こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
41話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 毒蜂と深淵の口づけ
凍りついた湖に、眩い日差しが舞い降りる。
透明に輝く丸い氷の膜が、まるで新星の粉を綺麗に振りまいた天使の水盤のよう。
オルカは15日間もその景観を眺めてきた。
垂れ下がった長い淡青色の髪の上には、銀色のキツネで作られた帽子が被せられている。
「白の魔水師」と呼ばれるフィペリオン家のオルカは現在、フレデリカ高原とエメラルド湖の間に面した魔物の生息地に来ていた。
長いこと待った末、ついに彼の目の前に魔手ジャイロテが姿を現す。
白い雪景色と対比される黒い毛並み。
血に滲むような鋭い輝きを放つ赤い目。
額の上にそびえ立つ角。
口の外に突き出た鋭い牙と、たくましい筋肉質の手足まで。
「美しい・・・」
オルカは恍惚の表情で感嘆した。
彼は現在、魔物から気配を隠す呪術を利用して隠れている。
そのため、ジャイロテに気づかれずに彼らの姿を鑑賞することができたのだ。
オルカの目の前には、約百匹の群れが。
「雪の奥深い場所に移動し、なかなか発見できない魔物を、百匹あまりも見ることが出来るなんて・・・」
オルカは、その中でも最も強力な力を持ったジャイロテの王を捕獲し、手懐けるつもりだった。
しかし、半月ほど待って手にした貴重な瞬間であるだけに、少しは余裕を見せてもいいだろう。
今は、眼前に広がる美しい光景をもう少し鑑賞したかった。
「・・・あれ?」
しかし、のどかな瞬間は長く続かない。
急に視界が一面赤く染まったのだ。
まるで日食現象が起きたかのように、真っ白に輝いていた湖の情景に巨大な影が落ちた。
オルカは、どこからか現れた蝶の群れがジャイロテの群れを襲うのを呆然と見つめる。
バリバリ!
骨を削るような殺伐とした音が、静かだった風景を一瞬にして覆す。
「これは・・・」
オルカは口をあんぐりと開けていた。
彼は自分の目の前で何が起こっているのか理解できずにいた。
しばらくして、赤い蝶の群れが初めて現れた時のように、巨大な影を視野に落としながら旅立つ。
彼らが忽然と消えた場所には真っ白な雪原が残っている。
そこには血痕が残っていなかったので、オルカは一瞬夢を見たような気がした。
「冗談だろ・・・」
そして意識が戻ると、口から虚しい笑みが溢れる。
この厳しい寒さで、一度も火を通すことができず、半月も潜伏していたのに。
その瞬間、ふと脳裏を掠めて通り過ぎた悟りに、オルカは席から立ち上がった。
彼の体の上に積もった雪が、はらはらと落ちていく。
「毒蝶?」
青空の向こうに遠ざかっていく赤い跡が、オルカの鋭い目に入った。
もしかして、この付近に毒蝶の生息地があるのか。
もしそうなら、ジャイロテなんか大したものではない。
赤い蝶の群れは、ペデリアンの土地へ飛んでいった。
それを見た瞬間、オルカの次の目的地が決まる。
「昨夜のあれ、やっぱりプロポーズだよね?」
オリンは仲間たちが集まって休むテントの中に入る途中で、足を止めた。
「状況はそうだけど、そういうのとは微妙に違う感じだったけど・・・」
「何が違う?露骨に告白だったじゃないか」
「そうよ。残りの人生をくれだなんて。明らかに結婚しようって意味よ」
テントの中にいる彼らは、昨夜のことを反芻していた。
「どうも、最初から妙な空気だったよな」
「そうだと思っていたよ。捕虜だなんて、主君がそのような性分ではないし」
「恩人というじゃないか。主君が連れてきた人が目を疑わせるほどの美人だったから、私も最初は戸惑ったけれど」
「・・・あの方、余命が短いって昨日言ってなかったか?」
テントの中に重苦しい沈黙が漂う。
それぞれが、若い主君の悲劇的な恋愛史を想像していることは明らかだ。
オリンは、再び振り返ってこの場を離れることにした。
この中に入ると、また昨日のようにカシスが連れてきた女性について自分にあれこれ聞くに違いないから。
その時、背後に誰かが近づいてくるのが感じられた。
もしかしてカシスではないかとビクビクしたが、幸いにもイシドールだった。
彼はすぐに上り坂を通り過ぎて、テントの中に入る。
「うるさいお喋りがテントの外にまで聞こえている」
「ウィンストン卿!」
「今はのんびりとお喋りをする時間ではない」
「も、申し訳ありません!」
オリンは気合が入った叫び声を聞きながら、こっそり引き返す。
やはり、あの中に入らなかったことは賢明な選択だったようだ。
訳もなく虎のようなイシドールに引っかかって一緒に怒られなくて良かったと、オリンは胸を撫で下ろした。
しかし、仲間があれほど集まってヒソヒソ話をするのも理解できる。
彼女は数日前のことを思い出した。
カシスの部下たちは全員、彼が死体を持ってきたと思ってしまった。
ただでさえ、アグリチェの邸宅からイシドールを先に送り出したカシスが、一向に外に出てこなくて、再び中に入るべきかどうか悩んでいたから。
ところが、吹雪を突き破って現れたカシスは一人ではなかった。
彼の胸に抱かれた人物はマントですっぽり包まれ、顔が見えない。
だが黄金色の長い髪がカシスの肩越しに靡く姿だけは、目に刺さったように刺激的だった。
カシスは狼狽する部下たちの前で口を開く。
「出発する」
そうして彼らはアグリチェを去ったのだ。
そして整備のために、しばらく行進を止めた時。
固く閉ざされていた馬車の扉が開き、カシスが連れ去った者が姿を現した。
彼が席を外している間に意識を取り戻したようだ。
体の輪郭と飛び散る髪の毛の間からちらっと現れた顔を見ると、若い女性だった。
しかし彼女は馬車の扉を開けて、最初の一歩を踏み出すや否や、地面に力なく崩れ落ちる。
それを目撃した部下たちが、急いで駆けつけた。
「大丈夫ですか?怪我したところは___」
その中で一番先にロクサナの体に手を出した仲間が、次の瞬間によろめく。
「うぅ・・・!ちょっと待て!みんな近寄るな!」
彼はすぐに他の人たちに警告した。
まるで見えない手に攻撃されたかのようによろめきながら、地面に膝を当てて座り込む仲間を見て、彼らは当惑する。
いつの間にか、周囲には毒気が立ち込めていた。
それに気づいた仲間たちが鼻と口を塞ぐ。
幸いにも、カシスが戻ってきた。
彼は一目で状況を把握する。
先ほど無理矢理押さえつけていた毒気が、カシスがしばらく席を外した間に、再びその勢いを取り戻して猛然と暴れていたのだ。
僅か5分も経たないうちに・・・。
「全員下がれ」
部下たちを下がらせた後、カシスは毒気の発祥地と思われる女性に近寄る。
カシスは躊躇うことなく歩き、冷たい雪の上に倒れた女性に手を伸ばした。
「ロクサナ」
しかし、気絶した彼女には何の声も届いていないようだ。
ロクサナの背中を支えるカシスの体が一瞬で重くなる。
彼女を囲む「毒気」が一層強くなったのだ。
空中から現れた赤い蝶が、彼女の肩に舞い降りる。
カシスは一刻も急がなければいけないことに気づき、すぐに頭を下げた。
その後、続くカシスの行動に、周りにいた人々は息を吸い込むしかなかった。
カシスはロクサナと唇を合わせて、直接自分の生命力を与えたのだ。
ラント・アグリチェの息を強制的に戻すときと同じ方法を使えば、これよりずっと簡単で速いだろう。
しかし、それは相手の魂が破壊されることを考慮しない非常に強制的で暴力的な方法だ。
そんな方法を、彼女に使うわけにはいかない。
カシスはロクサナの体に負担をかけないよう慎重に、そしてゆっくりと数回生命力を注ぎ込んだ。
しばらくして温もり始めた体を抱き上げて、カシスは立ち上がる。
今やったことは、あくまで一時しのぎに過ぎず、まだロクサナの体からは微かな毒の香りが漂っていた。
「許可が下りるまで近づくな」
カシスは短い命令を残して、元々ロクサナがいた馬車の扉を開けて、一緒にその中に入った。
周囲にいた人々は、目の前で閉まった扉を見て、慌てて口をパクパクさせる。
まさか直接看護をしようとしているのか?と。
しばらくすると、馬車の外にまで漏れていた毒が消え始めた。
そして固く閉ざされていた扉が開く。
「薬と飲み水を持ってきてくれ」
オリンの隣にいた仲間が、あらかじめ準備していたものをカシスに渡す。
その直後、再び扉が閉まった。
その後も、辺りはしんと静まりかえっている。
全員がカシスと妙齢の女性が一緒に入った馬車を見て、息を殺していたのだ。
倒れた女性が目を覚ました?
しかし、そんな気配は見えない。
じゃあどうやって薬を飲ませる?
今、この瞬間、全員が同じことを考えながら、さっき見た場面を思い出していた。
カシスが躊躇いもなく女性に唇を重ねた姿を。
その後、皆が下した結論も同じだった。
「やっぱり捕虜ではないのだな」と。
むしろ、これは貴賓に対するもてなしだった。
カシスがあれほどに直接身を乗り出して大事にする人が捕虜であるはずがない。
「ウィンストン卿、主君が連れてきた方について何かご存知ではないですか?」
その夜、仲間の一人がどうしても気になってしまい、イシドールに尋ねる。
皆、表向きでは興味のないふりをしながら、彼らの会話に耳を傾けていた。
イシドールは少し眉間を狭める。
しかし、他の人も知っておいた方がいいと思ったのか、すぐに口を開いて答える。
「あえて言うなら、恩人に近い人と言えるだろうか」
「え?」
「だからお前たちも、それ相応の待遇をするように」
すべての説明が省かれた短答式の言葉に、むしろ疑問を感じてしまう。
しかし、イシドールはこれ以上話すことがないというように席を離れた。
そのため、彼らはもう何も聞くことができなかった。
その日ごとに彼らの好奇心が芽生えていくうちに、ロクサナは完全に意識を取り戻した。
そして、ようやく今日に至ったのである。
「あ」
ロクサナの口から、微かに呻き声が聞こえた。
倒れていた間の記憶がチラッとよみがえったばかりだ。
喉が渇くような感覚に陥る。
体の毒気をコントロールできず、熱が上がったり下がったりする間、口の中は乾燥し、唇はヒリヒリするほど乾く。
けれど体が重くて、意識はあるが指一本動かせない状態。
そんな彼女の唇の上に、暖かい何かが、押しつぶされるように舞い降りた。
まるで彼女の気持ちに気づいたかのように、開いた唇の間から水が漏れてくる。
舌を濡らす水が、まるで生命水のようにひどく甘い。
もう少し欲しいと哀願するように縋る。
すると誰かが宥めるように自分の頭と頬を撫でた。
その優しい手に、全身が溶け込みそうになる。
再び暖気が唇に重なった。
そばにいる人は、彼女が十分満足するほど水を流し込んでくれた。
「・・・」
それから再び眠りについたのか。
過ぎ去ったことを思い出す間中、ロクサナは些か機嫌が良くなかった。
少しは強迫的だという事実を自分でも分かっている。
しかし、意図していない自分の弱い姿を誰かに見せることは、依然として有り難くなかったのだ。
一人で顔をしかめている時、昨日聞いたカシスの言葉がふと脳裏をかすめる。
『君の残った時間を私にくれ』
『いずれにせよ、今後の目的地がどこでも構わないのなら、私のそばにいろ。君が死ぬまで』
そうか・・・。
自分にとって無価値でしかない時間であるのなら、そんな風に使ってもいいのか。
そう考えている間に、さっき飛ばした毒蝶が帰ってきた。
遠くから見ても、その羽ばたきは力強く、活気に満ちている。
久しぶりに捕食した毒蝶は浮かれているようだ。
本来なら制御できない危険があるため、このようなやり方で毒蝶を取り出すことはできなかっただろう。
しかし、今日はここへ来て一番体調がいい。
その上、ちょうど魔物の生息地の近くを通る道でもあるので、ロクサナは久しぶりに毒蝶を取り出して餌を与えることができた。
ところが、ふと動いていた馬車が止まる。
しばらくしてロクサナの元を訪れたのはカシスだった。
「体を酷使する趣味があったのか」
向かい合う表情を見て、ロクサナは彼が毒蝶の存在に気づいたことに気づく。
「休めと言っても聞かないようだ」
カシスは中に入って扉を閉めた。
彼は昨日のことがあっても平然とロクサナに接してくる。
もちろん、ロクサナもカシスに対する態度にこれといった変化があるわけではないのだが・・・。
アグリチェを去った後、病気になった自分を彼が面倒を見たことを思い出した後だからだろうか。
こうして彼と顔を合わせると、心の中で何かがうごめく。
それが何か分からないが、まるで棘を飲み込んだような気分だった。
「顔色がまた青ざめてきたじゃないか」
カシスは眉をひそめる。
こうなると知っていたら、「一人でいたい」という彼女の言葉に従わなければよかったと考えて。
カシスの口からため息が漏れる。
彼はロクサナを回復させるために腕を伸ばす。
しかし、突然前に突き出した彼女の手が、カシスの襟を握った。
避けることもできたが、彼はロクサナが望むように上半身を前に傾ける。
しかし、後に続く彼女の行動はカシスも予想できなかった。
接している唇は、外の冷たい空気に触れてきたカシスより低い温度を持っている。
ロクサナはカシスの唇を噛んで開かせて、彼にキスをした。
短くて浅いが、確かに唇だけが重なったのではなく、舌を絡める口づけで。
「知ってはいたけれど、やっぱりあなたは私の毒にまったく影響を受けていないようね」
しばらくして唇を外したロクサナが、カシスの肩を押す。
だが彼女はカシスとの距離を広げるのではなく、むしろ次の瞬間彼に寄り添った。
「じゃあ、私に望むことはこういうことなの?」
ほとんど額が接するほどロクサナの頭が前に下がる。
カシスの視界に金色のカーテンが揺れた。
「それなら私も悪くないわ」
小さく囁く声が砂糖を塗ったように甘い。
ロクサナはカシスに微笑みながら、手で彼の胸を撫で下ろす。
その手振りには明らかな誘惑の意図が含まれていた。
「あなたくらいなら、なかなか好い相手でもあるし」
カーテンが完全に閉まらなかったせいで、そこから太陽の光が漏れている。
光り輝いたロクサナの髪と、下に半分垂れ下がったまつ毛がキラリと光っていた。
彼を見下ろす赤い瞳には否めない魅惑がこもっている。
カシスはそんな表情を浮かべるロクサナを黙って見つめていた。
微動だにせず、陰影を帯びた彼の瞳は、果てしない深淵のよう。
続いてカシスの手がロクサナの頬に触れた。
まず彼女の目の周りに止まる。
顔の輪郭を確認するかのように、ゆっくりと滑り落ちる温もりにロクサナは視線を落とした。
カシスは繊細に手を動かす。
優しく頬を撫でた後、今度は耳を軽く擦る手がくすぐったい。
その間も、カシスはロクサナの瞳から一時も視線を離さなかった。
とうとう彼の手が首筋の後ろに移り、向かい合う相手の頭を近づける。
その後、二人の唇が重なった。
その瞬間ロクサナは思わず身を震わせる。
それがカシスに伝わったかどうかは分からない。
ロクサナは一瞬身震いする。
すると、カシスは記憶の中のように優しく手を動かして首筋を撫で下ろした。
カーテンの間に染みる太陽の光のように、暖かい感覚が身体中に広がっていく。
穏やかな感じさえする静かな空気が周囲に満ちていた。
どうしても壊したくないくらい、その全てが極めて優しい雰囲気。
不思議な経験だった。
お互いに何も言えないのに、この瞬間、唇を突き合わせている相手と、とても緊密な話をしているようだ。
そのため、ロクサナはしばらくしてから浅い息を吐き出しながら口を開くことができた。
「・・・今何をしているの?」
「治療している」
淡々としたカシスの声に、ロクサナは眉をひそめる。
向き合った黄金色の瞳は微動だにしない。
その様を見ると、なぜか内心でイライラしてきた。
「必要ないわ。そんな真似しないでちょうだい」
ロクサナが離れようとするが、カシスは彼女を手放さない。
「いいや、必要だ」
同時に、強い腕が身動きできないほどロクサナを抱きしめる。
「こんな臨時の方便でもとらなければ、これからどうするつもりだ」
しばらく離れていた体が、もう一度近づく。
ロクサナの襟を引っ張ったカシスが頭を傾け、今度は深く唇をほぐされた。
ビックリするほど思いっきり触れ合った唇。
ピクピクしてたじろぐロクサナの頭を動かせないように掴んで、触れ合った舌がピリピリするほど強く吸い寄せらた。
敏感な粘膜をやや複雑に擦り上げながら通り過ぎる動きに、喉から自然と呻き声が流れる。
一瞬、開いた口が塞がり、呆気に取られるほど貪欲でしつこいキス。
ただ漠然と記憶の中のカシスにふさわしい優しい口づけを想像したロクサナは内心慌てていた。
しかし、すぐに彼女は目つきを変える。
こんな風にひたすらやられてばかりいては性分に合わなかった。
ロクサナも「どちらが勝つか、やってみよう」という気持ちで、カシスの首を腕で巻いて引っ張る。
ふと向き合った相手から小さく流れた小さな笑い声が、彼女にまで流れ込んで溜まっているようだった。
そのように誰が誰を捕えているのか分からないほどしつこく絡み合い、その後勝敗が決まる。
ロクサナは屈辱的な気分で、カシスを睨みつけていた。
「はあ・・・、はあ・・・」
彼女の顔は呼吸不足で赤くなっている。
その反面、カシスはまだ余裕の表情を浮かべていた。
「治療なんて必要ないと、自信満々に言っていたのに」
カシスは、ついさっきまで粘り強く開いていたロクサナの唇を凝視しながら首を傾ける。
そして彼女の下唇を舐めた。
「たかだかこの程度で疲れるとは」
その動作に、まだ燻っている熱気と未練が感じられる。
ロクサナはカシスをジロジロと見た。
確かにさっき二人が同じ行動をしたのに、彼はどうしてこんなに元気なんだろう。
肺活量の差がそんなに大きいのか?
いや、違う。
自分は今、体が正常な状態ではなかった。
三日間意識を失って目が覚めた直後でまだ回復していない。
最初からこれは公平な勝負ではなかった。
だから、こんな自分と対決したカシスが非良心的だと言えるだろう。
もちろん、これは喧嘩でもないのだが、ロクサナはなんとなくプライドが傷つけられた。
それでカシスにちょっと皮肉を込めて告げる。
「そんなあなたは、体の調子が悪い患者をどうしたいの?」
しかし、カシスは厚かましいほど平然とロクサナの言葉を受け流す。
「患者扱いされるのが嫌なようだから、思った通りにやったのに怒るのだな」
ロクサナはカシスを睨みつけた。
もちろん間違った言葉ではなかったが・・・。
「それで今、私が願ってこんなことをしたと?」
「いいや、私がしたくてやったんだ」
カシスは潔く認めて、ロクサナの言葉を遮る。
急に体から力が抜けた。
一体、今私は何をしているのだろうか?
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