こんにちは、ピッコです。
「言葉遣いには気をつけてください、聖女様!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
28話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 秘密の友達
「今日は本当に楽しかったです。ハメル、公女様。」
「私もです、ニア! また今度お会いできますか?」
ハメルが名残惜しそうに言った。
「もちろんです! 私もその竣工式に行きます。その日に会いましょう。」
「まあ、とても嬉しいです。それじゃあ、その日に必ずお会いしましょう。」
「はい。またその日にお会いしましょう。公女様も来てくださいますよね?」
「ええ、もちろん。」
「約束ですよ?」
満足のいく返事をもらってようやく、ニアは二人に背を向けて去っていった。
遠ざかるニアを見送りながら、ロエラは眉をひそめた。
*(そういえば、どこの家の人か聞いてなかったわね。)*
質素な服装なのに、高価そうな腕輪を身につけている。ドレスを買いに来るくらいだから貴族なのだろうと思う反面、さっき街中で口論していた様子を見ると、必ずしもそうとは思えなかった。
いろいろな意味で拍子抜けした。
「まあ、いいか。」
完成式でまた会うことになっているのだから、その日に会えば正体も分かるだろう。ロエラはそれ以上考えるのをやめ、ハメルを連れて近くのカフェへ向かった。
甘いケーキをお腹いっぱい食べたあと、ロエラは慎重に口を開いた。
「ハメル。」
「はい、お嬢様!」
「あなたにもう一つお願いしたいことがあるんだけど、引き受けてくれる? 報酬は十分に払うわ。」
「もちろんです! お嬢様の頼みでしたら、無償でだってお手伝いできます。」
「いえ、それはちょっと……。」
ロエラは大切そうにしまっていた紙を取り出して差し出した。
「これは……」
「どう? 作れそう?」
ロエラは胸を高鳴らせながら尋ねた。
「やってみないと分かりませんが、すごくやる気が湧いてきました。特に、この流れるような曲線がとても気に入りました。こんなデザインは生まれて初めて見ます……胸が高鳴ります!」
ふう、よかった。興奮するハメルの様子を見て、ロエラはほっと胸をなで下ろした。
知り合いの中では一番変わり者ではあるが、その腕だけは確かだ。天才が努力までしたら、できないことなどあるだろうか。
「悪いけど、完成品ができるまでよろしく頼むわ。」
「お言葉だけで十分です。」
元気よく答えるハメルに、ロエラは満足そうに微笑んだ。
—
その頃、カフェの外では――窓際に座る二人を見つめる人物がいた。
「ふふっ。なんだか面白そうね、ちょっと妬けちゃう。」
それは、先ほど別れたニアだった。そんな彼女のつぶやきに、隣に立つ眼鏡の人物が尋ねた。
「その格好で、今日は一体何をしていらしたのですか?」
「ちょっと出歩いていたら、友達ができたの。」
「友達ですか? まさか……あの聖女様のことをおっしゃっているのでは……」
「そうよ。ロエラとハメル。この二人が、私が最近できた友達なの。」
あまりにあっさりとした答えに、ヘスティンはため息をついた。
「ずっと気にされていましたが、結局ご自分で会われたのですね。」
「偶然よ、偶然。」
「では、そのことを殿下にご報告してもよろしいでしょうか?」
「さあね。私に新しくできた友達のことまで、息子に報告する必要があるの?」
ニア――いや、ヒルデオンの側近であり、ニキータの娘でもあるヘスティンは静かに頭を下げた。
「皇妃陛下。」
「もういいわ。さっさと帰りましょう。この子がお腹を空かせてかわいそうだから。」
元気よくそう言ったニキタは、ヘスティンの肩を軽く叩き、そのまま馬車へ乗り込んだ。肩をさすりながら、ヘスティンは窓際に座るロエラへ視線を向けた。
*(ずいぶん気にしていらっしゃったようですが……)*
以前、聖女が皇室を訪れたときのことだ。どうやら皇妃様は、殿下と聖女が一緒にいるところを目撃されたらしい。そのあと私のところへ来て、「あれは誰なのか」と何度も尋ねられたので、「聖女様が用事で訪問されただけです」と大まかに説明しておいたのだが……。
*(結局、自分で見つけ出して、友達にまでなってしまわれたのですね。)*
皇妃様と聖女様が友達とは。一体どんな関係なのか、私にはさっぱり分からない。
そう首をかしげながら馬車に乗り込むと、ニキタが腕を振りながら言った。
「今日のことは、うちの息子には内緒にしておいてね?」
「それは難しいかと……」
「お礼はちゃんとするわ。」
「私は殿下の側近です。」
「たくさんお礼するから。」
「殿下の側近として、殿下のお母様にも礼を尽くしてお仕えする必要がありますから。……秘密にしておきます。」
ヘスティンのあまりにも素早い寝返りとともに、馬車は皇宮へ向けて出発した。
—
完成式が開かれる数日前。
ハメルから、噴水が完成したとの知らせが届いた。
*(手際がいいとは思っていたけれど、ここまで早いなんて。)*
思わず感心してしまうほどの速さだった。
今日はヒルデオンと一緒に、完成した噴水を見に行くことになっている。呪いを解くための協力関係というだけでなく、噴水や開発事業を通じて関わりを持ってきた相手でもある。だから、この完成式は彼にとっても大切な行事だった。
*(少し早めに出発しよう。)*
約束の時間まではまだ余裕があったが、ロエラはそう決めて屋敷を出発した。
これまではいつもヒルデオンが私を待っていてくれた。だから今日は、私が先に待つつもりだった。そう思って約束の時間より30分も早く着いたのだが――
*(あそこに立っているのって、まさか……)*
ベンティオンの入り口に、ひときわ背の高い男性が立っているのが目に入った。遠くからでも目を引く長身と、がっしりした体格。漆黒の髪、緑色の瞳。息をのむほど整った容姿。ヒルデオンだった。
*(……いや、一体どれだけ早く来てるのよ。)*
私は急いで歩み寄った。
「もうお着きだったのですね、殿下。」
「おや、聖女様。」
「気軽にロエラと呼んでください。」
これから何度も会う間柄なのに、「様」付けで呼ばれるのは少し堅苦しい。
*(それに、聖女って呼ばれるたびにちょっと胸が痛むし。)*
本物の聖女じゃないのだから……。でも、ここまで来ると少し複雑な気分だ。
*(これって、本当に聖女なんじゃない?)*
評判もどんどん良くなっている。悪いことは何一つしていない。世界中に広がったバグまで浄化し、そのうえ皇太子の呪いまで解いている。これで聖女じゃないと言うなら、一体何なのだろう。んだか理不尽な気分だ。原作のロエラも、こんな気持ちだったのだろうか。
心の中でぶつぶつ文句を言っていると、ヒルデオンが口を開いた。
「もっと気楽に呼んでくださって構いません。」
これ以上気楽にって……。
*(ヒルデオンって呼べってこと?)*
彼を名前で呼ぶ自分の姿を想像してみた。……うん、想像しただけでも落ち着かない。
「私は今のままで十分です。」
「そうですか……」
そう返す彼の声が、少し寂しそうに聞こえたのは、きっと気のせいだろう。
「では、行きましょう。」
「はい。」
ベンティオンを訪れるのは、これで三度目だった。一度目は、ヒルデオンと一緒に土地を見に来たとき。二度目は、ハメルが噴水の建設を始めたあと、進捗を確認しに来たとき。そして今日――。
*(ここへ来るたびに、新しくなっているわ。)*
訪れるたびに、町の様子は大きく変わっていた。建物の外壁は色鮮やかに塗り替えられ、整備されていなかった道もきれいに舗装されている。道の両脇には野花まで植えられていた。少し前まで見捨てられていた場所だったとは、とても信じられないほどだった。
その変化は、自分でも気づかないほどあっという間だった。特に今日はなおさらだ。数日後に控えた行事の準備が着々と進められていて、あちこちが華やかに飾り付けられていた。行事の準備のために忙しく動き回る人々の姿も目に入る。
「皆さん忙しく働いているのに、私だけ遊んでいるみたいですね。」
「この行事は神殿側が担当するものです。あなたはただ出席して、その場にいてくだされば十分です。」
少し呆れたような口調で、ヒルデオンが答えた。
出席するだけでいいなんて。
*(なんだか、ものすごく大事に扱われている気分だな。)*
照れくささをごまかすように、私は鼻先を軽くこすった。
「それなら安心しました……。」
「それと、人手の大半は公爵家が支援してくださったそうです。」
「私のお父様がですか?」
「はい。ご存じありませんでしたか?」
驚いたことに、本当に知らなかった。
「大司教様の祝辞にも書かれていたと記憶しています。」
「完成式の開催にあたり、支援してくださった皇室と公爵家への感謝、という一文のことですか?」
「はい。」
「……あれがそういう意味だったとは思いませんでした。」
ただの形式的な謝辞だと思っていたのに……?
*(皇室への感謝は、式の開催許可やヒルデオンの土地提供へのお礼。では、公爵家への感謝というのは……。)*
そう考えてみれば、特に理由なんてなかった。私は、その理由を深く考えようともしなかったのだ。それが、資金面での支援を意味していたなんて。遅れて気づいた事実に、思わず頭を抱えた。まったくもう。私の察しの悪さときたら。
*(今度、公爵様にちゃんとお礼を言わないと。)*
それにしても、こんなことをしてくれたのに何も恩着せがましく言わないなんて……。もし別の人だったら、食事のたびに「私のおかげだ」と言いに来そうなものなのに。
そんな驚きの事実に気づいているうちに、目的地だった噴水の前へ到着した。
「わあ……」
私は思わず口をぽかんと開けたまま、完成した噴水を見つめた。前回見たときも感動したが、これはまさに――
*(世紀の傑作じゃない?)*
そう思っていたのは、どうやら私だけではなかった。
「すごいですね。」
ヒルデオンも感嘆したようにつぶやいた。私は嬉しくなって笑顔で答えた。
「でしょう? 本当に素敵ですよね。ベンティオンの象徴としても十分ですよね?」
「十分どころではありません。十分すぎるほどです。」
彼は心から真剣な口調でそう言った。
「あなたと出会えたことは、もしかすると私の人生最大の幸運だったのかもしれません。」
「幸運なのかもしれませんね。」
いや、そんな大げさに褒めなくても。慣れない言葉に、顔が熱くなるのを感じた。しかも、あんなに整った顔で言われるものだから、余計に破壊力がある。見れば見るほど、どうしてみんながヒルデオンを怖がるのか分からない。顔もいいし、性格だって優しいのに。
「でも、あの彫像……誰かに似ている気がするんですけど。」
ヒルデオンは少し考え込むように呟いた。
「誰に似ているのですか?」
私は彫像を頭の先から足元までじっくり眺めた。
ルケラの象徴である天秤を手にした彫像は、頭から垂れた布をかぶっていた。硬い石像でありながら、薄い布の柔らかな質感まで見事に表現されている。布の下に見える顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。軽く目を閉じ、口元に優しい微笑みをたたえたその姿は――。
「まさか、あれって……」
「ロエラ。あなたに似ているようですね。」
ヒルデオンが確信したように言った。
*(……ふふふ。聖女様のお顔が世界を救ったんですね!!!)*
どこからか、ハメルが歓声を上げる幻聴が聞こえた気がした。
「これ、今から修正するのは難しいですよね?」
私が恐る恐る尋ねると、ヒルデオンは目を丸くした。
「お気に召しませんでしたか?」
「いえ、そういう問題ではなくて……」
あまりにも自己主張が強すぎるように見えないか、それが心配だったのだ。だが、ヒルデオンは本当に事情が分かっていないようだった。
*(はは……まあ、今さらどうしようもないか。)*
明後日にはもう完成式なのだから。
「いいえ。とても気に入りました。」
「私もです。」
「え?」
「私も気に入りました。」
……もちろん、気に入ったのは彫像のことだ。
*(うーん。この人、言葉にはもう少し気をつけたほうがいいかも。)*
下手をすると、世の女性をみんな勘違いさせてしまいそうだ。
「私の顔に何か付いていますか?」
ヒルデオンの危うさを思いながら、少しいたずら心でそう尋ねると、彼は慌てて自分の顔を触った。
「格好良さが付いていますね。」
「……?」
「冗談です。格好いいのは冗談ではありませんが。」
ヒルデオンは、自分の顔がどれほど整っているのか、もう少し客観的に理解したほうがいい。そう、あの顔なら何を言っても様になってしまうのだから。
彼は少し戸惑ったように黙り込んだあと、ふっと微笑んで言った。
「ロエラのお顔にも、美しさが宿っていますよ。」
*(この人、本当に危険だ……!)*
-
ニアの正体と皇妃の秘密:質素な装いながら高価な腕輪を身につけていたニアの正体は皇妃ヒルデオンの母ニキタであり、彼女は聖女ロエラと秘密の「友達」関係になり、側近のヘスティンを巻き込んでその事実を皇太子である息子に内緒にするよう口止めする。
-
噴水の完成と公爵家の支援:数日後に迫ったベンティオンの竣工式に向け、天才職人ハメルによって驚異的な速さで美しい噴水が完成し、ロエラは知らぬ間に実家の公爵家が多額の資金面で事業を支援していたことを知る。
-
ヒルデオンとロエラの急接近:完成した噴水の中心にある彫像がロエラにそっくりであることが判明し、ヒルデオンからのストレートな好意や思わせぶりな言葉の数々に、ロエラは戸惑いながらも心を揺さぶられていく。