シンデレラを大切に育てました

シンデレラを大切に育てました【245話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【シンデレラを大切に育てました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

245話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 6年の恋

「ドレス、とてもよくお似合いです」

ダグラスの褒め言葉に、リリーは一瞬言葉を失った。その言葉を耳にするのは、今日でもう三度目だった。顔を合わせた瞬間に一度、そして二曲目のダンスを申し込まれるときにも同じように言われたのだ。

「そんなに私のドレス、気に入らないんですか?」

少しの沈黙のあと、リリーが茶化すように言うと、ダグラスの体がぴくりと強張った。だがそれもほんの一瞬のこと。彼はすぐさまリリーの腰を引き寄せ、抱き留めるようにして踊り続けた。

素早く二歩ステップを飛ばして周囲の歩調に合わせると、彼は落ち着き払った声で言った。

「いいえ。本当に、とてもよくお似合いです」

――嘘だ。

リリーは、今夜の彼女を見た瞬間にダグラスの目が大きく見開かれたのを、決して見逃していなかった。気に入っていないのは明らかだ。それでも彼が「似合わない」などと口にできるはずがない。

その頑なさが、リリーの中に少し意地の悪い悪戯心を芽生えさせた。彼女はダグラスを見上げて問いかける。

「じゃあ、どこが一番似合ってるんですか?」

その質問に、ダグラスは完全に言葉を失った。どこが一番似合うか、だと――?

揺れる彼の視線は、リリーの少し大胆すぎるドレスへと向かう。確かに色は、彼女の美しさを最も引き立てる鮮やかな黄色だ。だが、彼が衝撃を受けたのは色ではなかった。

リリーが着ているドレスは、肩が露わになっていた。社交界において肩の出たドレスは珍しくない。だからダグラスが困惑している理由は、単に肌が見えているからではなかった。

彼が驚いたのは、そのドレスに「袖」がないことだった。

袖がない――いや、正確には右側にだけ申し訳程度に布が付いているだけの、ほとんど無いに等しいアシンメトリーなデザインだった。

これまでのドレスは、どれだけ肩が露出していようと、どれだけ胸元が深く開いていようと、必ず両袖が付いていた。だがリリーのドレスは片側だけにしか袖がなく、その危うい姿はダグラスの目には、今にも滑り落ちてしまいそうに見えて仕方がなかった。

思わず自分の上着を脱いで、今すぐ彼女の華奢な肩に掛けてやりたい衝動に駆られる。だが彼は必死にそれをこらえた。うっかり触れてしまえば、ドレスがそのまま外れてしまうのではないか――そんな根拠のない不安すらよぎっていた。

ダンスのステップの中で軽く手を離しながら、彼はたまらず問いかけた。

「このドレスのどこがそんなに気に入って、着ることにしたんですか?」

「あなたが言葉に詰まるところ、です」

いたずらっぽく微笑むリリーの返事に、ダグラスは思わず息を詰め、やがて降参したように苦笑いを漏らした。正直、少しだけ悔しくもあった。もし他の誰かがこのドレスを着ていたなら、ここまで動揺することもなかっただろう。

――けれど、着ているのがリリーなら話は別だ。

クラブで友人たちが「あの令嬢のドレスを見たか」と噂していても、普段の彼なら軽く頷いて流して終わりだったはずだ。だが今は、胸の奥がざわついて仕方がなかった。

「冗談ですよ」

揺らぐ彼の視線に気づいたリリーは、慌ててそう言って笑った。そして差し出された彼の手にそっと触れ、本当の理由を口にする。

「もともとはアイリスが着たがっていたドレスなんです。だから、私が代わりに着たんですよ」

王太子妃殿下が着たがっていたものを、なぜリリーが着ているのか――その細かな経緯まではダグラスには分からなかった。だが、結婚して五年が経った今でも、まるで新婚のように仲睦まじいリアンとアイリスの姿がふと頭に浮かぶ。

最近、王太子妃アイリスは待望の男の子を出産した。

これまで二人の間に子どもがいなかったのは、王太子妃の母であるバンス伯爵夫人の意向だった、という噂がまことしやかに流れていた。娘を二十歳で結婚させることさえ良しとしなかった彼女が、王太子との間に子をもうけるのも、王太子妃が二十五歳を過ぎてからにするよう固く約束させていたのだという。

そのため、王太子妃の遅い妊娠も母親を口実にした政略的なものではないかと疑う者もいたが、ダグラスは、バンス伯爵夫人が無意味にそんな制限を課す人物ではないと知っていたため、この噂の裏にある深い慈愛を信じている側の人間だった。

「他の人ならともかく、アイリスは王太子妃でしょう? こんなに大胆なドレスを最初に着るとなれば、格好の噂の的になってしまいますから」

つまり、リリーが先にこのドレスを着ることで、人々の批判や衝撃をすべて自分が引き受けるということだ。

だが、ダグラスが最初に憤りを感じたのはそこだった。

「では、あなたは?」

「え?」

「あなたは、そんな不名誉な噂に振り回されてもいいと言うのですか?」

ダグラスの言葉に、リリーは目を丸くした。彼は怒りを押し殺したような、硬い表情で続ける。

「王太子妃殿下が、実の妹にそんな酷な役目を負わせるとは思いませんでした」

「……え?」

リリーはぽかんと口を開けたまま、しばらく言葉を失った。この人、今――何を言っているの?

「何を言ってるんですか?」

呆然としたままダグラスを見つめ、それから慌てて彼の肩に手を置いて遮った。

「お姉様に頼まれたわけじゃありません」

「頼まれてはいなくても、暗に……そういう圧力を受けたのでは?」

「違います。アイリスは、私がこのドレスを着るなんて夢にも思っていませんよ」

――どういう意味だ?

ダグラスは眉をひそめた。まさか、本当に姉のために自分を犠牲にしたわけではないというのか。そう考えかけたそのとき、リリーはあっさりと言い足した。

「だって、自分が立場上着られない素敵なドレスを私が着ていたら、どれだけ羨ましいと思うでしょう? だから……お姉様を“羨ましがらせるため”に着たんです」

「……は?」

一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

ダグラスはぽかんとしたままリリーを見つめる。音楽が止まったことにも気づかず、ただ彼女を見つめ続けていた。

やがて我に返ると、慌てて彼女をエスコートして壁際へと導き、周囲に聞こえないよう小声で問いただした。

「羨ましがらせるために、ですか?」

「ええ。自分ができないことを私が平然とやっているのを見たら、どれだけ悔しがるか……想像がつくでしょう?」

その一言で、ダグラスの中にあった“美しい姉妹愛”の幻想は、見事に音を立てて崩れ去った。信じられないものを見るようにリリーを見つめ、彼は絶句する。

「……そ、それで、本当に仲はよろしいのですか?」

「アイリスとですか? ええ、とても良い方だと思いますよ。少なくとも、他の貴族の家に比べれば」

「それなのに、わざわざ羨ましがらせるような真似を?」

リリーはくすっと笑った。ダグラスが一人っ子だということを思い出したのだ。彼には分からないのだろう――兄弟姉妹という、複雑で愛おしい関係性が。

「姉妹なんて、そんなものですよ。一番近い場所にいる、永遠のライバルなんです」

彼には理解できない、どこか誇らしげで余裕のある感情がそこにはあった。ダグラスは少し気まずそうにリリーから視線をそらし、ぽつりと言った。

「王太子妃殿下に対して、それほどの競争心をお持ちだとは思いませんでした」

リリーとアイリスは、進む道がまったく違う。だからこそ、ダグラスには今の話がとても新鮮に、そして魅力的に聞こえた。

リリーは肩をすくめ、どこか照れたように笑う。

「私が妹だからかもしれません。どうしても一つくらいは、アイリスに勝ちたくなるんです」

その仕草で、彼女の白い肩がさらに露わになる。

ダグラスは思わず何か言いかけて口をつぐんだ。

――そんな格好、今すぐやめろ。

そう喉まで出かかったが、代わりに彼は一歩足を踏み出し、さっきからリリーを露骨な目で見つめていた男たちの視線を遮るようにして立った。

そして、静かに、しかし熱を帯びた声で告げる。

「私から見れば、あなたはすべてにおいて王太子妃殿下を上回っています」

「そうなんですか?」

信じられないという顔をするリリーに、ダグラスは思わず微笑んだ。片目を少し細めるその仕草さえ、たまらなく愛らしい。触れてしまいそうになる手をこらえるように腕を胸の前で組み、ゆっくりと口を開く。

「ええ。あなたは類稀なる才能を持って、若くして成功した画家です。それに……」

「それに?」

続きを促す潤んだ視線に、ダグラスは観念したように言葉を継いだ。

「殿下が心底羨ましがるドレスを、今こうして見事に着こなしている」

その一言に、リリーは思わず声を上げて笑った。

――そうだ、このドレスを着ているだけで、アイリスはきっと地団駄を踏んで悔しがる。

くすくすと笑いながら、彼女はダグラスとともに、人々の好奇の視線を避けるように会場の外のバルコニーへと歩き出した。

「ありがとう。少し気分が良くなったわ」

――つまり、さっきまでは気分が良くなかったということだ。

ダグラスは理由を考えてみたが、思い当たる節はなかった。先週、彼女が初めて発表した彫刻の評判も、非常に上々だったはずだ。音楽も美術も、芸術全般にさほど興味のない彼だったが、リリーのことだけは別だった。彼女を取り巻く世間の反応だけは、逐一注意深く見ていたからこそ断言できる。リリーの作品の評価は間違いなく高かった。

「何か、嫌なことでもあったのですか?」

ダグラスが尋ねると、リリーは唇をきゅっと尖らせた。その不満げな仕草すらどこか愛らしい。彼が腕を組んだまま、無意識に拳を握りしめているのにも気づかず、彼女はため息をついて小さくぼやいた。

「私、自分が注目されるの、好きだと思ってたんです。でも……私が失敗するのを、今か今かと期待している人もいるんだなって気付いて。そういう人が多いなって思うと、ちょっと気が滅入るんです」

「誰があなたの失敗などを望むのです?」

ダグラスは不思議そうに尋ねた。

「人ですよ。少し前に、あの彫刻の作品を発表したでしょう?」

「ああ」

事情はよく分かっている。リリーが絵画だけでなく彫刻をやりたいと最初に打ち明けた相手は、他でもないダグラスだった。彼はその際、モデルになることを条件に、彼女が試験的に作った最初の瑞々しい作品を譲り受けている。

「私の評価が良かったのは、お姉様――王太子妃の威光のおかげだって言う人がいるんです」

ダグラスは即座に、冷徹なトーンで言い返した。

「ばかげていますね」

「そう思いますか?」

「当然です。ああいう連中は、自分たちの矮小な価値観に、大した自負心を持っているんですよ。王太子妃殿下のおかげで評価が良かったなどと言うのは、自分たちの見る目の無さを露呈しているのと同じか、あるいは芸術を何も分かっていない証拠です」

思っていたよりも具体的で容赦のない言葉に、リリーは驚いて目を見張った。ダグラスは少し気まずそうに視線を泳がせながら、言葉を続ける。

「昔、義父が絵の収集を始めた頃の話を、聞かせてもらったことがあるんです」

初めてオークションに参加したフィリップを、当時の高慢な収集家や画家たちは「金と家柄だけでしゃしゃり出てきた若造」だと嘲笑った。けれど彼の圧倒的な情熱を目の当たりにするうちにその雑音は消え、やがて彼が確かな審美眼で有望な新人画家を次々と見出し始めると、周囲の視線は羨望へ、さらには深い敬意へと変わっていった。

「今ではケイシー財団が支援している画家だと聞けば、それだけで至高の才能があると見なされるくらいです。誰がどんな邪推を口にしようと、要するに彼らは、あなたに嫉妬しているだけですよ」

続くダグラスの真っ直ぐな慰めに、リリーは小さく息を吐き出した。不思議なことに、他の誰に言われるよりも、彼にそう言われると胸の閊えがすっと軽くなる。彼女はダグラスの手をそっと握り、口元を緩めた。

「分かってます。あの人たちが私に嫉妬してるってことくらい」

リリーはすでに画家としてデビューしてから五年が経っていた。その積み重ねてきた実績を考えれば、十分に一人前であり、人気も不動のものだ。嫉妬される理由があるのも当然だと分かっている。

それでも、面と向かって悪意に触れれば、嫌な気持ちになるのはどうしようもないことだった。

「なら、好きなだけ嫉妬させておけばいい」

ダグラスの低い声に、リリーは目を見開いた。彼は自分の手の中にある彼女の小さな手を、そっと包み込むように握り直した。

ふっと微かに笑う彼の顔を見て、リリーは、彼自身もまたそうした無数の嫉妬を浴び、今もなお戦い続けているのだと察した。

王立アカデミーで剣術を学び始めた頃から、彼の背中にはいつも多くの嫉妬がつきまとっていた。偉大なケイシー家の家柄のおかげで過大評価されているだけだと、陰口を叩かれ、貶されることも日常茶飯事だったはずだ。

「結局、一番大事なのは実力です。金や家柄はきっかけにはなっても、それを維持し、己のものにできるかどうかは完全に別問題ですから」

それはダグラス自身が、血の滲むような鍛錬の中で身をもって理解した真理だった。ケイシー家の圧倒的な権力と資金は、確かに最高峰の訓練環境を与えてくれる。しかし、そこから先、剣を振るい、技を自分の力に変えられるかどうかは、本人の果てしない努力にかかっている。

金は人の環境を底上げすることはできても、その魂の領域まで押し上げてくれるわけではない。そこに辿り着けるかどうかは、結局、自分次第なのだ。

そしてダグラスは、リリーがどれほど真摯に芸術と向き合い、努力してきたかを誰よりもちゃんと知っていた。

「あなたには本物の才能があって、それに見合うだけの努力も重ねてきました。あんな程度の低い嫉妬が、あなたの価値を傷つけることなど万に一つもありません」

はっきりと言い切る彼の力強い言葉に、リリーは一瞬呆気に取られたように見つめ、やがて心からの安心を覚えたように、柔らかな笑みを浮かべた。

「ありがとう、ダグラス」

「当然のことを言ったまでです」

「それでも……そばにいてくれて、ありがとう。私は……」

そこまで言いかけて、リリーは急に口をつぐんだ。これ以上は、言葉にしてはいけない。

ダグラスが隣にいるだけで、世界のすべてが味方になったような、何もかも大丈夫な気がしてしまう――そんなことも。

彼の言葉が、他の誰の称賛よりも深く心に響いてしまう――そんなことも。

どれも、今の彼女の立場では口にしてはならない贅沢だった。そんなふうに彼に甘えてしまう自分が、正しいとは到底言えない。

リリーは一度きゅっと唇を引き結び、顔を上げた。

そして、戸惑う彼を促すように背伸びをすると、ダグラスの端正な頬にそっと、羽が触れるような口づけを落とした。そして、いたずらっぽくにっこりと微笑む。

「ありがとう」

ダグラスは反射的に彼女の腕をつかんだ。熱を帯びた瞳で何かを訴えかけるように見つめるが、結局、言葉にはならず喉の奥に消えていく。やがて彼は静かに手を離し、どこか切なさを孕んだ穏やかな笑みを浮かべた。

「あなたの役に立てるなら、それこそが私の喜びです」

 



 

  • 右側だけ袖のある大胆なドレスの理由

    ダグラスはリリーの露出度の高いアシンメトリーなドレスに密かに動揺していましたが、実は「立場上着られない王太子妃の姉アイリスを悔しがらせるため」に自ら好んで着ていたことが明かされます。

  • ダグラスの真摯な励ましと評価

    「評価は王太子妃の光のおかげ」という世間の陰口に落ち込んでいたリリーに対し、自らも努力で嫉妬を跳ね返してきたダグラスは「彼女の真の実力と努力」を力強く認め、不安を打ち消します。

  • 深まる絆と触れ合い

    ダグラスの存在と言葉に救われたリリーは、感謝を込めて彼の頬にそっと口づけを贈り、二人の間の特別な絆と切なくも温かい感情がより一層深まります。

 

 

【シンデレラを大切に育てました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...