こんにちは、ピッコです。
今回は80話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
80話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 解毒魔法の特訓②
マックは水筒をじっと見下ろす。
ヒキガエルの体から流れたねばねばした液体が水中にインクのように広がっていた。
その上にもじもじ手を乗せて魔力を引き上げると、かすかな抵抗感が感じられた。
マックは首をかしげる。
人間の体に魔法をかけるのとは感覚がはっきりと異なり、どの部分に魔法式を描かなければならないのかも曖昧に感じられた。
しばらく彼女が見当がつかずにいたので、黙って見ていたルースがアドバイスをしてくれる。
「縁から中心部まで円を描くように魔力を注入してみてください。一度コツをつかめば、人間の体に魔法をかけるより簡単でしょう」
マックは彼の言う通り、ゆっくりと水面の端から魔力を落としていく。
手のひらから流れ出た青い気運が水中に広がっていた黒い気運を中心に追い込み、徐々に浄化を始める。
約10分ほど経つと、濁った色で汚染されていた水が元の澄んだ色に戻った。
ルースは指先で水を打って味を見てうなずいた。
「よくできました。魔力の浪費がひどいのが欠点ですが、この部分は繰り返しているうちにだんだんよくなるでしょう」
「これを・・・ずっと繰り返すんですか?」
「繰り返し、また繰り返さなければなりません」
ルースが握っていたヒキガエルの死体を木の根元に投げつけ、きっばりと話した。
「見習いの方々が頑張って捕まえてくれたヒキガエル、一匹も欠かさず意味のあるものを使わなければならないのではないでしょうか?」
マックはヒキガエルが大量に入った水筒を青ざめた顔で眺める。
あれを使い切るまでこの訓練を続けなければならないのか。
気が引けて肩をだらりと垂らすが、人の気持ちも知らずにユリシオンが満足そうな表情をした。
「いくらでもまたお取りしますので、思う存分使ってください。貴婦人に奉仕することこそ、騎士の喜びではないでしょうか!」
「今度は長いしっぽのトカゲも取ってくれるとありがたいです」
「任せてください!西の洞窟に行けばいくらでもあるでしょう」
ユリシオンが拳で胸を叩きながら自信満々に叫んだ。
マックはこわばった笑みを浮かべる。
ルースは遠征に出る前に彼女の腕をしっかりと固めるつもりのようだった。
彼は躊躇うことなくヒキガエルをもう1匹拾い上げた。
死んだヒキガエルの口から長い舌がぽろぽろと落ちてきた。
マックはかろうじて吐き気を飲み込む。
ルースは邪魔な舌を短刀で切り落とし、彼女に差し出した。
「今度は自分でやってみますか?」
マックは肩をこわばらせる。
首を横に振りたかったが、見習い騎士たちが期待感のある目で眺めているため、気持ち悪い様子を見せることはできない。
やがて彼女は目を閉じて湿ったぬるぬるしたヒキガエルを拾い上げた。
冷たくでぐにゃぐにゃした感触で全身に鳥肌が立つ。
今まで触れた中で最悪の触感だ。
マックはすぐにでも投げ捨てたい衝動を抑えながらヒキガエルの体をひっくり返した。
ルースはヒキガエルの頭のすぐ下を指差して短刀を彼女の手に握らせる。
「さあ、ナイフでここに・・・この部分を深く突き刺して長く切ればいいのです」
マックはしばらくためらった後、ヒキガエルの冷たい体の中に短刀を押し込んだ。
思ったより肌が硬くて腕が震えるほど力を入れなければならなかった。
手をぶるぶる震わせながら、ヒキガエルの背中をかろうじて切ると、黒く粘り気のある液体が徐々に染み出た。
「もう終わった」と急いでヒキガエルを投げようとしたが、ルースが無慈悲に次の指示を下す。
「今度はヒキガエルをぎゅっと絞ってください。毒が十分に流れ出なければなりません」
彼女は次にこの魔法使いが寝ている姿を見つけたら、杖で背中に穴を開けると心の中で深く誓った。
ルースが建設現場に出てから、彼女は疲れきって部屋に戻る。
井戸端で何度も手を洗ったにもかかわらず、ぬるぬるした感触が手のひらに残っているようだった。
彼女はすぐにヒキガエルのエキスがはねた服を脱ぎ捨て、お湯をもらって石鹸とたわしで頭からつま先まで隅々まで拭く。
全身が汚された気分だった。
これから何度もこのような恐ろしい訓練を繰り返さなければならないのだろうか。
あの魔法使いは、次はトカゲ、毒蜘蛛、毒蛇を持ってくるかもしれない。
マックは、鳥肌が立った腕をこすりながら、一刻も早く次の段階に進まなければならないと誓った。
そのためには基礎勉強をすべて終わらせておかなければならない。
彼女はきれいに体をゆすいで、さらさらした新しい服に着替えて机の前に座る。
引き出しを探して本と羊皮紙、インク瓶を取り出して並べると、暖炉の前でやかんをかき回していたルディスが湯気がゆらゆら上がってくるティーカップを持って近づいてきた。
「魔法使いがくれたお茶です。召し上がってください」
マックはメイドに感謝の気持ちを送った後、温かいお茶で唇を濶した。
爽やかな香りがするほろ苦いお茶が、さっきの不快な経験を少しでも退けてくれるようだった。
彼女はお茶をすすりながら、ぎっしり詰まった文字の本を読み上げていく。
少なくない量の魔力を消耗したため、大変疲れていたが、ぐずぐずしている暇はなかった。
今日中に何とか全部読んで、明日は防御魔法か攻撃魔法の勉強をしようとルースを説得してみるつもりだ。
「奥様、ロドリゴです。ちょっと失礼してもいいですか?」
彼女が本を3分ほど読んだ頃、ノックの音とともに執事の声が聞こえてきた。
マックは頭を上げて「入ってもいい」と叫ぶ。
ロドリゴが用心深い手で部屋のドアを開けて中に入ってきて、丁寧に頭を下げる。
「お休み中に申し訳ありません」
「いいえ、構いません。どうしたんですか?」
「領主様から人を送っていただきました。外からお客さんがいらっしゃって、二日ほど泊まっていくそうです。奥様にあらかじめお知らせしなければならないようで来ました」
「お客様・・・ですか?どこからいらっしゃった方々ですか?」
当惑した顔で聞き返すと、ロドリゴは困った顔を浮かべる。
「どの家から来たお客様なのかは、お話してくれませんでした。ただ、騎士3人が泊まる部屋とお風呂、食事を準備しておけとだけおっしゃったと・・・」
マックは顔色を曇らせた。
もしかして、すでに派兵命令が下されたのだろうか。
王室からの伝令かもしれないと思い、肝を冷やす。
「領主様の言う通り・・・2階に部屋を用意してください。食事も気を使ってほしいと厨房に伝えてください」
「分かりました」
執事が外に出ると、マックは窓際に座って庭を注意深く眺める。
しばらくして、5人の男が馬に乗って庭に入ってきた。
距離があるので顔を確認することはできなかったが、前の2人はレムドラゴンの騎士団員のようだったし、後からついてくる3人が外部から来たというお客さんのようだ。
マックは目を細めて彼らが持ってきた三角形のオレンジ色の旗をよく見た。
王室を象徴する黄金色の鳥が描かれた旗ではない。
しかし、どこか見慣れたものから見て、確かにウェデンの貴族一族の一つを象徴する旗だろう。
彼女はどの家門の文章なのか考え出そうと躍起になって、諦めて席を立った。
万が一、王室から来た伝令なら、女主人が直接歓迎しなければならなかった。
マックはルディスに髪を整えるように頼んだ後、部屋を出る。
階段を下りると、ちょうどリプタンが客を連れて城の中に入ってきていた。
彼女は彼の厳粛さがにじみ出る冷たい顔を見て,その後ろに立っている訪問者を観察する。
かなり年を取ったように見えるがっしりとした体格の騎士と、彼の随行騎士と見られる若い青年2人が慎重な目でホールの中を見回していた。
彼らの警戒心がこもった表情で見ると、普段から親交のあった貴族の訪問ではなさそうだ。
彼女はやや緊張した顔で彼らの前に進んだ。
「リプタン・・・お客様が・・・いらっしゃったという話を伝え聞きました」
ホールに歩いていたリプタンは彼女を見つけ、眉間にしわを寄せる。
彼は彼女の前にやってきて、まだ水気が残っている髪を撫でながら言った。
「休憩中に邪魔をしたようだね。ルイゲンからやってきた人たちだよ。二日後に城を出るから、あなたは気にする必要はない」
マックは彼のあからさまな言葉に当惑する。
しかし、訪問者はそれほど気分を害していないようだ。
彼らの一番前に立った中年の騎士が落ち着いた顔で出てきて、彼女の手の甲に口を合わせて礼を表した。
「こんにちは、貴婦人。アーロン・リヴァイエと申します。ロベルン伯爵の命を受け、失礼を押し切って訪ねてきました」
「お、お会いできて嬉しいです。リバイエ卿・・・どうかご不便をおかけしませんように」
ロベルン伯爵といえばアナトールとそれほど遠くないところに広い土地を持っている王の家臣の一人。
何の目的で騎士を送ってきたのか、好奇心と警戒心のこもった目で騎士を見ていると、リプタンの鋭い声が闇こえてきた。
「おい、人の妻といちゃつくために、この険しいところまで走ってきたのか?」
「ただ挨拶を交わしただけじゃないか」
「緊急なことだと言っていなかったか?時間を引っ張らずに上がってきて」
彼はさっと振り向いて階段を上っていく。
客たちはため息をつきながら彼女に丁寧に頭を下げ、彼の後を追った。
マックはどう見ても喜ばしい客ではないような気がして、だらりとした足取りで部屋に戻る。
浄化の訓練が続くほど、マックのルースへの恨みは大きくなっていくでしょう。
珍しく外部からの訪問者。
何の用事でリフタンを訪ねてきたのでしょうか?