幼馴染が私を殺そうとしてきます

幼馴染が私を殺そうとしてきます【151話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【幼馴染が私を殺そうとしてきます】まとめ こんにちは、ピッコです。 「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

151話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 秘密の庭園

ためらいもなく、残酷なほどに美しい朝がやってきた。

グリフィスは窓の外から聞こえる小鳥たちの清々しいさえずりに耳を傾けながら、その端正な口元に滑らかな微笑みを浮かべた。それはまるで、一流の画家が魂を込めて描いた絵画のように隙のない、完璧に美しい微笑だった。

(最近、これほどまでに爽やかで心地の良い朝を迎えたことが、果たしてあっただろうか?)

彼はいつも以上に丁寧に身なりを整えると、眩しい朝の光が降り注ぐ庭園へと足を向けた。

初夏の太陽の光は、目を細めるほどに白く輝いている。たとえ今日、その容赦のない日差しに照らされるレリアの顔が、絶望と疲労でどれほど惨めにやつれ果てていたとしても、今の彼には微塵も関係のないことだった。むしろ、レリアが深く苦しんでいる原因が、精神の摩耗や何らかの重い病気によるものであるならば、それはグリフィスにとって、むしろ大いに歓迎すべき至福の事態ですらあった。

彼は楽しげに鼻歌を歌いながら、レリアの部屋へと続く回廊を歩いていく。

実は、かつてレリアに対して「私にはすべてが分かっている」と偉そうに告げた言葉とは裏腹に、グリフィスはオスカーが一体内にどんな決定的な秘密を隠し持っているのか、その本当の真意など何一つ知らなかった。

ただ、あの夜は本能的な直感に従い、絶対の確信があるかのように沈黙を守り続けていただけだったのだ。

しかし、そのただ一つの秘密こそが、あの傲慢なオスカーを永遠の地獄の底へと突き落とすほどの、レリアに決して、絶対に許されることのない猛毒の罪なのだということは、彼らの動揺から本能的に察していた。

(だからオスカー、お前は私の前であれほどまでに無様に怯え、震えていたのだな?)

すべてを理解した今、グリフィスには暗い確信があった。

だが、オスカーが自らの罪の重さに耐えかねて、その足元から自ずと崩れ落ちていくのをただ退屈に待つのは、あまりにももどかしすぎた。なぜなら、正体の分からない微かな不安が最近ずっとグリフィスの胸を容赦なくかき乱し、苦しめ続けていたからだ。だからこそ彼は焦りに突き動かされ、あの日、最後にレリアの手へと縋りついたのだ。

レリアという少女は、オスカーがたった一人でその重い秘密を抱え込み、暗闇の中で孤独に苦しみ抜くことなど、これっぽっちも望んではいなかった。たとえ彼が過去にどれほど大層な罪を犯していようとも、レリアというお人好しは、最終的には涙を流してでもオスカーのすべてを優しく許してしまうだろう……。

だが、例え許されたとしても、オスカーはこれからの生涯、その消えない自責の罪悪感を背負って生きていくことになる。――ふん、ただそれだけのことだけでも、グリフィスにとっては十分に満足のいく復讐だった。

レリアが自らの強い意志で動いた末に――。

自分がこの世界のすべてを手に入れようとするその極限の時に、あのオスカーさえ邪魔をしてこなければ、それでよかった。オスカーはこれからの残りの一生を、ただの哀れな罪人として、彼女の気高い足元でひれ伏して生きていればそれでいいのだ。

「………」

降り注ぐ黄金の日差しを真っ正面から見つめるグリフィスの美しい顔には、友人を陥れることに対する罪悪感の欠片など、微塵も存在しなかった。

実のところ、オスカーに対するグリフィスの心境は、極めて複雑にねじ曲がっていた。

かつて共に泥の中を生き抜いてきた友人としての、本物の『友情』は確かにそこにあったのだ。レリアに語った「私にとって、オスカーはとても大切な存在だ」という言葉も、決してすべてが真っ赤な嘘というわけではなかった。

確かに、世界に二人といない大切な友人。――だが同時に、今すぐその身体を細切れに切り裂いて、跡形もなく殺してやりたいと願うほどの、激しい憎悪の対象でもあった。

もしもオスカーが、この先二度とレリアを自分一人だけで独占しようと画策し合わないと誓うのであれば、グリフィスはこれからも一生、彼の良き理解者(友人)の仮面を被り続けていられたかもしれない。

「さて、確か今日は……あの華やかな首都から、とびきり『厄介な客人たち』がわざわざここへ来る、と聞いていたけれど」

愛しい、私のレリアよ……。

彼は湧き上がる気分の良い邪悪な微笑みをその唇の裏に隠しながら、静かに歩みを進めた。

これから始まる、人生で最も混沌とした残酷な一日を迎えることになるレリアのために、あらかじめ極上の『慰め』を特等席で届けに行く時間だった。

 



 

トントン――。

静寂に包まれた部屋に、優しくドアをノックする音が響いた。

冷たい窓辺にぽつんと立ち尽くしていたレリアは、その音にハッと我に返って振り返った。彼女が力なく「……入って」と細い声を漏らすと、ゆっくりと扉を開けて現れたのは、予想通りグリフィスだった。

自らの身を心から心配してくれている、いつもと変わらない優しい友人の顔を目にした瞬間、レリアの胸の奥から、一気に言葉にできない複雑な感情の波が押し寄せてきた。

レリアは気まずさを隠すように、しばらくの間じっと窓の外の景色を見つめ、それから再び小さな声でグリフィスに応じた。

グリフィスは部屋に入るなり、室内の冷えた空気を察して窓辺へと静かに近づいた。彼が軽くカーテンを開けて、あたりを偵察するように見渡した時、その表情に何か微かな変化があったかどうかは、レリアの側からは決して見て取ることはできなかった。

「レリア」

「……おはよう、グリフィス」

「オスカーはどこへ行ったんだい?」

「……朝、私が目を覚ました時には、もう部屋のどこにもいなかったわ」

レリアは心ここにあらずといった様子でぼんやりと答えながら、自らの華奢な肩に掛けていた厚手のショールを、無意識にゆるめた。

その刹那、グリフィスの鋭い視線が、ショールの隙間から露わになった彼女の白い『うなじ』へと、吸い寄せられるようにじっと釘付けになった。

そこには、大して目を凝らさずとも――。

昨夜、どれほど激しい夜が繰り広げられたのか、その荒れた皮膚の生々しい状態がありありと想像できた。狂ったように彼女を貪り、噛みちぎったオスカーの、どす黒い独占の痕跡が無数に残っているのだろう。

その光景を目にした瞬間、グリフィスの胸の奥は、嫉妬と怒りによって激しくかき乱された。

すべてを知ってもなお、その罪のすべてを赦して抱きしめたレリアの姿は、まるでかつて自らのすべてを赦した聖母のようだった。あまりにも簡単に、あまりにも無防備に、あの男を受け入れたのだ。

その事実が、たまらなく空しくて、滑稽で仕方がなかった。と同時に、ふと脳裏に最悪の嫌な予感がよぎった。それは、かつて子供の頃に安物の混ぜ物で作られた金管楽器を吹いた時、一番大切な音がスカスカと抜けて落ちてしまった、あの時の不快な感覚と全く同じものだった。

グリフィスは今、目の前にいるレリアという少女の存在が、絶望的に思えてならなかった。

(レリア。お前は一体なぜ、あのオスカーにだけ、それほどまでに特別な慈悲を注ぎ続けるんだ? あの一体どこが良いのか分からないガキは、子どもの頃から俺と目が合うたびに、嫌がらせのように足癖を出して泣きわめいていただけの存在だぜ? あいつこそ、過去に俺の両親を冷酷に殺すしかなかった、本当の化け物だったんじゃないのか? それともお前が今あいつに見せているのは、俺の両親を殺したことに対する、ただの償いのような哀れみに過ぎないのか?)

(……じゃあ、もし。俺も自分の両親が死んで、世界のすべてを失って、この広い世界にお前しか残らなくなったら。お前はその時、俺にもあいつと同じように……)

込み上げてくる激しい悔しさとドロドロとした怒りのあまり、彼はそれ以上、言葉を続けることができなかった。

グリフィスは、その魂を突き動かす激しい衝撃をどうにか理性の力で抑え込みながら、冷たい声で問いかけた。

「……レリア。オスカーから、あの過去の話はすべて聞いたのかい?」

「……ええ」

「……お前は、前からその真実を知っていたのか?」

「詳しくは……知らなかったわ」

平然と顔色一つ変えずに嘘をつきながらも、グリフィスは今、彼女の衣服の肌の下に一体どれほどの痕跡が隠されているのかが、気になって狂いそうだった。

彼は、彼女がひた隠しにしているものを、今すぐこの手で暴いて確かめたくて仕方がなかった。オスカーという男が彼女に深く関わった、その生々しい痕跡を見つけ出したくて、彼女の身体に刻まれた証拠を隅々まで探ろうとする、暗い衝動が全身から沸き起こっていた――。

「……グリフィス?」

「……っ、うん、レリア」

「大丈夫? なんだか……あなたの顔色が、とても青白いわよ」

「……」

レリアは、彼のただならぬ様子にそっと近づき、心配そうにその顔色を覗き込んできた。彼女は自らの小さな手を伸ばすと、彼の額を覆っていた前髪を優しくかき上げ、そこにそっと手を当てて体温を確かめてくれた。

手のひらから伝わる熱はなさそうだったが……それでも、今のグリフィスの顔色は、客観的に見てもあまりにも悪すぎた。幽霊のように青白くて、今にもその場に崩れ落ちて気を失ってしまいそうに見えたのだ。

「……大丈夫だよ、レリア」

「……」

グリフィスは、自分の額に置かれたレリアの温かい手をそっと自らの手で握り締め、静かにその小さな手のひらの上に、祈るように唇を当てた。

「……実を言うとね、レリア。今、身体がとても痛むんだ……」

「えっ!? 一体どこが痛むの? あなた、自分のその強力な魔法で治せないの……!?」

レリアは驚き、心底焦った様子で尋ねてきた。

あの完全無欠なグリフィスが、どこかに身体の痛みを感じているなど、彼女の常識では到底想像もできないことだったからだ。彼はこの世界でも極めて稀な、神聖な治癒能力を自らに持ち、どんな重傷であっても一瞬で自ら回復させることができる特別な存在だったはずなのだ。

「どうしてか自分でもよく分からないけれど……最近、自分で自分を治すのが、急に難しくなってきた気がするんだ。……ほら、前に神殿で首を絞められた時のあの酷い跡も、なかなか消えてくれなくてね……」

「………」

グリフィスは、幼い子供が同情を引くために吐くような、実につたない嘘を並べ立てながら、まるで迷子の幼い動物のように、彼女の手のひらをそっと甘噛みした。

小さくて、とても温かなレリアの手のひらから直接伝わってくるぬくもりが、今の彼の凍えた心には、たまらなく心地よかった。その細い手首の奥から微かに漂ってくる、彼女自身の甘い香りも、彼を狂わせるほどに心地よかった。

グリフィスは、その温もりに包まれながら、自らの内側で小さく冷ややかに笑った。

レリアは一見すると、あのオスカーにだけ特別に深い慈悲と優しさを注いでいるように見えたが――実のところ、彼女はグリフィスや他の何人かの友人たちに対しても、それと全く同じだけの深い優しさを、いつも平等に分け与えてくれていたのだ。呆れるほどに、公平に、みんなのことを自らの命のように大切にしていた。『親しい友人』という、都合の良い名前の箱のもとに。

その新たな事実に気づいた瞬間、彼の唇から自然と歪んだ笑みがこぼれ落ちた。

今、自らのことを心から、涙を浮かべるほどの純粋な眼差しで心配してくれているレリアの光を見つめた瞬間、先ほどまで脳裏を支配していたあのドロドロとした暗い怒りが、嘘のようにすっと綺麗に消え去っていったのだ。まるで魔法の嘘のように、あまりにも簡単で、無力に。

そうだ。何も、一人で焦る必要なんて最初からどこにもなかったのだ。

どうせ、レリアという少女は……いずれ、この世界のすべてを自らの手にする運命なのだから。そして、オスカーをその懐に愛するように、僕のことも、僕たちのことも、同じように深く愛するようになるに決まっているのだから。

 



 

グリフィスは、その美しい顔に穏やかな微笑みを湛えながら、レリアの華奢な手首へと、深く這わせるように口づけをした。

それは単なる愛のキスというよりは、彼女の脈動を、自らの唇でしっかりと押さえつけて支配するような、強固な動作に近かった。

レリアは、彼のそのいつもとは違う濃厚な動きになぜか少しだけ胸がときめいてしまったが、彼を心配する純粋な気持ちが変わることはなかった。

「……本当にすごく痛むのなら、今すぐ腕のいいお医者様を呼びましょうか? それとも、私が何か効くお薬を……」

「大丈夫だよ、これくらい。……ちょっとだけ、心の奥が痛んで、身体がそう錯覚しただけだから」

「心が痛むって……一体どういうこと?」

「ただ、オスカーのこれからのことが、親友として少し心配でね……」

グリフィスが放ったその偽りの言葉を聞いた瞬間、レリアは自らの手をそっと下ろし、気まずそうに身体をひねって窓の外の遠い景色を見つめた。

レリアは、何かを諦めたように、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「……大丈夫だよ。オスカーは、きっと……」

「……うん、そうだね」

グリフィスはそう優しく答えながら、窓の外を見つめるレリアの身体を、その背後からそっと両腕で抱きしめた。とても慎重に、壊れ物を扱うかのように、ゆっくりと。

「……」

レリアは一瞬、男としての気配に彼を引き離そうとしたが、今、心に深い傷を負って弱り切っている目の前の大切な友人を、強く突き放すことに対して、どうしても激しいためらいを感じてしまった。そこには、下卑た微かな欲望すら一切感じられない、あまりにも清らかな手つきで、ただ傷ついた子供を慰めるように、あるいは自らへの慰めを求めるように包み込む、あまりにも純粋な抱擁だったからだ。

また、あの過酷な神殿からこの屋敷へと戻って以来、グリフィスとこうして二人きりでまともに話を交わしたのは、これが本当に初めてのことだった。なんとなく、理由もなく、無性に――。

どんな時であっても、常に優しい気持ちで自らのことを助けてくれるこのグリフィスという存在を、今はどうしても疑いたくはなかったのだ。

「……きっと、すべて大丈夫になるわ」

レリアは、自らに言い聞かせる呪文を唱えるかのように、小さく静かにつぶやいた。

「そうだね、レリア。大丈夫だよ」

グリフィスも彼女のその言葉に同意して、耳元でもう一度そう優しく答えた。

――私たちはきっと、すべて大丈夫になる。

一緒に、永遠に、あの約束の場所で幸せになれるはずだ。

レリアは、自らの背後にいるグリフィスが、今一体どんな恐ろしい表情を浮かべているのかなど知る由もないまま、ただ窓の外の広大な景色だけを見つめ続けていた。

その時――。レリアの視線の端に、不自然な何かが突如として飛び込んできた。

遥か彼方、ヨンジ城の方向へと長く真っ直ぐに続く一本の街道に、土煙を上げてこちらへと向かってくる、見たこともないほど豪華な『馬車の行列』が見えたのだった。

誰かが、確実にこの場所を目指して近づいてきていた。

背後で満足そうにほほえみを浮かべていたグリフィスも、その不穏な大名行列の気配に即座に気づき、目を細めた。

「……フン。どうやら、例の厄介な『客人たち』がご到着のようだね」

「……っ」

レリアは、その行列の正体を察し、緊張のあまり両手をきゅっと強く握りしめた。

「心配することはないよ、レリア。もしあいつらが、またあの首都の時みたいに君を理不尽にいじめようとするなら……前回と同じように、この俺が徹底的に懲らしめてあげるからね」

グリフィスのその物騒な言葉に、レリアは昔を思い出して困ったように微かに微笑んだ。

かつて首都の皇城において、自分を虐げた皇子たちを文字通り完膚なきまでに叩きのめし、打ちのめしたあの時のグリフィスの狂気が脳裏に蘇る。彼は自らの手で皇子たちを死の寸前まで絶望的に追い込んでおきながら、その傷を自らの魔法で癒してあげるという歪んだ洗礼を与え、その間も、ずっと美しい笑顔を浮かべていたのだ。

そうだ、今更あの者たちに対して、無駄に緊張する必要などどこにもない。どうせ、あの皇子たちなんて――。

彼らの今回の目的はただ一つ、自分たちの本当の『母』に会うことだけなのだから。

あの皇子たちも、自分と同じように幼い頃に最愛の母を亡くしていた。彼らを個人的に嫌いだとか、憎いだとかいう激しい感情とは全く別の次元の話として、実の子供が母に会うことそのものまで、レリアの権限で冷酷に止めようとは微塵も思わなかった。

ただ、今の母には彼らに関する過去の記憶が一切ない状態なのだ。だからこそ、「母の記憶が万が一戻ったら、こちらからそちらへ必ず連絡する」と大人の約束を交わし、今日中に適当な言葉で言いくるめて、すぐに首都へと送り出すつもりだった。

そもそも、彼ら高貴な皇族たちは、こんな何もない寂れた地方の地に長く留まることなど、本音では嫌がっているはずなのだ。

自分たちがこれまで犯してきた過ちのせいで、母に対して申し訳ないという罪悪感になるほど、彼らは心底、このヨンジ城の場所を嫌悪していた。今更、母の顔を真っ正面から見るのすら、後ろめたいと感じるほどに。

けれど――。

かつて世界で唯一の『宝の座』だったあの温かい場所から、まだ幼く無力だった自分を無残に突き落として捨て去ったのは、他ならぬ彼ら皇子たちなのだ。だからこそ、今の自分が彼らに対して、これくらいの最低限の嫌う気持ち(拒絶)を持っていたとしても、神様だってバチは当てないのではないだろうか。

レリアは、豪華な馬車の行列が、刻一刻と城の正門へと近づいてくるのをじっと見つめていたが、やがて決意したように身を翻した。

「……直接、出迎えに行くのかい?」

「ううん……ただ……」

レリアのその曖昧で歯切れの悪い返事から、グリフィスは彼女の本当の気持ちを瞬時に察した。要するに、あいつらが城に入る前に、この場(本館)を離れてどこか遠くへ逃げ出したいという意味だった。

「――一緒に行こう、レリア」

グリフィスはそう言って、優しく大きな手を彼女の前に差し出した。レリアは一瞬ためらいながらも、その美しい手を見つめ、そして迷いを振り切るようにその手を強く取った。

 



 

グリフィスに手を引かれて付いて行った場所は、ヨンジ城の広大な敷地のさらに外郭にひっそりと佇む、人目を忍ぶ隠された場所だった。

そこは、本館からは肉眼で見えないほど遠く離れた距離にある、古い城の寂れた庭園だった。普段から滅多に使用人すら訪れない、静寂だけが支配する孤独な場所。

レリアはそこに置かれていた古びた木製のベンチに腰掛け、所在なげに自らの指先をいじりながら、深く考え込んでいた。未だに姿を見せないオスカーの安否が心のどこかで酷く気にかかっていたが、あのタフな彼のことだ、きっと一人の時間を経て大丈夫だろうと自分に言い聞かせた。

実のところ、レリアは昨夜オスカーが命を懸けて打ち明けたあの衝撃的な『真実』に対して、世間が思うほどには、そこまで激しく動じることはなかった。むしろ、自分でも驚くほどに冷静に、彼の告白をそのまま受け止めていたのだ。

なぜなら、あまりにも現実離れしすぎていて、本当の意味での実感が全く湧かなかっただけなのだ。

これまでずっと「悲劇の物語の中の世界」だと思い込んで生きていたこの場所が、実は物語などではなく、自分自身の本当の『前世』そのものだったのだと突然言われても、にわかには信じきれなかったのだ。

もしかすると、オスカーの記憶違いか、あるいは彼が何か大きな勘違いをしているだけなのではないかという淡い思いも、一瞬だけ頭をよぎった……。

だが、自分がまだ幼い子供の頃に、毎晩のように見ていたあの不気味な夢の光景を思い出すと、やはり彼の告白はすべて本物の真実なのだとも思えた。

あの夢の中で彼女は、誰にも愛されず、絶望の中で自ら冷たい命を絶った、あの可哀想な幼い少女の姿を、いつも特等席で見ていたのだから。

これまでは、ただ原作の裏設定(隠された歴史)を夢で見ているだけなのだと自分を納得させていたが、まさかその死んだ少女の魂の正体こそが、自分の前世だったとは。

あの過去の件で、我が身にあまりにも大きな代償を支払うことになったのは、ただオスカーが神から正当な罰を受けただけのことなのだ。決して、これからの未来が絶望に満ちているわけではなかった。ただ、目の前で過去の罪に狂いそうになりながら激しく苦しむオスカーの姿を見るのが、一人の友人としてたまらなくつらかったからこそ、彼女は昨夜、一度だけ彼を強く抱きしめたのだ。

『――大丈夫だよ、オスカー。すべて大丈夫だから』と。

何度も、何度も呪文のようにその優しい言葉を繰り返し唱えながら、彼の痛々しい思いのすべてを、彼女はあの日、正面から受け止めた。

オスカーは昨夜、夜が明けるまでの間、狂ったように彼女に対して何度も、何度も問いかけてきた。

『お前は本当に、俺に復讐を望んでいないのか? 本当に、そんなに簡単に、俺のような化け物のすべてを許してくれるというのか……!?』

その、怒りと悲しみを含んだ彼の狂おしい問いかけの数々は、彼自身の内側で処理しきれない、混乱した激しい感情の裏返しそのものだった。

初めてこの屋敷で二人で一緒に夜を過ごしたあの穏やかな時とは全く違い、昨夜の部屋は、一寸先も見えないほど重苦しい絶望の空気に包まれていた。

夜明け前の僅かな時間に、体力の限界を迎えてかろうじて浅い眠りに落ち、朝になってパチッと目を覚ましたとき、隣のベッドにはすでに彼女一人だけが残されていた。まるで最初から誰もいなかったかのように、一寸の乱れもなく綺麗に整えられた静かな部屋の光景を見て、レリアは昨夜の出来事のすべてが、自分が作り出したただの悪い夢だったのではないかとすら感じられたほどだった。

レリアは、あの時のオスカーのように、彼を慌てて探しに行ったり、あるいは彼が自分を置いてどこか遠くへ逃げてしまったのではないかと不安に怯えたりすることは、今回は不思議としなかった。

今の彼には、他の誰の手も入らない、たった一人だけで自らの罪と向き合うための『孤独な時間』が、絶対に何よりも必要なのだろうと考えたからだった。

「……レリア」

「……あ、ええ、うん。何かしら、グリフィス」

深い物思いの海からようやく目を覚ましたレリアは、すぐ隣に座るグリフィスの顔を見た。

彼は、彼女が部屋を出てからずっと、すぐ隣の席に腰掛け、まるで忠実な騎士のように彼女の横顔を静かに見守り続けてくれていたのだ。

「本当に、あいつら(皇子たち)に今すぐ会わなくても大丈夫かい?」

「……ええ。今は、あまり会いたくはないわ」

「分かっているよ。……この世界の誰よりも、俺が、君のその引き裂かれそうな気持ちを正確に理解できるからね」

血が繋がっているからといって、そのすべての人間が幸福な『家族』になれるわけではない。

レリアは、グリフィスのその言葉の奥に込められた、彼自身の冷徹な本音を深く理解した。誰よりも彼女の孤独な心を理解できる本当の理解者の一人が、他ならぬこのグリフィスだった。彼自身もまた、血を分けた本物の身内たちを家族だとは到底思えず、これから先もそんな無駄な絆など、一寸たりとも望んではいなかったからだ。

「……理解してくれて本当にありがとう、グリフィス」

「……」

「こうして、私のために何も言わずに隣に一緒にいてくれることも、本当に心から感謝しているわ」

そうして、レリアはグリフィスと並んで、木漏れ日の中で穏やかな会話を交わし続けた。

客観的に見れば、首都からの軍勢が迫っており、全く安心できるような状況ではなかったはずなのだが、なぜかこのグリフィスという男と二人で話をしていると、波立つ心が不思議と静かに落ち着いていくように思えた。それほどまでに、今のグリフィスには、相手の心を意のままに支配して――。

相手を完全に安心させてしまう、底知れない不思議な力(魔力)が宿っていた。

もっとも、そんな偽りのささやかな平穏の時間は、長くは続かなかった。

「――あ! やっぱり、こんなところにいたのね、お姉様!」

生い茂る角の回廊を曲がった途端、ドンドンと激しい足音を周囲に響かせながら、こちらへと血相を変えて歩いてくるカリクスの姿が見えた。

そのすぐ後ろには、いかにも不満げな、面白くなさそうな顔をしたロミオも一緒に付いてきていた。

「レリア、一応言っておくけど、あんまりそのグリフィスって男と二人きりで行動しないで。……一度あいつに酷い裏切られ方をして、神殿であれだけ痛い目に遭ったっていうのに、まだ目が覚めないわけ?」

ロミオはアジトに着くなり容赦ない言葉をグリフィスに向けて言い放ちながら、彼を鋭い目でじっと牽制し、レリアの身体を自らの背後で庇うようにして立った。

レリアは彼らのあまりの剣幕に少しだけ気まずくなり、ぎこちない苦笑いを浮かべるしかなかった。

「……それよりレリア、本当にこんな離れた場所にいて大丈夫なのか?」

「……どうせ、あの皇子たちは私ではなく、お母さんに会うためにわざわざ首都から来たのでしょう? なら、私がそこにいる必要はないわ」

「大丈夫。本館には、叔父さまとおじい様がしっかりと控えていてくださるから、きっと大きな問題にはならないはずよ」

「……」

そのレリアの呑気な言葉を聞いた瞬間、ロミオは何かを言いたげに黙り込んでしまった。レリアが彼のそのただならぬ様子を不審そうに見つめると、彼は戸惑いで顔を歪めながら、重い口を開いた。

「……レリア。今回、わざわざ首都から来たのは、あの双子の皇子たちだけじゃないんだ」

「え?」

「……あのユリアナ皇女と、ルート・カストリル(ルート)も、あの大名行列の中に一緒に混ざって、ここへ来ている」

「……なっ!?」

「しかも、あいつら、今まさに本館でお前のお母さんに全員で縋りつきながら、必死に頼み込んでいる最中なんだ。……『お願いですから、僕たちと一緒に、今すぐあの華やかな皇城へ戻りましょう』って」

「……一体、何ですって……!?」

その瞬間、レリアの全身から、一気に血の気が引いていくような激しい感覚に襲われた。

「おじい様は、当然激怒して今すぐ力尽くであいつらを止めようとされたのだけれど……。肝心のお前のお母さんの方が、『私は過去の記憶が一切ない身ですから、あの方々がそう望むのであれば、そのまま行かせてあげてください』って……あいつらをそのまま受け入れようとしているんだ」

「……だから、お母さんの方は、相手が偉そうな皇族だから気後れして断れないのかもしれないし、あるいは生まれつきそういうお人好しな性格なのかもしれないけれど……とにかく、このままだと本当に行ってしまうぞ!」

母には、祖父があらかじめ「首都の人間には絶対に気を許すな」と詳細に説明してくれていたと聞いていたはずだった。

それなのに、現実はそうなの? ただ、相手に記憶がないと言われたそれだけの理由で、すべてを諦めて見送るって言うの?

「……今すぐ、本館に行かなきゃ」

強く握り締めた自らの拳が、激しい怒りと悔しさでガタガタと震えているのが、自分でもハッキリと分かった。

こみ上げる激しい怒りの感情で、レリアの胸の中は一瞬にして押し潰されそうになった。

あのクソ皇子たちだけが静かに来たと思っていたのに……。

あのユリアナやルートは、一体全体、何の権利があってわざわざこの地にまでしゃしゃり出てきたというの?

しかも、記憶を失って怯えている私の母に向かって、皇城へ一緒に来いと、今更どの面下げてそんな都合のいい命令を抜かしているの?

レリアは、怒りのあまり自らの両目が真っ赤に充血していることすら気づかないまま、本館へ向けて凄まじい速さで足を早めた。

正直に言って、今の彼女にとっては、あのユリアナとルート、あの忌まわしい二人の存在は――自分を泥の中に捨てた、あの双子の皇子たちと同じくらい、心の底から激しく嫌いで、反吐が出るほど憎い対象だったのだ。

本館からあまりにも離れた寂れた庭園だったからだろうか、中央へと向かう道が、今の彼女にとっては気が遠くなるほど遠く、もどかしく感じられた。本館の巨大な建物がもうすぐ目の前に到着しそうな頃には、レリアはドレスの裾が破れるのも構わず、ほとんど全力の駆け足になっていた。

後ろから、ロミオや友人たちが必死に彼女の名前を呼ぶ声が遠くに聞こえたが、今の彼女には、それに振り返って応える精神的な余裕など一寸たりとも残されてはいなかった。

レリアは本館の重厚な城門を乱暴に開けて内部へと滑り込み、一気に階段を駆け上がった。

わざわざ、奥にある二階の正式な応接室まで確認しに行く必要など、どこにもなかった。階段を上りきるとすぐ目の前に広がる、二階の広大な中央ホールに、すでに大勢の人々が異様な熱気で集まっていたからだ。

屋敷の一般の使用人たちは少し離れた壁際に一列に並び、誰もが不安げで、怯えた表情を浮かべながら、ホールの中央の一角をじっと見守っていた。

息を切らせたレリアがその場に突如として姿を現すと、使用人たちは驚き、モーゼの海のように一斉に道を開けながら、恐縮した様子で深く視線を床へと下げた。

「………」

レリアは、激しく上下する自らの呼吸をどうにか冷徹に整えながら――。

目の前に広がる、人生で最も胸糞の悪いその光景に向けて、一歩ずつ、ゆっくりと、しかし確実に怒りの足取りで歩いて行った。

 



 

 

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