こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
154話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 影の制裁
普段と変わらない、冷徹な視線がオスカーに向けられた。
グリフィスは微塵も動揺していない瞳で、目の前に立ちはだかるオスカーを見つめ返す。オスカーがグリフィスの気配を察知していたように、グリフィスもまた、彼の存在を正確に捉えていた。
「どいてくれる?」
グリフィスは、自分の前を塞いでいるオスカーの身体を手先でそっと押しのけ、部屋の中へと滑り込んだ。
(カチャリ)
グリフィスの背後でドアが閉まる静かな音が響く。彼はいつもと変わらない、どこか他人事のような口調で尋ねた。
「レリアはちゃんと慰めてやったか?」
「……君が気にする必要があるのか?」
オスカーは腕を組み、不快感を隠そうともせずにグリフィスを睨みつけた。しかし、グリフィスはその刺すような視線を受け流し、薄い微笑さえ浮かべてみせる。
「もちろん気になるだろう。レリアは僕たちのものだからね」
「……」
“僕たちのもの?”
オスカーの眉間に深いしわが寄った。その苛立ちを見透かしたように、グリフィスはあざ笑うような笑みを深め、容赦なく言葉を付け加える。
「……まあ、体で慰めてあげたってことなんだろうね」
グリフィスにとって、オスカーのそんな頑なな態度は滑稽でしかなかった。この程度のことで動揺する段階は、もうとうに過ぎている。ずっと前から、こうなることは覚悟の上だった。
グリフィスは時間をかけて、とてもゆっくりと──すべてを自分の思い通りに整えようと考えていた。そのためなら、オスカーのこんな態度くらい、いくらでも耐えることができた。
思っていたのとは違うグリフィスの不敵な反応に、オスカーはしばらく眉をひそめていたが、やがて感情を殺した無表情へと戻った。
そのときだった。
「そこで何してるの?」
簡単に身支度を整え、服を着替えて出てきたレリアが、対峙する二人を見て驚いたように声を上げた。
レリアの瞳には戸惑いが浮かんでいる。オスカーがまだ部屋を出ていなかったこと、あの無表情で佇んでいること。そして、グリフィスがその様子をあまりにも平然と見つめていること。
(コンコン)
「お嬢様、私です」
不意に外から聞こえてきた声に、レリアの目が大きく見開かれた。ドアの外にいるのはベッキーだ。
レリアはすぐさま駆け寄り、グリフィスとオスカーの腕を強引に引っ張った。そして二人を寝室のほうへと押し込み、素早くドアを閉める。まさに一瞬の出来事だった。
「ねえ、静かにしてて」
ドアを完全に閉める直前、レリアは強い調子で警告することを忘れなかった。
今、ベッキーに中を見られるのは非常にまずい。オスカーは上着をまともに着ているかいないかという際どい格好で、おまけにグリフィスまで一緒にいるのだ。どんな誤解をされるか分かったものではなかった。
レリアは寝室のドアがしっかり閉まったことを何度も確認してから、ようやく安堵の息をもらし、玄関の大きな扉へと歩いていった。そして、ゆっくりと扉を開ける。
「まあ、お嬢さま。もう身支度をされたのですか?」
「うん……」
「てっきり遅くまで眠っていらっしゃるのかと……。あの、お気分はいかがですか?」
ベッキーの声は慎重だった。昨日あんな事件があったばかりだから、レリアのことが心配でたまらないのだ。
昨夜、泣き疲れて眠ってしまったレリアのために、シュペリオン公爵は特別な指示を出していた。レリアには一人で心を落ち着かせる時間が必要だろうから、夜の間は誰も彼女の部屋に近づいたり、邪魔をしたりしないように、という配慮だった。
だからこそベッキーも、朝がすっかり遅くなった今になって、ようやく様子を見に訪ねてきたのだった。
「……大丈夫。何ともないわ」
「本当に大丈夫ですか? 顔色がよくありませんし、目も少し腫れています。氷を持ってきましょうか?」
「ううん、大丈夫。本当に……」
レリアが外でベッキーと軽いやり取りを交わしている間、寝室に取り残されたグリフィスは、ゆったりとした足取りでベッドに腰かけていた。
そこは昨夜、オスカーがレリアを強く抱いて眠りについた空間そのものだった。
「はあ……レリアの香り、いいな」
グリフィスは深く息を吸い込みながら、うっとりとしたようにつぶやいた。
その無遠慮で挑発的な態度に、オスカーは言葉を返さなかった。だが、グリフィスもまた、表面上は平然を装っていても、内心が穏やかでないことくらいは一目で分かった。
オスカーは、グリフィスがどれほどレリアに対して肥大化した野心を抱いているかをよく知っていた。それは他の連中、ロミオやカルリクスも同じだ。
だがロミオはそれを理性で抑える男だったし、カルリクスはレリアに自分の欲を強要するような真似はしないはずだった。しかし、グリフィスだけは違った。彼はとりわけ内心のざわつきを抑えきれず、常に飢えていた。
気持ちとしては今すぐにでもレリアを独占し、そばにいたい。けれど、それを行動に移すわけにはいかない。
皮肉なことに、レリアは四人の友人すべてを公平に、同じように大切に扱っていた。もしここでグリフィスが一人暴走してその輪から外れれば、それはレリアに大きな傷を負わせることになる。レリアが保とうとしている「完全なバランス」が崩れてしまうことだけは、彼としても本意ではなかった。
オスカーは腕を組んだまま壁にもたれ、ベッドの上のグリフィスを冷徹に見つめ続けた。
グリフィスは気分良さそうに周囲を見回していたが、ふと、思い出したように「あっ」と声を上げた。
「レリアはどうだった?」
「……何だと?」
「レリアの肌触りはどうだった? どれくらい柔らかい? どんな味がした?」
「この野郎……!」
そのあまりにも下品で侮蔑的な質問に、オスカーの理性が消し飛んだ。堪えきれずに飛びかかり、グリフィスの首元を容赦なく掴み上げる。
拳を振り上げるオスカーに対し、グリフィスは苦しげに歪んだ顔で、しかし挑発的に笑ってみせた。
「奪おうとするなら、これくらいはやらなきゃな……この役立たずめ」
「……」
「いつだってそうさ。今も昔も、お前はいつも足りてないんだよ」
「本気で言っているのか?」
オスカーの低い声に、本物の殺気が宿る。
「もう一度でもレリアのことをそんな風に侮辱してみろ。その時は本当に殺してやる」
「そうかい。どうせレリアの肌の感触がどんなものか、どんな味がするかも、いずれ僕も知ることになるだろうしな」
激昂したオスカーがついに堪えきれず、その拳を振り下ろそうとした、まさにその時だった。
(カチャリ)
空を切ろうとした拳が、不自然に止まる。
ベッキーを見送ったレリアが、ちょうど寝室のドアを開けて入ってきたのだ。
「……」
レリアは険悪な空気を感じ取り、うつむいたまま目だけをパチパチと瞬かせていた。
オスカーはハッと我に返り、グリフィスの首元を掴んでいた手から力を抜いた。
「はあ……っ!」
同時にグリフィスは、まるで今まさに窒息から解放されたかのように、大げさに深く息を吸い込んだ。あまりにも演技じみた、わざとらしい仕草だった。
「グリフィス! 大丈夫!?」
近づいてきたレリアは、真っ先にグリフィスの様子を心配そうに覗き込んだ。そして、少し悲しげな、憂いを帯びた目でオスカーを見つめる。
「オスカー、一体どうしちゃったの……?」
以前にも、グリフィスの首にオスカーがつけたであろう絞め跡を見たことがあった。いつかはっきりと言い聞かせなければ、と思っていた矢先に、またしてもこんな場面に直面するなんて。
まさか自分の目の前で、直接そんな暴力を目撃することになるとは思ってもみなかった。
もちろん、オスカーのことは深く愛している。けれど、グリフィスもまた彼女にとってはかけがえのない大切な友人だった。大好きな人たちが目の前で傷つけ合う姿など、絶対に見たくはなかったのだ。
「昨日のことで、私はまだ……まだ頭の中が混乱しているの。なのに、あなたたちまで争うかもしれないと思うと不安で、余計に気が滅入っちゃう……」
レリアは泣き出しそうな口調で懇願した。
すると、まるでその言葉を待っていたかのように、グリフィスが神妙な面持ちで言葉を引き継いだ。
「そうだな。オスカー、俺が悪かったよ……。だから、レリアがいない時は怒りをぶつけるんじゃなくて、ちゃんと話し合おう」
「はあ……」
オスカーはグリフィスのあまりの白々しさに、あきれ果てて苦笑するしかなかった。
「私が早く来すぎたみたいだな。オスカーが朝までそばにいるとは思わなかったよ、レリア」
グリフィスはベッドから身を起こしながら、皮肉を込めて言った。その言葉にレリアは恥ずかしさで耳まで真っ赤に染め、小さくなってうつむく。
グリフィスは、その欲望を隠しきれない湿った視線で、赤く染まった彼女の耳の輪郭をじっと見つめた。まるでオスカーに「お前のものだけではない」と見せつけるように。
「じゃあ、僕はこれで行くよ、レリア。またね」
「う、うん……」
グリフィスが寝室を出て、応接室の大きな扉を開けて外へと去っていく足音が静かに響き、やがて消えた。
レリアは胸に手を当て、張り詰めていた息を大きく吐き出した。
オスカーは一瞬、忌々しそうに表情を歪めたが、懸命にその感情を心の奥底へと押し込める。
「レリア」
オスカーが静かに彼女の名を呼んだ。
グリフィスが先手を打って自分に謝罪してみせたのは、子供じみた姑息な計算だ。レリアは幼い頃から一途で、自分に対して甘いところがある。だから、きっと思いを伝えれば気が晴れるだろう──オスカーはそう考えていた。
しかし、彼が言葉を紡ぎ出すより先に、レリアの方がトコトコと近づいてきて、オスカーの逞しい腰に細い腕を回して抱きついた。
「オスカー、お願いだから……友達と喧嘩しないで」
「……」
オスカーは小さくため息をついた。
レリアにはどうしても勝てない。彼女の前では、自分は永遠に、彼女の心を揺さぶってしまう罪人のようなものだった。オスカーは愛おしさを込めてレリアを力強く抱きしめ、ただ黙ってその柔らかな頭を撫でた。
「グリフィスの性格が……ちょっと普通じゃないのは分かってる。でも……友達でしょ? 口論ならまだしも、お互いを傷つけるようなことは絶対にダメだよ」
「……わかった」
レリアは申し訳なさそうに、彼の広い背中をそっと叩いた。軽く叩くにはあまりにもがっしりとした頑丈な背中だったが、今のレリアはそんなことを気にする余裕もなかった。
オスカーはレリアの細いうなじに唇を近づけた。
胸を焦がす切なさに、思わずそのまま噛みついて、自分の印を刻んでしまいたいという衝動が激しく突き上げる。だがそれを必死に堪え、冷たい唇をうなじにそっと触れさせたまま囁いた。
「私があの時のように、素直に引き下がったら……君は何をしてくれる?」
「え?」
くすぐったさにレリアが身をよじろうとしたが、オスカーはさらに腕の力を強め、彼女をしっかりと檻のように抱きすくめて身動きを封じた。ひやりとした唇が、そのまま耳の裏を愛撫するように優しくなぞっていく。
オスカーがレリアの耳元で、人には聞かせられない秘め事のような言葉をこっそりと囁き始めた。案の定、予想通りレリアの顔は瞬く間に熟した林檎のように真っ赤に染まっていく。
レリアは弾かれたように跳び起き、オスカーの胸を突き飛ばした。
「そ、そんなの、どうしろって言うのよ……っ!」
「私は素直に従うと言ったんだ。それくらいのお返しを望んでも、罰は当たらないだろう?」
「いい? 本当に大丈夫?」
「じゃあ、仕方ないね。グリフィスも、カリクスも、ロミオまで……これから皆にいじめられるかもしれないな」
「……」
「じゃあ、これはどう?」
オスカーがもう一度、レリアの耳元へと顔を寄せ、さらに甘く囁きを落とす。
耳を通じてダイレクトに鼓膜を震わせる彼の熱い吐息に、心臓がぎゅっと締めつけられるような感覚を覚え、レリアは必死に理性を保ちながら彼の言葉に耳を傾けた。その囁きは、聴いているだけで耳がとろけてしまいそうなほど、あまりにも甘美な誘惑だった。
「……」
やがて、レリアの口元に困ったような、しかし確かな微笑が浮かぶ。
レリアは観念したように、オスカーの腰に再び腕をぎゅっと回し、彼に身を委ねた。
家族たちはレリアのことを、まるで廃墟の中でかろうじて一輪だけ咲いた、壊れやすくて小さな芽であるかのように扱っていた。交わされる一言一言、向けられる視線の一つ一つにまで、腫れ物に触るような細心の注意が払われているのが肌で感じられる。レリアにとっては、その過剰な優しさこそがむしろ落ち着かない原因になっていた。
しかし、彼らが自分を責めているわけではなく、ただ純粋に心配してくれているのだと分かっていたため、レリアは決して文句を言わなかった。今のレリアにできる精一杯の気遣いは、ただ「私は何ともありません」という風に、平然と振る舞うことだけだった。
だが、その健気な努力も、母の前ではあっけなく崩れ去ることとなる。
「そんなに無理をしないで、レリア」
「……」
「みんな、あなたのことが心配でたまらないのですよ。家族というのは、元々そういうものでしょう?」
母はまだ、過去の記憶を完全に取り戻してはいなかった。それでも、涙をボロボロとこぼしながら自分にしがみつくレリアを、壊れ物を扱うようにやさしく抱きしめてくれた。
それはレリアが、初めて「お母さん」と声に出して泣きながらすがった日でもあった。
たとえ記憶は失われていても、我が子を愛おしむ母としての心は、確かにその胸の内に存在していたのだ。
エリザベスは、その日の記憶を静かに思い出していた。
罪悪感に満ちた目をそらしながら、自分の手を握りしめて必死に懇願していたユリアナ皇女の姿。そして、自分を「お母さん」と呼びかけていた双子の皇子たち。
記憶はなくとも、エリザベスは彼らを見た瞬間、本能的に何かを感じ取っていた。切なくて、胸が締めつけられるように痛くて、思い出せないという事実そのものが、まるで自らに課せられた罪のように感じられた。
だが、だからといって二人について黄星へ行くわけにはいかなかった。エリザベスの目に映るレリアは、まるで広い世界にひとりぼっちで取り残されたかのように、あまりにも寂しげに見えたからだ。たとえ家族や親しい人々に囲まれていても、彼女の心の奥底は満たされていないように見えた。
一生この子のそばにいて、この子が生きていく姿を、幸せそうに笑う姿を見届けていたい。
過去の記憶も、生きる目的も失った今の自分だけれど、もし残された人生に未練があるとすれば、それはレリアの幸せ、ただそれだけだった。
数日前のこと。
ロミオはいつになく険しい表情を浮かべ、無言で遠く離れた場所へと向かっていた。シュペリオンの工場を探し求めて首都からやってきた不審者たちが領地へ押し寄せてきたあと、ロミオはその日の夜、ひっそりと彼らの足跡を追跡していたのだ。
そして、その追跡の先には──。
普段の冷静さとは裏腹に、恐ろしいほどの殺気と冷気を放っているオスカーが立ちはだかっていた。さらにその後ろには、まるで事前に約束でも交わしていたかのように、カーリクスとグリフィスも姿を現す。
レリアがあの狂徒どもにどれほど酷い目に遭わされたかを知っている以上、彼らにとっては当然の、そして必然の行動だった。
「殺すのはダメだ」
ロミオが歩み寄り、復讐に燃える三人の前に立ちはだかってきっぱりと言い放った。
こういう時、自分はまるで聞き分けのない子供たちを諭す教師にでもなったかのような気分になる。幸いなことに、普段は統制不能なこの猛獣たちを相手にするのは、彼にとってそれほど難しいことではなかった。
「レリアが知ったら、また余計な罪悪感を抱くことになる」
その名前が一言紡がれただけで、壊れたおもちゃのように、三人の殺気はピタリと止まった。
「よく聞いて。ほどほどに、誰の目にも止まらないように仕置きをしないと、レリアの耳に入ってしまうだろう? ね? 足を切断するとか、そのレベルの派手な真似は危ないと言っているんだ」
最低限それくらいの残酷な仕置きは当然だと考えていたオスカーの眉間に、不満げなしわが寄る。ロミオは、友人たちがそれぞれ頭の中で何を企んでいるのかを黙って観察した。
「じゃあ、どうしろっていうんだ?」
カーリクスが苛立ちを隠せない口調で吐き捨てる。その目はどう見ても、前方の遠くに見える馬車の中の人間たちを、今すぐにでも殴り殺したいという凶暴な光に満ちていた。
ロミオは猛獣を手なずける調教師のように、そっと手を挙げて彼らを落ち着かせる。
「俺がうまく処理するから、お前らは先に戻っていろ」
ロミオの言葉に、グリフィスの目尻がわずかに下がった。
「お前をどうやって信用すればいいんだ?」
「そうだ、お前が何様だって言うんだ? 血も繋がっていないくせに、出しゃばりすぎるんだよ」
カーリクスもまた気まずそうに視線をそらす。
「……」
だが、オスカーだけは黙ってロミオの提案を支持していた。ただ静かに、ロミオの合理的な言葉に同意したのだ。
一団は怒りに任せてレリアをここまで押さえつけてきたものの、結局はそのまま直接手を下すことなく、引き返すことに決めた。
すべてはいずれ、レリアの知るところになる。
レリアはどうしようもなく心が弱く、優しい人間だった。自分に深い傷を負わせた人間たちにさえ、どこかで心を痛めてしまうほどに。
まあ、だからこそ、幼い頃に行き場をなくしていた自分たちに救いの手を差し伸べてくれたのだろう。
いずれにしても、いずれ無意味に捨てられるような塵芥の存在のために、レリアがこれ以上気を揉むことだけは避けたかった。
オスカーは心の決意を固め、踵を返した。
「アイツ、ムカつく」
カーリクスが去りゆくオスカーの背中を指差して毒づき、グリフィスはどこか困惑したような表情を浮かべていた。
オスカーがなぜ、これほどあっさりと──。
しっぽを巻いて戻っていく理由が、グリフィスには分かってしまったのだ。
『もうレリアに、自分の惨めな姿や残虐な姿を見せたくないってことか』
見え透いた奴め、とグリフィスは内心で口を尖らせた。
グリフィスの頭の中では、オスカーとレリアの仲を永遠に引き裂く方法が何百通りも浮かんでは消えていた。しかし、まだそれを実行には移していない。
今、ちょうど恋に落ちたばかりの人間というのは、相手に夢中になるあまり周囲が何も見えず、何も聞こえない盲目な状態になってしまうものだ。今のレリアが、まさにそれだった。情けないほどに盲目だが、恋に落ちているレリアの姿は、ひどく美しく見えた。
毎日毎日、その顔を見て、目を合わせるたびに──。
見るたびに、彼の心は激しくざわついた。今の彼女は、まるで収穫期を迎えて熟れきった果実のように、あまりにも魅惑的だった。
一口で、丸ごと残さず飲み込んでしまいたいほどに。
──でも、今はまだその時じゃない。不揃いで歪んだ愛が少しずつ冷めていき、きっぱりと区切りをつけられる頃合いこそが、ちょうどいい瞬間なのだ。
ほんのわずかな隙間を保ちながら、離れられずにいることこそが愛ではないか。
そのためなら、何年かかっても構わない。
もしかすると、レリアがオスカーとの間に子供を一人産んだ後でさえ、彼にとっては好都合だった。そうしてやっと、自分がその『二番目の子供』の父親になれるのだから。
「おい、ちょっと。お前、またろくでもないゴミみたいなことを考えているな」
ロミオが、ぼんやりと虚空を見つめていたグリフィスに、心底うんざりしたような声をかけた。あたりを見渡すと、カーリクスはすでに何かに納得したのか、一人で領地の城へと戻っていったようだった。
グリフィスは、何事もなかったかのように軽く笑った。
「……僕は、お前がどうやってあいつらを処理するのか、見届けてから行くよ」
「ご勝手に」
ロミオは、グリフィスにさっき何を考えていたのか問い詰めようとしたが、結局は口を閉ざした。どうせ聞いたところで、反吐が出るようなゴミ以下の思考しか返ってこないのは分かりきっていたからだ。
聞いたところで、自分の混乱した頭の中をさらにかき乱されるだけで、何の利益もない。
「さあ、じゃあ……軽くお仕置きをしてやろうか」
ロミオはどこまでも涼しげな表情のまま、遠くでゆっくりと進んでいる馬車の隊列を冷たく見つめた。
あの馬車はまもなく、皇城へ向かう途中で、事前に手配しておいた敵の勢力と鉢合わせすることになるはずだ。
準備万端で待ち構える彼らは、獰猛な飢えた獣のようにアウラリアの皇子たちを襲撃し、捕らえた者たちをそれぞれの目的地へと連行していくだろう。
そしてそこでは、高貴な皇子たちと皇女が、皇族としては想像すらしたことのない、凄惨な運命を迎えることになるのだ。
きっと、過酷な拷問を受けることになる。とてつもない苦しみと絶望を味わい尽くしたのち、ようやく命からがら皇城へ戻れるかどうか、というのがロミオの描いた筋書きだった。
たとえ肉体に残る傷がいずれ癒えたとしても、心に刻まれた拷問と凌辱の記憶は一生消えることはない。
レリアがどれほど深い傷を負い、苦しんだかを思えば、彼らにはそれ以上の苦痛を味わってもらわねば割に合わなかった。
好都合なことに、彼らに同行していた魔法使いたちは、ほんの数人しかいなかった。
ロミオはその隙を狙い、これまで自分が血の滲むような努力で磨き上げてきた強大な魔力を、思う存分ぶつけることに決めたのだった。
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寝室でのグリフィスとオスカーの激突と、レリアによる「強制監禁」
朝帰りのオスカーに対峙したグリフィスは「レリアは僕たちのもの」と挑発し、レリアの肌触りや味について下品な質問を投げかけます。理性を失ったオスカーがグリフィスの首を掴んで殺気を放った瞬間、身支度を終えたレリアが戻り、外に来た侍女ベッキーに誤解されないよう二人を慌てて寝室へ押し込みます。
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オスカーへの懇願と、グリフィスの「二番目の父親」という歪んだ野心
レリアから「大好きな友達と喧嘩しないで」と泣きつかれたオスカーは、激しい独占欲を抑えて承諾し、耳元で甘い囁きを交わして彼女と絆を深めます。一方、レリアを「熟した果実」のように激しく求めるグリフィスは、何年かかろうとも彼女がオスカーとの間に最初の子供を産んだ後でさえ構わないとし、自分が「二番目の子供の父親」になるという異常で長期的な略奪計画を胸に秘めていました。
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ロミオが主導する、アウラリア皇族への「凄惨な拷問の筋書き」
数日前、レリアを傷つけた皇子たちへの復讐に燃える猛獣たち(オスカー、カーリクス、グリフィス)を、ロミオは「レリアに罪悪感を抱かせないため」と理性的に制止していました。ロミオは同行する魔法使いの少なさを突き、自身が磨き上げた強大な魔力を投じて事前に敵勢力を手配しており、皇城へ向かう皇子と皇女の馬車を襲撃させて、一生消えない凌辱と凄惨な拷問の地獄へ叩き落とす冷酷な仕掛けを完了させていました。