こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
今回は309話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
309話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- これから②
その時刻、首都内、ガイア聖堂が管理する貴族墓地。
大貴族や首都でかなり影響力があるという貴族だけが埋められるそこをレンが訪れた。
高級大理石で作られた墓碑には、スペンサー・バスタージュという名前と、彼が生きた年が刻まれていた。
「不細工な親不孝者が来ました」
レンは淡々と挨拶する。
生きているうちにスペンサー子爵に接する時のように。
「早く来ようとしましたが、これを持ってくるために少し遅れました」
レンが片手に持っていた袋を墓石の横にポンと置いた。
「伯父さんの頭です」
反逆を犯したフランチェ大公の頭は凱旋門に飾られた。
帝国の建国を象徴する凱旋門に彼の頭をかけるということは、新しい帝国を開くというシアンの願いと意志を込めた表象だ。
長い間かけられたフランチェ大公の首に対する民衆の関心が冷める頃、レンが人知れず持ってきたのだ。
「父があれほど憎んでいた伯父の首だと。もう満足していますか?」
墓碑の前に立ったレンが、だだをこねるように話しかけた。
しかし、返ってくる返事は静かな静寂だけ。
「バスタージュ家は私が譲り受けました。立派な殿下が謀反を防いだ功労で伯爵位を下賜し、領地も与えるというが、そうしろと言いました。そういう方に関心がないと」
レンは自分のことを他人の話のようにぶっきらぼうに並べた。
伯爵位も、領地も何の意味があるのかというように。
墓碑をぼんやりと見下ろすレンの目つきには寂しさが宿っていた。
「お父さん」
淡々とした声でスペンサー子爵を呼んでみた。
褒め言葉は望まない。
どうしてこれ以上要求しなかったのかと、怒鳴ったり怒ったりしてくれればいいのに。
スペンサー子爵は無口だった。
「全部終わったじゃないですか。私たちが望んでいた宿願はすべて守ったのに。どうしてこんなに虚しいんですか」
レンの口元に寂しい笑みが広がる。
波のように押し寄せる空しさに心が空っぽになったようだ。
すべてを成し遂げたにもかかわらず、彼のそばには誰も残っていなかった。
お母さんも、そしてお父さんも。
数百年間、傍系という理由で犠牲を強いられたバスタージュ家の念願のために駆けつけた時間だったので、他の所を振り返ったり、眺める余力すらなかった。
「私、ちょっと休みます。休みながら意味というものを探してみようと思います。どうやって生きるのか、なぜ生きるべきなのか」
レンは前髪をかきあげてにやりと笑う。
「もちろん、父の望む人生ではないでしょうから、期待しないでください」
レンはバスタージュ家を繁栄させるつもりはなかった。
ただ、家主としての地位を守り、時がくれば譲ること。
ちょうどそこまでするつもりだった。
「行きます。頻繁には来ないです。ぶっちゃけて、私たちがよく見るほど優しい関係ではなかったじゃないですか?」
レンは黙礼をしてポケットに手を突っ込み、さっと振り向いた。
一度は振り返ることもあるが、墓碑から遠ざかるまで背を向けなかった。
ふと、レンが足を止める。
そしてあごを上げて雲一つなく青空を見上げた。
「必ずこうだよ。ふと思い出すようにして」
あの高い空の向こうを見ていたレンが、つまらない人のようにくすくす笑った。
分からないけど・・・その人生の意味ということ、次ということ、どう生きなければならないということ。
遠くからその答えを探す必要はなさそうだった。
「もしかしたらすでに知っているかもしれないし」
「嫌ですって?」
「はい、嫌です」
サロンに立ち寄って馬車を乗り換えたエレナは、一緒に乗ったヒュレルバードと会話をしていた。
本来、騎士は馬夫席に座ったり、馬を引いて護衛に立つのが正しかったが、エレナが長く話すことがあるとし、前の席に乗せたのだ。
謀反を鎮圧した功労が認められ、下賜される称号や爵位などを語るためだ。
「皇居近衛大将職も?」
「はい、お嬢さん。今のようにずっとお嬢さんをお守りしたいです」
「・・・」
嬉しい気持ちで消息を伝えたエレナは、予想できなかったヒュレルバードの反発にぶつかってしまった。
ヒュレルバードは、「帝国の騎士」という称号、勲章、爵位、領地、さらには皇宮近衛大将職まで受けないと言った。
「やめてください。私のそばに置くには、卿はとても偉大な人です」
「氷の騎士」という偽名のように、一寸も揺れない目つきと表情で、ヒュレルバードが話した。
「大公家を出てお嬢さんに仕えながら、真の騎士の名誉とは何か、多くのことを考えました。私が学んだ騎士道は嘘でした」
「卿」
「本当の騎士の名誉は世の中が分かってくれなくても構わないということです。ただ一人、私が仕える主君の人情さえあれば。私にお嬢さんがそんな人です」
心からそばに残るように頼むヒュレルバードを見て、エレナは深いため息をついた。
彼の才能がもったいなく、彼女に会って過ごした歳月が申し訳なくて、より大きな翼をつけてあげようとしたが、彼はどうしても反対してエレナのそばに残ることを願った。
「本当に全部必要ないでしょうか?爵位、勲章、称号、領地、全部ですか?」
「はい、お嬢さん。私の望みは死ぬまでお嬢さんをお守りすることです」
ヒュレルバードの丁重な拒絶には、本当に塵ほどの揺れや葛藤も見せなかった。
「後悔しない自信はありますか?後で行きたいと哀願しても、その時は行かせてあげませんよ」
「そんなことはないでしょう」
「分かりました。卿がそうおっしゃるなら、私もこれ以上話しません」
一歩退いたのはエレナだった。
いくらヒュレルバードのためのことだとしても、本人が嫌だと言うので、言い張ることもできなかった。
(ありがたくも愚かな人のようだから)
エレナはもどかしい気持ちでヒュレルバードを目に入れた。
自分のそばを守ってくれるというあの真心が胸に染みるほどありがたくて、限りなく申し訳なかった。
「他のことはしないで、もっと一生懸命生きなければなりません」
「どういうこと?」
言葉の意味が分からないヒュレルバードが首をかしげる。
エレナはさっと横髪を肩越しにして意味深長に話した。
「私がもっと高く遠くに飛翔してこそ、卿の名前が後代に話題になるじゃないですか」
「私のせいなら、あえてそうしなくてもいいです。お嬢さんはもう・・・」
「私の選択なので、卿も尊重してください。卿が私のそばに残ることを選んだように」
「・・・」
困っているヒュレルバードを見て意地悪な笑みを浮かべたエレナが窓の外に視線を向けた。
首都をかなり離れた馬車は、人通りの少ない外郭の街道に沿って走った。
捨てられた森と呼ばれるほど誰も訪れないところだったが、どこか人為的な感じがした。
数十個余りの枝分かれで複雑に続いた街道の果てに至ると、深い森に似合わない邸宅が見えてくる。
大公家が大陸のあちこちに建てた秘密の安息所だった。
大公家を占拠したシアンが大々的に調査を行って発見されたところで、大公家の実務を見ていたあるディールの証言で位置が明らかになる。
「いらっしゃいませ、L」
エレナが馬車から降りると、安息所を守っていた皇宮近衛隊員が丁寧に礼儀をわきまえた。
「お忙しいところ、お手数をおかけして申し訳ありません」
「いいえ、Lが来たらご迷惑をかけないようにという殿下のお願いがありました」
話を続けながらも、皇宮近衛隊員はエレナの後ろに立っているヒュレルバードをちらりと盗み見るのに余念がなかった。
フランチェ大公が率いる騎士団との決戦で、シアンとレンに匹敵するほど優れた武威を見せてくれたヒュレルバードに畏敬の念を抱いたのだ。
「入りましょうか? 」
「あ!はい、こちらへ。ご案内いたします」
皇居近衛隊員について邸宅に入ったエレナが向かったところは地下につながる出入り口。
「まだ囚人たちの調査が進行中なので、そのまま収監中です」
「なるほど。私とヒューレルバード卿だけが入りたいですが、大丈夫でしょうか?」
「ヒュレルパード卿がいらっしゃるのに、できないわけがありません。Lがおっしゃった囚人は地下3階の一番端の独房に閉じ込められています。それでは、私はここで待機します」
理解を求めたエレナは地下の刑務所の階段を下りていった。
靴のかかとの音が静かな静寂を破り、地下牢を鳴らす。
人の気配を感じた牢の中の囚人たちが手を伸ばして、自分は無実だと、助けてくれと哀願した。
何人かは哀願が通じないと、大声を出してわがままを言ったり、攻撃的な行動を見せる。
もちろん、そのような者たちはヒュレルバードが流す粘り強い殺気に氷のように固まって口を大きくするだけで、すぐに静かになったが。
エレナの足が止まったところは地下3階の一番端の部屋だった。
灯火でも追い払うことができない真っ暗な闇と鼻先を刺すカビの中が振動するところ。
普通の人たちはここに閉じ込められているという事実だけでも息が詰まるほど恐ろしい空間だ。
レンのこれからの行動に注目です。
ヒュレルバードがエレナの護衛騎士を続けるのは嬉しい!
牢屋の中にいる人物とは?