こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
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12話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 犬と主人⑤
しばらくしてカシスはゆっくりと身を起こした。
その際、手首と腕に繋がれた鎖がギシギシと音を立てた。
鎖は部屋の隅にある鉄環に繋がれていた。
それでも鎖の長さが十分あったため、地下牢にいた時よりも動きの自由はかなり効くようだ。
もっとも、鎖がドアに届くほどではなかったが。
カシスは当面、静かに状況を観察することに決めた。
焦って脱出を試みても、特に得られるものはないと判断したからだ。
先ほど外で聞こえた話の通り、アグリチェでは今すぐ彼を殺すつもりはないようだった。
これほど手厚く医者を呼び、直接治療までしたことを考えると、少なくとも今は以前のような方法で彼を痛めつける意図もないように思えた。
それがロクサナ・アグリチェのおもちゃとなったからなのか。
カシスは手首に巻かれた拘束具を慎重に触りながら、視線をドアの方に向けた。
アグリチェではまだ知られていないようだが、現在彼を拘束している大型動物用の拘束具はかなり手強いものだった。
少し前、サレッタと呼ばれる少女が地下牢に侵入し、彼を襲撃した際に確認したものだ。
大型動物用の拘束具は、対象の興奮度や攻撃性に応じて1段階から5段階まで発動し、動きを制約する仕組み。
逆に言えば、どんな場合でも冷静さを保つことができれば、拘束具の発動を最小限に抑えることが可能であるという意味でもあった。
ある意味では、これを試す絶好の機会とも言えた。
もしあの事件がなかったとしたら、拘束具の強度を自然な形で試すことはなかっただろう。
サレッタという少女はかなり単純な性格なのか、カシスを制圧できなかったのは自身の未熟さのせいだと思い込んでいるようだった。
拘束具を破壊できたのも、カシスが彼女をうまく誘導したからではなく、激怒した彼女が感情を失ったことによる失敗だと信じて疑わなかった。
カシスの瞳孔はわずかに収縮した。
再び計画を立てるつもりだった。
アグリチェから脱出する日までは、自分の力が封じられていないことを隠しておかなければならない。
それだけで誰もが安心するからだ。
そんなことを考えているとき、突然ドアの外から人の気配を感じた。
カシスは鋭い視線をドアに向けると、一度確認した後、初めてこの部屋に入れられたときのように床に身を横たえた。
ガチャリと、ドアの施錠装置を解く音が聞こえた。
すると、誰かが部屋に入ってきた。
軽やかな足音と後に残るほのかな香りが馴染みのあるもの。
それで今入ってきた人物がロクサナだと分かった。
彼女はカシスに近づき、彼の顔を無言で覗き込んだ。
今やカシスの運命を左右するのはロクサナであり、今この部屋には彼女以外に彼の処遇を決定できる人間はいなかった。
それにカシスは現在、意識を失ったふりを続けている。
もしかしたら、今回こそ彼女が本性を現すかもしれない。
カシスはロクサナが彼にさらに近づくのを感じながら、全身の感覚を研ぎ澄ませた。
もし彼女が何かしら軽率な行動をとるならば、カシスもすぐに対応しなければならないと感じた。
じっとしているわけにはいかない。
もう少し近づいたら、腕を引き抜いて鎖で首を締め上げれば、一瞬で気絶させることもできるだろう。
もちろん、その気になれば殺すこともできたが、そこまでするのは現時点では非現実的な発想だった。
何よりも……。
今この場で、同じやり方で危険に危険で応じることが果たして正しい選択なのだろうか?
カシスは目を閉じたまま、相手との距離を測った。
ロクサナは彼の苦悩に気づかないまま、さらに彼に近寄ってきた。
そして今や二人は完璧に至近距離にいた。
「本当に最低限の治療しかしてないのね。」
そう呟きながら、カシスの耳を掠めたのは低く静かな声とともに現れたかすかなため息だった。
その後、彼の手首に柔らかい指が触れた。
カチャリ。
ロクサナが彼の手を持ち上げた途端、鉄環の音が続いた。
鎖の擦れる音が嫌でも耳に届いた。
状況を観察するような視線がカシスの身体を一度通り過ぎていった。
その後、彼の口を塞いでいた布が外された。
隣で何かごそごそと動きながら、何かをしようとする気配があったが、再び彼の手首に温もりが伝わってきた。
カシスはなんとも言い難い感覚に囚われ、息を呑んだ。
ロクサナは大まかに処置した後、彼の傷に薬を塗り、包帯を巻いていった。
拘束具に擦れて傷ついた手首や足首にも注意深く優しい手つきが触れていった。
さらに、ロクサナはすでにボロボロになっていた彼の服を脱がせ、その下の裸の肌にまで手を伸ばした。
皮膚の上を滑る温もりに、カシスはついにその場で飛び起きそうになる衝動を抑えきれなかった。
手が触れる傷口ごとに、ひりひりとした感覚が走った。
それでも彼の肌に触れてスムーズに進む手つきは、ただの軽い手当ではなかった。
カシスは近づきすぎたその手の動きに何とか耐えることに成功した。
治療を丁寧に終えた後、ロクサナはその場を離れず、突然カシスの隣に座り込んだ。
部屋がどんなに清潔であっても、まさかこうして裸の床に座るとは思わなかったため、カシスは少し驚いた。
活発な性格の妹シルビアでさえ、こんなことは気にせずに行動することはなかった。
しかし、その後のロクサナの行動にはさらに驚かされた。
まるで赤ん坊を扱うような柔らかな手つきで、彼の頭をそっと持ち上げてからどこかに下ろしたようだが、それがどこなのかをしっかりと確認することもなく気づいてしまった。
まさか、今自分が頭を乗せているのは……彼女の太ももなのか……?
この状況に冷静さを取り戻し、目を覚ましたふりをするべきか悩みながらも、カシスは短い間で耐えきれないほど混乱した。
おそらくロクサナが彼の頭を軽く撫でていたなら、本当に目を開けてしまっていたかもしれない。
だが、その温かい指先が髪を掠めた瞬間、言葉にならない感情が胸に押し寄せてきた。
カシスはどうしようもなく自分が予測不可能な存在になったように感じ、緊張を解くことができなかった。
当然、現在の状況ではこの感覚に対処する余裕はなかった。
結局、彼が何を望もうと、それが重要であるかどうかも関係なかった。
しかし、目をしっかり閉じて眠っているふりを続けているこの瞬間、どういうわけかカシスは自分がとても無力な存在になったような気がした。
「……死にたくないのに……」
そんなふうにカシスが心の中でそっと呟いているとき、突然、頭の上から独り言のような声が聞こえた。
それは彼の髪を撫でながらぼんやりと眠っているかのように見えたロクサナから発せられた、信じがたいほどの中空に響く声。
その言葉の意味を理解できず、カシスは戸惑った。
しかし、ロクサナはそれ以上何も言葉を発さなかった。
カシスもまた、自分をどうにか保つため、表情を整えることに全力を注がざるを得なかった。
「でも、不思議だわ。」
そんな中、彼女が彼の髪を撫でる手がぴたりと止まった。
「この間、誰かが髪を洗ってくれたのかしら?こんなに柔らかいなんて。」
おそらくカシスの目が開いていたならば、一瞬、微かに揺れる空間を目撃してしまっただろう。
「匂いもしないし。」
今回も無意識のうちに小さく体を震わせてしまった。
ロクサナと密着した体を引き離したかったが、意識を失ったふりをしている今は動くことができなかった。
少し前、彼が無意識に何かを感じ取ったのだろうか、集中していた視線が顔の上に落ちた。
ロクサナは気づいていなかったが、カシスの耳はわずかに熱を帯びていた。
今、彼女が不思議に思っている特異な部分は、ペデリアンから授けられた彼の特性とも関連があるものだった。
まさかそれをロクサナが鋭敏に察知して疑問を抱くとは思わず、カシスは困惑せざるを得なかった。
さらにそれをこのように直接指摘する相手が、再び少女であるという事実がカシスの思考を一層混乱させた。
幸いなことに、ロクサナはこれ以上カシスの匂いについて語ったり、顔を近づけたり、彼の髪の毛をもっと繊細に触れたりすることはしなかった。
当然のことだが、カシスは今や目をそらすことができなかった。
ただ早くこの状況が過ぎ去ることを祈っていた。
「……意識もない人にこんな話をするのはちょっと変だけど、さっき止められなくてごめんね。」
頭の上から再び小さな、穏やかな声が響いた。
カシスはロクサナが先ほどの出来事を謝罪しているのを静かに聞いていた。
「でも、これからはそんなことはしないわ。もうあなたは私のものになったのだから、他の人に好き勝手されることはないわ。」
彼の髪を優しく撫でるその手が、奇妙なほど穏やかであり、彼女が自分の敵であるラント・アグリチェの娘であるという事実を一瞬忘れてしまいそうになるほどだった。
「必ずここからあなたを連れ出してあげる。」
その声にも、また嘘は感じられなかった。
それはやはり不思議なことだったが……。
カシスはロクサナが部屋に入ってきたときからいつでも攻撃できるよう準備していた体から、静かに力が抜けていった。
(……とりあえず、今は彼女を攻撃する必要はなさそうだ。)
周囲を包む空気が何故か奇妙なほどに穏やかであると感じながら、カシスは安堵の息をついた。
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