シンデレラを大切に育てました【１２１話】ネタバレ

ダグラスが呼吸を始めたのは、リリーが温室の外に飛び出した後だった。

彼はぎくしゃくしながら首を回してリリーが消えた温室のドアを眺める。

そして手を上げて自分の唇に触れた。

リリーは唇を強くこすったようでヒリヒリする。

バンズさんは自分を嫌っていない。

そんな考えが彼の頭の中にひらめいた。

すると、ダグラスの顔もゆっくりと明るくなり始めた。

リリーが温室から逃げ出した時に落としたハンカチ。

彼は注意深くそれを拾い上げ、キスをする。

パチンと木がぶつかる音がした。

アイリスはウィリアムの剣を封じ込め、突き落とそうとする。

しかし、ウィリアムはそう簡単には退かなかった。

本当に上手だね？

アイリスは驚いて目を丸くする。

ウィルフォード男爵がウィリアムを呼んで付けてくれた時は、彼がどれくらいするかと思ったが、そうではなかった。

彼女はウィリアムを力いっぱい押しのけて後退した。

ウィリアムは無表情な顔でアイリスがやってくるのを待つ。

彼はアイリスの動きを見ただけで、彼女が自分のどこを攻撃しようとしているのか分かった。

ダグラスと対戦するたびに、一体どうやって知って自分の攻撃を防ぐのか気になっていたが、今は分かった。

アイリスの目が先にウィリアムの肩に向けられた。

そこだね。

ウィリアムは、アイリスが剣を振り回す前に、すでに自分の剣を持ち上げてアイリスの剣が入るところに当てていた。

これは完全に仕組んだようなものだ。

アイリスはやっと剣を始めた段階で、ウィリアムは王子として幼い頃から基本素養で剣を学んだから。

「すごく上手じゃない？」

再びバン！と剣がぶつかると、アイリスは驚きのように叫んだ。

そりゃ当然だよ。

ウィリアムは満足していたが、満足できる状況ではないことに気づいた。

学んだ時間だけで計算すると、アイリスの10倍を超える。

彼は3歳からおもちゃの剣で遊んでおり、アイリスはほんの数週間しか経っていない。

再びウィリアムの剣を押し出したアイリスが、今度は彼の首を狙って突き刺した。

ウィリアムの剣がアイリスの剣に当たる。

今度はウィリアムも負けず、そのまま力を入れて立った。

「うっ」

アイリスが力いっぱい押すために力を入れているのが感じられた。

ウィリアムは集中していたアイリスの顔をじっと見る。

彼女の茶色い目は好戦的に輝いていた。

リアンは、アイリスのこのような点が特に好きだった。

彼の頭の中にはみんなでピクニックに出たときのことが思い出される。

あの時もアイリスは最善を尽くした。

彼女はコツを知っていたが、だからといって怠けてはいなかった。

そして、同時についていけないアシュリーを見捨てなかった。

「えいっ！」

アイリスはウィリアムを力いっぱい押し出す。

ウィリアムは少し後ろに下がってから再び剣を持ち上げた。

そしてアイリスを見る。

彼女は息を切らしながらも姿勢を取っていた。

彼をじっと見つめる瞳にリアンの心臓がドーンと鳴る。

鮮やかな茶色の瞳が、汗に濡れた額のリアンが見惚れるほど綺麗だった。

いや、違う。

ウィリアムは首を横に振って瞬きをする。

彼はアイリスが綺麗だから好きなわけはない。

彼女の言葉、行動すること、考えた方が好きなんだ。

でも、綺麗なのも事実じゃない？

ウィリアムがそう思った瞬間、アイリスが飛びかかった。

彼は素早く剣を持ち上げたが、もう手遅れだ。

アイリスの剣が彼の腰を強打する。

「あっ！」

そのままウィリアムは悲鳴をあげて倒れた。

当然、彼が防ぐと思って力いっぱい剣を振り回したアイリスはびっくりして剣を落とす。

「ああっ！ウィリアム！大丈夫？」

ウィリアムは一瞬息をのんだ。

彼はもう悲鳴も、うめき声も出せず、床に倒れたまま腰をつかんでぶるぶる震えていた。

「ウィリアム、大丈夫？折れた？どうしよう！？ごめんね！」

良くない。いや、大丈夫。

やっとのことで気がついたウィリアムは手を上げた。

言いたいが言えなかった。

アイリスはどうしていいか分からずに飛び起きる。

医者を呼ばなければならない。

彼女はそのままドアに向かって走った。

そうするうちに、ウィリアムを見ながら叫んだ。

「医者を呼んでくる！」

医者？

ウィリアムは反射的に頭を上げ、再び痛みに身をすくめた。

その間、アイリスはジムに医者を呼んでくるように頼むために廊下に飛び出した。

「うん？」

ふと、彼女は自分が振り返った瞬間、ウィリアムの姿がリアンのように見えたことに気づく。

ウィリアムは彼女に向かって頭を上げ、再び縮こまった瞬間に顔がリアンの顔のように見えた。

そんなはずがない。

アイリスはしばらく彼女が出てきた部屋のドアを見て、医者を呼ぶのが先だということに気づき、階段を下り始めた。

そしてそれと同時にリアンの前ににダニエルが現れる。

「大丈夫ですか？」

ダニエルはリアンの腕をつかんで立たせながら尋ねた。

その瞬間、驚くべきことにリアンの苦痛が消える。