初期のレリアに代わり、過酷なつわりと偏食に苦しむ夫オスカーのため、レリアは幼い頃の思い出の味である「レモンタルト」を厨房で手作りしました。隠し味として「錬金」で調合した口内炎の特効薬を忍ばせたタルトは、オスカーの心を劇的に癒やし、二人の絆と愛をさらに深めることとなりました。

  • 双子の名前が『リアン』と『ヘルナ』に決定

    二人は生まれてくる双子の名前を、レリアが男の子の候補から「幸運」を意味する【リアン】、オスカーが女の子の候補から「幸福」を意味する【ヘルナ】と名付けました。これはロミオの意見も参考にしつつ、これ以上ないほど美しく完璧に調和した組み合わせとなりました。

  • 仲間たちの「名付け親(ゴッドファーザー)」への名乗りと賑やかな日常

    昼食後のサロンで名前を発表した際、光竜討伐の英雄である4人の友人たち(ロミオ、カーリクス、グリフィス、オスカー)が双子の「名付け親」になることを提案しました。実質的な父親の座や序列を巡って男たちがいつもの小競り合いを始める中、レリアは愛する家族や仲間に囲まれた我が子の賑やかで幸福な未来を確信するのでした。

 

 

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