こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

87話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 帰郷⑤
一方、身を清めて出てきたレリアは服を着替えて鏡の前に立っていた。
鏡の中には、都を離れる前のそのままの自分の姿が映っていた。
領地にいた頃に好んで着ていた、軽やかでゆったりとしたドレスを着ると、体も心も落ち着いた。
レリアはすぐ横のベッドに身を投げ出した。
「やっぱり自分の家が一番」という言葉が本当に実感として感じられる瞬間だった。
首都の皇城では、常に気を張りながら毎晩浅い眠りを繰り返していた。
領地に来るまでの不便な野営の記憶がよみがえった。
それに比べれば、この場所はまるで天国だ。
星が差し込むベッドの上、シーツからは懐かしい柔らかな香りがした。
自分がいない間もベッキーが変わらず部屋の世話をしてくれていたのだ。
レリアは安心感と幸福感に浸っていたが、急にハッと我に返って身を起こした。
心が穏やかになったと思ったのに、今度は逆に不安がこみ上げてきた。
『それにしても……オスカーは私が女だって、もう知ってたの?いったい、いつから?どうやって?』
さっき、ベッキーがレリアを「お嬢様」と呼んだとき、オスカーは明らかに驚いた様子もなかった。
レオだと思っていたばかりか、女だということまで知っていたのだろうか?
レリアは混乱しながらもベッドから立ち上がった。
ちょうどそのとき、ベッキーが扉を開けて入ってきた。
手に持っていたお盆の上には、レリアのための軽い軽食が用意されていた。
「お嬢さま、お疲れでしょう?夕食まで少し時間がありますので、軽く何か召し上がってください。お嬢さまが戻られたという知らせに、厨房長がとても喜んでおりました!」
ベキーはテーブルの片側にお盆を置くと、レリアを引っ張って座らせた。
そして、うずうずしながら尋ねた。
「お嬢さま、ところでご一緒に来られたお客様って一体誰なんですか?女中たちが大騒ぎですよ!」
「えっ?」
「どこであんなにハンサムな方を連れてきたんですか?結婚する気はないって言ってたのに、気が変わったんですよね?そうですよね?」
ベッキーは、そうであってほしいという口ぶりで言った。
「………」
レリアが何も言わないと、ベッキーが続けた。
「でもあの方…ちょっと気になるところがあるんです。」
「…なにが?」
「本当にとてもハンサムで美しい方なんですけど…ちょっとゾッとするところがあるんです。目つきもとても怖いです!でもお嬢様にはきっと違いますよね? 優しくしてくださいますよね?」
「………」
「もし優しくしてくれないなら、お嬢様を絶対に行かせません!」
ベキーのせかせかした様子に、レリアはため息をつき、頭を軽く振った。
「お嬢さま、お話してくださいよ。ねっ?」
そう言いながら、ベキーはフォークでレリアの口に果物をぎゅっと押し込んだ。
喋ってほしいのか、それともまず食べてほしいのか、意図は分からなかった。
レリアは口に入れられた果物を静かに飲み込み、言った。
「ごめんね、でもそういう関係じゃないの。本当にただの友達なの。」
「そんなはずありません!」
「あるのよ、ベキー…。」
ベキーは、二人が普通の友達関係だという言葉を聞いて、まるで世界が崩れたかのような表情だった。
その時、レリアを助けるかのように扉をノックする音が聞こえた。
「ベッキー、お客様を中にお通ししてくれる?」
ベッキーは仕方がないといった顔で憂鬱そうに扉に向かった。
しかし来客の顔を確認したベッキーの表情は一瞬で青ざめた。
叔父さんだろうと予想していたレリアの表情もこわばった。
まさか?
やはり扉を開けて中に入ってきたのはオスカーだった。
ベッキーはトレイを抱えながらも、これ以上ないほど嬉しそうな表情で扉を閉めて出ていった。
「………」
オスカーはゆっくりと彼女の方へ歩いてきた。
レリアとそっくりの姿で同じような服を着たその姿で。
彼の顔には艶があり、侍女たちが騒ぎ立てるのも納得のいく姿だった。
「何かあったんですか?もっと休んでもよかったのに。」
レリアはそわそわと立ち上がって声をかけた。
彼は新しい姿のレリアを上から下までじっと見つめて目に焼き付けた。
レリアはそんなオスカーを不安げに見返した。
「…いつから気づいてたんですか?」
「何が?」
「…私が女だってこと。」
オスカーはあっさりと答えた。
「そうだな。数日前くらい?」
その言葉にレリアの眉がぴくりと動いた。
オスカーは少し近づきながら、穏やかに説明を続けた。
「具体的には、雨が降っていた日、テントの中で一晩過ごした時のことだよ。君の腰を抱きしめていたら、なんだか違和感を感じたんだ。」
「………」
「そんなふうに抱いていたけど…カーリクスの話によれば、普通なら触れた時に4つのものが感じられるはずなんだろう?」
レリアは言葉を失った。
つまり、しっかり抱きしめたときに足の間に違和感がなくて気づいたってこと?
オスカーはその時そんなことを考えていたのか?
レリアはそんなことは思いもせず、ただ無邪気に彼を慰めようとしただけだった。
レリアはじっとにらむような表情で彼を見つめた。
そして、そう考えてみると、その後彼が女性だと知りながらも、女性と同じ部屋を使っていたということか?
オスカーはそんなレリアの表情を見て、目を細めた。
「説明は私が求めるべきことじゃないかと思うけど……そろそろ説明してもらえるかな?」
「………」
レリアは何も知らないふりをして、彼の視線を避けながらゆっくりと視線を下げた。
頭の中は混乱していた。
同時に申し訳ない気持ちが押し寄せた。
オスカーはすでに彼女によって裏切られたような気持ちを抱いていたのに、それをもう一度繰り返すようなことになるからだ。
レリアはしばらく迷った末に口を開いた。
「今は説明できません。……ごめんなさい。」
「…謝ることじゃない。」
思いがけず穏やかな返答に、レリアは不思議そうに視線を上げた。
オスカーはこれまで見せたことのないような、温かい目で彼女を見つめていた。
『そんな表情もできるんだ…』
実のところここまで来る間、オスカーは感情を読み取るのが難しいほど鋭い目つきで彼女を見たり、裏切られたような冷たい眼差しを向けたりすることしかなかった。
だからこそ今の優しい表情と柔らかな目つきが新鮮だった。
幼い頃のオスカーを思い出して、レリアは少し懐かしさを覚えた。
オスカーは腕を組んだまま、何か不思議なものを見つめるような目でレリアを優しく見下ろしていた。
レリアはまだ知らないだろう。
彼が今どんなことを考えているのか。
男でも構わないと思っていたが、女だったのか。
あまりに楽しくて、身体の一部に血が集まる感覚だった。
レリアを抱きしめたら、どれほど気分が良いかと想像しながら、オスカーはやわらかく笑った。
オスカーが何も言わずに去ってからまもなく、叔父がやってきた。
レリアは応接室のソファに叔父と並んで静かに座り、両手を握っていた。
しばらくして叔父がこれまでどう過ごしてきたかを語っていたときだった。
「ところでこれ、なんですか、叔父さん?」
レリアはずっと目が向いていたテーブルの上の箱を指差して尋ねた。
「もちろん、君へのプレゼントだよ。」
「プレゼントですか?」
カリウスは誇らしげに笑いながらリボンをほどいた。
「開けてごらん。」
「……」
レリアは笑いながらプレゼントの包装を開けてみた。
いったい何が入っているのだろう?
どうしてこんなに大きいの?
レリアが箱の蓋を開けると、目をぱちくりさせた。
『これ…何?』
箱の中には、宝石のように小さな石がきれいに並んでいた。
淡いピンク色の透明な石だったが、本当にきれいだった。
ひとつ手に取って持ち上げたレリアは驚いた。
思ったよりもまったく重みを感じなかったからだ。
『それにしても…これって何?』
レリアが疑問をたたえた目で叔父を見上げると、カリウスは笑いながら尋ねた。
「これが何か分かるかい、レリア?」
「全然。まったく分かりません。」
そのときだった。
画面に静かだったゲームのウィンドウが突然表示された。
[レアアイテム「ドラゴンの意思が宿った石」獲得!(*ơᴗơ)و✧アイテムウィンドウに保管しますか?]
「ちょ、ちょっと待って!ドラゴンですって?」
カリウスは混乱するレリアに親切に説明した。
「光竜が死んだあと、あいつの巣で掘り出されたものなんだけど、俺が抜け目なく手に入れたんだ。」
「大丈夫なんですか?」
「誰にもわからないし、心配しなくていい。魔力石だ。」
「……」
カリウスは薄紅色の石を一つ手に取り、こう言った。
「こうしていると魔力はまったく感じられないけれど、これを砕くと、高濃度の魔力を含んだ液体が出てくるんだ。」
石を振ると、その中に淡いピンク色の何かがきらめくのが見えた。
「これ、私にくださってもいいですか?」
「もちろんだ。錬金術に必要になるかもしれないだろ。」
そう言ったあと、カリウスはまるで待っていたかのように立ち上がった。
そしてドアの外に控えていた使用人たちにあれこれと指示を出した。
その後、使用人たちはレリアの部屋に次々と物を運び入れ始めた。
レリアは口をぽかんと開けた。
華やかな包装のプレゼント箱が列をなして入ってきた。
さらには更衣室の服をまるごと持ってきたような衣装のハンガーラックまで運び込まれた。
「全部、首都で買ってきたものだ。」
「これ全部ですか?」
レリアは、誕生日プレゼントをもらった子どものように明るく笑った。
こうして叔父と一緒に箱を一つひとつ開けてプレゼントを見ていくうちに、レリアの口からふっと笑みがこぼれた。
箱の中には、子どもたちが笑顔になるようなものが詰まっていた。
「…もうこれで遊ぶにはちょっとアレだよね?」
「…はい。恥ずかしいです。」
カリウスは思わず苦笑した。
まだ幼いだろうと思い、子どもたちが遊ぶおもちゃや、子どもが喜びそうな大きな星の模様がついた派手なドレスまで買ってきたのだ。
「いつの間にこんなに大きくなったんだ…叔父がそばにいてあげられなくて申し訳ない。」
「そんなこと言わないでください。無事に戻ってきてくださっただけで、私はそれだけでうれしいんです。」
「だけど、レリア……」
カリウスは心の奥にしまっていた問いを切り出そうとするかのように、ぼんやりと呟いた。
レリアはすぐに彼の意図を察した。
『首都でどう過ごしていたのか、詳しく聞きたいのね。』
皇城で過ごしたことを隠すべきか、それとも明かすべきか、レリアは迷っていた。
だが、叔父の口から出てきたのは、全く別の質問だった。
「本当にオスカー、あの男と友達なのか?」
「……はい、叔父さま。」
緊張していたレリアは、思っていた内容とは違う質問に拍子抜けしつつも、静かに答えた。
しかし――戦場でオスカーは一体どうだったの?
「…あいつは残忍な奴だ。冷酷な奴なんだ。」
「………」
レリアの表情がこわばると、カリウスは言葉を付け加えた。
「戦争中で、魔物を相手にしていたとしても…その中には人間を攻撃する意志のない個体も存在する。ほとんどが子どもを持つ魔物や幼い魔物だった。」
「…はい。」
「そういう魔物はむやみに攻撃してこなかった。わかっていて私たちを避けたんだ。でも、あの男は逃げる魔物たちを最後まで追いかけて――卑劣なやつだ。それも、実に残酷にな。」
その言葉に、レリアの表情が重くなった。
「君にこんな残酷な話をしたくはなかったんだが……もちろん、光竜が死んだ後は、魔物たちの命はすべて絶たれた……だが、それでも虐殺とは違うんだ。」
一言でいうと、オスカーは攻撃の意思がなかったり逃げ出そうとする魔物たち、さらには幼い魔物たちまで、皆殺しにしたということだった。
「それにあいつは、自分の父を……」
「………」
「いや、違う。とにかく、どうして君はあんなやつと友達になったんだ?君を見る目がまるで鈍ってしまったよ!」
「………」
「むしろそうしないで……俺が戦場で知り合った男が一人いるんだ。そいつを紹介してやろう!とてもいい奴なんだ。お前と相性もいいと思う!」
カリウスは縁談をまとめようとする仲介人のように、積極的にその男について説明した。
背が高くてハンサムで、性格も優しくて良いなど、褒め言葉ばかり並べ立てた。
レリアは困ったように笑いながらも、叔父の話をすべて聞いていた。
叔父に会って、こうして領地に戻ってきたという実感が湧いてきた。
近いうちに祖母や叔母、長兄とも会えるだろう。
レリアはこの幸せを必ず守ろうと心の中で誓った。
夕食が終わった後、レリアはしばらく散歩することにした。
夕食の間、祖父と叔父が両脇に座り、あれこれと料理を取り分けてくれたおかげで、つい食べすぎてしまったのだ。
向かいに座っていたオスカーは、無表情のままレリアをじっと見つめるだけだった。
「…はぁ。」
オスカーのことを思い出すと、心が重くなった。
頭の中には、先日自分を連れて行こうとした騎士たちを容赦なく殺していたオスカーの姿が浮かび上がっていた。
そんなオスカーが魔物たちを虐殺する姿は、自然と想像することができた。
叔父はオスカーが報復をしたという事実も話そうとしたが……レリアはすでに知っていた。
正直、レリアはその件でオスカーを非難することができなかった。
『オスカーの父がどれほど残酷な人間だったか、よく分かってるから。』
幼いころ痩せ細っていたオスカーの姿を思い出すと、むしろよくやったと肩を叩いてやりたいほどだった。
レリアはオスカーが残酷だと非難されることがつらくて、心が痛んだ。
彼がそうなってしまった原因に、自分の影響がまったくないとは言えなかったからだ。
『私が死んだという事実に大きな衝撃を受けただろうし、それを欺かれていたという事実にはさらに大きな衝撃を受けただろうな……』
そんな複雑な思いを抱えながら静かな回廊を歩いていたときだった。
ふと、遠くの柱に寄りかかって座っているオスカーの姿が目に入った。
見るとそこは客人たちが滞在している部屋のすぐ近くだった。
レリアはそっと彼に近づいた。
「オスカー様。」
「………」
オスカーは伏せていた視線を上げ、彼女を見つめた。
レリアは、その瞳に怒りの色が宿っていることに気づき、はっと驚いた。
『また怒ってるの?』
さっき部屋にやって来た時までは明らかに穏やかな表情だったのに、レリアは時々気分が不安定になるオスカーが心配で怖くなった。
「……」
オスカーはそんなレリアの顔をひとつひとつ丁寧に見つめた。
柔らかい眉、丸い目、きれいな鼻、赤い唇、そして細い首、華奢な肩。
夕食の間、彼は衝撃をこらえるのに必死で、目が離せなかったのだ。
レリアを大切に思っているようなまなざしで見つめている人々の首を絞めたい気分だった。
レリアが見つめるその前で言葉が出なかった。
得体の知れない感情がこみ上げ、胸の内が熱くなった。
――幼い頃、君が僕に手を差し伸べてくれた、あの時。
「僕には最初から君しかいなかったのに……。どうして君はそんなふうなんだ?他の大切なものがあるなんて。まるで注意を引きたくて癇癪を起こす子どものように、大事なものを壊そうとする人形みたいに、君が大切にしているものを壊したくなった。」
レリアは彼の目に宿るぞっとするような欲望に圧倒され、怖くなってその場を離れようとした。
だが、オスカーの冷たい手が彼女の手首を掴んだ。
背後から低く落ち着いた声が響いた。
「……俺ははっきり言った。レオの代わりに君を手に入れるって。」
「………」
「君の口で言って。僕のものになるって。…君がやろうとしていたことが終わったら、僕について来てくれ。一生君のそばにいるって。」










