こんにちは、ピッコです。
「夫を味方にする方法」を紹介させていただきます。
今回は182話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
死ぬ前に読んでいた本の中の悪女ルードべキアに憑依してしまう。
前世では養子となった家族から虐待を受けていたけど、ルードべキアも同じような境遇だった…。
しかも父によって政略結婚させられた北部最高の冷血な騎士イースケは原作で自分を殺すことになる夫だった!
小説の内容をすでに知っているルードべキアは、生き延びるために夫を愛する演技をするが…
ルードベキア:ルードベキア・デ・ボルヒア。本作の主人公。愛称はルビ。
イースケ:イースケ・バン・オメルタ。ルビの結婚相手。愛称はイース。
エレニア:エレニア・バン・オメルア。イースケの妹。愛称はエレン。
フレイヤ:フレイヤ・バン・ピュリアーナ。イースケの幼馴染。
ボルヒア:教皇。ルビの父親。
チェシアレ:チェシアレ・デ・ボルヒア。長男
エンツォ:エンツォ・デ・ボルヒア。次男。
ローニャ:ルビの専属メイド
182話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- エピローグ⑤
周辺には、霜花とともに魔気を食べて育つ花が、ぞろぞろと咲いている。
久しぶりに再会した私たち夫婦が、小山中央の平らな岩に並んで腰を下ろした中、しばらく沈黙が流れた。
正確には咳払いの音だけが鳴った。
「クン、クフム」
「イース、風邪気味ですか?」
「・・・いや」
「じゃあ、ちょっとぞくぞくする?」
「・・・」
「やっばりだめです、このマントはあなたが・・・」
「いや、大丈夫だって!」
そっと肩に巻かれたマントを脱ぐふりをすると、今までずっと地平線を貌みながら咳払いばかりしていたイースケが、ようやく慌てて私を振り返った。
はてさて、今日に限って似合わないことばかり選んでやっているんだね。
なんでしきりに笑いが出るんだろう。
「そうなんですか。あなたがしきりに咳をするから、やっぱり服が寒いんだなと思ったんです」
久しぶりにからかう良い機会を逃すことができないので、こっそりと冗談を言うやいなや、私たちの一途な夫はすぐに腹が立って私を食い物にするように睨み始めた。
しかし、久しぶりに堂々とするという話が、たかがこれではないか。
「私は北部最高のパラディンだ」
「・・・それで?」
「体が寒いことはないということだ」
「・・・」
「心が寒いならまだしも」
「なんで心が寒いんですか?」
「それは当然、冬の間ずっと独水工房をしていたからだ」
自分の耳を疑う私とは対照的に、まったく何のような事を、瞬きもせず、よくも口にするイースケであった。
今自分が何を言っているのか自覚はしているのかな?
「そしてまた・・・」
「また?」
語尾をかすかに濁したイースケが、しばらく頭を掻きながら視線を下に落とす。
本当にぎこちなくもあり、照れくさそうでもあり、どこか照れているようでもある。
ふむ、いくら久しぶりだとしてもこれはちょっとおかしいんだけと。
エンディミオンが言ったあの悲壮な覚悟って一体何?
このピクニックではないだろうし。
私は全く見当がつかない夫から視線を離さずに、彼が持ってきたかごに入ったサンドイッチの包装紙をはがし始めた。
どうしてこんなに可愛らしいものを全部・・・。
「と、ところで・・・」
「え?」
「それが・・・ご飯は食べた?」
「今あなたと食べているじゃないですか?」
「・・・」
北部最高のパラディンはしばらく何の音も立てなかった。
ほら、イースケ・ヴァン・オメルタさん。
一様に優秀な主人公がどうしたんですか。
「体調はどう?」
「大丈夫だとさっきも言っていませんでしたか?」
「そりゃそうだけど・・・」
「セルゲイさんからすでに聞いたはずなのに」
「ヤブ医者の言葉は頼りなくて・・・」
「頼りなくて、ずっと独水工房をしていたんですか?心が寒いと言いながら髪の毛一度も透かさずに?」
「いや、それは・・・」
「分かってます。それにすごく忙しかったということは言わなくても分かるから」
なんと北部の王になる方だからね。
このセリフ、どこかで聞いたことがあると思うんだけど。
笑いをこらえて食べ物をかじる私の腕をイースケがぎゅっと握ったのはその時だった。
その勢いがひとく悲壮で私は早合点する。
「それが、そういうことじゃないんだよ」
「うん?」
「私は率直に・・・」
とりとめもなく言葉を繋ぐイースケの視線が、とんでもないことに私のサンドイッチの方に滑っていった。
正確にはサンドイッチを持っている私の左手を。
「後悔している」
あまりにも決然として落ち着いた声だったので、一瞬間き間違えたかと思った。
「私の手ですか?」
「いや!指輪が」
「・・・」
「指輪だけじゃなくて結婚式まで全部」
私はしばらく口を開けて、つやつやしたルビー色の瞳をぼんやりと見つめた。
そう、結婚式も代理結婚に、結婚指輪もロマーニャで準備した・・・。
しかしその時はそうなるしかなかった過去のこと。
私たちの縁はそのように始まる運命だったから。
急に不安な気分になり始めたんだけど。
もしイースケが私との関係でチェシアレと関連した痕跡を全部消したがっているのなら・・・。
「でも、イース、あの時はどうしようもない状況だった・・・」
「いや、そんなことじゃない!ああ!私は一体どうしてこんな格好なんだろう?」
いつ人を不安にさせたのかと思うように、突然一人で頭をかきむしって自虐するイースケを見守っていると、気が気でなくなるほどだった。
とにかく一向に行ったり来たりしている。
「私と結婚したことが後悔になるという意味じゃなければ、何が後悔になるというんですか?」
「・・・くそ、必ず後悔するという意味ではなかった。だから何かをやり直すというドジなことを言おうとしたわけではなかったのに・・・」
「じゃあ」
「なんというか、反省に近い」
「・・・」
「そう、そうだよ。むしろ君こそ後悔しないのかなと聞きたい時もあるから」と、再び頭を掻く彼の目元に、ひりひりしながらも甘い光がちらついた。
私はただぼんやりとそれを眺めている。
そうして、しばらくしてやっと口を開いた。
「そうだとしたら、どうしてくれるんですか?」
「・・・夢にも見ないで!」
「プハハハハ!」
案の定、いつそうしたかのようにまっすぐ無底坑の使臣のように眼光をめらめらと光らせるイースケに、私はつい腹を抱えて爆笑してしまった。
そんな私をぼんやりと眺めるイースケの顔が、徐々に赤く染まり始める。
「なんで笑うの?」
「あなた、プハハハ!いっそ話せなければ・・・」
「あなたさ、この前から人が真剣に話してるのに、しきりに・・・ああ、笑うな!私が元々こんな奴なのにどうしろって言うんだ!そもそも・・・ルビ!」
あっ、びっくりした。
とても見苦しい表情でうなっていた夫が、いきなり片腕を伸ばしてきたせいで、私は一瞬が豆粒くらいになった。
数秒後になって、私が夢中で笑って下に倒れそうになったという恥ずかしい事実に気づく。
サンドイッチが茂みの上に落ちた。
「・・・あら、あなたがまた私を助けてくれたんですね?」
「当然だ」
イースケが舌をグツグツ蹴って私を引き寄せて膝の上に座らせている間、私は照れくさそうな笑みを浮かべていた。
あっという間に立場がひっくり返ってしまった。
このまま負けるわけにはいかないんだけど。
「やっばり私の騎士様ですね」
「やめろ」
「どうして?私の騎士様、私の王様」
「あ、ちょっと・・・」
首をあちこち回して避けるイースケの耳元が真っ赤に染まった姿がとても満足した。
一体どうしてこんなことに弱いのか分からないが。
「後悔なんかあるわけないじゃないですか、バカ。それで王座につく覚悟はできましたか、殿下?」
「それは私が先にしなければならない質問のようだが・・・」
うん?これは急にまた突拍子もない話だって?
そのまま止まった私を彼がついにゆっくりと振り返る。
一日中ぎごちなく揺れ動いた視線がついに私が知っている深くて堅固なそれに変わっていた。
ふとこの前のいつか、二人で一緒にロムの洞窟の中で成長痛を患うドラゴンの世話をしたあの午後が思い浮かんだ。
私の実家への怒りと叔父への怒りを抑えながら、何かを熱望し始めるようだった彼の姿が。
「初めから君がいなかったら、やる気さえしなかっただろう。そして・・・」
「・・・」
「あなたは後悔がないとしても、私たちは結婚式もまともにしていない上に、初めからめちゃくちゃにあなたにまともにしてあげられなかったから・・・」
「・・・」
「あなたはオメルタの公子妃として北部に来た。ところが今は・・・しかも結果的に私たちがあなたの実家を全部なくしたわけなのに、押し付けることはできない」
う~ん、正確に何を言おうとしているのか分かるような分からないような。
曖昧な私の表情をちらっと見たイースケが短くため息を吐きながら私の手首をそっと引っ張った。
その風に視線が自然に下に下がる。
そして、そのまま魂が抜けた。
「だから私が言おうとする言葉は・・・私の王妃になってくれ」
あなたまさか一日中悩んでいたのがそれだったの?
私は乾いた唾を飲み込み、瞬きをする。
ごつい手のひらの中で燦然と輝く2組の金の指輪。
特に鮮やかに感じられる赤い宝石細工が目立つ。
あれはまさか・・・。
「これはまさか・・・」
「まさかそうだよ。サタンの手下の賛辞。あまりにも大きくて残ったもので他のものも作れそうだったけど」
「一体いつこんなことを・・・それよりこれでいいんですか?」
「最強の新星」ソユ家出身に北部最高パラディン出身の王の結婚指輪が、ドラゴンが企んでいた宝石を細工したなんて、なんて皮肉なことだろう?
確かに私からしてアイロニーの塊だけど。
「元々はあなたの宝冠を作ろうとしたが、やっぱりそれだけはあの生意気なやつに譲れない・・・気に入った?」
それを質問だと言うの?
私は頭を横に振りながら涙を流す。
そろそろと私の顔色をうかがっていたイースケが少しぎょっとした。
「これのせいで、一日中、そんなにじらしていたんですか?」
「終日じゃなくて・・・」
「しっかり隠れて現れずに?」
「別に隠れていたわけじゃないんだけど・・・」
ぽりぽり。
彼はしきりに後頭部を掻きながら顔を赤らめる。
思わず笑いが沸き起こった。
「神聖コアの代わりに岩窟龍の心臓が剌さっているし、ポポリとグリフィンが家出友逹で、ドラゴンが一緒に遊ぼうとせがむ女性がブリタニアの王妃でもいいのですか?」
「それを言うなら、私から先にドラゴンに乗って法王庁を壊したやつじゃないか。みんな誤解してはいるが、おかげであれこれ触るとつまらないと思っていたりもするし」
「・・・」
「暗くて興味津々な秘密は、すべての王室の基本素養だよ」
もっともらしいね。
夫婦は似ているとか?
言葉は立て板に水だって。
私はもう何も言わず、彼の胸に頭をもたげて指を伸ばす。
手首をいじっていた手が慎重に手に移ってきた。
「・・・」
元の古い指輪が外れ、その場を新しい指輪が占める感触・・・。
その感触が嬉しいだけに、元の指輪も大切に保管することだった。
なぜならそのおかげで私たちが出会ったのだから。
暗くて興味津々な秘密だからこれからまたどんなことが起こるか少しも見当がつかず、もともと知っていたこととは違うように変わってしまったこの世界の未来はどんな姿なのか、私にこんなことが許されたのか未だに見当もつかないけど・・・。
不思議なことに全然怖くない。
薬指にはめ込まれた宝石が澄んだ深い赤い色できらめいた。
私の手を取って、指一本一本に口を合わせるイースケの目もまた同じ色で輝いていた。
また不意を突かれてしまった。
突然胸が高鳴るような感じで、私はいたずらっぽくつぶやいた。
「光栄ですね、王様」
彼は私の手を離し、両腕で私をぎゅっと抱きしめる。
体がすっかりすっぽり埋まった。
「私が王だったらあなたは私の・・・」
ほのぼのとした囁きが耳元に響き渡る。
それは誓いに近かった。
目を向け、春の空を眺める私の口元に笑みが広がっていく。
<END>
イースケの告白が無事に成功しました。
ここからはルビの知らない世界になるのですね。
これで物語は完結になります。