シンデレラを大切に育てました

シンデレラを大切に育てました【230話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【シンデレラを大切に育てました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

230話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 結婚式について

ミルドレッドは立ち上がり、ベッドに寝そべっていたダニエルを見下ろした。

その動きに気づき、ダニエルも観念したように視線を向ける。

「……呪いが関係しているわけじゃないのよね?」

前から引っかかっていた疑問を、ついに口にする。

彼女が知りたかったのはただ一つ。

なぜダグラスと二人きりになると、あそこまで空気が冷え込むのか――その理由だった。

妖精の呪いのせいで関係がぎくしゃくするというのなら、フィリップとあれほど親しくしているのは説明がつかない。

だからこそ理解できない。

同じケイシーなのに、一方とは親しく、もう一方とは気まずい――その違いが。

「実際、その通りです」

ダニエルは相変わらず寝転んだまま、ミルドレッドの手を取って言った。

彼女は驚いて問い返す。

「でもフィリップ・ケイシー卿とは普通に仲がいいでしょう?」

「彼とも最初からうまくいっていたわけではありません」

興味深い話にミルドレッドの目が輝く。

ダニエルはくすっと笑い、彼女の手を軽く引いた。

「話してくれるの?」

「もう一度横になったら」

ミルドレッドの目が細くなった。

ダニエルは慌てて言い足す。

「寒いんです」

そんなはずはない。

初夏の気候だし、ミルドレッドが寒くないのならダニエルも寒いわけがない。

それでも彼女は諦めたような顔で、もう一度横になった。

「ケイシー家の人たち、特に男性は、私が誰か分かった途端に態度が変わるんです」

フィリップやダグラスだけではない。

ケイシー侯爵も、ダニエルが妖精だと知った瞬間に態度を変えた。

彼は彼女を上から下まで眺め、何か言いたげな顔をしていたが、結局はぎこちない空気を残してその場を去っていった。

「あなたはいくつだったんですか?」

「十歳くらいだったと思います」

まだ彼の母親がこの屋敷にいた頃のことだ。

だからこそ彼は、ケイシー侯爵のあの態度にも、ある程度は心当たりがあった。

――自分の弟がどんなことを経験してきたのか。

知りたくて、問いただしたくて仕方なかったはずだ。

けれど相手はまだ十歳の子ども。

問い詰めることもできず、ただその場を離れるしかなかった。

「その後に出会ったのがフィリップでした。その数年後に、ダグラス・ケイシー卿と会ったんです」

フィリップとは特別な接点はなかった。

当時のダニエルは十代で、フィリップもケイシー侯爵と似たような態度を見せた。

そしてさらに数年後、ダグラスと出会ったとき――その時になってようやく、ダニエルは気づいたのだ。

なぜケイシー家の男たちが、自分に対して妙に距離を置くのかを。

「待って。それじゃあ、その時までケイシー家に妖精の“祝福”があるって知らなかったんですか?」

「正確にどんな祝福なのかは知りませんでした。ただ、一族に代々妖精の力が関わっているということだけは分かっていました」

だからダニエルは、ケイシー家の男たちが自分を避ける理由を、なんとなく理解していた。

はっきり確信したのは、ダグラスが露骨に距離を取った後のことだが。

「喧嘩したんですか?」

「いいえ」

あまりにあっさりした否定に、ダニエルは拍子抜けして問い返した。

「私とケイシー卿の年の差、分かりますか?」

「リリーとケイシー卿と同じくらいでしょう」

それだけ年が離れている相手と、まともに争うはずがない。

ダニエルは改めて、ダグラスのことを不思議に思い、ミルドレッドへと視線を向けた。

彼がダグラスと初めて会った頃、今よりも少し若かった。

もちろん当時のダグラスも今のリリーよりは年上だったが、それでも二十代のダニエルからすれば、まだずいぶん年下の少年にすぎない。

そんな相手が、ただ少し気に入らないことを言った程度で本気で争う――そんな話ではないのだ。

「ケイシー卿は何て言ったの?」

ミルドレッドの問いに、ダニエルは体を横向きにして頬杖をつきながら答えた。

「自分はそんな馬鹿げた“呪い”なんて信じない、って」

「そんなことを?」

ミルドレッドの眉が上がる。

彼女はしばらくダニエルを見つめ、それからくすっと笑った。

「なるほど……ケイシー卿のご両親がいなかった環境、ってことね」

「もしご両親がいらしたら、相当叱られていたでしょうね」

ミルドレッドの脳裏に、今の落ち着いたダグラスの姿が浮かぶ。

礼儀正しく、リリーにもきちんと接する青年。

だが同時に――子どもの頃は、少しひねくれたところがあったのかもしれない。

「じゃあ、そのとき叱ったのは……あなたじゃなかったのね?」

保護者のような立場でダグラスを叱らなかったのか――その問いに、ダニエルはわずかに笑みを浮かべた。

確かに、他人の子を導く義務など本来はない。

仮にあったとしても、彼はきっとためらわなかっただろうが。

それでも彼は、あくまで穏やかに答えた。

「私が叱らなくても、いずれ誰かに叱られますから」

そして、その「いずれ」が遅くなればなるほど、ダグラスにとって痛い形で返ってくる――そんな含みもあった。

適度な厳しさと、適度な賞賛。

どちらも欠けてはいけない。片方でも欠ければ、人はどこか歪んでしまう。

ミルドレッドは、相変わらず他人に対して距離を取るダニエルの横顔をじっと見つめ、それから首を傾げた。

「それで終わり?それなのに、どうして今もケイシー卿とはあんなに空気が重いの?」

「ええ。その後も、ちょっとした出来事はいくつかありました」

「ちょっとした出来事?」

「一番最近だと、王子殿下に剣術の講師として指名された件ですね」

「えっ、それって……」

ミルドレッドの目が大きく見開かれる。

当然、剣の指導はダグラスが担い、その他の学問や教養はダニエルが教えるものだと思っていた。

王族や貴族の子弟は幼少期に基礎教育――学問、歴史、礼儀などを学び、十代後半になると実務に近い助言役や指南役を付けられる。

普通は爵位を持たない遠縁の人物が担うことが多いが、王子ともなれば話は別で、ダグラスやダニエルのような実力ある貴族が選ばれることもある。

「あなたの剣の腕が、ケイシー卿と同等だなんて……知りませんでした」

「試合じゃなくて、本当の戦いになったら――私のほうが強いでしょうね」

どういう意味なのか、ミルドレッドにはすぐには理解できなかった。

彼女が困惑した表情を浮かべると、ダニエルは少し言葉を選ぶようにして説明する。

「同じ条件で勝敗を決める“試合”なら、ケイシー卿に勝てる人はこの国にはいないと思います。あの人は、正統で洗練された剣を極めていますから」

「じゃあ、あなたは?」

ダニエルは目を細め、どこか楽しげに笑う。

そして手を伸ばし、ミルドレッドの腰にそっと回す。

「私は、路地裏の喧嘩のほうですね。手段を選ばず、生き残ることが目的なら――私のほうが有利です」

まさか、というようにミルドレッドの目が細くなる。

彼女は少し身をかがめたまま、顔だけを上げてダニエルを見上げた。

顔をのぞき込みながらミルドレッドが尋ねた。

「決闘したんですか?」

「ええ。ケイシー卿が剣術師範の座を懸けて、決闘で決めようと言い出しまして」

「それで、あなたが勝ったんですね?」

ダニエルは答える代わりに、ただ微笑んだ。

ダグラスはそれを卑怯だと評したが、彼自身はそれも一つのやり方だと思っている。

ダグラスやケイシー家の人々は、剣を“道”として、あるいは友のように扱う。

しかしダニエルにとって武器は、あくまで道具に過ぎなかった。

もっとも彼は、リアンに体力づくりとして剣術を学ぶのは良いことだと考え、ダグラスから教わることを勧めていた。

もちろん純粋にそう思っているわけではなく、将来王になるリアンにとって、ケイシー侯爵家となるダグラスとの関係は重要だと判断してのことだった。

「そんなつまらない話より、もっと面白い話をしません?」

「面白い話をしましょう」

そう言いながらダニエルは、ミルドレッドの耳元に唇を寄せた。

ダグラスとの話を“つまらない”と言い切る彼に呆れつつも、耳にかかるくすぐったい感触にミルドレッドは思わずくすりと笑い、身をよじった。

「私には十分面白い話でしたけど」

「それより、もっと面白い話がありますよ」

ベッドに仰向けになったミルドレッドは、ダニエルを見上げながら問いかける。

「何ですか?」

「私たちの結婚式です」

「……ああ」

ようやく理解した様子のミルドレッドに、ダニエルは片眉を上げ、首を少し傾けた。

「考えたことはありませんか?」

「ええ、もちろん。考えたことはありますよ」

ミルドレッドは慌てて答えたが、もう遅かった。ダニエルはどこか拗ねたような表情で言う。

「私はプロポーズもしましたし」

「それで、私は受け入れました。皆にも婚約したことを伝えましたよね」

「では、結婚式はどうします?」

アイリスは王太子妃に決まり、リリーは展示会で絵を披露する目前。

アシュリーも工房の主として残ることが決まっている。

ダニエルから見れば、これ以上結婚を先延ばしにする理由はなかった。

「あなたはどうしたいですか?」

今度はミルドレッドが問い返す。

正直に言えば、結婚式について具体的に考えたことはほとんどなかった。

すでにダニエルは彼女の家に出入りし、半ば同居のような状態になっているのだから、形式の問題に過ぎないとも思っていた。

一緒に暮らしているのだから、なおさらだ。

ダニエルはふっと微笑み、どこか面白がるようにミルドレッドを見つめる。

「私は、人にあなたと結婚したと伝えられるなら、方法は何でも構いません」

「盛大な式は望まないんですか?」

「あなたは?ミル。盛大な式がいいと言うなら――」

今にも本気で準備を始めそうな気配に、ミルドレッドは慌てて彼の腕を掴んだ。

そんな大げさなものは望んでいない。

「私、もう二回も経験してるのよ」

どちらもかなり大規模な式だった。

一度はモルフィ伯爵家とリベラ男爵家の政略結婚、もう一度は大富豪バンスとの婚姻。

だからこそ、わざとさらに盛大にしたこともあった。

ミルドレッドはもう、華やかな結婚式に未練も幻想も抱いていない。

ただ一つ気にしていたのは――ダニエルにとってはこれが初めての結婚だということだった。

彼女はそっとダニエルの腕を撫でながら、静かに言う。

「でも今回は、あなたの望む形でやるのがいいと思うの」

「ミルドレッド……」

ダニエルの声が低くなる。

その瞬間、彼の瞳が金色に輝いたのを見て、ミルドレッドは思わず息を呑んだ。

「あなたが望むことが、私の望みです」

「本当にやりたい結婚式はないの?」

――ない。

ダニエルは何も言わず、ただ柔らかく微笑んだ。

彼にとって大事なのは、形ではない。

人々に、彼女と結婚したという事実を伝えられさえすれば、それで十分だった。

公に知らせる形でも、彼にとっては問題なかった。

正直なところ、ダニエルは今すぐミルドレッドにキスしたくてたまらなかった。

彼は彼女の肩や頬にそっと唇を寄せ、小さく囁く。

「結婚式よりも、新婚旅行のほうに興味がありますね」

くすぐったさにミルドレッドは笑いながら問い返す。

「どこに行きたいんですか?」

「場所じゃなくて、どれだけ長く、です」

できるだけ長く二人きりで過ごしたい。

彼女を独り占めしたい――そんな欲を隠さない言葉に、ミルドレッドは思わず小さく息を吐いた。

そして腕を伸ばし、ダニエルの首に絡めながら言う。

「できるだけ長く行きましょう」

「大丈夫ですか?今はアイリスも落ち着いていますし……」

「問題ないと思いますか?」

ミルドレッドは少し考え、ふっと息をついた。

彼女が席を外すと、いつもリリーやアシュリーが問題を起こさないよう見ているのはアイリスだ。

そのアイリスが今は王太子妃として忙しい――本当に大丈夫なのか、という不安はあった。

それでもミルドレッドは肩をすくめて言う。

「いつまでもあの子たちが私やアイリスと一緒にいるわけじゃないでしょう?こういうのも経験しておかないと」

その言葉に、ダニエルはくすりと笑った。

「そうですね。家を燃やしたりしなければいいですが」

「あなたみたいに?」

ミルドレッドがじろりと見ると、ダニエルはどこか楽しげに肩をすくめる。

「ええ、私の場合は事故でした」

――タイミングのいい事故、というやつだ。

その出来事をきっかけに、ダニエルがふらりと彼女の家に入り浸るようになったことを、ミルドレッドは思い出していた。

考えてみると、なおさらそうだった。

ミルドレッドは数日前、通りがかりに見かけたダニエルの家を思い出した。

中の様子までは分からないが、外観はきれいに整っていた。

そして、貴族が一人で暮らすにはちょうど良さそうな家だった。

――本来なら、ああいう静かでひとりの生活こそが、彼女の望みだったはずなのに。

なのに今は、その理想とは正反対の状況だと思うと、思わず笑みがこぼれる。

くすくすと笑いながら、ミルドレッドは言った。

「本当は、あの子たちをみんな結婚させたら、一人で静かに暮らすつもりだったんですけどね」

ダニエルは間を置かず答える。

「私と静かに暮らせばいいでしょう」

「それができるかは分かりません」

ため息交じりの返事に、ダニエルも苦笑した。

彼女が本当に静かで穏やかな生活を手に入れるには、きっと相当な努力が必要だろう。

――何しろ今でも、彼女を放っておかない人間が周りに多すぎるのだから。

ダニエルはミルドレッドを抱き寄せながら言った。

「あなたが望むなら、静かに暮らせるようにしてあげます」

「……あなたの力で、ですか?」

「力に頼らなくても、全部を捨てて遠くへ行くという方法もあります」

ほんの一瞬、ミルドレッドは驚いたように彼を見つめた。

――すべてを捨てて、遠くへ?

彼が築いてきた地位も、財産も、すべてを?

そんなこと、本当にできるのだろうか。

彼の腕に触れながら、彼女は小さく首を振った。

「そんなの、もったいないです。せっかく努力して、地位も手に入れて、豊かになったのに……」

ダニエルは迷いなく答えた。

「私は、あなたさえいればいい」

そして、静かに続ける。

「あなたが望むなら、全部捨てて一緒に行きます」

「……一緒に行くって、本気ですか?」

再びダニエルの瞳が黄金色に染まった。

その一瞬で、ミルドレッドは――彼が嘘を言っていないと悟る。

嬉しい。けれど少しだけ、重い。

そんな複雑な感情を抱きながら、彼女は微笑み、そっと彼の頬に口づけた。

ダニエルは小さく息を吐き、問いかける。

「もしあなたがどこかへ行くなら……私も一緒にいていいですか?」

「どこかへ行く予定はありませんけど……ええ、もちろんです。私たち、結婚するんですから」

「……結婚していなくても、ですか?」

少し不思議な問いだ、とミルドレッドは思った。

結婚式にあまり乗り気でないから、そんな確認をするのだろうか。

そう考えた彼女は、すぐに答えた。

「ちゃんと結婚式、やりますよ。だからそんなに気にしないでください」

ダニエルの表情が一瞬だけ止まった。

だがすぐにいつもの笑みに戻り、静かに言った。

「許していただけた、ということで理解します」

 



 

 

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