こんにちは、ピッコです。
「言葉遣いには気をつけてください、聖女様!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
24話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 忍び寄る陰謀
闇に包まれた地下牢。
ハンバル神殿の神殿長・ハンバルは、荒い息を吐き散らしていた。
『くそっ、もう何日目だ……!』
神殿の悪事が明るみに出たあの日、逃亡を図った彼はその場で皇宮近衛隊に拘束され、そのまま冷たい牢獄へ放り込まれたのだった。
――薬は自分で作ったのか?
――隠した資金の処在はどこだ?
――背後に黒幕は存在するのか?
過酷な取調べに黙秘を貫くことには、もう慣れてしまっていた。
だが、彼にとって最も耐えがたいのは、時折訪れる皇太子との面会時間だった。
血の通わない冷淡な表情と、感情を完全に押し殺した深い緑色の瞳。それらに射抜かれるたび、背筋に悪寒が走った。
―「お前も、ずいぶん長く持ちこたえているな」
―「――だが、それはまったく無意味な悪あがきだ」
氷のように冷ややかな声は、人のものとは思えないほど不気味に響いた。思い出すだけで鳥肌が立ち、ハンバルは震える両腕を固くさすった。
一日も早く、この地獄のような場所から抜け出したかった。
『あのお方は、一体いつになったら動いてくださるんだ……』
まさか、このまま自分を見捨てるつもりではないだろうか。いっそすべてを白状し、減刑を願い出たほうが賢明なのか。
葛藤に苛まれていたその時だった。
鉄格子の向こう側の暗がりに、すっと誰かの影が落ちた。
「あなたは……!」
その姿を確認したハンバルの顔に、歓喜の色が浮かぶ。
「お方があなた様を遣わしてくださったのですか!? ついに私をここから出していただけるのですね!?」
しかし、相手は何も答えず、ただ静かに「こちらへ来い」と手招きした。
ハンバルが縋るように格子ギリギリまで寄った、次の瞬間――
「ぐっ……!? こ、これは、一体……っ!」
影は鉄格子の隙間から素早く腕を伸ばすと、ハンバルの顎を強烈な力で固定し、喉の奥へ何かを力任せに押し込んだ。
『こんな方法で、俺を始末するつもりか……!?』
ハンバルは半狂乱になって激しく抵抗し、影の手首に必死で噛みついた。
だが、まったく効果はなかった。相手は痛みなど一切感じていないかのように、眉ひとつ動かさない。
ほどなくして、ハンバルの体からガクリと力が抜けた。
影は用済みと言わんばかりに彼を床へ乱暴に放り投げると、冷ややかに背を向けた。
周囲に異常がないか確認したその人物は、物音を立てずに牢の闇から抜け出出すと、羊皮紙の破片に素早く文字を書き走らせた。
≪処理完了≫
やがて、暗い夜空へ向かって一羽の黒い鳥が翼を広げて飛び立っていった。
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「犯人が……殺されたのですか?」
「はい。昨夜、牢獄の中で遺体となって発見されました」
神殿の事件から数日後。
久しぶりに再会したヒルデオンは、あまりにも衝撃的な知らせを携えてやってきたのだった。
ハンバル神殿の神殿長が、厳重な獄中で殺害されたという。
『これは……とんでもない事件の匂いがするわね』
重要容疑者が拘留中に獄中で消される――それが意味するものは一つしかない。
証拠隠滅、そして背後に潜む大物の存在を揉み消すための口封じだ。
「誰かが口封じのために刺客を放ったのでしょうか?」
「私たちも、その可能性が極めて高いと見ています」
ヒルデオンは重々しく頷いた。
「それだけではありません。資金の流れにも不自然な点が多々ありますし、何より……あの奇妙な薬が気になります」
「そうですね。私もあんな毒薬は見たことがありません」
原作の知識にさえ登場しない代物だった。
「強烈な幻覚を見せ、肉体の痛みすら感じなくさせる薬だなんて……」
単なる裏設定として片付けるには、あまりにも設定が重すぎる。
なぜ原作で語られなかったのだろうか。
「ですが、市中に広まる前に水際で押さえ込めて、本当によかったです」
「ええ。あんなものが帝国中に撒き散らされていたらと思うと……」
想像しただけでゾッとする。
これでは恋愛ファンタジーではなく、ゾンビものになってしまう。そんなジャンル変更は金輪際ご免だ。
「すべては聖女様のおかげです」
「いえいえ、一番大変だったのは殿下ですよ」
「そんなことはありません。聖女様のお力添えが本当に大きかった。そのため、殿下から聖女様へ贈り物を賜ることになりました」
「殿下から、私に贈り物……!?」
思わず飛び上がりそうになったが、どうにか踏みとどまった。
『あまり大喜びすると、がめつい女だと思われるかもしれないわ。ご祝儀だって、一度くらいは遠慮するのがマナーだしね』
「い、いえ、そのような見返りを求めてやったわけでは……」
「大きな功績を立てられたのですから、相応の報酬を受け取るのは当然のことです」
「……それでしたら、ありがたく頂戴いたします」
遠慮するのは一度だけで十分だ。二度も断って「では無しで」となれば目も当てられない。
『皇室からの贈り物だなんて、一体どれほどすごいものがもらえるのかしら……!』
期待で胸が高鳴る一方で、頭をよぎる疑問もあった。
「ですが、私の証言は必要ないのですか?」
私は当然、取調べのために皇宮へ召喚されるものだと思っていた。
だが予想に反して呼び出しはなく、事件の真相が公になった後はあちこちの貴族から届く招待状の対応に追われるばかりだったのだ。
「それは……ご負担になると思い、お呼びしませんでした」
「そんな理由で……? 私の方こそ感謝していますが、本当にそれでよろしいのですか?」
「……どうせ、これからも私とずっと一緒に行動することになりますから」
「あ」と納得がいった。確かにその通りだ。
「そういえば、あの日は一日中、殿下と手を繋いでいましたものね」
まるで一心同体のように終始一緒に行動していたのだ。視界を含めあらゆる状況を共有していたのだから、改めて証人を立てる必要もなかったのだろう。
『神託のことも、あの日に全部話していたっけ……』
わざわざ出頭して証言する必要など最初からなかったのだ。
『やっぱり、ヒルデオンは本当に気が回るわね』
ここまで細やかに配慮してくれる人なんて、滅多にいるものではない。
デモスのような男が原作の男性主人公だったなんて、未だに信じられなかった。さすがはご都合主義の乙女小説である。
「お心遣い、ありがとうございます」
「大したことではありません」
和やかな感謝の言葉が交わされた。
『さて、そろそろ本題かしら』
今日の面会は事件の報告だけでなく、本来の目的があった。
「それでは、例の契約についてもお話ししましょうか」
正式に噴水広場の契約を結ぶ件だ。私が切り出すと、彼は頷いて懐から書類を取り出した。
「ちょうど契約書もお持ちしました。ご確認ください」
受け取った契約書にじっくりと目を通す。
『うん、完璧ね』
ヒルデオンは噴水を建設するための第一等地の土地を提供し、私は「聖女」としての象徴性を活かして、皇室が推進する商業開発地区に噴水を設置する。これによって双方に絶大な宣伝効果と象徴的価値が生まれる手筈だ。内容に何一つ落ち度はなかった。
「確認いたしました。この内容で進めましょう」
にっこりと微笑み、あらかじめ用意していた印鑑を取り出す。あとは署名捺印するだけだ。
だが、印を捺すまさにその直前――
「少々お待ちください。その前に……」
ヒルデオンが真剣な表情で口を開いた。
『……何、この嫌な前置き』
まさか、あの話を持ち出すつもりじゃ……。
嫌な予感というものは、悲しいかな大抵当たるものだ。
「皇太子としてではなく、一人の人間として、聖女様にお願いしたいことがあります」
『……どうりで今日は妙に運が良いと思ったわ』
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「……集中できていませんね?」
ぼんやりと教科書を見つめていた私は、目の前から聞こえた声にビクッと肩を跳ねさせた。
顔を上げると、家庭教師の先生が私をじっと見つめていた。どうやら、完全に上の空だったことを見抜かれてしまったらしい。
「すみません……」
「いえ。最近はずいぶん暑くなりましたからね」
どうやら暑さのせいでぼーっとしているのだと解釈してくれたらしい。
『むしろ、その方がどれだけ気が楽だったか……』
集中できない理由は別にある。
数日前、ヒルデオンと会った際に彼が最後に切り出した話だ。自分にかけられた呪いについて明かした彼は、切実な眼差しで私に懇願したのだ。
―『どうか、この呪いを解く手助けをしてください』
―『……今すぐお返事するのは難しいです』
―『構いません。お返事は待ちます』
―『あの、本日予定していた契約も延期になりますか……?』
―『いいえ。それとこれとは別の話です。仮に私のお願いを断られたとしても、あなたに不利益が及ぶことは絶対にありません。ただ……ひとつだけ、秘密にしていただきたいのです。私を見守っていてくだされば、それで十分です』
『もう……本当にお人好しなんだから!』
あんな言い方をされては、冷たく突き放すことなどできるはずもない。
とはいえ、安請け合いもできなかった。本物の聖女ではない私にできることといえば、せいぜい聖水で彼の苦しみを和らげることくらいなのだから。
『まったく、困った人……』
私はぎこちなく笑って誤魔化し、窓の外へ視線を向けた。
澄み渡る夏空には雲ひとつない。照りつける日差しは眩しいほどに強力だ。
先生の言う通り、うだるような暑さであることは間違いなかった。
室内で魔法石の冷気があるから保てているものの、一歩外へ出れば蒸し風呂のような熱気が立ち込めているはずだ。
「今年は特に暑さが厳しいようですね。いろいろと心配です」
「何が一番心配なのですか?」
「やはり民たちでしょうね。貴族や裕福な層は魔導具で室温を調整できますが、一般の民は……」
「この猛暑をそのまま耐えしのぐしかないのですね」
前世の自分の暮らしを思い出して、胸がキュッと締め付けられた。
私が暮らしていた劣悪なアパートのワンルームには、エアコンなんて高価なものはなかった。気温が上がるにつれ、狭い部屋はまさに煮えたぎる鍋の中のようだった。
暑さで眠れない夜、公園のベンチで朝まで過ごし、そのまま出勤したことすらある。貧しい者にとって、猛暑も極寒も文字通り命に関わる問題なのだ。
『ミッションに追われて最悪の人生だと思っていたけれど……』
今にして思えば、どんな状況であれ前世よりはマシなのかもしれない。あの頃の私は、あまりにも空腹で、貧しく、そして孤独だったのだから。
「この暑さですと、噴水の完成式典も心配ですね。屋外で行う予定でしょうし」
「そうですね……このままでは熱中症で倒れる人が出かねません」
「日程が決まり次第、日除けや冷水の準備など対策を検討しておきます」
打ち合わせが終わり、再び授業が始まった。
最近学んでいる教材は『初級神学』。ようやく漫画入りの初心者向け教材を卒業したばかりだ。
『集中しなきゃ。いつまでも初級のままじゃいられないんだから』
だが――テキストの中に「オーフェフ」という単語を見つけた瞬間、私の集中力はあっけなく吹き飛んだ。
『ヒルデオンの呪いは……悪神オーフェフの呪い』
頭の中がその事実で一杯になり、私は耐えきれずに口を開いた。
「先生」
「はい」
「少しお聞きしたいのですが……オーフェフについて詳しくご存知ですか?」
「オーフェフ」という言葉に、先生の眉がピクリと跳ねた。流石は次期大司祭候補と呼ばれるだけのことはある。
「急にオーフェフのことを……なぜでしょう?」
「私、ルケラ様から二度も神託を授かっていますよね。だからルケラ様についてもっと知りたくて。そのためには、ルケラ様がご自身を犠牲にして封印した悪神オーフェフについても理解する必要があると思ったのです」
「ええ、興味を持たれるのも無理はありません。ルケラ様を語る上で、オーフェフは切っても切り離せない存在ですから」
先生は少し考えを整理するように沈黙した後、静かに語り始めた。
悪神オーフェフ――ある日突然この世界に現れた災厄の化身。
人々を争わせ、不幸に陥れることで力を蓄え、さらなる闇を呼び寄せる邪神。その力の源は、人々の「不幸」そのものだった。
『不幸を糧にして力を得る……?』
これもただの偶然だろうか。
システム上の「バグ」もまた、人々の負の感情を吸収して増殖していた。
なぜか二つの存在が重なって見えるのは、私の考えすぎなのだろうか。
「ジェリー」
<あー……暑くて干からびそうニャ~>
「毛、全部刈ってあげようか?」
<……暑さで頭までおかしくなったのかニャ!?>
「ごめん、冗談よ」
部屋に戻り、ベッドの上のデブ猫に声をかける。
<それより心配なんだニャ。この猛暑で民たちが耐えられるかどうか……>
「えっ、あなたってそんなことまで心配するの?」
<当たり前だニャ! 私は神殿出身の聖なる霊獣なんだニャ! 人々を思いやる心は誰にも負けないニャ!>
はいはい、と気のない返事をしながら頷く。
『……でも、このデブ猫なら何か知っているんじゃないかしら』
バグとヒルデオンの呪い――ひいては、バグと悪神オーフェフの関係性について。
『知っていたとしても、素直に教えるとは思えないけれど……』
「ジェリー」
<ニャにい?>
「オーフェフと『バグ』って、何か関係があるの?」
ジェリーの大きな金色の瞳が丸くなった。まるで悪悪事がバレた猫のような顔だ。
目を泳がせたジェリーは――
<……にゃ?>
「はいはい、もういいわ。最初から期待してなかったから」
案の定、とぼける気満々だ。
だが、その過剰な反応こそが、オーフェフとバグに深い繋がりがある何よりの証拠ではないだろうか。本当に関係がないのなら、隠す必要などないのだから。
『……それとも、システムに関わる根幹は口にできないルールでもあるのかしら』
「はぁ……もう分からないわ」
私はそのままベッドへバタリと倒れ込んだ。
それにしても、ヒルデオンはどうしてあんなにもあっさりと私を信用して秘密を明かしたのだろう。
『私を試すつもりじゃなかったの?』
試すにしても決断が早すぎる。きっと神殿の隠しアジトを摘発した件で、奇妙な連帯感でも芽生えたのだろう。まあ、私の方も彼に少し親近感を抱いてはいるけれど。
<そんなに何に悩んでるんだニャ?>
「どうせ話したって教えてくれないでしょ。『にゃあ』って鳴いて誤魔化すだけなんだから」
<……にゃ>
「もういいわ、おやすみ」
瞳を閉じると、柔らかい肉球がぽんぽんと優しく私の肩を叩いた。
<心配しなくていいニャ。悩み事なんてすぐ解決するニャ。……たぶん、明日にはニャ?>
「何それ、慰めのつもり?」
ふっと口元を緩め、私はそのまま深い眠りへと落ちていった。
・
・
・
そして、翌朝。
私は、あの言葉が単なる慰めではなかったことを思い知る由となる。
ピロン!
<好感度が50を超えました。新しい隠しミッションが解放されます>
<隠しミッション:皇太子の呪いを治療せよ!>
あら大変! 帝国の柱である皇太子殿下が恐ろしい呪いに侵されています!
オーフェフの呪いは、邪神と同じく「不幸」を糧として肥大化します。
そしてバグもまた、人々の負の感情を吸収して肥大化する存在です!
現在、ヒルデオンの呪いはバグの影響を受けて異常活性化しています。
この二つが完全に融合してしまえば、取り返しのつかない大災厄が訪れるでしょう!
破滅を迎える前にバグを排除し、ヒルデオンの呪いを完治させなさい!
【ミッション進行条件】
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ヒルデオンのバグを10回以上除去する
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「不幸」ランク以上のバグを3回以上除去する
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評判を70以上にする
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???ステータスを70以上にする
【ミッション成功報酬】
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メインミッションの進行が可能になる
【ミッション失敗ペナルティ】
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皇太子の暴走/死亡または重傷/世界の滅亡
※隠しミッションは拒否できません。
※制限時間:シルビア登場後 6か月
【頑張ってくださいね!】
「なんて姑息で良心のないシステムなのよ――っ!?」
人が寝ている間に勝手に凶悪なミッションを発生させるなんて聞いていない!
しかも失敗ペナルティに「世界の滅亡」なんて物騒な文字が躍っている。
「……ジェリー! あなた、最初からこれを知っていたのね!?」
私が叫ぶと、ジェリーはしっぽをぶんぶん振りながら首を傾げてみせた。
<にゃ……?>
「この……喰い意地の張った悪徳ぽっちゃり猫ーっ!!」
早朝の部屋に、私の絶叫が虚しく響き渡るのだった。
要点は以下の3点です。
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【ハンバルの暗殺と暗躍する黒幕】
神殿の不正を知る神殿長ハンバルが獄中で毒殺され、事件の背後に口封じを図る謎の黒幕(悪神オーフェフの影)が存在することが判明した。
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【呪いの真相と「バグ」の共通点】
ヒルデオンがかかっている「オーフェフの呪い」と「バグ」は、ともに人々の『負の感情(不幸)』を糧に成長するという不穏な共通点が明らかになった。
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【回避不能の強制隠秘ミッション】
ロエーラの就寝中に「皇太子の呪いを治療せよ」という隠しミッションが解放され、失敗すれば「世界滅亡」という極めて重いペナルティを背負わされることになった。