メイドになったお姫様

メイドになったお姫様【109話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【メイドになったお姫様】まとめ こんにちは、ピッコです。 「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

109話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • メイド人生最大の危機

〈アリス公主様へ〉

公主様、お元気でいらっしゃいますか?私は皇太子宮で元気に過ごしております。

あまりにも快適すぎて、かえって気が引けてしまうほどです。

一日に三度出る食事は最高級レストランにも引けを取らないほど美味しく、休憩室に行けば甘いクッキーやお茶を好きなだけ楽しめるのです。

寝台はふかふかで、横になるとすぐに眠気がやってきます。

一番驚いたのは、侍女でも使える共同浴場に、いつでも温かいお湯が出るということです!

本来なら皇族の浴室にしか設置されない魔力石のおかげだそうで、本当に贅沢で素晴らしいことですよね?

そこで、皇太后宮の総括侍女であるエバ様(以前お話ししましたよね)に、どうしてこんなことが可能なのかと尋ねたところ、彼女は涼しい顔で答えました。

「皇太后宮で働く者への特権だと思えばよろしいでしょう。」

だからこそ、皇太后宮で仕える侍女や使用人たちは、誰もここを辞めようとしないのです。

ここで働く人たちは、皆殿下に仕えてもう10年以上だそうです。

一人一人が本当に仕事が上手で、親切なんです。

皆控えめで、あまり多くの会話は交わしませんが。

公主様の一日はどのようでしたか?

公主様の侍女、シアナより

 



 

〈私の心の主シアナへ〉

こんにちは、私のシアナ。

私も元気に過ごしているよ。

ルビー宮よりも実に5倍は広い邸宅での生活にもだいぶ慣れたし、祖母の推薦で東部出身の侍女たちも選んで仕えさせている。

私はまだ少しぎこちないけれど、ニニやナナとはすっかり仲良くなって、侍女同士の関係も良好だ。

そして今日、ついにメディチアン後爵家の後継者候補の4人に会ったんだ。

候補者四人に順番に会ったんだけど、最初に会った人は私に「まあ、美しいお姫様」とか言って、いやらしい笑みを浮かべるおじさんだったの。

うぇっ、吐きそう。

二番目に会ったのは、ものすごく怖そうな大柄のおじいさんだったんだけど、皇太后様の前では何も言えなくなるみたい?

昔その二人の間に何かあったらしいけど、何だろう。

三番目に会ったのが最悪だった。

ひどく醜い顔をしたおばさんで、偉そうに振る舞って私を完全に無視したの。

卑しい出自の烙印を持つ、典型的な下層出身の運命ってやつよね。

私はそのおばさんに飛びかかりそうになるくらい腹が立ったんだけど、四番目の候補者に会って、少し気持ちが落ち着いたの。

その人は今年18歳の若者で、私を見るとすぐに膝を折り、しっかりと目を合わせて挨拶してきたの。

まるでシアナ、あなたのように。

だから気に入ったのよ。

ちょっとした愚痴になってしまったね。

とにかく、もう休まなきゃ。

明日の朝は早くから乗馬を習うことになってるんだ。すごく楽しみだよ。

それじゃあ、夢の中で会おう、シアナ。

―追伸

あ、もし叔父上が変なことをしたら、すぐに知らせてね。

私がしっかり叱ってあげるから!

愛するあなたの公主、アリスより

 



 

びっしりと書かれた手紙を見て、シアナは思わず笑みをこぼした。

『やっぱり公主様は偉大なお方。』

アリスは驚くほど元気に過ごしているようだ。

むしろ閉ざされた宮殿を出てみれば、世の中には楽しいことがこんなにもあるのだと知り、喜びを感じているのだろう。

何ひとつ心配する必要はなかった。

『……心配なのはそこなのよ。』

シアナはため息をついた。

アリスには決して打ち明けられないことが、シアナにはあった。

それは――。

シアナはティーポットと茶器を載せたカートを押して部屋の扉を開いた。

ラシードは待っていたかのように、にこやかに笑った。

「来たね、シアナ。」

「……。」

シアナはぴたりと足を止めた。

少しこわばった顔で尋ねる。

「殿下、今日は外でのご公務がなく、宮殿でお休みになられると伺いましたが。」

「その通りだ。」

だが、目の前のラシードの姿は、今すぐ舞踏会に出てもおかしくないほど整っていた。

引き締まった体にぴたりと合った、皇太子の制服――。

髪をきちんと撫でつけ、涼やかに整った額と、整然とした眉と目鼻立ちが調和する美しい顔立ち。

さらに耳元にはきらめくイヤリングまで。

『誰が見ても完璧に装った姿じゃない!』

シアナは思わず唇を噛みしめた。

そんなシアナに向かって、ラシードが目を伏せながら問いかける。

「シアナ。」

「はい。」

緊張した表情で答えるシアナに、ラシードは続けた。

「今日の俺の姿、どうだ?」

「……。」

「気に入ったか?」

「……。」

「気に入らないのか?」

――いや、本当に!

そんな顔で、あんなに完璧に装っているのに、気に入らない人なんているはずがないでしょう!

本当に完璧だったのだ。

そう叫びたい気持ちをぐっとこらえ、シアナは口を開いた。

「侍女はお仕えする方の容姿を評価いたしません。それでは、お茶をお注ぎいたします。」

「……。」

シアナがお茶を注いでいると、ラシードはテーブルに置かれたケーキをフォークで一口すくった。

そして、それをシアナの目の前に差し出した。

大きく目を見開いたシアナに向かって、ラシードが口を開いた。

「口を開けて。」

「……。」

皇太子が侍女にケーキを食べさせるなど、常識では考えられないことだった。

シアナは慌ててケーキを断ろうとした。

だが――

「食べてみろ。朝からお前のために作ったケーキなんだ。」

「え?」

シアナは、ラシードが自分のためにケーキを作ったと聞いても驚く余裕すらなかった。

「さあ。」

ラシードの美しい顔が少し傾き、耳元のイヤリングがきらめいた。

一瞬息が詰まるほど高貴な姿に、シアナは思わず口を開けてしまった。

ラシードはその隙を逃さず、柔らかなケーキを小さくちぎって彼女の口に運んだ。

ふわりとした食感と、甘美なチーズの風味が口いっぱいに広がった。

シアーナはラシドの意外な腕前に驚きつつ、ケーキを飲み込んだ。

そんなシアナを見つめながら、ラシードが問いかける。

「美味しい?」

「……はい。」

シアナの返事に、ラシードは華やかに笑った。

誰の目にも、彼が恋に落ちているのは明らかだった。

それは甘く、切なげな眼差しだった。

シアナはスプーンをぎゅっと握りしめた。

『お姫様、この放蕩な皇太子殿下をどうにかしてくださいませ……!』

少しでも気を緩めれば、自分の理性を失ってラシードに飛び込んでしまいそうだった。

侍女人生最大の危機だった。

 



 

本来、シアナはラシードの茶を担当する侍女なので、彼と顔を合わせる時間はそう長くはないはずだった。

普通なら、一人で楽しむティータイムはせいぜい30分、長くても1時間ほど。

だが、ラシードのティータイムは異常に長かった。

『今日の午前中は2時間も、午後には3時間もお茶を飲んでいたじゃない……。』

その合間に、護衛騎士ソルが「今夜は会議があります」と強引に切り上げさせなかったなら、きっと夜まで続いていただろう。

ラシードがいつまでお茶を飲んでいたのかは分からない。

日が沈んだ後、エバがラシードの言葉を伝えてきた。

「殿下が茶を召し上がりたいと仰せです。ご用意ください。」

エバの言葉に、シアナは思わずむせそうになった。

幸いだったのは、エバがシアナに対しては仕事に関することだけを淡々と告げるということだ。

ラシードがなぜあんなに長くお茶を飲んでいるのか、

その間に部屋でどんなことが起こっているのか――そんなことには全く関心がない様子だった。

もしエバがそれを問いただしてきたら、シアナはきっと返答に困っただろう。

『殿下が、私の理性を打ち砕くために、全力で誘惑してこられるのです。』

――なんて言えるはずもないのだから。

シアナは貯蔵室でお茶の準備をした。

今日選んだのは、二日酔いに効くと言われる緑茶だった。

ラシードが酒を飲んだと聞いて、それに合わせたのだ。

『会議の場でワインを口にしたとしても、そんなにたくさんは飲まなかったでしょうけど……それでも多少は胃にこたえているはず。』

カートを押しながらそう思ったシアナは、目を大きく見開いた。

皇太子の部屋の前に、ソルが立っていたからだ。

護衛騎士らしく、普段のソルはラシードの傍らにぴたりと控えていて、シアナがお茶の用意をするときには気を利かせて外へ出ていくのが常だった。

だが、今のようにシアナが来る前から外に立っているのは初めてだった。

「ソル様、なぜ外にいらっしゃるのですか?」

「中にいるのが落ち着かなくて。」

「どういう意味でしょうか?」

「中に入ればおわかりになります。」

ソルは恭しく扉を開けてくれた。

シアナは小さく首をかしげながら部屋へと足を踏み入れた。

そしてすぐに、ソルの言葉の意味を理解した。

「……。」

長いソファに身を預けたラシードは、わずかに赤みを帯びた顔で目を閉じていた。

その姿はあまりにも眩しかった。

会議に出席していたため、体にぴたりと合う黒の正装を身にまとっていたが、窮屈だったのかシャツのボタンが少し外れており、その隙間から鍛えられた胸筋がのぞいていた。

シアナの顔に一気に熱がこみ上げた。

『頭の先から足の先まで完璧な男性が、こんな風に無防備に横たわっているなんて……反則です。』

見ているだけで罪を犯しているような気分になった。

思わず視線を逸らし、シアナは声を落として告げた。

「殿下、お茶のご用意ができました。」

「……。」

しかし、ラシードは反応を示さなかった。

同じ言葉を何度か繰り返してから、ようやくシアナは彼が眠りに落ちていることに気づいた。

『仕方ないですね。』

シアナは困ったように微笑み、そっとため息をついてからラシードの傍へ一歩踏み出した。

「殿下?」

返事はなかった。

「殿下。」

もう少し近づいて呼びかけても、やはり反応はない。

「……。」

何を考えているのだろう。

シアナはそっと顎を上げ、ラシードの顔を見つめた。

流れるような銀色の髪、その下に伸びる長い睫毛。

少しの乱れもなく整った彫刻のような横顔。

誰もが思わず息を呑むほど美しい顔立ちには、どこか気高い威厳さえ漂っていた。

『けれど……それだけじゃない。』

目を開いた瞬間、この男は一人の女性の心を激しく揺さぶる男に変わる――。

まさに今のように。

いつの間にか目を開いたラシードの鮮やかな紫の瞳が、シアナを射抜いた。

シアナはラシードの上に倒れ込んでしまった。

驚いたシアナが慌てて立ち上がろうとした瞬間、ラシードは腕を伸ばして彼女の腰を自分の方へ引き寄せた。

一瞬でラシードに抱きしめられたシアナは、慌てた顔で叫んだ。

「えっ、殿下!」

「寒い。」

「では毛布をお持ちします……」

「嫌だ。」

「……」

「これが一番いいんだ。」

「……」

半分眠ったような低い声で囁かれ、シアナは思わず唇を噛んだ。

『駄目よ。いくらなんでも、皇太子殿下とこんな姿でいるなんて……!』

少しでも早くラシードの腕の中から抜け出さなければならない。

しかし、その腕は広くて暖かく、そして甘く心地よかった。

芳醇なワインの香りが漂った。

シアナは、まるで罠にかかった小動物のように身動きが取れなかった。

ドクン、と誰のものかも分からない心臓の鼓動を聞きながら、シアナは困惑した顔でぎゅっと目を閉じた。

どれほどの時間が過ぎただろう。

低く落ち着いた声が響いた。

「ありがとう、シアナ。」

「……何が、ですか。」

「純真な侍女を誘惑したと、平手打ちをしなかったこと。」

――誘惑などと言うには、殿下はあまりにも整った顔立ちをしている。

シアナはその言葉を飲み込み、代わりに尋ねた。

「……本日の会議で、何かあったのですか?」

「どうしてそんなことを聞く?」

「お酒をかなり召し上がったように見えたので。」

ラシードは、普段は一滴の酒すら口にしない人だった。

ラシードは素直に事実を認めた。

「会議に行く前に知らせが届いたんだ。」

「……?」

「父上と母上がまもなく宮殿に戻られるそうだ。」

シアナは目を大きく見開いた。

皇帝と皇后は、ここ1年ほど宮殿を離れていた。

留守が長引いたため、侍女たちは二人がいつ戻るのかと常に気にしていた。

シアナがためらいながら尋ねた。

「……殿下は、皇帝陛下と皇后陛下がお戻りになるのが、ご不便なのですか?」

「そんなことはない。無事に戻られて本当に良かったと思っている。ただ……緊張するのは仕方ない。父上と母上は非常に厳格なお方だから。」

シアナはさらに大きく目を見開いた。

「何も恐れるものなどないように見えた殿下が、そのように思われるなんて驚きです。」

「……つらい。私は頼りなく見えないか?」

「いいえ。お父上が皇帝で、お母上が皇后なら、大変なのは当然です。」

「……そうか?」

「ええ。……それでも、お疲れのようですから応援して差し上げます。」

ラシードの目が大きく見開かれた。

彼に抱かれていたシアナが腕を抜き、彼の頭をそっと撫で始めたのだ。

優しく、温かい手のひらだった。

「なるほど……心が落ち着くな。最高の応援法だ。」

柔らかく笑うラシードを見下ろしながら、シアナは思った。

『……そう。どれほど大人びて強く見えても、殿下はまだ十八歳。』

法的には成人とはいえ、両親の威圧感に押しつぶされそうになるには十分な年齢だった。

シアナの目に映るラシードは、強い男ではなく、まだ自分の力を完全には掴みきれていない未熟で繊細な少年のように見えた。

 



 

 

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