こんにちは、ピッコです。
「愛され末っ子は初めてで」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
68話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 遠い昔の世界へ②
約2000年前に住んでいた場所だった。
その場を見ると、目に馴染み深い空間に懐かしさを覚え、私は自然と微笑みを浮かべた。
かつての人生で住んでいた家の中の光景はどこか寂しく、私が亡くなった後の時間の経過を物語っているようだった。
かつてあの家は、互いに無関心で会話を探すのも難しい空間だった。
「それで、どうして家なの?」
友人がもしかして、私が死んだ後にこの家を訪ねたのだろうか?
親しい友人だったからそうしたのかもしれない、と思った。
私が残した物も、家族よりもむしろ友人にとって大切だったのかもしれない。
しかし。
「・・・なら、余計に何だか寂しい感じだね。」
目に飛び込んできたのは友人ではなく、一人で部屋をうろついている男性だった。
「・・・なぜ?」
私は訝しげな顔でその男性をじっと見た。
だが彼は何かを誤解したようで、ただ黙って立ち尽くしていた。
彼はつぶやくような表情で私に話しかけた。
「・・・あの人は君を恋しく思っていた人だよ。」
なんだって?
あの男が私を恋しく思っていたなんて。
むしろ、この世界でようやく二十歳になれると聞いたほうが信じられる。
あまりに話が突然すぎて、言葉がうまく出てこなかった。
「君が傷ついていなければいいんだけど。」
「私が傷ついているって?」
驚き混じりの表情で彼に問い詰めると、男は考え込むようにしながら、控えめな声で言った。
「・・・うん、この世界では君があの人を憎んでいるから。」
なんだって?
あの男がここにいたということなのか?
私が状況を整理する間もなく、男はそっと手を差し伸べた。
頭の中に浮かぶおぼろげな記憶をたどりながら、私は問いかける。
「・・・国王ルクシオスが、私の前世の兄だと?」
「うん。」
・
・
・
胸の中で、雷鳴のような衝撃が走った。
心のどこかで、何かが崩れ落ちる音が響いた。
さらに混乱する私の耳に、彼がささやくように告げた言葉が届いた。
「君の兄が、前世で君を『恋しく思っていた』と言っていたよ。」
『やっぱり彼がいないと、ラーメンを作る気がしない。私が作ると、なんか味気なくて、面倒だし・・・。』
『ああ、全部食べたけど片付ける人がいないじゃない。なんでそんなに簡単にいなくなるの?』
『試験が終わったら、両親が最新型のスマホに変えてくれるって言ってたよね。それ、私が使おうと思ってたのに。お兄ちゃんもスマホ使うの上手だし。』
『お小遣いが増えるのはいいことだけど。』
まあ、自分なりに、私の未練を慰めてくれているのだろうと思った。
少しだけ泣いている音が聞こえる気もした。けれども。
『あまり心を痛めないで、君のお兄さんが転生した国王に、これからでも——』
「ふざけてるの?」
私はそのまま男を睨みつけた。
「どうして?会いたかった人だと思ったけど。もう一度聞くけど、ふざけてるの?それとも本気?」
「いや、君のお兄さんでしょ。家族じゃないか!君にとって家族って大切なものだと思ってたけど?」
「はあ、本当に変わった奴ね。それなら最初の人生の顔を見た方が何倍もマシだわ。『私が恋しかった人』だって?返してよ、私の思い出!君、私の目をテロしようと企んでるのね?!」
「いや、違う。本当に君が恋しかったんだ。」
「その言葉を聞いても、そんな話になるのか?馬鹿げてる。」
「麺を茹でる機会がなくて惜しいとは思わないの?」
最初の人生に残した未練?
髭を剃ったらあの顔にラーメンの匂いが染みついているのではないか?
私はそのまま男の顎をつまんでくすくす笑った。
「君。」
「え、え?」
「本当に私がどう生きてきたか知らないの?本当に分かっていたら、私が傷つくと思ったのか?それでこんなふうに自分勝手に兄さんを見せるなんて冗談じゃない。何、誰が誰の唯一の理解者だって?詐欺師め、この最低野郎!」
「いや、本当に私は君の孤独を理解できる唯一の・・・」
「うん、それを私を恋しいと思っている声として聞いて、私が悲しむと思ったのなら、それはもう誤算ですよ、お客様。」
私は淡々と答えた。
その言葉に男も何も言い返せないようだった。
「・・・本当に君の耳には、私がいないことを悲しんでいる声として聞こえるの?」
「まあ、『恋しい』という言葉の意味だけを見れば、そうかもしれないけど。私だって大切だったスカーフをなくしたときは恋しいし、惜しいと思った。一言で言えば、君という存在は私にとってその程度の感情だったってことさ。」
「全く、心が痛むなんて、何の話だ。」
むしろ考えてみれば、あまりにも無気力でむなしい気持ちだった。
2000年も経ったのに、どうして何一つ変わらないことがあるだろうか?
ほんのわずかな進歩でもあってほしいものだ。
『この優柔不断さ、弱者に強く、強者に弱い態度!』
別に母が拳で国王を打ち負かしたというわけではなかった。
私が初めて生きていた時は幼かったので分からなかったが、ああいった人たちは本当に口で言うよりも拳がはるかに速いらしい。
「そんな人間だとは思わなかったよ。くそ。」
心の中で罵りの言葉を吐きながら、彼もまた一人で何かをぶつぶつ言い続けていた。
まあ、正直なところ、私があいつでも恥ずかしい気分になるだろうな
分かるよ。
だからあの奴が口で言っているのは聞きたくなかった。
間違いなく私のせいで不快になっていたんだから。
「昔は私を取り戻そうと、人を選んでまた手間をかけてくれたわけではないんだ。」
『でも、どうせ条件だけ見て簡単に切り捨てるなら、努力する意味がないんじゃない?』
昔も今も変わらず、最初の人生の家族、それは兄弟だ。
もし今の人生が変態じみた陰鬱なものに侵されていなかったら、私が兄や姉をどれだけ好きだったかなんて、知る由もないだろう。
『ああ、兄貴の愚か者とダミアン兄貴を同じ船に乗せておくなんて、そもそも間違いだ!』
突然、その者に向けられた殺意が襲いかかってきた。
だが、どういうわけか今回の人生では国王を特に恨むこともなかったし、むしろ淡々と見過ごしていた。
さらに言えば、国王と大神官をひとまとめにしても、全く興味が湧かないというのも珍しいことだった。
『だから、ちょうどいいと思ったんだろうね。』
自分の力が尽きるほど疲れ切っていた。
それに、もし本当に兄がダミアン兄のように良い兄だったとしたら、ショックを受けたかもしれない。
『はあ、本当にこんなことを考えるなんて、あの人は本当に私と同じ血を分けた人間なのかしら。』
どうしてこんなにも悪質になれるのか。
考えをまとめた後、私は嫌悪感を顔に出しながら彼をじっと見つめた。
すると、彼は驚きからか一瞬身を引いた。
「な、なんで? 私はただ静かにしていただけなのに・・・。」
静かにしていた?
何が?
むしろ憤りながら混乱していたじゃないか。
「おい、お前ともう二度と会わない。」
「え、な、なんで?」
「自分の口で言ったじゃないか。」
「何を?」
「初対面が重要だって。」
私は本気でこの男を殴りたい気持ちを抑え、なんとか説明した。
「証明するとか言ってわざわざ準備してきたけど、何で私がずっと君に時間を無駄にしなきゃいけないの?」
「ちょ、ちょっと待って!」
「はい、どうぞ。お客様、面談時間はここまでとなります。」
本当にこんな夢から目を覚ましたいと思った。
考えを強く引き寄せ、気を取り直した瞬間、男が私の服の袖を掴んで真剣な顔つきで訴えてきた。
「ちょっと、なんですか。まるで本物のお客様みたいに。」
「君が、君がどうしても聞かなきゃいけない話があるんだ!このままじゃ後悔するよ?」
「ああ、きっと後悔するでしょうね。」
そう言いながらも、私はある程度の気まずさを感じ、仕方なくあと1分だけこの男に時間を与えることにした。
どうせ私が立ち上がっても、彼の必死な視線が追いかけてくるだけだ。
「自由になりたいと思わない?」
「はあ、分かったよ。この男、人を釣るのが本当に上手いって認めざるを得ないね。どう考えても。」
転生者でも絶対者でもなく、記者かMD(商品企画担当者)が天職なんじゃないかと思えるほどだ。
「自由?」
だから、私はもう少しこの男に時間を与えることにした。
そうだ、一度その戯言を聞いてやろう。
「君が自由になれない理由、それは君を恋しく思う人がいたからなんだ。」
つまり自由、つまり私がずっと転生し続ける理由は、あの兄貴のどうしようもない執着のせいだというのか?
『ラーメンをひっくり返して自分のことだけ考えれば、この状況をきっぱり終わらせられたのに。』
私が2000年も苦労してきたのは、まさにこんな時だったのだ。
「呪いだって?」
全く信じられなかったが、とりあえずその男に話を続けさせることにした。
彼はどこか申し訳なさそうにしながらも説明を続けた。
「彼の執着を解けば、君は自由になれるんだ。」
「彼の執着を解くだけで?」
「いや、それだけじゃないよ。さっきも言っただろう? 君がここに生まれたのは、君を恋しく思う人が多かったからだ。」
なぜだか怪しげな話の匂いがする。
自己啓発セミナーとか、ピラミッド商法とか、そんな言葉が頭をよぎった。
たとえ自分が短い人生しか生きていないとしても、そんな話には関わるべきじゃないということくらいは分かる。
「本当だ、本当に本当なんだ!」
「じゃあ、やらなかったらどうなるの?」
興味を示すと、男は必死に自分を落ち着けようとしながら、私の服をつかもうとした。
「はぁ。」
しかし、私が目つきを険しくすると、彼はもう一度静かに話を続けた。
「ずっと、ずっと繰り返すことになる。」
「人生を?」
「うん。」
今のままだと特に変わることはない、という話だった。
じゃあ、別にやらなくてもいいんじゃないか?
「兄さんの願いを聞いてあげるより、それがマシだよね。」
『たぶんそれが一番良いだろう。』
私がまったく興味がない顔をすると、男は言葉が通じないとでも言わんばかりに叫んだ。
「これは本気だ!僕が怠けたから、こんなことになったんだ!」
「それで私に良いことでもしてくれるって言うの?それも純粋な善意で?」
とても信じられなかった。
これまで彼の振る舞いはまるで変態のように見えたし、過去に家族に嫌われないよう嘘までついていたなんていうのだから。
『子供の頃は、家族に愛されるためにわざと演技したこともあったよね。』
それで私のためだって?
そう言うと彼は、しばらく黙った後、真剣な口調で言葉を継いだ。
「本当なんだ、君にしたことには全部理由があるんだよ。」
それはとても信じがたい話だった。
「理由があるにせよ、初対面の相手として兄弟の中でも国王ルキオスを選んだって?」
「そ、それは・・・あいつの未練を解消する方法が簡単だからなんだ!」
「何それ?」
「まあ、一度その方法を聞いてみようじゃないか。」
「あいつに君が作った料理を与えれば──うわっ!!」