こんにちは、ピッコです。
「言葉遣いには気をつけてください、聖女様!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
22話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 新聞の特報
その日、私は警備隊に証拠品を引き渡した後、引き上げることにした。
夜通し駆け回って疲れているだろうからと、先に帰るよう勧めてくれたのは、ほかでもないヒルデオンの気遣いだった。
警備隊に厳重に護衛されながら屋敷へ戻る頃には、すでに東の空が白み始めていた。
真夜中に突然姿を消した私に対し、屋敷は案の定、大騒ぎになっていたらしい。
「お、お嬢様ぁぁぁ……っ!!」
「うぅぅぅ、よかったぁ……っ!」
泣き声なのか悲鳴なのか歓声なのか判別のつかない叫びを上げながら、メリーとジェインが弾むように飛びついて抱きついてきた。
「本当にご無事でよかったです! 何かあったのではないかと心配で……どこを探せばいいかも分からず途方に暮れていたんですから……!」
そのあとに姿を現したのは、なんと完全武装をしたグリオンだった。
あまりに物々しい姿に驚いてその剣を見つめると、彼はいつものように穏やかな笑みを浮かべて言った。
「もしもの時は、私が直接出動したほうが早いですからね。はは」
うん。これからは周りをよく警戒して歩くことにしよう。
私は心の中で固く心に誓った。
せめてもの救いは、公爵様がここ数週間ほど屋敷を留守にしていたことだ。
もし鉢合わせでもしていたら、その場で執務室に連行され、二時間は説教を聞かされる羽目になっていただろうから。
自室に戻った私は、その日はそのまま泥のように眠りについた。
――そして。
目を覚ますと、あの事件の日から丸二日が経過した朝だった。
『うわぁ……よほど疲れていたんだな』
あれだけの修羅場を潜り抜けたのだから無理もない。
あくびをしながらぐーっと腕を伸ばしていると、部屋のドアから勢いよくノックの音が響いた。
返事をする間もなく、興奮を隠しきれない様子のジェインが部屋へ飛び込んでくる。
「お嬢様! これをご覧ください!」
「えっ、どうしたの?」
頬を真っ赤に上気させている様子からして、悪い知らせではなさそうだった。
ジェインは言葉の代わりに、胸に抱えていた束から一枚の紙を差し出してきた。
「新聞?」
「はい! 今日の新聞です! ここに置いておきますので、ぜひ読んでくださいね! 絶対ですよ! それでは私は屋敷中に配らなければいけないので、これで失礼します……!」
嵐のように語り散らかすと、ジェインは慌ただしく部屋を飛び出していった。
本当に新聞だけを置いて、あっという間に去ってしまった。
『新聞配達でも始めたのかしら……?』
首を傾げながら新聞を広げる。
そして次の瞬間、私はジェインがあれほど興奮していた理由を即座に理解した。
「な、なにこれ……」
【特集! 平凡な製糖工場の醜悪な素顔!】
― ハムバラ製糖工場の悪行が次々と明らかに ―
単なる普通の布教団と思われていた施設が、裏では違法な高利貸しを行っていただけでなく、違法薬物の売買まで手を染めていたことが判明した。
団は人々を薬物中毒に陥れ、無報酬で朝から晩まで奴隷のように酷使していたという。
この衝撃的な事実が世に明かされたのは、皇太子ヒルデオン・カイロス殿下と、聖女ロエーラ・ブリエタ公女の活躍によるものである。
幾度も通報されながら捜査が進まなかった事態を重く見た皇太子殿下が自ら動き、布教団への強制捜査を敢行。その過程で、神託を受けた聖女公女が同行し、聖女様は薬物中毒に苦しむ被害者たちを、一人ひとり丹念に浄化するために尽力された。
現場にいた被害者の一人は、涙ながらに当時を振り返る。
『聖女様は汗だくになりながら、私たち全員に聖水を振りかけて祝福してくださいました。自分の番が来ると、聖なる水が体にかかった瞬間に全身の重苦しさが消え、邪悪な気配が抜けていくのがはっきりと分かりました。そして何より、久しぶりに深く眠ることができたのです……』
王室は今回の事件を受け、大規模な捜査網を敷き、被害者救済を進めていく方針を明らかにした。
……さらに記事は続いていた。
記者の取材によると、聖女様が神託を受けて行動されたのは今回が初めてではないという。
かつて皇太子殿下が自ら指揮を執り、「犯罪者の巣窟」と呼ばれた≪バスティオン≫を制圧した際にも、聖女様は現場に立ち会っていた。
『違法に売買されようとしている聖遺物を守れ』
その神託を受けた聖女様は、危険を顧みずたった一人でバスティオンへ飛び込み、幾度となく命の危険に晒されながらも聖遺物を守り抜いたのだった――。
さらに神殿の調査によれば、聖女様は帝国民と神殿のために新たな噴水の建設を提案され――
記事の結びには、こう書かれていた。
『悪女』あるいは『偽りの聖女』と呼ばれた女性は、もはや存在しない。
ロエーラ・ブリエタ公女こそ、この時代において最も真なる聖女なのではないだろうか。
過去の汚名は、今こそ綺麗に捨て去られるべきである。
「うわ、なにこれ……」
猛烈な恥ずかしさが込み上げてきて、思わず顔を覆った。
この大袈裟極まりない記事はいったい何なの!?
これじゃあ、まるで救世の英雄にでもなったみたいじゃない。
しかも、バスティオンでの出来事までバッチリ載っている。
『あれって貴族や神官の極一部しか知らない話だったはずなのに……』
改めて記者の恐ろしいほどの情報収集力に感心させられる。
「……まあ、悪い気はしないけれど」
こんな風に好意的な記事が載るなんて、一体いつ以来だろう。
これまで「ロエーラ」を取り上げる記事といえば、
<特報! 聖女、実は悪女だった!?>
<これは聖女なのか、それともただの性格の悪い女なのか!?>
<もはや特報でもない! 聖女がまた問題を起こした>
<いい加減にしてくれ!>
こんなゴシップと批判ばかりだったのだ。
それに加えて、もう一つ嬉しい知らせがあった。
<記事の影響により、評判が 5 上昇します>
現在の評判:52
ついに評判が50の大台を超えることに成功したのだ。
ピロン!
<評判が50を超えました!>
暴言フィルター機能を解除できます。解除しますか?
数値が50を超えた途端、そんなシステム通知までポップアップした。
一瞬解除しようかとも考えたが、私は思い直してそのままにしておくことにした。
数字が上がるにつれて、不思議とこの「評判」がより大切なものに思えてきたからだ。
うっかり口を滑らせて、苦労して上げた評判が下がったら溜まったものではない。
フィルタリング機能さえあれば、どんな暴言を吐こうとしても安心だ。
もちろん、うっかり宿敵に甘い言葉と誤認されるような事態だけは気をつける必要があるけれど。
『まあ、その辺は私が気をつければいいわね』
私は満足気に微笑みながら胸を張った。
さて、あとは――
「これでニキビはもうできなくなるのかな?」
膝の上に視線を落とす。
<ニャ?>
何日も前から知らんぷりを貫き通しているデブ猫――ジェリーがそこにいた。
「あなたの正体は何なの?」
<ニャ?>
「私のことを、どこまで知っているの?」
<プニャ?>
「システムは? システムについて何か教えてくれないの?」
<ニャニャニャ?>
ここ数日ずっと繰り返してきたやり取りに、私の目は半眼になった。
ああ、そう。
つまり、絶対に話す気はないってことね。
私はそれ以上問い詰めるのをやめ、苦笑しながらジェリーを胸に抱き上げた。
「今思えば、あの日見たのは夢だったのね。ジェリーはただの可愛い猫だったんだ」
ゴロゴロ、ゴロゴロ……。
言葉に応えるように、ジェリーは気持ちよさそうに喉を鳴らした。
「でも、もうすっかり元気になったみたいね?」
<……にゃ?>
「体もふっくらしてきたし、毛並みもツヤツヤ。そうでしょう?」
<ふにゃ……?>
「本当によかった。そろそろ元の家に返してあげてもよさそうね。ね、ジェリー?」
<にゃ、にゃーっ! にゃーっ!>
驚いたように身をよじって抗議の声を上げるゼリー。
ふふん、ダメね。とぼけても無駄。
「さてと。先生の授業はいつだったかしら……?」
本格的にカレンダーに目をやり日付を数え始めると、腕の中にいたジェリーがぴょんと床に飛び降りた。
そして――
<だ、だめニャ! 行っちゃだめニャ!>
「やっと口を開いたわね、このぽっちゃり猫」
びくっ!
うっかり喋ってしまった事態に気づき、ジェリーは目をパチパチさせた。
<にゃ……?>
「もうその手は通用しないわ。とぼけるのはやめなさい」
<……にゃあ>
観念したジェリーは、おとなしく私の前にチョコンと座り込んだ。
私は腕を組み、上からじっと見下ろす。
『……かわいい』
うん、めちゃくちゃ可愛い。
……いや、騙されてはいけない。
「それで、あなたの正体は何なの?」
<……私は、精霊だよ>
「精霊が、どうして私の前世やシステムのことを知っているの?」
<それは……>
「それは?」
<それは……言えないんだニャ>
呆れて開いた口が塞がらない。
知っていることは散々喋っておきながら、どうやって知ったのかは教えられないなんて。
<分かってほしいニャ。話したい気持ちは山々なんだけど……私もどうしようもないんだニャ……>
私が目を細めてじっと見つめると、ジェリーは慌てて立ち上がり、しどろもどろになりながら弁解した。
……何か言えない制約のようなものがあるのだろうか?
私がミッションに失敗するとペナルティを受けるように。
それなら、無理に話させるわけにはいかない。
私の好奇心のためにジェリーを困らせたくはなかった。
「分かったわ。もう無理に話さなくていいよ」
<……本当かニャ?>
「うん。でも、話せるようになったら教えてね」
<もちろんだニャ!>
嬉しそうにぴょんぴょんと跳ね回るジェリー。
うん、やっぱり可愛い。
「それで、あなたは何ができるの?」
<私のこと?>
「そう。喋れる以外に、何か特別な能力でもあるの?」
どう見ても普通の猫ではない精霊なのだから、何かすごい魔法でも使えるのではと胸を躍らせた。
<ふふっ、私といえばね……!>
ジェリーは自信満々にポンと胸を張った。
やっぱり、すごい秘密兵器みたいな力があるのね!?
期待に目を輝かせる私に、ゼリーは胸を張って言い放った。
<私はとってもかわいいんだよ! 相手の心をメロメロにしちゃうんだニャ!>
……うん。ただの自惚れ屋のデブ猫だった。
「もういい。話は終わり」
<今、私を無視したニャ!? 可愛さは最強なんだニャ! 猫が世界を救うんだニャ!>
「うんそうだね。現れたわね、救世の英雄様」
棒読みでパチパチと拍手を送る。
すると、その拍手の音を聞きつけてメリーが顔を出した。
「お嬢様、どなたとお話しされていたのですか?」
誰もいない部屋を見回し、不思議そうに首を傾げるメリー。
一瞬ためらったものの、私は正直に答えた。
「うん?ジェリーと話していたのだけど」
「ああ、そうだったんですね! 私もよくジェリーとおしゃべりするんですよ!」
ジェリーは深く納得したように、にこりと笑った。
「ジェリー、おはよう。よく眠れた?」
そう言いながら、私は見せつけるようにジェリーを抱きしめた。
ジェリーも「にゃあ、にゃあ」と鳴きながら、満足そうに尻尾を振っている。
あの見栄っ張りなデブ猫め。
「それで、メリー、どうしたの?」
「あっ、そうでした! 大変なんです、お嬢様!」
「大変って……あなたも新聞を持ってきたの?」
「いいえ違います! ジェインが屋敷中の新聞を全部回収して回っているんです!」
なるほど。
『……相変わらず新聞の回収だけは手際がいいわね、ジェイン』
「それで、大変なことって?」
首を傾げる私に、メリーは慌てて口を開いた。
「それが、公爵様が凄まじい勢いで……」
バンッ!!
部屋の扉が爆音と共に叩き開かれた。
「これは一体どういうことだ、ロエーラ!!」
「ひっ……! こ、公爵様が、お嬢様をお探しでして……」
怒髪天を突く勢いで現れた公爵の姿に、メリーは目を白黒させながら後退りした。
「……もう見つかってしまったようですね?」
うん。しかも、これ以上ないくらい派手に。
私は引きつった笑みを浮かべながら、こくりと頷くしかなかった。
-
評判の上昇と悪名の払拭: ハムバラ製糖工場の悪事摘発と被害者救済への貢献が新聞で大きく報じられ、過去の汚名が晴れて「真なる聖女」として称賛されるようになった。これにより評判が50を超え、システムの暴言フィルター機能が解除可能となった。
-
ジェリーの正体発覚: 数日間とぼけていたデブ猫のジェリーがついに言葉を話し、自身の正体が「精霊」であることや、自身の可愛さが最強であると語るなど、会話を通じて少しずつ秘密が明らかになった。
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公爵の帰還と修羅場の発生: 屋敷に配られた新聞を回収するジェインの裏で、数週間留守にしていた公爵が凄まじい勢いで激怒しながら部屋へと押し入ってきた。