ニセモノ皇女の居場所はない

ニセモノ皇女の居場所はない【144話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【ニセモノ皇女の居場所はない】まとめ こんにちは、ピッコです。 「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介と...

 




 

144話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 二度目の対面

「捨てろって言うなら、本当に捨てて降伏したらどうなの?」

「では、その状況で私はどうすれば?剣で銃に、どうやって勝てと?」

「それは向こうが考えることだろ!」

「私は剣士ではなく、神官なのですが……」

フィロメルは、一歩前に出ながら、取っ組み合いを始めた二人を冷めた目で眺めた。

(ああ……面倒くさい)

「……少し、静かにしてもらえる?」

だが、当然のように彼女の姿は見えていない。

二人は、見えないフィロメルの存在に気づくこともなく、口論を続けていた。

「君のせいで声が出たんじゃないか!」

「今のは、明らかにそちらが大声でしたよね!?神殿の外まで響いていたと思いますけど!」

フィロメルは、そっとため息をついた。

(やっぱり……静かに片付けるのは、無理そうだ)

そう悟った瞬間、彼女の中で、次の選択肢が自然と浮かび上がる。

――なら、少しだけ“乱暴”にいこうか。

誰にも聞こえないその独り言とともに、彼女は影の中から、ゆっくりと距離を詰め始めた。

「長いですか?」

「うるさいって。」

「……」

「……」

現在、フィロメルは二人の背後に立ち、銃を構えたまま“心臓”のある場所へ案内させている最中だった。

もちろん、《無知のヴェール》も再びまとっている。

少しでも別の場所へ誘導しようとすれば撃つ。

誰かにフィロメルの存在を知らせようとしても撃つ。

ただ怪しい動きをしただけでも撃つ。

それがフィロメルが決めた、単純なルールだった。

(リボルバーがあって助かった。)

大聖殿で再会したとき、皇帝はフィロメルに自分のリボルバーを手渡していたのだ。

――万が一、試練の場で信徒に絡まれたら、迷わず撃て。後始末は、俺が引き受ける。

……いや、撃っちゃダメですよ。

――ナサールも同じだ。お前に触れようとしたら、撃て。

――だから、ナサールはどうして撃つ前提なんですか!

……だいたい、こんなやり取りが交わされていた気がする。

人を撃つつもりなど、最初からなかった。

それでもフィロメルが銃を携帯していたのは、単純に――「持っていて困るものではない」と判断したからだ。

実際、相手がモンスターであれば、銃よりも鈍器のほうがよほど有効で、引き金を引く必要すらなかった。

(結局のところ……これは“保険”みたいなものね)

そう心の中で結論づけながら、フィロメルは静かに距離を詰める準備を整えた。

この場で銃を使うかどうか――それを決めるのは、まだ少し先の話だった。

……まあ。

(相手が人間なら、話は別だけど。)

銃を向けた瞬間、侵入者と神官はそろって青ざめた。

しかも、フィロメルが手にしているのは、よりにもよって皇帝のリボルバーだ。

重くて、製造費のわりに性能が劣る量産型のリボルバーとは違い、これは軽量で、なおかつ威力も高い。

フィロメルがしばらく何も言わずにいると、神官が落ち着かない様子で口を開いた。

「まさか……少し話をしただけで撃つつもりじゃありませんよね?」

「撃つなってば!」

フィロメルの姿が見えないせいで、二人の恐怖は、限界まで膨れ上がっていた。

――正直、撃ってしまいたい。

フィロメルは、彼らの身体を包み込む闇を見つめ、唇を噛む。

それは、自身の眷属を“汚染”から隔てる、悪神の加護だった。

彼らがこうして比較的安全に生き延びているその裏で、外では数え切れないほどの人間が死んでいる。

イエリスに協力した――この人間たちのせいで。

本来なら、人を無闇に殺してはならない。

その価値観を持つフィロメルでさえ、彼らに対しては、もはや躊躇なく殺意を向けられるほどだった。

――でも、今は殺せない。

侵入者は、この身体の本来の持ち主ではない。

今ここで死ねば、均衡――“亀裂”を塞ぐ手段が失われてしまう。

そして、神官は……。

フィロメルは視線を細め、静かに次の算段を巡らせた。

(使える。……まだ)

殺さず、逃がさず、口を封じる。

それが今、この場で取り得る最善手だった。

彼女の闇が、わずかに濃さを増す。

――狩りは、これからだ。

「勇者様、人を撃ったことはありますか?」

ついに神官が声をかけてきた。

「もし私が撃たれたとしても、それは決して愉快な経験ではありません。まだ話し合いで解決できる段階です。銃を下ろしてください。そもそも勇者が人を傷つける必要があるのでしょうか……」

自分は世界滅亡に加担している立場だというのに、ずいぶんとよく口が回る。

フィロメルは二人に問いかけた。

「なぜ悪神に協力するの?この世界が滅んだら、あなたたちにとっても良いことなんて一つもないでしょう」

神官は肩をすくめて答えた。

「あなたは一部分しか見ていないようですね。あのお方は、今の世界を滅ぼした後に、新しい王国を築くおつもりなのです」

「――それで、その王国で地位を一つ約束されたってわけ?」

「まあ、そんなところだな」

本気でそんな話を信じているのか。

どう見ても、利用しやすい駒を釣るための甘い餌に過ぎない。

ベレロンは、イエリスの目的は“完全な終焉”だと断じていた。

そして今度は、エレンシアが口を開く。

「私はさ、ユーザーの思い通りにならないゲームなんてどうなってもいいの。滅びるなら、それはそれで最高じゃない?」

救いようがない。

自分のことしか見えていない、徹底的に自己中心的な連中だ。

だが皮肉にも、その歪んだ本音は、フィロメルの胸に最後に残っていた、かすかな“良心の外皮”を剥ぎ取った。

「……着いたわ」

その一言とともに、彼女の視線が前方へと向けられる。

もはや迷いはない。

ここから先は――ただの“処理”だ。

そのとき、侵入者が足を止めた。悪神の心臓部に到達したのだ。

彼女は壁を指さした。よく見ると、それは壁に偽装された扉だった。

「イエリスが、この扉の近くには近づくなって言ってた」

フィロメルは、そっと扉に触れてみた。

やはり、びくともしない。

彼女はベルレンに教えられた通り、紅炎の指輪を擦った。

そして、光を放つ指輪を扉へとかざす。

バキッ。

扉に亀裂が走り、やがて完全に砕け散った。

「イエリス様の権能が、こんなにも簡単に……!」

神官の顔が、驚愕に染まった。

どうせフィロメルをここまで連れて来たところで、扉が開くことはない――そう高を括っていたのだろう。

「い、イエリス様!」

「黙れ」

「くっ!」

フィロメルは声を張り上げて悪神を呼ぼうとした神官の喉元に、銃口を押し当てた。

「中に入れ」

「し、失礼します……。どんな目に遭うか分かりませんが……」

――トン。

フィロメルは力任せに神官を、すでに壊れかけた扉の内側へと突き飛ばした。

「ぎゃああっ!」

扉の向こうから、無様な悲鳴が響いた。

もう、躊躇はない。

ここは安全地帯ではない。

最初から――敵の懐だったのだから。

やがて、耳をつんざくような悲鳴が部屋の中に響き渡った。

待ち構えていたかのように、小型のモンスターが数体、彼らに襲いかかったのだ。

「い、イエリス様……」

探しに行ったところで、信徒が信じる神が来ることはない。

悪神は、ベルレオンを相手にするだけで手一杯だった。

この時点ではフィロメルも知らなかった事情だが、悪神は太陽神の件だけでなく、別の問題にも頭を悩ませていた。

邪魔になることを恐れ、自分の本拠地に閉じ込めておいた、ある一人の人間のせいだった。

その人間は、現在イエリスが封印されている岩の上で、楽しげに制限を振るっている最中だった。

それほどまでに悪神の本体が致命的な打撃を受けたわけではなかったが、神経を逆なでするには十分すぎるほど、相当に。

「……出るだけ、出たか」

フィロメルは、これ以上新たなモンスターが現れないことを確認すると、無言で棍棒を振るった。

ドン!ドン!ドン!ドン!

モンスターたちはすべて、素材へと変わり消えていく。

だが――神官は、すでに息絶えていた。

「さあ、お前も来い……」

侵入者のほうを振り返りかけたフィロメルの言葉は、途中で止まった。

神官がモンスターに襲われた瞬間から、悲鳴を上げ続けていた侵入者は、無惨な死体を目の当たりにした途端、力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。

――気絶、だ。

「……これが、普通の反応なのか……?」

フィロメルは倒れた侵入者を見下ろし、ほんのわずかに眉をひそめた。

彼女にとっては、もはや“慣れた光景”でしかなかったのだから。

フィロメルにとっても目を背けたくなる光景ではあったが、正気を失うほどの衝撃ではなかった。

もしかすると、「前世」まで遡って、あまりにも多くの死を見てきたせいかもしれない。

口の中に、わずかな苦みが広がる。

「まあ、いいか」

むしろ好都合だった。

気絶してくれているおかげで、フィロメルがやるべきことをしている間に、侵入者が逃げ出す心配はなくなったのだから。

フィロメルは、侵入者の体をその場に寝かせておくことにした。

どうせこの近辺に人の気配はない。

(どうやら、重要人物しか近づけない場所らしい)

フィロメルはそんな思考を巡らせながら、部屋の奥へと足を進めた。

一歩、また一歩――慎重に。

闇に目が慣れてくるにつれ、部屋の中に置かれた“それ”の輪郭が浮かび上がる。

最奥に鎮座する物体。

「……あれが、心臓……」

本物の心臓によく似たそれは、どくん、どくんと脈打っていた。

両腕を広げれば抱え込めるほどの大きさで、ずっしりとした存在感を放っている。

心臓を目前にして、フィロメルは深く息を吸った。

「……ふぅ」

そっと手を伸ばし、袋の中へ。

触れた瞬間、ぬめりのない、妙に滑らかな感触が掌に伝わった。

まるで――“生きている”ことを、拒否するかのように。

やがて、フィロメルの視界に通知ウィンドウが表示された。

【つながる想い(ナサール)】

説明:ナサールルートをクリアした際に得られる報酬。愛する者とのつながった想いが、あなたを守る。

ベルレオンとの会話が終わったあと、通知が一瞬だけ現れたので確認してみると、どうやらこれが付与されていたらしい。

ハートの形をした、可愛らしい宝石。

「守ってくれる」とは書いてあるものの、はっきりとした特別な効果があるようには見えなかった。

「……あったかい」

そう感じるだけだった。

それでも、触れていると不思議と心が落ち着いた。

まるで――ナサールが、すぐ傍にいてくれるかのような感覚。

「ナサール……私に、勇気をちょうだい」

フィロメルは棍棒とリボルバーを床に置き、背負い袋からバルバドの剣を取り出した。

闇の中で、剣身がかすかな光を帯びる。

彼女は、剣を高く振り上げる。

「――えいっ!」

そして、渾身の力を込めて、心臓へと振り下ろした。

刃は驚くほど素直に食い込んだ。

まるで――この瞬間のためだけに、用意されていたかのように。

そして、その瞬間。

「――あああああっ!」

不快な悲鳴が「茎(つる)」を満たした。

まるで「茎」そのものが叫んでいるかのような悲鳴だった。

『やはり一度ではダメか』

心臓には深い裂け目が入っていたが、まだ比較的持ちこたえていた。

ベルレオンは、心臓が完全に破壊されるまで刺し続けなければならないと教えてくれた。

ズブッ!ズブッ!ズブッ!

「消えろ!消えろ!」

「茎」が苦しそうにうねり、もがいた。

フィロメルは一瞬の迷いもなく心臓を刺し続けた。

イエリスが来る前に、終わらせなければならない。

――その時だった。

突然、喉元が締めつけられるような感覚が、彼女を襲った。

「……君だったか、フィロメル」

その声は、壊れた扉の向こうから響いた。

フィロメルは、びくりと肩を震わせて振り返る。

そこに立っていたのは――気を失っていたはずの“侵入者”。

いや、違う。侵入者ではない。

フィロメルには、もう分かっていた。――これが、二度目の“対面”なのだと。

「…………イエリス」

「そうだ。ベルレオンの奴が、無駄に力を浪費していたわけじゃなかった」

悪神は、エレンシアの身体にも“意識”を宿していた。

その事実が、静かに――そして確実に、彼女の背筋を凍らせる。

 



 

 

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