こんにちは、ピッコです。
「育児もの小説の悪役に転生しました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
23話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 欺瞞の行進と、見据える真実
「予想されていたとおり、薔薇宮の裏庭付近で見つかった呪いの証拠です」
すべては滞りなく進んでいた。クレオ皇妃は私の前で丁重に頭を下げ、四角い箱に収められた黒い物体を第一近衛隊長へと手渡した。
すべてが予想どおりだった。
「大祭司はいつ来ると言っていた、ナタリー?」
「今こちらへ向かっているそうです」
「ふん、こんな状況でのんびりしているとは。まあ、悪いことではないな」
クレオ皇妃は上機嫌だった。今回のことは、幸いにも時間が味方してくれた。無理をした甲斐もあった。わずか半日ほどで、これほどまでに「闇の力」が込められた呪いの品を手に入れるのは容易なことではなかった。
宮殿へ密かに忍び込み、夜中にこっそり薔薇宮の近くへ埋める程度なら、それほど難しいことでもなかったが。
まあ、以前にも似たような計画を立てたことはあった。だから薔薇宮に妙な剣があると聞いた瞬間、すぐに呪いと結びつけることを思いついたのだ。
自分が贈った剣が問題になるとは思ってもみなかったが、何の関係があるというのか。ティタニアは決して、クレオがその剣を贈ったなどとは口にできないはずだ。
普段クレオ皇妃のそばに仕え、肌の手入れなどを担当している主席侍女と、ナタリー侍女長が――薔薇宮で問題の証拠品が破壊されるのを見届けた。
皇妃は再び身なりを確認した。普段好んで着ていた露出のある服ではなく、比較的端正な藍色の衣装を身にまとっていた。髪に挿していた星形の髪飾りも外し、代わりに清楚に見えるサファイアのヘアピンをつけた。今日の彼女は、実の娘のように可愛がっていた大切な皇女が呪いを受けたという事実に涙し、訴えなければならない役目なのだから。
まもなくマルジード大祭司が到着する。そうしたら彼女が彼を出迎え、皇后宮へ連れていく予定だった。
「ふん、あの者たちだけで大祭司を呼べると思っているのか? 三日も意識を失ったまま目を覚ますことすらできない――」
「……大司祭を呼び寄せた言い訳のほうが、もっと笑えるけどね!」
クレオ皇妃はおそらく、ティタニア皇女が目を覚ますだろうと予想していた。まだ目を覚ましていないというのは嘘だ。事故が自作自演なのかどうかはまだ分からない――調べさせてはいるものの、カストライン公爵家が徹底的に対処しているため、得られる情報は何もなかった――それでも皇后宮へ入った、あの幼い子供の近況だけは把握しておく必要があった。
せいぜい刺してみろとばかりに放り込んでやった侍女たちを、まさかあんなやり方で懲らしめとは誰が思っただろう。その驚くべき行動を見て、クレオはティタニアが――おそらく無事に生きているだろうと推測していた。
だが、それも彼女たちだけが大大神官を手中に収めたと思い込んでいたからこそ、できた推測だった。大神官は全部で五人。そのうち二人は老衰で半ば引退していた。若い大神官はわずか三人。その中でも、イリアンとマルジド大神官が有名だった。残る一人も若くして大神官となったものの、その後は研究に没頭し、外部ではほとんど活動していないという。
つまり、重要なのはイリアンとマルジド、この二人だった。
イリアン大神官は代表的な平民派で、貴族以外の身分の者にも神聖力による治療の門戸を開くべきだと主張している人物だった。マルジド大祭司は、代々名高い名門の出身であり、高貴な身分の者が行った尊い行いへの褒美として神から授けられる神聖力は、それにふさわしい者、すなわち高貴な者にのみ与えられるべきだと主張していた。
この二つの派閥を中心に、神殿内部でも権力争いが激しく繰り広げられていた。現聖皇が亡くなり、新たな聖皇を選出する時が来れば、戦争にも等しい争いが起こるだろうと誰もが予感していた。その端的な例が、皇宮で起きた今回の事件だった。
カストライン公爵家は皇女を治療するため、イリアン大祭司を呼んだ。そしてクレオ皇妃は、イリアン大司祭でさえ解明することも治療することもできなかった呪いを証明し、それを治療してティタニア皇女を目覚めさせるために、マルジド大祭司を呼び寄せた。
何?
俗世の権力を欲しがらない神殿? 笑わせる。
この件は、イリアン派とマルジド派の代理戦争も同然だった。
皇妃が鼻で笑いながら神殿を崇拝する者たちを嘲っていると、扉が開いた。
「マルジド大祭司様がお見えになりました」
「おお! クレオ皇妃殿下。お会いするたびにお若くなられますな!」
「まあ、大祭司様ったら。いつも私が言おうとしていたことを先におっしゃるのね」
クレオ皇妃が妖艶に目を細めた。理性を重んじ、清廉な心身を保つべき大神官でありながら、マルジドはクレオ皇妃の微笑みに恍惚とした表情を浮かべた。
マルジドは一見すると、気さくで人当たりのいい近所のおじさんのようだった。ふくよかな体をゆったりとした大神官服で包み、装飾品ひとつない質素な身なり。口元には人のよさそうな笑みを浮かべており、見た目だけなら好印象を抱かせる人物だった。
しかし、そのゆったりとした大神官服は、質のいい亜麻を一年かけてようやく織り上げられるほど貴重な布で仕立てられたものだった。そして一見ありふれた布にしか見えない腰帯の内側には、高価な宝石を金糸と銀糸で縫いつけ、神の紋様を刺繍していた。一見すれば、ただ人のよい穏やかな司祭にしか見えない――。その装いも、実際に身につけているものはクレオ皇妃のドレスの価格に匹敵するほどだった。
「今回の件については、よく聞いていますよね? うまく処理してくださいますよね?」
「私がいつ皇妃殿下を失望させたことが、一度でもありましたか?」
「ありませんとも。ふふ。今回の件さえうまく片づけてくだされば、たっぷりとお礼をいたしますよ」
「皇妃殿下は、いつも私の能力を高く評価してくださいますからね」
和やかに談笑しながら、クレオ皇妃は招待した証人――昨日、薔薇宮から飛び出して騒ぎ立てた侍女――と、証拠品――皇妃が捏造した呪いの証拠――を伴い、ライラック宮へ――へと向かった。
マルジドは非常に口の達者な人物だった。彼はあらゆる事情を推測しており、皇妃の機嫌を取る準備も万全だった。つまり、自分の利益のためなら、いくらでも嘘をつくことができた。未来の栄華のためなら、できないことなどあるだろうか? 未来の皇帝に恩を売ることができれば、将来自分が聖皇になれるかもしれないではないか。
薔薇色の未来を思い描きながら、マルジドはゆっくりと歩いた。自分が幼い皇女が呪われたと証言することで起こるであろう他の出来事も、無数に死んでいくであろう――彼らの命など気にも留めていなかった。もともと、大義には犠牲がつきものなのだ。
万が一、自分がベッドに横たわって眠ったふりをしている皇女に神聖力を注ぎ込んでも、なお目を覚まさないふりをするのなら、呪いを浄化するという名目で短剣を突き刺すつもりだった。神の力が宿った神聖な短剣で刺したあと、苦しめば苦しむほど呪いが深いのだと言って治療を続ければ、誰が何を言えるだろうか。
ひとまず悲鳴を上げさせ、苦痛で目を覚ますことさえできれば成功したも同然だ。いくら悪名高くとも、容姿だけはひときわ美しいと噂される相手が泣きながら悲鳴を上げる姿を想像すると、自然と興奮が込み上げてきた。いくら頑固な皇族とはいえ、大祭司が何をしでかそうと拒むことはできない。その点が、いっそう刺激的だった。
呪いの証拠品だと言って、闇に染まった物を皇妃が用意してきたのを見ると、神殿で異端と規定されている者たち――闇の力を持つ者たち――と皇妃が密かに手を組んでいるのかもしれない。だが、適当に見て見ぬふりをするつもりだった。神殿としても皇室の弱みを一つや二つ握っておく必要があるのだから。それに、競争相手を排除するには実にいい方法ではないか。きちんとした資金源を確保しておくのも悪くないと思った。
「思ったより、私たちの前に立ちはだかる者がいませんね。兵士たちに止められると思っていたのですが」
ライラック宮の前で、マルジドが意外そうに言うと、皇妃は鼻で笑った。
「事態がこんなふうになったのを、あの者たちが防いだところで何になったでしょう? 余計なことを」
「おっしゃる通りです」
「皇帝陛下がお亡くなりになるのを阻む者がいたなら、それを口実に捕らえられたのに。残念ですわ」
「異端に同調した罪まで問うことができますからね」
互いに気が合う一組の男女が、満足げに笑った。
皇后宮の正門前には、たった一人が立っていた。皇后付き侍女のコンスタンス伯爵夫人が、頭を下げていた。
勝者の笑みを浮かべながら、皇妃が言った。
「コンスタンス、久しぶりね。そう、皇后陛下はお元気かしら?」
「皇后陛下は、皇妃殿下のご心配のもと、つつがなくお過ごしです」
「まあ。この皇后宮で長年、皇后陛下のご寵愛を受けてきた幼い皇女が呪いに苦しんでいると今さら知ったというのに、ずいぶん平然としているのね……。あの方も子を持つ母親なのだから、さぞ胸を痛めていると思っていたのだけれど」
「中へ入りましょう」
コンスタンスの反応が面白くないとでもいうように、クレオ皇妃は口を尖らせたが、とりあえず中へ入ろうというマルジド大神官の促しに従った。すでにすべての調査は終わり、皇帝の許可も下りていた。最後まで誰にも止められずに終わった肩透かしのような調査だったが、疑う者はいなかった。
『果たして、あの小娘がどんな手で私を迎え撃つのか?』
クレオ皇妃は興味津々だった。
食事の席で、無邪気に笑うふりをしながら皇帝からそれとなく自分を追い出すよう仕向けたではないか。それ以来、直接顔を合わせることはなかったが……。皇后には策を弄する才がなかった。よほど大きな打撃になるようなことでなければ、じっと耐えることに努めていた。
しかし、大祭司を利用して侍女たちに祈祷をさせたことは、皇后らしい行動ではなかった。まあ、これさえも皇后が裏で仕組んだことなのかもしれない。そうでなければ、あの小賢しい幼い娘が策を――だったのかもしれない。今さらカストライン家を後ろ盾にするつもりで、こんなふうに振る舞うなんて?
どちらにせよ、皇后を自分の助力者として置いておくには、あまりにもひどい老いぼれだった。今回の件がきちんと片づけば、皇后を廃位させようと主張するつもりだった。皇女一人まともに看護できず、呪いに蝕まれていくのを今まで放置していたのだから、資格がないと。
もちろん、薔薇宮にある剣は、本当に自分にとっても予想外の出来事だった。自分が贈った剣が、そんな……妙な剣だったなんて? どうせクレオ皇妃本人がレイモンに贈り――何かが起きれば、ティタニアがひっくり返してしまうだろうけれど。
ティタニアがそんな力を秘めた名剣を手に入れる方法などないことを、彼らが知るはずもなかった。最初に決めたとおり、ブリアンに渡さなくて正解だった。ブリアンの手に渡ってからこんな騒ぎが起きていたら、あとでどれほど頭を抱えることになっただろう。
実のところ、皇妃はいまだに、ティタニアがレイモン小公爵にあの剣を贈らなかったことを不思議に思っていた。婚約者を呼ぶ、そんなありふれた口実だったのに、なぜ?
まあ、今さら問題が起きたところで、皇妃はその理由に興味などなかった。ただ、自分が――策を弄することのできる要素さえあれば十分だった。もし剣が突然大人しくなったふりをして、マルジド大祭司がティタニアを治療したあと、それをそのまま利用することもできる。魔剣であれ聖剣であれ、結局は人間が名前をつけて呼ぶものだ。そして皇妃は、それが何であろうと徹底的に自分のために事実を捻じ曲げ、利用するつもりだった。
あれほど鉄壁のように人の出入りを阻んでいたため、皇后宮の中へ入るまで何の抵抗もなかった。クレオ皇妃は上機嫌で歩いた。皇帝だけが通ることのできるロイヤルガードを三人も連れてきたことで、さらに満足していた。誰であろうと反抗すれば、ひどい目に遭うことになるだろう。
「ティタニア皇女殿下がお過ごしになっているお部屋です」
コンスタンス伯爵夫人が閉ざされた扉の前で、乾いた声で説明した。クレオ皇妃は、なぜか妙な胸騒ぎを覚えた。
皇后宮が、どうしてこんなに静かなの?
いくら何でも、皇后が今まで姿を現さないのはおかしかった。エイドリアン皇太子も、自分の母親が窮地に陥っているというのに、助けようとすらしないなんて。
とにかく、直接皇后宮の中へ入り、皇女を確認しなければ、「呪いにかかっている」と診断して治療することもできない。だから皇女をしっかり隠しているのだと思っていた。それだけでなければ、クレオ皇妃が訪ねてくる前に「皇女がようやく目を覚ました」と言い張り、さっさと追い返すつもりだった。
自分には呪いなどかかっていないと主張しながらマルジドに会おうとしなければ、かえってその態度こそ怪しいと侍女たちに証言させ、「ティタニアは呪いの影響でおかしくなった」と主張するつもりだった。呪いを受けていようが、狂っていようが、とにかくカストライン公爵家の養女を救い出したのは事実なのだから、婚姻については大きな問題にはならず、皇帝も黙認するはずだ。
どのみち皇后に良い結末など訪れない。だから反抗が激しくなるだろうとは思っていたけれど……。部屋の扉の前で、クレオ皇妃は本能的に一瞬――思わず立ち止まった。まさにその時だった。
「皇妃殿下!」
遠くから息を切らしながら、皇妃付きの侍女の一人が慌ただしく駆けてきた。クレオ皇妃は眉をひそめた。
「皇妃殿下! 少々お待ちください! 大変です!」
「こんな大事な時に、よくも私を呼び止めたわね! これ以上に何が大変だというの!」
苛立ちが込み上げた。しかし、普段とは違って汗だくになりながら駆けてきた侍女が、焦った様子で叫んだ。
「ブ、ブリアン皇子殿下が、突然現れた魔獣に追われて、迷路庭園の地下へ落ちてしまわれました!」
「な、何……何ですって!?」
クレオ皇妃は心底驚き、ひっくり返った声を上げた。
—
「準備はすべて整いました」
レイモンは副官の言葉に軽くうなずいた。
「罠の配置は?」
「良好です」
「皇妃側の動きは?」
「どうやら、何も気づいていないようです。私は……」
「何か言いたいことでもあるのか?」
「正直、私は今回のことが理解できません」
カシアンはどこか釈然としない表情で言った。
「率直に申し上げてもよろしいでしょうか? ティタニア皇女殿下がいったい何をお考えなのか、私には分かりません。いくら命の恩人とはいえ……ビビお嬢様が、どうしてあれほどあ The あの方を慕っていらっしゃるのかも」
カシアンは現カストライン家当主、オルト公爵の右腕ともいえる副官の甥だった。カシアン公爵の名にちなんで、息子の名前をつけてもいいかと尋ねられ、それを許したほど、二人の主従としての忠誠関係は確かなものだった。
「ええ、まあ、以前の契約条件そのものは……これまではこちらが損をするようなものではありませんでした。たとえ向こうが何か企んだとしても、こちらですぐに対処できましたし。ですが、今回はまったく別の話です! 下手をすれば、皇宮に魔獣を放ったのはこちらだと濡れ衣を着せられる可能性も高いんです。実際、今回の件だけを見れば、そう言われてもおかしくありません」
「お前が考えたことを、私が考えつかなかったとでも思っているのか?」
「いいえ、そういうわけではありません」
カシアンは深いため息をついた。
「調査なら、もちろん続けました。ご命令どおり、すべて徹底的に調べ上げました。……ただ、私たちが思っていた以上に、ずっと不気味な場所だったようです」
一見するといつもそうだったため、ティタニアの境遇がそこまで劣悪なものだと予想できる者はほとんどいなかった。詳しく調べてみると、ティタニアの境遇は中身の腐った卵のようなものだった。しかし、その実情を本格的に知った以上、どうするべきか?
カシアンの立場からすれば、公爵家でどうにかして彼女を救おうとしても、そのたびに魔獣が押し寄せてきて死ぬよりもひどい暮らしを強いられている罪人たち――領民たちの生活のほうが切実だった。そして、そんな領民たちの暮らしを少しでも良くすることのほうが――見守るために、危険が迫るたび自ら身を投げ出し、魔獣の血を全身に浴びながら野外で夜を明かすことなど、裕福な公爵家の一員たちにとって同情すべきことですらなかった。
「それで、何だというんだ?」
「……」
残念ながら皇女は、どう見ても生まれが良いとは言えなかった。下働きの娘として生まれながら、皇室でカストライン公爵家に無理やり押しつけようという野心を抱くようになったこともそうだったし、エレイン皇妃の虚しい人生もそうだった。こうした事情の中で、否応なく悪女として扱われ、この事情に巻き込まれることになったレイモンを――そう振る舞っているだけに、なおさらだった。
「この前だって、薔薇宮の侍女たちに食事を出さないようにして騒ぎを起こしたじゃないですか。これまで皇女という身分を盾にして、どれほど公爵様を侮辱し、苦しめてきたと思っているんです? それでも皇族ですよ。きちんと食事をして、暖かい場所で、安全に暮らしていたでしょう」
「だから、私が罪悪感を抱く必要はないと?」
「皇室がこれまでカストライン公爵家に何をしてきたと思っているんですか」
カシアンの言葉には、根深い不信と怒りが滲んでいた。
「結界を維持するための供物の一つが『現皇室の血』というだけでも、私は本当に、この忌々しい皇――」
――彼らをそこから救い出そうと、公爵様に懇願したのでしょう」
魔獣を防ぐ防波堤。現在、カストライン公爵家が担っている役目だった。
魔晶石鉱山は自然にできたものではなかった。帝国の歴史とともに、カストライン公爵家が代々討伐してきた魔獣たちの死骸が堆積した場所から、ある日採掘され始めたものが魔晶石だった。魔晶石のおかげでカストライン公爵家そのものは豊かだったが、領地内のすべての領民を豊かで安全な暮らしにするには力不足だった。
皇室は自らの義務を放棄し、カストライン公爵家の仕事を他人事のように扱っていた。それどころか、魔獣と戦うために莫大な兵力を抱えているカストライン――レイモン小公爵を警戒していた。助けるどころか邪魔さえしなければいい――それが息子だった。カストライン公爵家がどうにか彼を引きずって魔獣を退け、領地にまで魔獣の群れが押し寄せないようにしてから長い年月が経ち、平和を当然のものとして享受していたのだ。
しかし、年を追うごとに魔獣の数は増えていった。魔獣と人間が暮らす領域を隔てる結界を強化するため、カストライン公爵家はこれまでありとあらゆる方法を試してきた。そして、初代皇帝が築いた結界には「皇族」の血が不可欠だということを、ようやく突き止めた。生きている皇族が一人もいなくなれば、結界は自然に消滅する。
「……そんな私たちの状況を助けてくれる皇族が現れたとしたら?」
「ティタニア皇女殿下に、そんな期待を抱くなということです。これもすべて、公爵様を皇位に就かせるための大きな計画の一部かもしれないじゃないですか?」
レイモンはその言葉を聞いて、苦笑した。
「それなら、本当に心配する必要はない」
『愛する人を見つけて結婚してください』
そう言いながらレイモンを見つめていたティタニアの瞳には、本当に一片の動揺もなかったのだから。
1. クレオ皇妃の陰謀とライラック宮への侵攻
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呪いの証拠の捏造: クレオ皇妃は、ティタニア皇女を陥れるために自ら「闇の力」が込められた呪いの証拠品を用意し、大がかりな自作自演を進める。
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マルジド大祭司の買収: 権力争いを有利に進めるため、自分の利益しか考えないマルジド大祭司を抱き込み、皇女の「呪い」を診断・治療させる口実を作る。
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もくろみと急展開: 皇后宮で皇女を追い詰め、廃位にまで持ち込もうと意気揚々と乗り込むが、直前になって「ブリアン皇子が魔獣に追われて地下へ落ちた」という急報が入り、計画に狂いが生じる。
2. カストライン公爵家(レイモン側)の思惑と不信感
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カシアンの懸念: 副官のカシアンは、皇室の身勝手さや過去の仕打ちから、皇女ティタニアの真意や彼女を信じるレイモンの判断に強い不信感と疑問を抱いている。
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魔獣と皇室の血の秘密: カストライン公爵家が長年担ってきた魔獣の防衛と結界の維持には、実は「皇族の血」が不可欠であるという重い背景が存在する。
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レイモンの揺るぎない確信: 周囲が皇女の企みや裏を警戒する中、レイモンだけはティタニアの瞳に一片の動揺もなかったことを思い出し、彼女を信じる姿勢を見せる。