こんにちは、ピッコです。
今回は20話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
20話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 女主人の役目②
「リ、リプタンは・・・、そ、そんなに優れてるき、騎士なのですか?」
「優れているほどではありません」
少年がどうしてそんな質問ができるのかというように深刻に眉間を寄せながら話した。
「カリプス卿は名実共に最強の騎士です。訳もなくウィグルの現身と呼ばれるのではありません!全大陸を通じて「ロセム・ウイグル」と崇められる騎士は計5人だけです。その5人のうち2人がカリプス卿に敗北しました!6年前、西区連合剣術大会でリバドンの第1騎士セジュール・アレンを破っただけでは足りず、オシリアの聖剣、クアヘリオンまで!」
彼女は曖昧な笑みを浮かべる。
神聖騎士団団長の名前は何度か間いたことがあるが、彼がどれほとすごい人なのかは知らなかった。
彼女の反応が気に入らなかった少年が熱っぽい口調で話し続ける。
「私は剣術大会で活躍されるカリプス卿の姿を見て騎士になろうと決心しました。あの時から今まで、ずっとカリプス卿は私の憧れの的でした!」
「そ、そうなんですね・・・」
特に何とも答える言葉がなく、そのようにつぶやくと少年が少し厳しい表情をした。
「貴婦人はカリプス卿がとんなに偉大な騎士なのか知らないんですね」
「し、知ってますよ・・・。ド、ドラゴンを・・・」
「たとえ討伐戦に参加しなかったとしても、カリプス卿は偉大な騎士です。あの方が剣を振り回す姿を見たことがありませんか?」
「そんなことないですよ! 、ま、魔物と戦う姿は・・・」
果たしてそれを見たと言えるのか確信できず、彼女は言葉を濁す。
一度は気絶してしまい、もう一度はあっという間に終わって、何が起こったのかも理解できなかった。
しかし、夫に対して何も知らない人のように映るのが嫌で、彼女は想像を付け加えて言い繕う。
「わ、私も知っています。リ、リプタンがこの西、砦のような、巨人を真っ二つに切ったんですよ!きょ、巨人がみんなで、じゅ、10匹も現れたのに!あ、あっという間にみんなや、やっつけてしまいました!」
本当は何匹が現れたかなんて覚えていなかったが、彼女は厚かましく主張した。
絶対にそれ以下ではなかったはず。
2人の少年が目を輝かせ、マックを熱心に見つめる。
「それは本当ですか?ジャイアントオーガ10匹を・・・!」
「すごい話ですね!詳しく教えていただけますか?」
激しい反応にマックは肩を動かした。
すごい英雄談でも期待するような態度に一瞬当惑感が押し寄せたが、今になって気絶して何も思い出せないという恥ずかしい真実を口外することはできなかい。
彼女は必死に吟遊詩人から間いた英雄謂を思い出し、見ていない光景を作り上げた。
「ば、馬車に乗って行く途中に・・・、い、いきなり、そ、空を裂くような怪声が、な、鳴り響きました!ど、どんなに威勢がよかったか。あの、私は一瞬、空がく、崩れ落ち、降ったのではないかと思いました。恥ずかしいことに、自分は、怖すぎて固まっているに・・・。リプタンは、す、すぐに剣を抜いて外には、走り出した状態でした!と、とても早くて私はあの、あの方がいつ、剣を抜いたのか、ま、まともに見ることもできなかったんです!」
「カリプス卿は、世界で最も速い抜刀術を使っています!あの方の敵は、いつもあの方が剣を抜いたかも知れない状態で、頭と胴体が分離され、床に血を吐きながら倒れます!」
少年は得意げに叫んだ。
悪夢まで見させるほどぞっとした光景が少年たちには楽しい話だという事実が少し不気味に感じられたりもしたが、とにかくマックは話を続けた。
「そ、外には砦のようなもの、巨人が、十匹もいました・・・!騎士様たちも同時に剣を抜いて、リ、リプタンは彼らのせ、先頭に走って・・・、い、一番大きな巨人に向かって、け、剣を振り回しました!す、すると巨人が・・・」
彼女は目を丸くする。
「く、首と頭がぶ、分離して血が・・・、ふ、噴水のように噴き出し、じ、地面に出て、丸くなったそうです!」
「カリプス卿の剣技はドラゴンブレスも分けたんですよ!ああ、なんてこった!」
ユリシオンは興奮して合いの手を入れた。
吃るのがもどかしいはずなのに、少年たちはイライラする様子もなく目を輝かせながら次の話を待っていた。
その熱い反応にますます楽しくなり、マックはナイフを振り回すふりまでして話を続ける。
「ほ、他の巨人が、その姿を見てみ、耳が塞がるような大声を張り上げながら・・・、こ、この木の幹くらいの、巨大なパットを・・・、ふぃっ!と、ふ、振り回しました!リ、リプタンはみ、水に満たされたツバメのように高く飛び上がり、巨人の攻撃を鼻で笑うようにさ、避けてしまいましたね!」
「水に満たされたツバメ」という表現が気に入って、彼女は内心ほほえましい笑みを浮かべた。
「きょ、巨人は鈍すぎて・・・、リプタンのう、動きをめ、目で追えず、バ、バットで地面をた、叩きまくりました。地面が鳴るほどドカン、ドカンと・・・!」
彼女はバットで床を打ち下ろすふりをする。
少年たちがその次のことが気になってたまらないように肩を揺らした。
誰かがここまで自分の話を興味津々に間いてくれたのが初めてで、マックはどうしようもないほど楽しくなり始めた。
「そ、その時!リ、リプタンが再びけ、剣を振り回しました。せ、閃光がきらめくと、巨人のう、腕が大きなソーセージのようにばっさりと切れちゃいました!ドーンという重い音がな、鳴り響いて血が・・・」
彼女は血の話が出るたびに少年たちがもっと興奮して目を輝かせるということに気づき、腕をさっと上げて叫んだ。
「ゆ、夕立のように、ふ、降ってきました!巨人が、切られた腕を、こうやって、こうやって・・・!お、踊るようにむ、むやみに振るたびに・・・、四方に、真っ黒な血が、暴雨のように・・・!」
「その血を洗い流すために半日の間、お風呂に入らなければならなかったんです」
切られた腕をあちこち振り回すふりをしていたマックは、ぽかんと凍りついた。
硬い首を回すと、木の下にしゃがんで根の間から頭を掻いているルースの姿が見えた。
彼は袋を手に取り、席から立ち上がり、渋い顔で付け加える。
「鎧も服も全部真っ黒に染まって、レム(白)ドラゴンではなくヒューム(黒い)ドラゴンと騎士団の名前を変えるべきか悩んだほどでした」
「ルース様!」
ユリシオンは嬉しそうに彼の方へ走って行った。
「ここで何をしているのですか?」
「カリプス夫人の頼みで、庭の木を蘇らせる試薬を作っていました」
彼は袋を持ち上げながら言った。
「夫人は旅先で経験したあの熾烈な戦いについて話していたようですね」
「・・・」
マックは文字通り頭からつま先まで真っ赤になる。
よりによって自分が吐瀉物をこぼして気絶して倒れた醜い姿をすぐそばで見守った
人にほらを吹いたことがばれたのだ。
その場で埃になって消えたい気持ちだけだった。
彼女が恥ずかしくてどうしていいか分からなかったのか、少年たちは興奮して騒ぎ立てた。
「はい!カリプス卿がジャイアント・オーガ10匹をあっという間にやっつけた話を聞かせてくれました!」
「ジャイアントオーガ10 匹ね・・・」
長く続くホラ話に心臓が不安でドキドキする。
マックは今からでも忙しいことがあるふりをして、この場から抜け出そうか悩んだ。
退路を求める兵士のように目を逸らす時、意味深長な笑みを浮かべたルースが自然に話を続けた。
「まだそこまでしか話していないんですか?山での戦闘もあったじゃないですか」
「山での戦闘ですか?」
「アナトリウム山を越えて、その時、ウェアウルフの群れとばったり出会ったんです。全部で・・・、何匹でしたっけ?カリプス夫人?私は最近記憶が曖昧で・・・」
「そ、それが私もよく•・・・」
「確かに、多すぎて計り知れないほどでしたね。全ての山が、ウェアウルフの真っ黒な毛で覆われ、まるで絨毯を敷いたように見えるほどではなかったでしょうか」
「そんなにたくさんのウェアウルフがアナトリウム山に・・・!?」
ユリシオンは驚いた顔で叫んだ。
マックは同意も否定もできず、冷や汗をかく。
ルースはにこやかな笑みを浮かべて言った。
「その時のことをカリプス夫人が生々しく話してくださるのはどうでしょうか?」
少年たちの期待に満ちた目が彼女に向かって飛んでくる。
どうしてもその場にいた人を前にして話を作り上げるほと太い神経線ではなく、マックは顔だけ赤く染めた。
その姿がだめに見えたのか、ルースが救済の手を広げる。
「しかし、忙しい貴婦人の時間を、そこまで奪うことはできません」
「そ、そうなんです・・・、わ、私も・・・、ちょっと忙しくて・・・」
彼女はすぐにその救済の手を握った。
ルースは慌てて立ち去ろうとするマックを呼び戻す。
「ああ、そういえば夫人にお伝えしなければならないお知らせがあります。興味津々な話に熱中したせいで、もう少しで言い忘れるところでしたね」
「お、お知らせ・・・、ですか?」
また意地悪をしようとしているのではないかと疑った目で振り向くと、男が小さな羊皮紙一枚を広げて見せてくれた。
「カリプス卿からの電報です。戦勝式が終わるやいなやアナトールに出発する予定だということでした。長くて15日・・・、いいえ、騎士団の機動力なら10日で領地に到着するでしょう」
意外な知らせにマックは恥ずかしがっていたことも忘れて、顔を明るくする。
すぐに羊皮紙を受け取ってのぞいてみると、出発日と移動経路が短く書かれていた。
ルースはどうしようもないと首を横に振りながら長いため息をついた。
「本当に参加しただけのようですね」
「そ、それでは・・・、だ、ダメなのですか?」
「ダメなことはないですが・・・、どうせ行かれたんだからルーベン王の体面をちょっと生かしてくれば良いじゃないですか」
「先生、カリプス卿はきっと領地の安全を心配されているのです。とてつもない数のウェアウルフが領地近くに出没したほどですが、どこか安心できますか?」
ユリシオンは熱心にリプタンを擁護する。
望まない方向に対話が流れると、マックは目に見えて緊張しながら急いで対話を終えた。
「と、とにかく・・・、お、教えてくれてありがとう。わ、私はか、鍛冶屋に寄らなければならないので・・・」
「お忙しい方だということは、私が知っています」
骨のある一言を後にして、マックはその場を離れた。
足取りが自分でも驚くほど軽かった。
彼女はついてくる少年たちを意識して、鼻歌を歌いたいのをぐっとこらえる。