こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者

16話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 犬と主人⑨
「ロクサナお嬢様、今すぐ地下へ向かいますか?」
「いいえ、まず毒蝶の温室に寄っていこうと思うわ。」
その後、しばし沈黙が続いた。カシスとの日々は毎日がほとんど同じような繰り返しだった。
私は一日に三度彼の元を訪れて、直接食事を運んでいた。
カシスも、それによって時間がどのように過ぎていくのかを想像しているようだった。
毎回、彼の傷の手当てをするたびに、必要に応じて医師を呼ぶことも忘れなかった。
実際、それが最善の選択肢だった。
私はカシスの世話をするだけでなく、他にもやるべきことが山積みだった。
その中の一つが、毒蝶の温室に行くこと。
毒蝶の温室は、今日も湿気と暑さに満ちた空間だった。
密閉されたこの場所に漂う空気は重く、息苦しいほどだった。
もともとこの場所は毒草を育てる温室の一つだったが、毒蝶の卵を保護するために改装された。
そのため、今もなお、この温室は毒性の強い植物たちで埋め尽くされていた。
普通の人間なら、ここに入って10秒と経たずに気を失って倒れてしまうだろう。
しかし、空気中に漂うさまざまな毒素も私には特に影響を及ぼすことはなかった。
私は毒草の間を慎重に歩きながら、さらに奥へと進んでいった。
しばらくして、鋭い棘に覆われた黒い繭が視界に入った。
毒蝶の卵は今や私の拳ほどの大きさまで成長していた。
私はその前に立ち、事前に準備しておいた小瓶を取り出した。
そして、迷うことなく、繭から少量の液体を採取した。
鋭利な刃が私の肌を切り裂いた。
鋭い痛みが走り、そこにじんわりと血がにじみ出てきた。
トクトク。
赤い血液が私の腕から流れ出し、黒い卵の上に垂れ落ちた。
その血液に反応した卵は、赤く染まり始めた。
「美味しく食べてね。そして、もし君が女王なら、もう少し早く育ってちょうだい。」
最初に私が持っていた毒蝶の卵は全部で三つだった。
しかし、今残っているのはこの一つだけだ。
元々、毒蝶の孵化成功率はわずか三割ほどしかない。
毒蝶はまれな種で、その卵が見つかる場所を特定するのも非常に困難だ。
そしてそれを育てることはさらに困難を極める。
毒蝶の主として認識されるためには、卵が孵化する前からこうして定期的に血を吸わせる必要がある。
さらに、毒蝶の成長を助ける栄養素は、その名の通り「毒」に由来する。
この温室が毒蝶の成長に適しているのは、以前から毒草を育ててきた場所であるためだ。
非常に適した状況だった。
幼い頃から毒を摂取してきた私の血もまた、例外ではなかった。
そのおかげで、私の毒の耐性は以前よりもはるかに強くなっていた。
本来、この毒蝶の卵を見つけるのは、物語の登場人物の一人である「白の魔術師」であるべきだった。
彼は魔物を操る能力を持つ人物で、作中で毒蝶の生息地を見つけ、その卵を孵化させることに成功する。
私はその場面を覚えていたため、エミリーに毒蝶の生息地の場所を教え、卵を持ち帰らせた。
魔物を飼育したり、道具として利用するのは非常に稀有な能力だ。
当然、私にはそのような才覚はなかった。
しかし、まだ孵化していない毒蝶の卵であれば、私を主として認識させることができるように思えた。
自分を守る手段が多ければ多いほど良いに決まっている。
仮に失敗したとしても、私に損害はない話だった。
そのため、どうせならやってみる価値があると考え、毒蝶の卵を手に入れ、定期的に自分の血を与え続けた。
今、私の血をたっぷり吸い取った毒蝶の卵は、薄い皮膜に覆われた一つのカップのように見えた。
私は包帯を締め直した後、卵の表面を撫でる。
生きている動物の肌を触るような温かみが、そっと指先に伝わってきた。
なぜだかこの卵が孵化する日が遠くないように感じた。
・
・
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毒蝶の孵化室を出て、私はカシスの元へ向かった。
「昼食の時間だよ。」
今日の昼食は、鶏肉のスープと穀物パン、それに果物だった。
フォークやナイフを使用しなければいけない食事は避けていたので、彼に提供できるメニューは限られていた。
「わざわざ毎回運んでくるなんて。」
カシスは依然として私に冷淡な態度を取っていたが、それでも彼は初めよりも私に対して不快感を抱いていないように見えた。
むしろ、思った以上に穏やかで協力的だった。
私はベッドに座っているカシスに食事を運んだ。
ベッドの上にトレイを置き、後ろを向こうとした瞬間、突然、何かが込み上げてくるような感覚がした。
うっ、胃の中がひっくり返るような音と共に、口から何かが吐き出された。
ポタポタ。
口元を覆った手を伝って滴り落ちたのは、赤黒い血だった。
昨日エミリーが持ってきた毒を摂取した後からお腹の調子が悪かったが、ついに血を見たのだ。
私は急いでハンカチで口元を拭き、冷静になろうと努めた。
カタリ。
すると、ドアの向こうから物音が聞こえ、私を気遣うようにカシスがこちらを見上げていた。
その顔には、今の出来事に驚き、硬直している様子がありありと表れている。
大きく見開かれた丸い瞳が、何か不安げに揺れているように見えた。
彼はベッドの上のトレイを持ち上げようとしたが、それを再び置き直した。
「君……。」
カシスは私に何かを言おうと口を開いた。
しかし、彼は私に何を言うべきか、どう伝えるべきか分からず、言葉を飲み込んでいるようだった。
「今、それ……血……。」
「あ、ごめん。」
その様子を見て、私は彼に謝罪した。
確かに、カシスにとっては突然のことで驚かせてしまっただろう。
「食事中なのに、私のせいで気分を悪くさせちゃったね。」
食事の席で突然血を吐いてしまったのだから、彼がこんなに驚いているのも理解できる。
ひょっとして、気持ち悪いと感じているのかもしれない。
私のこの妙な反応に、カシスの表情が変わった。
彼は少し困惑したような視線を向けながら、再び口を開いた。
「それより……今、血を吐いたんじゃないのか?」
「そんなことないよ……気にしないで、大したことないから。」
私は袖で口元を覆いながら答えた。
この場所には洗い場もなく、血をきれいに拭き取ることもできなかった。
ただ、私の袖にもすでに血が付いていた。
カシスの視線が私の服に付いた赤いシミに留まった。
「血を吐いたことが別に大したことじゃないって?」
カシスの表情は、先ほどよりも少し険しくなったように見えた。
「うん、こういうのは……。」
私は何と答えるべきか少し迷ったが、言葉を続けた。
「もともと、前からよくあることだから。」
血を吐くことについて、いちいち説明する必要があるだろうか?
むしろ、幼い頃から毒を摂取してきたことがアグリチェ家の教育の一環だと言えば、逆に彼にとっては衝撃を与えるかもしれない。
毎日のように食事の一環として毒を摂取してきた私を、他のアグリチェの人々と同じような『毒の使い手』と見るかもしれない。
その可能性を思うと、説明するのは控えたほうがいいかもしれない。
ここでは、あまり何でもない様子を見せるのは良くないのだろうか?
血を吐いたのを初めて見たかのように驚いた反応を見せるほうが、むしろ適切だったのかもしれない。
もちろん、今になってこんなことを考えるのは遅すぎた。
アグリチェの人々にとって、この程度のことは本当に何でもない出来事であり、この自分の姿がカシスにどのように映ったのか、まったく考えていなかった。
「前から頻繁に?」
その時、驚いた表情で私を見ていたカシスが、何かを考えたように眉間にしわを寄せた。
「そういえば、前回も……。」
え?前回だって?
私がいつカシスの前で血を吐いたことがあっただろうか?
しかし、そんな記憶は私にはなかった。
カシスもそれ以上言葉を続けなかった。
それで私は、彼が何を言おうとしていたのか気になり始めた。
だが、今はそれよりも……。
「もしかして、今心配してくれてるの?」
私はカシスの顔を見ながら軽く尋ねた。
その瞬間、カシスが少し身じろぎをした。
「心配だなんて、僕がなぜ。」
ふと、彼の顔にわずかな緊張が走った。
「目の前で人が血を吐いているのを見たら、誰だって・・・驚くのが当然じゃないか。」
冷たい声が私の耳に響いた。
先ほどよりもさらに冷たさを帯びた声で、彼の顔も同様だった。
結果的に私の言葉を否定する返答だった。
しかし私は、本能的に今この出来事が私にとっては取るに足らない日常であるという事実を認識した。
「ああ、そうだね……。私にはもう慣れっこなことだから、まさか他の人が驚くなんて思いもしなかったよ。」
こう考えると、これまで私が理解したカシスは、強者には強く、弱者には弱いタイプの人間だった。
そうであるなら、今この場で私が少し弱々しい姿を見せても、特に問題はないだろう。
「でもあなたは、私を嫌っているだろうと思っていたんだけど……。そんな相手にまで気を遣うなんて、親切だね、あなた。」
私はカシスに向かって意味ありげに微笑んだ。
わずかに荒々しく、冷たい雰囲気を和らげながら。
「ありがとう。」
そんな私を見たカシスは、言葉を失ったような表情を浮かべていた。
「ああ、でも今さら弱いふりをするには、もうあなたの名誉を傷つけてしまった過去があるよね?」
しかし今はカシスもそのことを忘れつつあるようだから、私もただ知らないふりをしておこう。
ちなみにその時、カシスの目は見えなかった。
「じゃあ、私はこれで失礼するわ。」
ここは大人しく退散するのが賢明だろう。
カシスが平穏に食事を楽しめるように、少なくともそのために席を譲るのがよさそうだ。
「驚かせてごめんね。」
私はそう言ってカシスに声をかけ、後ろを振り返った。
最後に彼の顔を見た時、カシスは驚いたような表情で唇をしっかり閉じていた。
背を向けた私の背後で、カシスの視線がいつもより長く私を追いかけているような気がした。



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