こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
今回は324話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。

324話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 後愛⑨
「もう朝か。」
薄暗い夜明けを見つめるシアンの表情は陰っていた。
その間、シアンは偽ベロニカと向き合う機会を作るために努力していた。
感情を抑えながらも皇宮を離れるよう説得し、彼女に自分の正直な気持ちを伝えるためだった。
しかし、まるで誰かが邪魔しているかのように、彼女との面会はうまくいかなかった。
公式の行事を隙間なく埋め込まれ、ろくに顔を合わせる時間も持てず、彼女がそっと通り過ぎていくのを見送るばかり。
以前のように彼女と少しでも長く一緒にいたかったが、彼女はどこか距離を取ろうとするかのように立ち去ってしまった。
言葉を交わす機会を逃すたびに、シアンの焦りは増していった。
結局、シアンは席を立った。
彼女を探し出して説得しようと決心した。
「デンはどこに行って、お前の仕える主君の世話をしているんだ?」
いつもそこにいるはずのデンが見当たらないことに疑問を抱き、シアンが尋ねると、側近の侍女が答えた。
「まだ宮中には戻っておりません。」
「デンが?」
「はい、陛下。侍女を送り、何か問題があるのか確認させましたので、間もなく報告が来るかと存じます。」
シアンの表情が曇った。
特別なことではないと思いたかったが、何年もの間、こんなことは一度もなかったため不安が募った。
デンは別宮に常駐しながら、皇宮内の事情と動向を把握する任務を担っている。
最近ではシアンに、ベロニカが謀反を企てているという事実を伝え、不安定な状況を受けて彼女の脱出の手助けをするよう命じられていた。
「報告が来たらすぐに私に知らせよ。」
懸念が膨らんだが、シアンは冷静さを失わなかった。
デンはシアンが信頼を置くに十分なほど有能だ。
また、万が一の事態に備えて皇宮内には側近も配置していた。
もし予期しない事態が起きれば、どんな形でも連絡が来るはずだと信じていた。
シアンはいつも通りフローレンス皇后のことを確認し、西宮へ向かった。
すでに彼女が一日をイアンの部屋で過ごし、最後に別れを告げることを知っていた。
案の定、イアンの部屋の前の廊下には、偽ベロニカに仕える侍女たちが立っていた。
シアンは思わず早足になった自分を落ち着け、冷静を保とうとした。
どこから話し始めるべきか、自分の本心をどう伝え、説得すればいいのか、何度も言葉を心の中で整理した。
気持ちを整えたシアンが足を止めたとき、彼の意志よりも先に開いた扉が彼の動きを止めた。
「陛下ではありませんか?」
「フランチェ大公、あなたがなぜここに?」
予期せぬ人物との遭遇にシアンの表情が硬くなる。
フランチェ大公は物腰穏やかに、例を挙げるように言葉を続けた。
「皇妃殿下は以前、私の娘でございました。体調がどうか気になり、訪ねてきた次第です。」
フランチェ大公は、一応の体裁を保ちながら訪問の理由を述べた。
シアンの目がわずかに細まった。本来なら納得できる話ではない。
親が子供を見に来るのに理由がいるだろうか。
もちろん、それが普通の親子関係であればの話だ。
「まあ、陛下がいらっしゃったのですね?」
わずかに開かれた扉の向こうから、明るくはつらつとした女性の声が聞こえた。
少しばかり甲高いその声は、シアンが知っている彼女のものとは微妙に違っていた。
「やはり、あなたに会いに来たようですね。さあ、陛下にご挨拶なさい。」
フランチェ大公の言葉が終わるか終わらないかのうちに、少し開いていた扉がさらに開き、彼女が姿を現した。
「・・・!」
シアンの目が大きく見開かれた。
皇妃らしい気品を感じさせる優雅なドレスをまとった彼女は、ボディラインを強調するマーメイドドレスを身に着けていた。
髪には華やかなティアラを飾り、耳飾りやネックレス、腕輪などが全身を彩っていた。
出産後、イアンの世話に追われて簡素だった身なりを思い出せば、その変貌ぶりに驚かざるを得なかった。
しかし、外見の変化よりもシアンが奇妙に感じたのは、微妙に変わった雰囲気だった。
以前は、シアンとの間に距離を置こうとしていたが、その裏には淡い愛情が感じられた。
しかし、目の前の女性からはそのような感情がまったく感じられなかった。
堂々として高慢な微笑み、皇帝さえも見下すかのような権威的な視線。
シアンの記憶の中で居場所を占めていた、悪魔のような女性の面影が重なった。
シアンは何かがおかしいと直感した。
「お父様もまったく、陛下がいらっしゃったら中にお通しするべきではありませんか?」
「私がそんな失礼をしましたか。陛下、中へお入りください。」
ベロニカが微笑んだ。
その冷ややかな微笑みがシアンの胸に疑念をさらに強める。
「陛下、中へどうぞ。ちょうど皇宮の陽光がとても気持ちよく、ティータイムを楽しんでいたところです。」
「・・・」
「陛下がお越しになられたことで、さらに楽しい時間になると思います。」
彼女が本物ではないと気づいた瞬間、シアンの視線が冷たく鋭く変わった。
(お前がなぜここにいる。)
目の前の女性は彼女ではなかった。
本物のベロニカだ。
双子と言われても信じられるほど似ていた外見だったが、微妙な違和感をシアンは見逃さなかった。
夫だったからだ。
感情的に冷たく接したことがあっても、彼女を見つめ続けてきた。
(彼女はどこに?)
シアンの頭の中は混乱していた。
ベロニカがここにいるということは、あの大役を託していた彼女の身辺に何かが起きたということを意味している。
「どうされたのですか、陛下?」
シアンは血の気が引くほど鋭く口を閉ざした。
苛立たしげに彼女の振る舞いを叩き潰したい衝動を抑え、問いただしたかった。
彼女はどこにいるのか、良い言葉で済むうちに連れて来るようにと。
しかし、それが事態をさらに悪化させるだろうことを知っていたため、一旦抑えた。
「関心はない。」
断固として冷たく言い放ったシアンは、皇宮へと歩を進めた。
「それなら仕方ありませんね。どうぞお入りください、陛下。」
ベロニカは、あたかも傷つくことなど気にしないといった態度で、シアンを無視するそぶりを見せた。
そしてフランチェ大公と視線を合わせながら、彼を嘲笑した。
しかし、シアンがその無視を皇帝の気品ある自尊心で打ち消した。
とはいえ、無表情の仮面をかぶり、皇后宮へと向かう途中、突然シアンが体をひねった。
「陛下、どちらへ向かわれるのですか?」
直属の侍女がその行動を問うと、シアンは感情を殺した声で答えた。
「デンを連れて来い。」
「はい?」
「早く!」
感情をあらわにしたことが一度もなかったシアンの反応に驚いた侍女たちは、慌てて動き出した。
シアンは彼女たちに皇宮内でのデンの所在をすぐに確認するよう命じた。
デンなら皇宮の事情を熟知しているはずだった。
(どこにいるにせよ、必ず見つける。だからどうか無事でいてくれ)
シアンは国教であるにもかかわらずガイア教団を信じていなかった。
しかし、この日生まれて初めてガイア女神に切なる祈りを捧げた。
彼女が無事であるように。彼女がいない世界は一度も想像したことがなかった。
ただ彼女が無事であれば、自分の命を代償にしてでもガイア女神に魂を捧げると祈った。
デンが死んだ。
遺体は宮殿の周辺に捨てられるように放置されていた。
帝国の皇帝に対し、越えてはならない線を警告するような行為だった。
シアンは握りしめた拳を無理やり開き、椅子に力なく腰を下ろした。
彼女から一瞬たりとも目を離さなかった。
その犠牲によって計画が漏れたが、最大限の警戒を逃れて計画を続行することができた。
彼女とイアンが脱出に成功すれば、皇妃と皇子の不在による混乱を利用し、大公家が皇宮親衛隊を掌握する計画だった。
この計画は成功に近づいていた。
彼女を説得するだけでよかったはずが、どうしてこんな事態になったのか。
「デイモン卿まで被害に遭ったというのか?」
シアンは密かに皇妃のそばに人を配置していた。
勘が鋭く、対応力に優れ、皇宮親衛隊に所属することが決まっていた騎士デイモンだ。
そのデイモンですら行方不明になった。
焦りが募り、これ以上彼女の安全を保障できない状況だった。
「陛下、リンドン伯爵が拝謁を求めています。」
「入れ。」
執務室の扉が開き、入ってきたリンドン伯爵の表情は厳しかった。
「デイモン卿の遺体が発見されました。」
「なんだと?」
シアンの瞳が揺れる。
最悪の予感が現実となった。
「陛下、私に何を隠されているのでしょうか?デイモン卿は皇妃を警護しておりましたが、深夜に誰かを追跡し、その結果命を落としたのです。」
「追跡だと?デイモン卿は誰を追跡していたのだ?」
「私が聞きたいのはこちらです。騎士を犠牲にしてまで、陛下は一体何を考えておられるのですか?」
「私の質問に先に答えろ。デイモン卿は誰を追跡していたのだ?」
「私にも分かりません。ただ、デイモン卿が皇宮から首都の外郭に至るまで、追跡の痕跡である標識を残した後、消息を絶ちました。」
標識とは、敵を追跡する際に残す痕跡のことだ。騎士団ごとに独自の方式があり、それを知るのは該当する家門の騎士のみだ。
「最後の標識が残されていた場所はどこだ?」
「その質問に答える前に、私もお尋ねしたいことがあります。なぜ私に、皇妃の存在を秘密にされていたのですか?」
「まさか標識が示している方向が、大公家の屋敷ではないだろうな?」
「陛下、私の質問にも先にお答えください。」
リンドン伯爵も一歩も引かずに問い続けた。
ベロニカの会議の結果が失望を招いたとしても、彼はシアンの側に立ち続けた。
亡き皇后セシリアの復権のために。
それは最善の選択だった。
しかし、ある瞬間からシアンの行動には理解できない部分が多くなった。
シアン自身も焦りを感じていた。
このままでは彼女の身辺に異変が起きる可能性があった。
シアンは対応に追われるリンドン伯爵を引き止め、ついに隠しきれないと判断し、真実を語り始めた。
「伯爵が見たベロニカ皇妃は偽物だ。」
「・・・!」
シアンの告白にリンドン伯爵は愕然とした。
大役を掲げる大公家の思い上がった傲慢さに憤り、彼女との間にイアンが生まれた理由も、そしてデンや騎士デイモンの死の理由も理解するに至った。
「なぜ私に隠したのですか!もっと早く正直に言っていただければ、他の方法があったはずではありませんか?」
「彼女を守らなければならなかったからだ。」
セシリアを失い、大公家の復讐に目がくらんだ彼らに対抗するためには、手段を選ばず彼女を利用する以外に方法がなかった。
どうにかして大公家を政治的に抑え込むため、シアンはその策を講じたのだ。
そして彼はそれを阻止しようとしていた。
それならば、大逆を隠すのが最善の選択だった。
「あなたが同意しなくても、今日、皇宮親衛隊を改革する。」
「陛下!」
数年にわたり緻密に準備された計画だ。
満足のいく結果を得るには不十分だとしても、騎士たちを前に進ませる以外なかった。
これにはリンドン伯爵も心を揺さぶられた。
「伯爵が同意しなくても・・・私は今日、計画を進める。そして彼女を安全な場所へ連れ出す。」
シアンは躊躇しなかった。
今からでも彼女を助けたいという強い欲望を押さえ込み、それに集中した。








