こんにちは、ピッコです。
「死んでくれと言われて」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
53話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 証人②
「……この命にかけて誓います。私は、ヤナお嬢様の物には一切手を触れておりません!」
「おじいさま」
リンはそれ以上メディナに言葉をかけることなく、背後にいる大公と視線を合わせた。
胸の奥はまだチクリと痛んでいたが、その痛みを押し殺して、予定していた通りの言葉を紡いだ。
「……この人と話すのはもうやめたいです。はっきりさせたいので。以前、私の物を盗んだレイやルーセン先生も、最後の最後まで言い逃れをしていました。」
大家主は沈んだ顔でリンの頭を撫でた。
「……そうか、ヤナ。お前の気持ちもよくわかる。」
「学術院へ発つ日に、私はオルガに『私の部屋には誰も入れないでほしい』と頼んでいました。だからこの二日間、部屋を掃除していたのはオルガだけです。もし首飾りを盗んだ犯人がいるとしたら、オルガかメディナのどちらかに違いありません。ですから、二人の部屋と持ち物を重点的に調べてください。」
「そうだな……ユリク卿?悪いが、この件はお前に任せる。」
「はい、承知しました。」
リンは、この調査の結末をすでに理解していた。
失われた首飾りは、間もなくメディナの前に、前日にオルガと綿密に計画していたことが――ついに発見される瞬間だった。
『お嬢様?このネックレスは……なぜ私に?』
『方法は問わないわ。あの侍女の前掛けか上着に、これをうまく滑り込ませて。今日中に必ず洗濯場に回るようにしておいて。それから、洗濯場に行って――この宝石をその服の中、いちばん奥まったところに隠しておくの』
『えっ、ええっ!?でも、そんなことしてるのが見つかったらどうするんですか!?』
『心配いらないわ。今日みたいな日は、誰もあなたなんて疑いやしないから』
みんな火事の件で手一杯。
その隙を突けば、洗濯物のチェックもおろそかになる――そう読んでの計画だった。
キャレンは、その後の“処理”も自分の手でやるつもりでいた。
だから本来なら、この件は誰も気にも留めなかっただろう。
「うっかり宝飾品ベルルムトを発見するふりをして失敗した」程度で済む話だったのだから。
(つまり、一言で言えば不注意だったということだ。)
だからこそ、リンがすでに反撃の策を用意していたとは、誰も予想すらしなかった。
机の引き出しに宝石を隠しておくような稚拙な手法で――。
だが、それがいかに稚拙であろうと問題ではなかった。
大事なのは、リンがこのような事態を「何度も」経験してきた、という事実だったのだ。
ユリクが席を外したその隙に、沈黙していたキャロンが急に声を張り上げ、メディナを責め立てた。
「失望したぞ、メディナ。」
「……え?」
「お前を信じてしばらく家中の仕事を任せてきたというのに。だが、ヤナがこれほど強くお前を犯人だと指摘する以上、私もまた疑わざるを得まい。」
――やっぱり、自白させるしかないのね。事が大きくなる前に……!
唯一の協力者だったキャレンの裏切りは、不安に駆られていたメディナを完全に追い詰めるには十分だった。
「第二夫人……!ど、どうして……!?私は、第二夫人のためにどれだけ……!」
「ふん。ヤナ!」
ロマンが大きな声で割り込み、メディナの必死の訴えを遮った。
「お前がそこまで言うなら、この奥方もお前の言葉を信じてやるさ。証拠がなかったとしても、お前のためにあの侍女を不名誉な形で追放するくらいはね」
――これは、まさに“尻尾切り”だ。
『……結局、尻尾だけ切って済ませるつもり?』
リンは、静かに眉をひそめた。
「お言葉はありがたいです、叔母様。ですが、私が望むのはこの侍女を罰することではなく、祖父が贈ってくださった大切な首飾りを見つけることなんです。」
深く息を吐いた大家主は、もう一度リンの頭を撫でた。
リンがたった一つの首飾りをそこまで大切にすることが気にかかったのか、それとも透けて見えるほど率直な言葉にいちいち応じてしまうことが気にかかったのかは分からない。
そのときになって、リンは自分の胸の奥が妙にざわついていた理由を悟った。
(……大家主は、私を子どものように本気で可愛がり、信じてくれているんだ。)
だからこそ、大家主を利用するような形になってしまうのが、心苦しかったのだ。
その愛情を縛りつけ、利用してしまっているのだから。
しばらくして――廊下の向こうから、慌ただしい足音が聞こえてきた。
――やっぱり、オルガが見つけたってすぐわかるわね。
「お嬢様、ヤナお嬢様!ユリック卿が首飾りを見つけました!洗濯物用の籠に入っていたメディナの前掛けのポケットに隠されていたそうです!紐は抜かれていて、宝石だけが!」
大騒ぎになった。
「そ、そんなはずがありません!これは罠です!誰かが私を陥れようとしているんです!」
これまでの経緯を面白がるように見守っていたフレンヒルディが、キャレンを見てにやりと笑った。
「お粗末ね。調査を受ける可能性があるのに、洗濯に出す予定の前掛けに隠すなんて?これは明らかに計画的で卑劣な犯行よ。……私も今夜、自分の持ち物を念のため確認しておいたほうがよさそうね。もしかしたら、キャレン夫人付きの侍女が盗っているかもしれないし!」
フレンヒルディ、お願いだから表情を抑えて……)
もし気のせいでなければ、この場で一番楽しんでいるのはリン本人ではなく、フレンヒルディのように見えた。
やがて到着したユリクが、手にしていた物を差し出した。
「前庭で発見された宝石です。ヤナお嬢様、探しておられたものに間違いありませんか?」
大きな手のひらの上に、左右対称の円形ダイヤが現れた瞬間――
「そう、それよ!本当にありがとう!」
リンは安堵の笑みを浮かべながら、その宝石を受け取った。
「そ、それは……!」
死人のように青ざめていたメディナの顔に、かすかな血色が戻った。
「それは、昨日ヤナお嬢様が身につけていらした首飾りです!昨日、お嬢様の部屋を訪ねたとき、確かにあの首飾りが、お嬢様の首にかかっているのをこの目で見たんです!」
「……なんだと?」
同時に、これまで沈んでいたロマンの顔にも血の気が戻ってきた。
「それは本当のことなのか?」
「本当です!信じてください!一緒にいた使用人たちに聞いてくだされば、きっと――きっと証言してくれます!」
「ふむ……父上?念のため、私が使用人たちを呼んできましょうか」
だが、ロマンの命令で呼び集められた使用人たちは、そろって怯えた表情で立ち尽くしていた。
「そ、その……昨日ヤナお嬢様がどんな首飾りをしていらしたか……ちょっと思い出せません」
「わ、私も……同じです……」
当然の結果だった。
(たかが十数年しか生きていない侍女ごときが、お嬢様の首飾りを日ごとに確認できるはずがない。)
ロマンの表情が再び硬くなったとき、顔をこわばらせたメディナがその前にひざまずき、必死に訴えた。
「お、二番目の奥様!どうか私の主人にもお慈悲をお与えください!その方もこの場にいらっしゃいました!」
「ふむ。だがそれでも、お前の主人は……」
そのとき、ユリクが爽やかな笑みを浮かべて手を挙げた。
「それならば、私も証言できましょう。あの二日間、私は城の外でヤナお嬢様を護衛しておりました。ですので、私に証言を任せていただいたほうがよろしいのでは?」
「……」
「あっ!私のことは気になさらないんですか?それなら、レテ侯爵にご確認いただいてはいかがでしょう! あの方は一度見た人の印象を絶対に忘れない方ですから!」
皆の視線が、一斉にジハードへと向けられた。
リンは内心ほっと息をつく。
ジハードなら、きっと自分の策に乗ってくれると踏んでいたのだ。
なぜかって?……それは――
「わざわざチェフ様のところに行く必要もない。昨日ヤナがつけていた首飾りは、この宝石じゃなかったからな」
――彼は、そういう人物なのだ。
こういう場面でビシッと決めるタイプ。
一瞬の沈黙のあと、ざわ……と小さなざわめきが広がった。
『ああ……やっぱり、ジ、ジハード様……本当に……!』
ジハードが一切瞬きもせず嘘を証言すると、メディナは絶望的な叫びを上げた。
「ち、違います!侯爵様は必ずやご覧になっていたはずです!昨日ヤナお嬢様が身につけておられた首飾りを、私のこの目で確かに……!」
「つまり――私が嘘をついていると言いたいのか?」
「……」
「もう一度言ってみろ。昨日ヤナがつけていたのは、この首飾りではなかった、と。」
反論は受け付けないという確固たる表情。
(分からないでもなく、否定するでもなく……)
まるで何を言っても通じない、冷酷な権力そのものだった。
そして――その“あの人”にそっくりなところが、またたまらなく……。
『……サ、サブとそっくりじゃない!』
――ドクンッ。
「う、心臓が……!」
まさか、自分……本当にサブと一緒に生きていかなきゃいけない運命なの?
胸の奥で、昔の記憶が鮮明に甦る。
――保育園時代、まるで悪魔のように彼女を振り回した、あの忌まわしい日々。
他人の苦痛を心からの幸せと勘違いしていた悪魔。
お菓子を「もう食べられない」と泣きながら大騒ぎするたび、満足そうに笑っていた悪魔。
実戦訓練のたびに、力を根こそぎ吸い取っていった、あの恐ろしい悪魔――。
まさか、そんな日々がまた戻ってくるなんて……!?
『……とにかく。知らないフリをしよう。それしか……生き残る術はない……!』
リンは真っ青な顔で胸を押さえた。
その様子に気づいた大公は、心配そうに彼女を見守りながら、静かに眉をひそめた。
「ヤナ、大丈夫か? 顔色がこんなに悪いとは……。いけないな、寝室へ戻ろう。」
「大丈夫です、お祖父様。ただ、あまりにも安心して……」
その瞬間。
――パシンッ!
鋭い平手打ちの音が響き、皆の視線が一斉に一点に集まった。
「主人に仕える身でありながら、よくも主の持ち物を盗むとは!恩を仇で返すつもりか!」
キャレンに頬を打たれたのだろう、メディナの顔が右側へ大きくねじれた。
怒りに震える手で頬を押さえながら、メディナは血を吐くように叫んだ。
「仇?仇ですって!?私は無実です!むしろ第二夫人の…… う、うぐっ!」
「お前の弁解など、もう聞き飽きた。こいつを地下牢へ連れて行け。私の目の前から今すぐ消せ!」
「んぐっ、んうぅっ!」
メリディは口を塞がれたまま、ずるずると引きずられていった。
その姿を最後に、ぱたりと幕が下りる。
――実際のところ、十代半ばの少女ヤナにすべての罪を押し付けるなんて、まるで使い捨てのゴミにするようなものだ。
彼女が知らぬまま利用されただけ、というわけでもない。
レイをはじめとする一部の侍女たちは、第二公爵夫妻の“お気に入り”になることで、一定額の謝礼を得てきたのだ。
今回ヤナを犯人に仕立て上げたのが初めてだったか?
――いや、断じてそんなはずはない。
「このような騒ぎを起こしてしまい、申し訳ありません、公爵様。あなたにも本当に面目がありません、ヤナ。」
キャレンは落ち着き払った態度で、自らの非を大人らしく認め、さらに従者であるヤナへと頭を下げてみせた。
それは、罪をなすりつけられた少女への、皮肉な“謝罪”でもあった。
誠意は示された。
少なくとも、表向きはそうだ。
「この侍女は、宿母が厳しく叱って追い出せ。そして二度とこんなことが起こらぬように……」
どんな言葉でごまかすつもりなのか。
リンはキャロンの必死な謝罪を、短刀のように断ち切った。
「正直に申し上げます、叔母様。これが二度も起こった以上、私はもはやキャロン叔母様を信じることはできません。たとえ偶然だと言い張ろうとも、私の持ち物に手を出したのは叔母様の侍女たちなのですから。」
「……」
「その通りだ、ヤナ!一度目はともかく、二度目からは偶然などとは言えまい。」
神に誓って言うフレンヒルディの言葉もまた正しかった。
――これは初めてのことではないのだから。
その事実だけで、リンの不安と心配には、それなりの説得力が生まれた。
キャレンは必死に平静を保とうと唇を噛みしめたが、表情をうかがううちにようやく、リンの真意を察したようだった。
――メディナを切り捨てて終わる話ではない、ということを。
「でも、私は叔母様と家族なんです。大切な家族だからこそ、少し時間をかけてでも信頼を取り戻したい。外の問題で忙しいおじい様に、こんなことで余計な心配をかけたくないんです……」
「……そう言ってくれて、ありがとう、ヤナ。この叔母も、お前との信頼を失いたくはない。長年、お前を我が子のように育ててきたのだから……」
「ですから、叔母様のそばに置いている侍女たちを、すべてこちらに引き渡してください」
「……」
「間違いを犯したのは叔母様の侍女たちであって、叔母様ご自身ではありませんよね?私はその程度で十分です。」
リンは青い瞳にわずかな震えを宿しながらも、冷ややかな微笑みで応じた。
そう、これこそがリンの用意した策だった。
キャロンの手足を根こそぎ断ち切ること。
すなわち、長年かけて慎重に築かれてきたキャロンの領域を、内側から少しずつ崩していくこと。
今のリンは、ただ別館から本館へ居場所を移したに過ぎず、まだ部屋の中に小さな影響すら持っていなかった。
だからこそ、影響力を及ぼせる範囲から、一歩ずつ広げていかなければならなかったのだ。
小さな寝室から始め、次は最も身近な侍女オルガの周辺、その次は本館、さらにその次は……。
「心が広いな。私なら、自分の物に手を出した者はたとえ侍女であっても、当人はもちろん、その主人までも追及していただろう。」
「あの、ジハード様。取り消しだなんて、そんな……!ヤナは家を継ぐべき人なんですよ!」
突然の発言にキャレンは戸惑いと怒りをこらえ、ようやく口を開いた。
「あなたの……不安な気持ちも理解できなくはないけれど……他の侍女たちは罪を犯したわけではないでしょう? 理由もなく退職を強要するなんて、彼女たちにとってはあまりにも酷なことよ。主として、多少の情けをかけてやってもいいのではないか、ヤナ?」
――罪のない侍女を理不尽に解雇?
『その“理不尽な処遇”を繰り返してきた張本人が誰だと思ってるのよ?』
もしオルガがここにいたら、鼻で笑っていたに違いない。
代わりに、その場にいたフレンヒルディが大きく鼻で笑った。
「理不尽な解雇を避けるだけの話じゃないですか? 推薦状さえあれば、どこへでもすぐに職は見つかるでしょう。まあ、彼らにしても、毎日ヤナに疑われたり監視されたりするのは居心地が悪いでしょう。だからこそ、ヤナの頼みを聞き入れてあげてはどうですか、叔母様。たかが侍女数人を追い出すだけのことを、大事にせず済ませるなんて……どれほど優しい子でしょう?」
いつものように、フレンヒルディが口を開くより早く、ロマンが口を挟んだ。
「お前は何も分かっていない!馬鹿なら黙っていろ!罪を犯して主人の物を狙った侍女たちを、憐れんで庇うなどもってのほかだ……」
「ロマン!」
たまらず、フレンヒルディの前に立ちはだかった大家主が、彼を指差し、声を荒らげた。
「子どもの前で何度叫ぶつもりだ!大人であるなら、甥のフレンヒルディを庇い立てするのはやめろ!『教えてやる』などと恩着せがましい態度は見苦しいわ!」
当主が秤を掌握していたからだろうか。
ロマンは怒りを必死に抑え、唇をきつく結んだまま、反論の一言も返せなかった。
リンは、そんな彼のぎこちない忍耐に思わず心を打たれた。
『もしロマンがもう少しだけ慎重で冷静だったなら……ツスレナの後継者の座は、とっくに彼のものになっていたはずよ。』
彼女は、敬意を抱くロマンがこの先も変わらずにいてくれることを願った。
二人の男性の間に立つフレンヒルディは、まごついた視線を交わした。
まさか当主が自分のためにロマンをたしなめるなど、夢にも思わなかった――そんな表情だった。
その姿がなぜかリンの胸をざわつかせ、彼女はフレンヒルディの手を引き寄せ、自分のそばに立たせた。
「キャレン、ヤナの要望に従いなさい。」
普段なら理解を示すふりをしてやり過ごしたキャロンも、今日ばかりは十数回に及ぶ叱責に耐えきれなかった。
「ですが、お父様!キャロンは本館の内務を任されているのです。長年仕えてきた侍女たちを、一夜にして全員追い出すなど……」
「うるさい!責任を負えば大したものだと思うのか!いつまでそんな口実で私を欺き、好き勝手に振る舞うつもりだ!」
「……お父様。」
「これは大家主としての命令だ。今回の件は、キャロンの侍女を全員追い出すことで決着をつける。そしてロマン、改めて言っておくが、二度と甥たちに声を荒げるな。わかったか?」
「……はい。」
ロマンとキャロンは、言葉を失ったまま沈黙するしかなかった。
当主は冷ややかな目つきで、第二分家の夫妻をしばらく見据えていたが、やがて柔らかい表情に戻り、リンとフレンヒルディへと向き直った。
「予定よりかなり遅くなってしまったな。さあ、中へ入ろうじゃないか。ヤナ、体の具合が良いようなら、お前も一緒に来なさい。皇帝陛下に献上する宝物を拝見しよう。フレンヒルディ、お前もだ。」
「はい、おじいさま。」
「……あ、はい。」
扉を開ける直前、当主はほんの一瞬リンと視線を交わした。
その優しい眼差しと短い沈黙は、まるで「フレンヒルディを頼んだぞ」とリンに託すようだった。
『……まったく。本来なら、こういうときは年長者であるフレンヒルディにヤナを頼むべきじゃないの?』
それでも、責任を担おうとする大家主の態度は、まったく不快ではなかった。
少なくとも、彼は変わろうとしているのではないか。
「ツスレナ」の現大家主がロマンだけではないという事実だけでも、安堵の息がもれた。
皇帝が下賜したという宝物は、期待していたほど大したものではなかった。
せいぜい「売れば大金になるかもしれない」程度の品であり、実際、大家主の反応もその程度だった。
ジハードがわざわざリンを連れて来なかった理由も理解できた。
「お姉様、まだ見るの?大半はガラクタで、じっと眺めているほど面白いものでもないのに。」
リンの問いに、フレンヒルディは疲れを滲ませたため息をついた。
「これは“拝見する”という名目で授業の一環として見学するんだよ。こういう機会はそう何度もないんだから、あんたも事前に把握しておきなさい。」
――どれだけ勉強が嫌いなんだか。
『まあ、私も子どもの頃はそうだったけど。』
リンは最終的に一人で自室へ戻った。
チェフのところへ行こうかとも思ったが……行動に移す前に、うとうとと眠りに落ちてしまった。







