こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
45話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 人外の美貌に魅せられた者たち
パンドラはカシスを密かに観察する。
彼女は晩餐会が始まったときから、彼をじっと見ていた。
(今までは、リュザク・ガストールが一番私の好みだったけれど、青の貴公子も意外と・・・)
パンドラの瞳が一瞬、ギラギラとした光が煌めく。
(ここに留まっている間に、私のものにしてみようかしら?)
「お兄様の顔に何かついていますか?」
その時、ガラス玉が転がるような清雅な声が晩餐会場の中に響き渡る。
すると、いつからか彼女を眺めていたシルビアは視野に入ってきた。
目が合った瞬間、シルビアは無邪気な顔に好奇心に満ちた表情を浮かべていた。
「それとも何か他の問題でもありましたか?急にお兄様をとても怖そうに見ていましたから」
「あ、そうではなく、しばらく他のことを考えていて・・・」
パンドラはぎこちなく笑いながら言い訳をする。
不意を突いてくるシルビアに彼女は内心当惑した。
「ああ、そうでしたか」
シルビアはそんなパンドラを見て、幸いそうに表情を解く。
それから彼女はニッコリ笑いながら言った。
「晩餐の間に感じたことですが、フィペリオンの人々は自分だけの世界を確固たるものに構築しているようですね」
シルビアの指摘にパンドラは何と答えていいか、見当がつかなくなってしまう。
「今席を外している白の魔術師様も、さっき話していた間にまるで別世界にいる人のように感じられたんです。フィペリオン令嬢も今、周りを忘れて、自分のことに深く没頭しているのを見ると、やはり同じフィペリオンだからなのか、ずいぶんと似ているんだなと思い、不思議で面白いですね」
「そ___」
「少し前にオルカ・フィペリオン様だけ珍しいと仰いましたが、私が思うにお二人はかなり似ています」
(・・・悪口かしら?)
パンドラは酷く非難されたような気分に襲われる。
オルカと自分が似ているとは、何だか凄く屈辱的で恥ずべき気分だった。
そのような理由でなくても、今のシルビアの言葉は、晩餐会の席で同席者を配慮しない行動を見せた二人を礼儀正しくないと指摘しているようだ。
しかし、シルビアがあまりにもニコニコ純粋に笑っていたため、何とも言えない。
しかもあの無邪気な顔を見ていると、彼女は別に悪い意図で言ったのではないようだった。
「シルビア」
カシスは静かに妹の名前を呼ぶ。
けれど、シルビアはただただニコニコと笑うだけ。
「うん?お兄様もそう思わない?」
パンドラとしてはさらに困惑することに。
カシスがシルビアの言葉を否定しなかったから。
「間違った言葉ではないが、その辺にした方がいい。そんなことをすぐ面と向かって言うのは、場合によっては失礼に値する行為なのだから」
彼は両親がいない場所で初めて客を迎えて妹に説明する。
「あら、本当?私は良い意味で言ったのですが。従姉妹なのに、よく似ているのが不思議で。もし私の話に気分を害したのでしたら謝ります」
「いいえ、結構です」
パンドラは気乗りのしない返事をするしかなかった。
明らかに好ましくない気分だったが、だからと言って、文句を言うほど態度が礼儀に反しているわけでもない。
しかし、依然として彼女の気分は気まずいまま。
パンドラはカシスをじっと見ていた視線を下に逸らし、止まっていた食事を続けた。
晩餐会の時間が異様に長く感じられる。
(オルカ、あの子は早く帰って来ないで、何をしているの?)
シルビアはそのようなパンドラを見て、彼女に内緒で鼻を鳴らす。
オルカは晩餐会場を出て廊下を歩く。
使用人に状態を説明したら、どこに行けば良いか教えてくれた。
鋭い銀灰眼が機敏に動く。
さすがカシス・ペデリアンは鋭かった。
すぐに自分に部下を見張りにつけるとは。
しかし、オルカは魔物の領域で彼らの目を避けて密かに動くことに特化している。
彼は難なく後を追ってくる者を撒くのに成功した。
「さっきから向こうが怪しいと思うんだよね」
遠くにそびえ立つ建物。
そこは別館のある場所だった。
晩餐会でシルビアと向き合った結果、彼女は毒蝶の持ち主ではないことが分かったのだ。
何よりもペデリアン特有の澄んだ気運は、毒蝶と相性が合わない。
それにシルビア自身も魔物を手懐けることに関心がないようだった。
「あっちだ!」
目的地は彼の五感に触れる別館。
「やっぱり、白の魔術師ね」
毒蝶が伝える映像を見て、私はニッコリと笑う。
今見ているのは晩餐会の光景。
小説を見て既に知っていたが、白の魔術師オルカ・フィペリオンは大変な美人だった。
彼の華麗さは活字だけで見て想像したより遥かに上回っている。
彼の変わった性格も想像以上。
まさか自分自身を花に例えるなんてね。
いくら自分の美しさをよく知っていて、自己愛に満ちていると言っても、女主人公の前で言えるほどではない。
当惑するシルビアの顔があまりにも赤裸々で笑いそうになってしまう。
オルカと一緒に訪れた人がパンドラであることも注目に余るほどだ。
フィペリオン特有の薄青色の髪はオルカと同じだが、彼女の瞳だけはそれと相反する黒。
パンドラは妖艶で魅惑的な印象を与える強烈な美人だった。
そして彼女は「奈落の華」でロクサナ・アグリチェと同じくシルビアの男を欲しがった助演キャラクター。
彼女は作中でリュザク・ガストールを気にかけ、シルビアを恋敵と見なして嫉妬した。
それに加え、もう一人の主人公であるオルカの従姉という名札をかけてシルビアを虐めた小姑でもある。
もちろん、シルビアがオルカと結婚したわけではないので、本当の義理の姉ではないのだが。
パンドラは小説でオルカがシルビアを拉致し、フィペリオンに監禁した時、彼女を密かに苦しめていた。
フィペリオンは魔物を扱う家門で、しかも小説は18禁。
そのため、シルビアとオルカ、そしてパンドラが絡んだフィペリオン家のエピソードは、特にその程度が極悪だったと記憶している。
大まかには、魔物の触手を利用してシルビアを陵辱したり、魔物のフェロモンでシルビアを媚薬に酔わせた状態にして虐めていたりしていたのだが・・・。
もちろんオルカとパンドラ、この二人が似たようなことをしても罰せられるのはパンドラだけ。
男主人公のオルカがシルビアにする行為は愛という名目で全てが許された。
もしかしたら、オルカが小説のように現実でもシルビアに惚れるのではないかと思い、映像に注意を集中する。
しかし、幸いというべきか、オルカは時間が経つにつれてシルビアに話しかける回数が減っていった。
表情を見ると、何かが彼の考えと違って落胆したように見える。
その理由は知っている。
オルカが拘禁されていた場所に毒蝶を送っていたから。
そのため、今彼が何を考えているのかを類推することは難しくない。
オルカはどこかで私の毒蝶を見て、それを探してペデリアンに入ってきたのだ。
彼はもしかするとシルビアが毒蝶の主人かもしれないと思い、一人で期待して勝手に落胆したようだ。
恋に落ちたオルカがどれほど執拗になるかを知っている。
もちろん小説の男主人公の一人だけあって、彼はかなり魅力的な男性として描かれていたが、女性を拉致・監禁し、さらに陵辱する者は正常ではない。
だからむしろ彼がシルビアに興味を持った方が良かったと思っていた。
だけど・・・。
これは何だろう?
なぜか私は、少し前からパンドラのことが気になっていたのだ。
何だかカシスを見る彼女の目つきは尋常ではなかった。
どう見ても、あれは確かに関心のある目つき。
彼女はリュザクが好きなのでは?
そんな事を考えているうちに、私は多少気持ちが強張った。
その理由は分からない。
おそらく久しぶりに毒蝶と長時間視覚を共有したからだろう。
しばらく食卓を囲んでいる4人を見て、やがて毒蝶との繋がりを断ち切る。
私が今いるのはカシスの部屋。
することもないので、彼が来るまではここで待つつもりだ。
カシスと一緒に過ごしている間に、私の中に何か足跡が刻み込まれているような気がした。
手すりに腕を上げて、その上に顔をもたれかける。
背中に垂らした髪が肩の下でするすると滑り落ちた。
シルビアが結んでくれた赤いリボンがいつの間にか緩んでいたようだ。
強風が吹いてリボンが飛ばされそうになる。
あれはシルビアがくれたから無くしたらダメだと思う。
私の髪をリボンで束ねて幸せそうなシルビアの顔が思い浮かぶ。
そんな思いで手すりにもたれかかっていた体を起こした時、下からカサカサという音が。
「なんだ、突然どこから紐が飛んで・・・」
リボンを持って木の影から現れたのは、薄青色の髪の毛を持った美しい男。
彼は確かにオルカ・フィペリオンだった。
なぜ彼がここにいるのか疑問を抱く暇もなく視線が合う。
次の瞬間、向かい合った彼の瞳が大きく開いた。
彼は息をすることさえ忘れたかのように固まって私を見つめる。
凍りついた銀灰の瞳には、途方もなく大きな困惑が。
「・・・魔物?」
そしてオルカから小さく漏れてきた囁きに、私は眉を顰める。
「魔物か・・・?新しい進化種の人類型魔物?」
オルカはヘラヘラした顔で、相変わらず馬鹿げたことを喋っていた。
「いや、そんなものがあるなんて聞いたことがない・・・」
「オルカ・フィペリオン」
その瞬間、美声の声の上に氷の塊のような冷たい声が落ちてきた。
現れたのはカシス。
彼の表情には冷気が轟々と吹いている。
「許可なくペデリアンの中を騒がせるとは、警告を理解できなかったようだな」
状況を見ると、晩餐会にいたオルカが席を抜け出したようだ。
カシスはそれに気づき、すぐに後をつけてきた。
しかし、オルカは相変わらず魂の抜けた表情でカシスを眺めるだけ。
「いや・・・、青の貴公子。ひょっとして今、あなたの目にもあれが見えますか?あれはどう見ても人間ではないようですが・・・」
彼の言葉を聞いてカシスの視線が上に。
そしてオルカに視線を落とした。
「何だ、もしかして私の目にだけ見えるのか?じゃあやっぱり、あれは霊体?」
「やはり昨日まで泊まっていた場所がもっと気に入ったようだね。それなら好きにしてあげよう」
カシスの無反応な姿をどう解釈したのか、オルカは呆然とする。
「連れて行け」
カシスはそんな彼を無視して、後をついてきた部下たちに冷たく命令した。
彼らはカシスの命令に従い、オルカの両腕を掴む。
しかしオルカは相変わらず何が何だか分からないという顔で私を眺めているだけ。
結局、彼はカシスの部下に連行されていった。
「どうして外に出ている?」
カシスの私に対する態度はオルカと向き合った時と全く違っていた。
私に渡された声に冷たい空気がこもっているのが感じられる。
まだ彼の背後にいた部下たちは静かに身を引いた。
カシスの鋭いガラスの破片がまだ残っているのに気づく。
彼が今何を考えているのか、何となく分かるような気がした。
「あなたを待っていたわ」
そう告げると、カシスは黙り込んで私を見上げる。
「もう終わったの?」
「・・・ああ」
「約束した通り、本当に早く来たのね」
私はテラスの手すりから手を離しながら付け加えた。
「それじゃあ、お上がりなさい。あなたの部屋にいるから」
カシスは返事をせずに私をじっと見つめ、ついにその場から立ち去った。
私もテラスから出て部屋に戻る。
それから私たちはカシスの部屋で一緒に遅い食事を始めた。
彼はすでに晩餐会で大まかにお腹を満たした後だったので、きちんと食事をせず、主に私が食べる姿を前で見守るだけ。
先ほど見たオルカについて、カシスも私も何も言わなかった。
そうしてまた1日が過ぎる。
そして翌日、席を外していたペデリアンの主人と夫人が帰ってきた。
カシスの言う通り、ペデリアンの夫妻が家を留守にしたのは事実だった。
リセルに呼ばれて初めてペデリアンの本館に足を踏み入れる。
今までの考えに反して、彼は屋敷に戻るや否や私に会おうとした。
私が案内してもらったのはリセルの執務室。
こんな内密な空間に私を入れたのは意外だ。
ひょっとすると、これから語り合う話の重大さを暗示しているのかもしれない。
コンコン。
「ロクサナ・アグリチェです」
ドアの前でノックする。
息を一度大きく吸ってから吐くだけの時間が経った後、内側から応答が聞こえた。
「お入りなさい」
しばらくして私とリセルは向かい合って座る。
リセルの執務室はとても綺麗だ。
高潔な性格のペデリアンの首長らしく、彼は私に十分な礼儀を示していた。
リセルと私との間でほとんど会話はない。
しかし、それは不便ではなかった。
もしかしたらリセルが威圧的でない雰囲気を帯びていたからかもしれない。
それとも最初から私が彼に期待していたことがなかったためかも。
「長く話す必要はないと思う」
そしてついにリセルが口を開いたとき、私は落ち着いてこれから続く彼の言葉を待つことができた。
しかしそれに続いて私の耳に食い込んだ言葉は意外なものだ。
「好きなだけ、ゆっくり留まりなさい」
リセルの言葉を疑って見つめる。
「どうしてそんな目で見る?」
しばらく言葉を選んだ後、固くなった唇を引き離し、低い声を流す。
「出発しろと言われると思っていましたから」
「今すぐに去れと言えば、そのつもりだったのかな?」
リセルの質問に黙ってしまう。
「カシスは少し苦労するだろう」
彼は独り言のように呟く。
執務室の中に敷かれた空気は落ち着いていたけれど、私を圧迫するように重くはなかった。
それはリセルの視線も同じ。
「歓迎できない理由もない。カシスが3年前にアグリチェにいた時、うーん・・・」
彼は話を終わらせず、しばらく何かを悩んでいる様子を見せた。
「君の呼称を何とすべきか分からないな。「性」で呼ばれることは望まないと思うし、「君」でいいかな?」
「ええ、それで結構です」
「そうか。カシスが3年前、アグリチェにいたとき、君に大きな助けをもらったそうだね」
私はしばらく沈黙する。
しばらくの間、茶碗に浅く溜まった液体を見下ろしていたが、とうとう閉じていた唇を開いた。
「いいえ。多分・・・、真実は彼が思っていることと少し違うはずです」
カシスとペデリアンの人たちが考えるのは、私の持つ真実と全く同じではないはず。
カシスを助けた理由。
率直に言えば、それは純粋な善行ではなく、彼を良いように利用したに過ぎなかった。
実際、私は自分の目的を達成するために、彼を危険に晒したこともある。
自分の目的を成し遂げる過程で、彼がどれだけ怪我をしても構わないとも思った。
彼を助けようとした理由のほとんどは自己満足に過ぎない。
けれど、そのような事はあえて自分の口で明らかにする必要のないこと。
このまま黙っていれば、みんなが私を善人だと勘違いするだろう。
しかし、私は今、なぜこのようなことをリセルに話しているのだろうか?
まるで、そのような理由で私をペデリアンの領地に受け入れる必要はないと言っているかのよう。
必ずここを追い出されることを願うかのように。
しかし、今ここで私を強制する者は誰もいなかった。
だからもし去りたければ、自分の口から直接意思を表明すれば良いだけ。
そうしない理由は・・・。
リセルはそんな私をじっと見て、目を背ける。
「悪行であれ善行であれ、皆同じではないだろうか?だから、たとえ与える人がそういう意図でなかったとしても、それを受け入れる人は善行と考える。それなら真実はもう関係ないのではないかな?カシスはそんなことを気にしていないようだから」
彼の言葉は驚くほど優しかった。
「だから私としても、あえて反対する理由がない」
語気は無情なほど淡々としており、その中に込められた温度は、高くも低くもない。
しかし、その言葉の内容だけはそうでなかった。
「君も私たちも同じように気にかけている事はあるが、今まで以上にその仕事が優先にあるわけではないのだから、あえて聞かなくてもいいんじゃないかな?」
ペデリアンの人たちは奇妙だ。
カシスだけでなくリセルまで私にこんなことを言うとは思ってもいなかった。
そんな理由で私を受け入れることができるなんて・・・。
リセルの言葉に対する答えを見つけることができず、私はただ言葉を飲み込んだ。
「でもこれは今すぐ言っておくべきだと思う。アグリチェに関する知らせだ。カシスは君の望み通りにしてくれと言ったから自分で選択しなさい。聞きたいかな?」
しばらくして私はリセルの執務室から出た。
そうしてすぐ、こちらへ近寄ってくる人に出会う。
距離はわずか20歩も離れていない。
彼女は優雅で上品な雰囲気の女性だった。
私と彼女はお互いに向き合って、しばらく立ち止まる。
私に向かった瞳が一瞬大きく開いたが、女性はすぐに表情を整理した。
「もう話は終えたようですね」
彼女はリセルの執務室を訪問する予定だったようだ。
私は彼女がリセルの妻であることに気づき、私が先に彼女に挨拶した。
「はい、今ちょうど席を立ったところです。もう少し早くお伺いして挨拶することができず、申し訳ありません」
「お名前は?」
「ロクサナと申します」
「そう、私はジャンヌよ」
彼女は私のように、名前だけで自己紹介をする。
それが私への思いやりに気づき、再び妙な気持ちに。
「挨拶を交わす時期が遅れたのは、あなたのせいではないわ。私たちがずっと席を外していたのだから。あまり気にしないでちょうだい」
ジャンヌの視線が少しだけ私の顔を掠める。
静かな瞳が私の姿をゆっくりと見つめて通り過ぎた。
そして、彼女は小さく微笑む。
「もっと話したいけれど、さっきカシスが待っているのが見えたから。歓迎の意味で近いうちにお茶に招待したいわ。すぐに伝言を送るわね」
私は正確に定義づけられない気持ちで、目の前の女性に視線を向ける。
そしてやっとの思いで呟く。
「・・・歓迎に感謝します」
「思ったより遅く出てきたね」
廊下を曲がると、すぐその前に立っているカシスの姿が目についた。
「そう?いつから待ってたの?」
「少し前から」
カシスは私の顔をじっと見るが、彼は私に何も聞いてこない。
カシスと私は並んで足を動かし始める。
「あっ!」
そうしているうちに、私たちはフィペリオンの二人に遭遇した。
どうやら彼らも私と同じようにペデリアン夫妻に挨拶に行く途中のようだ。
「まさかと思ったけど、こう見ると本当に人で合ってたのですね!」
オルカが私のことを指差すが、カシスはそれを折ってしまうかのように手で遮る。
パンドラはさっきから私を見ながら口をぽかんと開けていた。
彼女もオルカと同じくらい驚いているようだ。
「魔物?神話の中のセイレーン?」
カシスの眉をひそめるような表情が、私を魔物扱いしたパンドラに打ち込まれる。
だが彼女はそれを感じなかったらしく、魂の抜けた顔で独り言を呟いた。
「それとも絶滅したニンフ・・・?」
「行きましょう、カシス」
「ねえ、今、人の言葉を・・・」
カシスと私は、気が気でない2人を置いて引き返す。
どうせ今の彼らの状態では何を言っても聞かないに違いないから。
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晩餐会での惑いとオルカの侵入
パンドラはカシスに異性として関心を寄せるが、シルビアの意図的な(しかし純粋を装った)指摘に屈辱を覚える。その頃、晩餐会を抜け出したオルカは「毒蝶の主人」を探して別荘・カシスの部屋へと侵入する。
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ロクサナとの遭遇と拘束
カシスの部屋のテラスでリボンを拾ったオルカは、そこにいたロクサナを目撃し、その人離れした美しさに「人間ではない(進化種の魔物や霊体)」と強い衝撃を受ける。直後に追いついたカシスによって、オルカは連行・拘束された。
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ペデリアン当主・ジャンヌとの対面と歓迎
旅から戻ったカシスの父リセルは、ロクサナの過去の真実や意図を問うことなく「ゆっくり留まりなさい」と優しく彼女を受け入れる。母ジャンヌもロクサナを温かく歓迎し、ロクサナはペデリアン家の人々の思いがけない態度に戸惑いつつも心を開き始める。