こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。

330話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 慌ただしいスケジュール⑤
「ここはそのままだね。」
何年かぶりに訪れた学術院の風景にエレナは感慨深く見入った。
振り返ればここで多くの出来事があった。
今日の忙しい一日を振り返ると、過去の思い出が混ざり合い、エレナの心はますます複雑になる。
「すごい、人を見て。誰か学術祭だと思っちゃいそうだよ。」
「さあ、見てみよう、ルシア。」
「はい、お姉さん。私も授業を真剣に聞きます!」
エレナが講堂に上がると、再会した生徒たちが拍手で迎え、喜びと期待に満ちた目でエレナを見つめていた。
学術院の学生たちが選んだロールモデルに挙げられる人物。
神秘的な女性、知識人として、多くの称号が付きまとう話題の女性。
帝国民のために学校を設立し、自らの資金を投じて無償で教育を提供することを惜しまない偉人。
そんなエレナを目の前にして授業を受けられるのは、在学生にとって大きな名誉であり誇りだった。
「遅刻したらどうしようかと思いましたが、時間通りに着けてよかったです。少し息を整えますね。」
エレナは深呼吸をしてから学生たちを見渡した。
「こんにちは、Lです。」
盛大な歓迎の挨拶にエレナは驚きを隠せなかった。
まさかこれほどの歓迎を受けるとは思わず、講堂を埋め尽くす学生たちの姿に少し緊張し、心が高ぶった。
「こんなに熱烈に歓迎していただいて驚きました。少し気が引けますね。私の話が皆さんにとって特別なものになるかどうかはわかりませんが。」
エレナは優雅な話術で講堂内の雰囲気を自分のものにしていった。
その姿は、まるで芸術家がキャンバスに描くような滑らかさと確信に満ちていた。
複雑で難解なテーマを無理に説明するよりも、自然に変化していく時代の流れと結びつけて、分かりやすく解説する。
その結果、学生たちの反応も良く、講義の中は笑顔が絶えなかった。
「私の長々とした話はここまでにしますね。最後に質問を三つだけ受け付けます。そこの前にいる女子学生さん。」
エレナは視線の中に入った、手を挙げて緊張しながらもジャンプしそうな勢いの女子学生を指さした。
「これは個人的な質問ですが、してもよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ。」
エレナが微笑むと、許可を得た女子学生は自信を持ったのか、声に力を込めて話し始めた。
「今、公式に王国とペハイの国交が始まろうとしていますよね?L様はペハイの国交についてどのようにお考えか、ぜひお聞きしたいです。」
「国交、ですか。最初の質問からなかなか敏感なテーマですね。」
エレナの表情には、穏やかな余裕が漂っていた。
遠回しに言ったものの、この質問がエレナとシアンの関係を意識したものであることは明らかだ。
「慎重な質問ですね。国魂というのは国家の象徴そのものです。私が軽々しく論じられるような話題ではありません。それでも、私の意見を求められるなら、答えるべきですよね?」
学生たちの目は好奇心で輝いた。
無礼とも取れる質問に対し、原則的な答えを返すのではなく、エレナが自身の見解を明らかにしたからだ。
エレナは静かに口を開いた。
「アメリア王女様は、その名声に見合うほどに高貴で、品格あふれる方だと聞いています。その美貌だけでなく、賢明で知恵深いとも伺っています。」
話を続けるエレナの目は深みを増していった。
冷静な視線の奥には、過去の経験を振り返るような気配が漂っていた。
「彼女がペハイで執り行っている王冠の責務を少しでも軽くすることができ、」
一瞬、シアンの重い心情が垣間見えた。
「ペハイの困難をほんの少しでも和らげることができるのならば。」
エレナは、これまでシアンを笑顔にさせたことは一度もなかった。
「私はこの国婚を応援したいと思います。」
エレナはこれまで以上に明るい笑みを浮かべた。
彼女は真心からシアンの幸せを願っていた。
再び彼の不幸な人生を繰り返すよりも、少しでもシアンが良い人生を送れるようになるのなら、それだけで満足だった。
たとえシアンがその事実を思い出せなくても、彼の存在そのものがエレナの胸の中に深く刻み込まれていた。
おそらく、その傷はいつか癒えるだろうが、決して消えることのない傷であり、それが彼女の中でさらに深まる方が良いのだと感じていたのだ。
「私の回答はこれで十分だと思います。次の質問に進んでもいいですか?」
「ええ、もちろんです。」
エレナの深みのある答えに感銘を受けた女子学生は、頭を下げて席に戻った。
「次は、二列目の席に座っている男子学生に質問をお願いします。」
「あ、はい。私は最近話題になっている広場の演説についての意見を伺いたいです。」
先ほどの繊細な質問とは異なり、次の質問は少し軽い内容へと移っていった。
今や演説の場となった広場は、シアンの側近であるザカリンの影響下にあり、毎日のように演説者たちが集まって思い思いの主張を繰り広げている。
「私はこれを自然な現象だと考えています。演説は対話の始まりに過ぎません。似た視点を持つなら、ラファエル氏の作品『ヴェルドナ』に通じるものを感じることができます。」
エレナは、自分が感じている時代の変化について説明した。
時代の変化とは、その時代を生きる人々にとって敏感に受け入れざるを得ないものである。
後世の視点ではなく、今の流れを掴むのがいかに難しいかを語った。
「私の答えは少し難しかったかもしれませんね。時間も押してきましたので、最後の質問を受けたいと思います……あれ?」
エレナが会場を見渡していると、彼女の言葉が途切れた。
視線の先には、堂々とした態度で立つ男性が一人。
彼女をじっと見つめていた。
『もう勘弁してよ。こんなところまでついてくるなんて。』
その男性は、先ほどの開校式でも見かけた人物であり、今日すでに二度目の遭遇だ。
偶然ではなく、意図的なものに違いないと思わざるを得なかった。
それが追いかけてきたのだと考えるのが妥当だった。
『はあ…。本当に個性的な性格ね。』
エレナはどう反応すべきか分からず、ついクスリと笑ってしまった。
そのまま流しておこうとしたが、正直なところ、レンの突飛な行動を理解するのは難しかった。
「後ろに座っている学生さん。質問してください。」
「私はサロンについて質問があります。Lさんは何がきっかけでサロンを改装しようと考えたのですか?」
「ふと、そんな思いが浮かんできたんです。首都の文化を変えてみたいと思って。それなら、どこから手をつければいいのか、と。」
エレナは3つ目の質問に答える中で、視線をレンから外すことができなかった。
レンは予測不能な人物であり、時に全く前触れもなくエレナの前に現れることがあった。
以前はあまりにも連絡が途絶えていたため、エレナが手紙を送ったこともあるが、返事は一切来なかった。
ところが今、レンはまるでエレナを追いかけるかのように密かに彼女の行動を見守っている様子だ。
エレナは最後までレンに目を向けるのを避けていたが、もし彼がまた突然いなくなるとすれば、それも厄介だと考えていた。








