こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
328話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 慌ただしいスケジュール③
「先輩のケイトと英語担当者に伝えられていなかったみたい。中で待っているなら確認して、一緒に食事にしましょう。大丈夫?」
「あ、私に気を遣わないでください!ただの人と一緒に過ごしているだけですから。一人で食事を楽しむ方がずっといいんですよ。」
「どうして?」
ルシアの意気揚々とした態度にエレナは微笑みながら、二人はレストランの中へと入った。
スタッフの案内で一階の素晴らしい眺めの部屋に案内されると、整然とした身なりのカリフが迎え入れ、礼儀正しく手を差し出して待っていた。
エレナは微笑みながら、少し困惑した様子で席に着く。
ケイト・クライシスという若い女性が緊張した表情で挨拶をした。
「こんにちは。ケイト・クライシスと申します。」
「Lです。先輩からあなたのことをたくさん聞いていますよ。とても素敵な方だそうで、心もさらに素敵だと。こうしてお会いして、先輩が惹かれた理由が分かります。」
エレナの賛辞に、ケイトは恥ずかしそうに手を振った。
「そ、そんなことありません。Lさんに比べたら、私は足元にも及びません。」
「本当ですか?それにしては飾らずに自然体で、私なんかよりも魅力的ですよ。先輩を大切にしてくださいね?」
エレナは軽く目元をこすりながらカリフを見上げた。
カリフはそのやり取りを微笑みながら見守り、少しも嫌そうな素振りはなかった。
彼の視線は穏やかで、優しさが滲んでいた。
「最後までしっかりと見守りますから。」
「最後までですって?見ましたか?先輩ってこんな方なんですよ。しっかり捕まえておかなきゃ。」
「はい、努力してみます。」
ケイト・クライシスは、最初よりも落ち着いた表情で、カリフに向かってお礼の言葉を述べた。
そして、ついに目線を合わせると、カリフの視線の中に何か強いものを感じ取った。
「先輩、ルシアも一緒に来ましたよ。」
「何だって?でもどうして彼女だけ下に残っているんだ?」
「多分、遠慮してるんだと思います。」
「おい、ルシアは気にする必要ないって言っとけ。早く連れてきて。」
カリリフの言葉に促され、下の階で待っていたルシアもようやく席に着いた。
4人での席では、学術院についての意見や、お互いの立場について楽しく会話が交わされた。
温かい雰囲気の中、みんなの笑顔が広がり、少しずつ距離が縮まっていくようだった。
料理が次々と運ばれ、華やかに進むディナーの中、ケイトが慎重に口を開いた。
「Lさん、実はお礼を言いたいことがあります。」
デザートが運ばれ、エレナが温かいお茶を楽しんでいる間、ケイトは少し緊張した面持ちで話を続けた。
「ドレスの件です。クリスティーナ様から直接頼まれました。」
「頼まれたっていうのは、あなたがやりたいと思ってくれたからですよね?」
ケイトは頷き、笑みを浮かべた。
「でも、先輩はどうして妙なことを言って困惑させるんですか?」
「だって事実じゃないか。クリスティーナ様は忙しいんだろ?新しいドレスの開発、注文、そしてファッションショーで。君が引き受けてくれるなら、頼まれるのも当然だよ。」
ファッションショーが盛況となり、クリスティーナの名声は一気に高まり、絶頂期を迎えていた。
マーメイドドレスは帝国だけでなく、ロイエル王国や北方三国にまで波及し、流行の最前線に立った。
その影響はタ国の王族や貴族たちにも及び、多くの注文が殺到し、クリスティーナは目まぐるしい日々を送っていた。
「食事もありがとう。この人が、Lのサロンで結婚式を挙げるつもりだって・・・。正直、これが一体どんな巡り合わせなのかと思うよ。」
「私にお礼なんて必要ありません。ただ先輩が有能だから、それだけのことです。」
「それでもだよ。」
貴族の一人、ケイト・クライシスの家柄は地方のそれなりの家系に過ぎなかった。
そんな家柄に革命的なデザインを誇るクリスティーナのドレスがもたらされ、しかもサロンで結婚式を挙げるなんて、到底信じられないような出来事だった。
「先輩の助けがなかったら、私はこの場にいなかったと思います。」
「私もちょっとは役に立ったかな。」
カリフが軽い調子でそう答える。
普段なら何か言い返すところだが、彼女はただ微笑みを浮かべるだけだった。
「いつも感謝しています。何をしても足りないくらいです。」
エレナがそう言いながら差し出したポーチを、ケイトは静かに受け取った。
「これ、何ですか?」
「開けてみてください。」
エレナが意味深な笑みを浮かべる。
ケイトは緊張した面持ちでポーチを開けると、中に入っていたものを見て驚愕した。
「え、これ、指輪じゃないですか?」
「工匠コルトンの作品ですよ。」
「えっ、こんなもの・・・どうして・・・あ!まさか、先輩がオーダーしてくれたんですか?」
「うん。Lがどうしてもあげたいって言うから、協力しないわけにはいかなくて。」
感動したケイトをじっと見つめるカリフは、どこか満足そうな表情を浮かべていた。
それは指輪のためではなく、愛する女性が喜んでいる姿を見るだけで幸せだったからだ。
「試してみてください。」
ケイトが少し戸惑いながらカリフを見上げた。
カリフが優しく促すと、彼女は指に指輪をはめてみた。エレナが微笑を浮かべた。
「ぴったりですね。」
「Lにどうやって感謝を伝えればいいのか、分かりません。」
「幸せに暮らしてください。それだけで十分です。」
その言葉には真心が込められていた。
これまでの人生で巡り合った縁が、こうして現世でも結ばれたのではないか。
より深まった縁の糸が、これからも長く続くことを願うばかりだった。
指輪をはめて子どものように喜ぶケイトが言った。
「あ、そういえば、もうすぐLの誕生日だって聞きましたけど?」
エレナが軽く笑いながら彼女を促した。
数日後には彼女の誕生日だ。
両親も北部地方へ行って、静かに誕生日を過ごす予定だという。
しかし、Lの評価とサロンの威信のために、周囲の説得を受けてどうしてもパーティーを開く必要があった。
「必ず行ってお祝いしますね。」
「ありがとう。」
もっと話をしたかったが、次の予定が控えていたエレナは席を立つ。
名残惜しい気持ちもあったが、間もなく誕生日で、来月には結婚式も控えている。
どれも見逃せない機会ばかりだと改めて心に刻んだ。