シンデレラを大切に育てました

シンデレラを大切に育てました【218話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【シンデレラを大切に育てました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

218話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 試験中断③

ミルドレッド・バンス夫人がビーヌ工房を借り、貧しい人々にビーヌを無料で分け与えているという噂が広まった。

もちろん、すべての貧しい人々に配っているわけではない。

一定の…特に下位の人々にとっては、それも限られた量ではあったが、それだけでも都に良い噂が広まるには十分だった。

その噂はバンス夫人の名前と結びつき、彼女が妖精の大集会の主催者かもしれないという話と合わさって、さらに華やかさを増し、人々の間でバンス夫人や彼女を支えるバンス家の人々の人気が高まった。

バンス夫人の長女アイリス・バンス嬢が王太子妃候補として試験を受けているという知らせに、人々がアイリスを応援し始めたのは言うまでもない。

そしてその話は、ついにクレイグ侯爵の耳にも届いた。

「これがあのバンス夫人のビヌなのか。」

クラブの中で新聞を読んでいたトーマスに、エリックが声をかけた。

新聞の端に載っていたビヌの広告を見たようだ。

バンス・ビヌという名前とともに、清潔感があるという宣伝文句が添えられている。

「人々に無料で配ってるって?利益は出るのか?」

トーマスが疑うように問いかけると、エリックは呆れたように言い返した。

「売れないからだよ!今、首都で売ってるビーヌはこれしかないんだ!」

思いもよらない事実に、新聞を見ていたトーマスの目が揺れた。

彼は、自分が使っているビーヌがどんなものかさえ知らない。

当然、バンス夫人がビーヌを無料で配っているという話は聞いていたが、それでどれほど儲かっているのかは知らなかったのだ。

「ちょっと、それってウィルフォード男爵の事業じゃなかった?」

近くで新聞を読んでいた別の男まで加わり、会話はますます活発になった。

エリックは得意げに、自分の知っている話を語り出した。

「工房の社長はバンス夫人の三女だろ。」

「ちょっと、三女って誰だ?王太子妃候補か?」

「いやいや、一番美しいお嬢様だよ。」

そのおかげで、人々の頭の中にアシュリーの顔が鮮明に浮かび上がる。

確かに社交の場に現れた瞬間、衝撃を受けるほど美しい容姿で、何度も人々の話題になったお嬢様だ。

そんな彼女が、比較的美しくない姉たちに埋もれて、今ではほとんど話題に上らないという事実を、人々は皆、不思議に思っていた。

「王妃殿下も長女を気に入っておられるそうじゃないか?」

「少し前にわざわざ呼び出して話をされたそうだ。」

「それならもう決まったも同然じゃないか?」

ちょうどクラブの中へ入ってきたクレイグ侯爵の耳に、その会話が飛び込んでくる。

彼は不機嫌そうな表情で群れをなす男たちを見ていたが、すぐにくるりと振り向いた。

「我が家に何の不満があるというんだ!人を見る目ならロレナの方がはるかに上だ。クレイグ侯爵ともなれば、どんな家に嫁いでも遜色ないし、何一つ不足はない。」

それでもクレイグ侯爵は、自分の娘ではなく、バンス家のアイリスの方がより有力な候補だという事実を信じられなかった。

あの女には何かおかしなところがあるのではないか。

クレイグ侯爵は嫌な気分で屋敷へ戻る途中、そう考えた。

ひょっとすると、何か邪悪な魔法でも使っているのではないか、と。

クレイグ侯爵の脳裏に、ミルドレッドとダニエルの姿がよぎった。

二人が何か企んでいるのではないか。

ウィルフォード伯爵にまつわる噂はさまざまだ。

彼はその中でも、自分の好みに合いそうなものを選び取った。

「ところで工房の社長だって?貴族の令嬢か?」

一方、クレイグ侯爵が来て去ったことを知らない人々は、相変わらずバンス家についての話を続けていた。

ジェイムスの指摘に、トーマスがふっと鼻を鳴らし、片耳をくいっと動かして言った。

「本当に社長なのか?ただ名前を貸しているだけだろ。」

「いや、だからこそ、なぜ名前を貸したのかって話だよ。普通はそういうとき、ちゃんとした人物を雇うじゃないか。」

「分からないさ。バンス嬢が意外と頭が悪くて、虚栄心ばかり強い女かもしれないしな。」

あの顔立ちなら、頭が悪くても納得できるが――トーマスのその冗談に、男たちの顔にはやや下品な笑みが浮かんだ。

しかしそのとき、奥から一人の男が歩み出てきて言った。

「根拠のない噂を広めるな。」

「えっ、グラント伯爵…。」

勇気を振り絞ってアシュリーの名に泥を塗ろうとしていた男たちは、グラント伯爵の登場に驚き、慌てて背筋を伸ばす。

まったく、情けないやつらだ。

グラント伯爵は、下品な噂話やデマを流す若者たちを軽蔑する視線を隠さずに言った。

「アシュリー・バンス嬢は姉のために犠牲を払ったんだ。それも知らずに根拠のない噂や中傷とは、恥を知れ。」

グラント伯爵の一言で、クラブの中は静まり返る。

彼は鼻を鳴らし、肩をそびやかして身を翻すと、クラブの外へ出て行った。

「犠牲だって?」

グラント伯爵が出て行くや否や、クラブの中は再びざわめき始めた。

グラント伯爵が直接、「アシュリーの行動は姉のための犠牲だった」と語ったのだ。

それだけで、別の方向へ噂が広まるには十分だった。

しばらくして、国王はミルドレッドを城へと招き入れる。

招待がなければ城に入ることはできないミルドレッドにとって、国王からの招待はこの上ない栄誉だった。

しかし彼女は、その国王の招待が必ずしも好意的な意味だけではないかもしれないと考えていた。

理由はいくつもある。

近くの屋敷でビヌを受け取ろうと訪れる人々があまりにも多くなったことも、その理由の一つだ。

ビヌを配る場所を工房に移したものの、訪れる人の数は全く減らなかった。

市内から工房まではかなり距離があるにもかかわらず、人々は全く気にしなかったのだ。

むしろ工房の従業員たちが働く様子を見て、従業員として雇ってほしいと申し出る人まで現れるほどだった。

人々の数が増えたおかげで、ミルドレッドのビーヌ事業は以前にも増して活気づいていた。

それだけでなく、街角では「次の王妃はアイリスであるべきだ」という声まで上がり始めた。

栗色の髪に穏やかで聡明な琥珀色の瞳を持つあの令嬢こそが王妃になるべきだ、という歌にはアイリスの名前こそ出ていなかったが、近くの屋敷に住んでいるとか、三姉妹の長女だという部分から、誰もがアイリスのことだと気づいていた。

「ミルドレッド・バンス夫人です。」

侍従がミルドレッドを案内するのと同時に、扉の前に立っていた別の侍従が慌てて声を上げ、彼女の到着を告げる。

ミルドレッドは背筋を伸ばし、開かれた扉の中へと入っていった。

国王と二人きりで会うのは初めてだ。

緊張しないはずがない。

しかし驚いたことに、中にいたのは国王だけではなかった

クレイグ侯爵もまた、国王の向かいの席に座っていた。

「お招きいただき、到着いたしました。」

ミルドレッドの挨拶に、国王は軽くうなずき、席を勧めた。

そしてミルドレッドにクレイグ侯爵を紹介した。

「すでに知っているだろうが、こちらはクレイグ侯爵だ。」

「お久しぶりです。」

クレイグ侯爵はミルドレッドの挨拶にも、軽くうなずいただけだった。

そのおかげで、ミルドレッドは自分が国王に招かれた理由がクレイグ侯爵の推薦によるものだと察した。

クレイグ家とバンス家は、王太子妃候補の座を巡って争っている。

伝染病の影響で試験は中断されたが、両家の令嬢が共に健康である以上、伝染病が収束すれば試験は再開されるだろう。

しかし、都ではアイリスの人気が高く気に入らなかったのだろう。

ミルドレッドは、城から呼び出されたと聞いたときに胸によぎった予感が当たっているのかどうか分からず、苦笑した。

「クレイグ侯爵が少し前、私に王妃選考試験は中止になったのではないかと聞いてきたそうだ。」

国王が口を開いた。

だが、ミルドレッドは何も言わず、国王の言葉が続くのを黙って聞いていた。

王妃選考試験は中止になった。

中止になったと城の者が出てきて告げたのだから確かだ。

しかし、クレイグ侯爵がわざわざ国王に尋ねたということは、挑発が目的だったのは明らかだった。

「侯爵は、バンス夫人。あなたがまだ試験中であるかのように振る舞っていると言っていたが、本当か?」

「申し訳ございません、陛下。私には何のことをおっしゃっているのか分かりかねます。」

国王はミルドレッドの言葉に微笑んだ。

本当に彼女が自分を愚かだと思ってそう言ったわけではない。

国王はミルドレッドに、少し柔らかく説明した。

「クレイグ侯爵が言うには、君が人々のために積極的に慈善活動をしているそうだ。」

「慈善活動そのものが問題なのではありません、陛下。」

国王の説明に、クレイグ侯爵が口を挟んだ。

慈善活動そのものは問題ではない。

それは貴族であれば誰もが行うべきことだからだ。

しかしミルドレッドの慈善活動は、「アイリスが王太子妃になるべきだ」という世論を後押しする形になっていることが問題だった。

彼は落ち着いた口調で言った。

「バンス夫人が行う慈善活動に、アイリス・バンス嬢を前面に出しているのが問題なのです。」

「それが何だというの?」

ミルドレッドは小首をかしげ、幼い頃のような表情でクレイグ侯爵を見た。

そして国王を見やり、また彼に視線を戻すと、その様子が面白かった。

国王は、クレイグ侯爵の主張が的外れであることを知っていた。

それでも、あたかも耳を傾けるかのようにしてミルドレッドを呼び出したのは、クレイグ侯爵が侯爵家の当主だからだった。

どんなに理不尽でも侯爵の言葉を完全に無視することはできない。

まして、アイリスが王妃となれば、バンス家はクレイグ侯爵家を含む他の貴族家からの非難を受けることになる。

国王は今ここで、ミルドレッドが他家からの攻撃を巧みにかわすか、あるいは反撃できるかを見極めたかった。

「私の娘が慈善活動をしていることが問題だとは存じませんでしたが。」

ミルドレッドの指摘に、クレイグ侯爵は激昂した。

しかし、ここが国王の前であることを悟ると、怒りを抑え、声を低くして言った。

「慈善活動そのものが問題ではない。だが—」

「つまり、この時期に王太子妃候補であるアイリス・バンス嬢が財団を設立したことが問題だというのですね。」

「おや、侯爵。財団は試験期間中に設立されたのですよ。もっとも、活動を始める前に試験は終わってしまいましたが。」

「それなら活動しなければよかったのではありませんか?」

――何を言っているの?

ミルドレッドの顔に、この世で一番間の抜けた人間を見るような表情が浮かんだが、それはすぐに消えた。

彼女は理解できないというふうに問い返す。

「せっかく作った財団を、試験に有利にならないからといって活動しないのですか?それでは、陛下が廃止なさった試験と矛盾する行為ではありませんか?」

クレイグ侯爵の顔がみるみる赤くなった。

国王の顔にも微笑みが浮かんだが、侯爵が自分を見つめるのに気づいた瞬間、その笑みは再び消えた。

「聞いてみれば、間違ってはいないな。」

取るに足らない話ではあったが、国王はどうすることもできないという表情でミルドレッドの言葉に相槌を打つ。

クレイグ侯爵は険しい顔でミルドレッドを見つめた。

彼は、王妃選考試験が始まるまでは、自分の娘ロレナが容易に王妃になれると信じて疑わなかった。

家柄も容姿も申し分のない娘で、もし障害があるとすれば、それはむしろ伯爵家であることくらいだと思っていたのだ。

まさかバンス家が相手になるとは夢にも思わなかった。

しかし、最初の試験から歯車が狂い始めた。

侯爵はしばしミルドレッドを見やった後、再び国王に向かって言った。

「それだけではございません、陛下。バンス夫人が販売しているビーヌは、この国で唯一販売されているビヌとはいえ、そのビヌがあまりにも高額で売られているという批判も出ています。」

「そうか?」

国王はクレイグ侯爵の主張に対して何も意見を述べず、そのままミルドレッドを見た。

「知っていて反論してみろ」という態度に、ミルドレッドはくすっと笑った。

「それはまったくもって筋の通らない話ですね。既存のビヌと混同しているのではありませんか?」

ミルドレッドの言葉に、国王もまたくすっと笑う。

既存のビヌは元の価格から最大で五十倍にまで値上がりしていた。

それに比べれば、ミルドレッドのバンス・ビヌははるかに安価だ。

つまり、批判があるとすればバンス・ビヌではなく、まず既存のビヌに向けられるべきだった。

「他のビヌは品切れで売ることもできないのに、価格がいくらかなど何の関係があるというのです!」

クレイグ侯爵の反論にも、ミルドレッドは眉一つ動かさなかった。

「売れないのは私どもも同じでございます。ですが、無料で配るほど大量には作っておりません。」

「だが、あれほど無料で配るとは、相当な量を作っているはずだ!」

結局、クレイグ侯爵が言いたかったのはそれだった。

人に無料で配るほど大量に作りながら、高値で売っているということ。

彼はそう主張したことで、自分が優位に立ったと思い込み、得意げに笑いながら国王に言った。

「ご覧ください、陛下!バンス夫人は人々に無料で配るほど大量に生産しながら、貴族には高値で売りつけております。これが一体何の策略でございましょう?」

「何の策略だと思う?」

とぼけたように返す国王の問いに、クレイグ侯爵は小さく自分の膝を軽く叩きながら、声を上げた。

「陛下や貴族たちの支持を、バンス家が独占しようとしているのです!これがどれほど危険な考えか、おわかりになりますか!」

――何を言っているの?

ミルドレッドはクレイグ侯爵の言葉に思わず口を開けたが、国王は面白そうに微笑むだけだった。

ミルドレッドの立場からすれば全く筋の通らない話だったが、クレイグ侯爵の立場からすれば確かに不満の残る点だ。

まだ王太子妃が決まっていない状況で、バンス家が人気を集めることは、そのままアイリスが王太子妃に決まることにつながりかねないのだ。

クレイグ侯爵はさらに身を乗り出し、熱を込めて国王に言った。

「陛下!最初からおかしいと思っておりました。何も知らない女が事業をするなど!バンス夫人とウィルフォード男爵がただならぬ仲であるのは明らかではありませんか!」

知らぬふりをする国王の返しに、クレイグ侯爵は今度はミルドレッドの背後にダニエルの陰謀があるかのように話を進めようとしていた。

ミルドレッドはきょとんとしながらクレイグ侯爵を見つめ、何と返すべきか考え始めた。

ダニエルなら、わざわざ陰謀を企てなくてもこの国を手中に収めるくらい造作もないだろう?

むしろクレイグ侯爵を打ち負かすのは容易いはずだ。

ミルドレッドが一瞬言葉を失っていると、国王は彼女が何と反論するかを期待するような表情を浮かべた。

もちろん、王はダニエルがこの国を乗っ取ろうとしているなどとは信じていなかったからこそ、こんな茶番が成り立っているのだ。

「まずは、陛下、そして侯爵。」

「まだ言いたいことがあるのか?」

ミルドレッドが口を開くと、クレイグ侯爵は眉をひそめた。

彼女は視線を上げ国王を見やったところ、国王はすぐに侯爵へ警告を発した。

「侯爵、私の前で無礼な口をきくな。」

侯爵の顔は赤く染まる。

理屈で互いに攻撃し合うのは構わないが、人格を攻撃したり、侮辱するような態度は許されない。

それが国王の前であれば、なおさらだ。

礼節を守れという国王の指示に、クレイグ侯爵は赤い顔のまま、ぶつぶつと謝罪の言葉を口にしたが、ミルドレッドは聞こえないふりをして口を開いた。

「ビヌを利用して陛下や貴族の人気を独占するなんて、ありえない話です。この国は陛下のものであり、臣民はそれをよく理解しています。侯爵、本気でビヌ程度で人々の支持が得られるとお思いなのですか?」

ミルドレッドの指摘に、国王の顔に笑みが浮かんだ。

そう、実のところ国王もそれが不快だったのだ。

クレイグ侯爵は単にミルドレッドとダニエルを攻撃しようとしていただけだが、その言葉で矢面に立たされるのはミルドレッドだけではなく、国王も同じだった。

国王の面前で「人々の忠誠はビーヌ一杯で奪える」と言われて、気分の良いはずがない。

「次に、クレイグ侯爵の言う通り、ビーヌで人気を得られるのなら、誰でもそれを利用できます。」

「馬鹿なことを言うな!ビーヌはバンス家だけが独占しているではないか!」

クレイグ侯爵の反論に、ミルドレッドはわざと微笑んだ。

そう言うだろうと分かっていて、すでに手を打ってあったのだ。

彼女は国王を見やり、こう言った。

「陛下、1週間前に王太妃殿下から、人々にビヌを配ってほしいとお金をいただきました。私は誠実に、王太妃殿下のお名前で人々に配ったのです。」

クレイグ侯爵の顔が引きつった。

ミルドレッドの言葉は明白だった。

もし本当にビヌで人々の支持が得られるのなら、お金を使って自分の名前で配ればいい――そう言っているのだ。

「そして三つ目に。」

ミルドレッドは三本の指を立てて続けた。

「まだあるのか?」と動揺するクレイグ侯爵をよそに、彼女は国王を見やって言った。

「貴族にだけ高く売っているというのは不当な中傷です。私はビヌを配るときに、身分の差など設けませんでした。ビヌを買うことさえためらうほど生活が困窮している人々にも分け与えているのですよ。」

「なんと…嘘を申すか!」

クレイグ侯爵の顔に、勝ち誇ったような表情が浮かんだ。

彼はミルドレッドが明らかに嘘をついていると確信し、国王に向かって叫んだ。

「私が確認しました!貴族の中でバンス夫人からビーヌを受け取った者は一人もおりません!」

「おや、本当にいないと断言なさるのですか?」

ミルドレッドは瞬き一つせずに答えた。

彼女は、言わぬが花ということもあると心得ていた。

「もし私が侯爵のような方であれば、ビーヌを無料で受け取ったなどとは口が裂けても言いたくないでしょうね。」

自分の家庭事情を話したくない人間、絶対に口外したくない人間もいる。

ミルドレッドの目から見て、クレイグ侯爵はまさにその類だった。

侯爵の顔に怒りがこみ上げた。

彼は思わず声を荒げかけたが、自分が国王の前にいることを思い出し、歯を食いしばって言った。

「それなら、受け取った者を連れてきてみろ。」

「連れてくる必要はありません。私は貴族には渡さないと、一度も言ったことはありませんから。むしろ、あなたが欲しかったのに受け取れなかった貴族を連れてきてください。」

「何だと?生意気な……」

「クレイグ侯爵。」

さらに声を荒げようとするクレイグ侯爵を止めたのは国王だった。

国王は肘掛けに深く腰を下ろし、再び侯爵に警告した。

「先に口を開いたのは、そなたの方だ。」

わずかに怒気を帯びた口調に、クレイグ侯爵は不満げにしながらも、ミルドレッドへの言葉を続けた。

ミルドレッドとクレイグ侯爵がよほど親しい間柄でない限り、いくら爵位があっても侯爵がミルドレッドに直接口を利くのは無礼な行為だ。

国王の指摘に、クレイグ侯爵の顔には狼狽の色が浮かんだ。

ミルドレッドはそれを見て、(誰があんな人間に自分の家庭事情を話したいと思うのか)と言ってやりたい気分になる。

 



 

 

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